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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
悪くない? 支配地編(仮)
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88

ブックマーク、評価していただきありがとうございますm(__)m

嬉しいです。


少し短めです。

すみません。

 俺は掴んでいた邪魔族のコツンを地面に置くと、コツンはパタパタと骨だけの翼を羽ばたかせ浮かび上がり、俺の周りをくるくる飛び回り始めた。


「ふーむ」


 俺は改めてコツンの姿を眺めて見た。


 コツンは使い魔になると同時に二等身大の姿に変貌してしまった。元々小さい奴だとは思っていたが、今はさらに小さく縮んでしまって30センチほどになっている。


 そんなコツンは、俺の肩に座りたいのか、俺の左肩付近をふらふらと漂い、じーっ眺めてくる。


「お前はもう、俺の使い魔だ。座りたきゃ好きに座れ」


『うん。俺様座りたい……す』


 自分のことを俺様と言う割には、意外にも女の子っぽい高い声が返ってくる。


 そんなコツンが、嬉しそうに俺の左肩にちょこんと腰掛けているのだが、その仕草がなぜか、妙に女の子っぽく可愛らしい。骨だけど……


 ――邪魔族を使い魔にしたり、妙なことになったが、これでやっと帰れるな……


「よーし、後はお前を聖騎士の隊長って奴のところに連れて行くだけだな」


 そう口にした俺は、視線を顔色悪く口元を押さえている見習い女聖騎士へと向けた。


「う……ぅっぷっ」


 涙目の見習い女聖騎士はこくこく頷くだけで精一杯のようだ。


「気配はない……ということは安全部屋から動いてないか。

 少し戻って、お前を安全部屋まで送って行ってやる」


 涙目の見習い女聖騎士はこくこくとまた頷いてくれたが、不意に、返事を求めていないコツンからも声が聞こえてきた。


『主。安全部屋にいた人族なら、もう手遅れと思う……っすよ』


『ん? それはどういう意味だ』


『それは……っすね』


 必死に言葉を取り繕い変な語尾で落ち着いたらしい、コツンが少し前の出来事を語り出した。


 ――――

 ――


 俺様が、得体の知れない人族を共に部屋に戻ってきた時にはヤブキリは数名の人族の手によって虫の息だった。


「あー、そのヤブキリってのは誰のことだ?」


『あ、はいっす。俺様が支配化に成功? した悪魔の中でも一番格が高かった悪魔っすよ。その悪魔格は、なんと五位だったんすから』


 楽しそうに弾んだ声がコツンから聞こえてくる。


「ほう」


『あ、でも主より全然弱いっすよ』


 ――いや、でもな。悪魔格の五位と言ったら俺より格上なのだが、こいつ思ったより強いのか?


「……そうか、続けてくれ」


『はいっす――』


 ――――

 ――


「ぐぅっ、て、手数が足りん、おいっ! アクスまだか、早くしろっ!」


 徐々に押し込まれ始めているガラルドからは苛立ちからか、怒声が頻繁に溢れる。


「もう少しです」


「ぐっ……うっ」


 それもそのはずだ。ガラルドの纏う聖騎士の鎧には細かなキズが無数にあった。

 中でも、腕や脚などには深くキズつけられたらしい跡があり、そこからは傍から見ても分かるほどの赤い液体が滲み出ていた。


『グギギ……』


「あー! このクソやろがっ! 俺は堪えるだけってのが一番苦手なんだが……その顔だ! そのムカつく顔っ!」


 捌きながらも身体中にキズを増やすガラルドの形相は凶魔にも劣らぬほどの怒りを露わにしていた。それにも理由があった。


『ウメー、ヂダ……グゲゲ……』


 この凶魔はガラルドの血、肉が鉤爪に付着する度に、その鉤爪を口元に運びムカつく笑みを浮かべいるのだ。


「(……ムカつくヤローだ!)」


 ガラルド自身も堪えるに限界を感じ始めていた、その時――


「ガラルドさん、お待たせしました」


「すまないガラルド」


 ソートに回復魔法を施し終えたアクスが聖剣と聖盾を構えて凶魔の背後へと回り込み、動ける適度に回復したが、残り魔力の少ないソートは細くなった聖剣のみを構え凶魔の側面へと回り込んだ。


「遅えっ! いつも言うだろが、遅えことは誰でもできるとなっ!」


 悪態をつくガラルドだが、その口元はにやりと弧を描いていた。


「くっくっくっ。(やっと俺の番だぜ)いいか、こいつは硬ぇから、俺が関節を狙う。お前たちは援護しろっ!」


「ああ」

「はいっ」


「くくく、先ずは、散々俺を苦しめた、お前の手脚を切り落としてやるぜ」


『ギギッ……ニク……ダベル……』


 そこから防戦一方だったガラルドの形勢が逆転した。


 いくら悪魔格五位だと言っても、狂気に侵され大振りで単調な攻撃しかしてこない悪魔など、油断さえしなければガラルドの相手ではなかった。


 さらにそこへ――


「ソートっ!」


 血相を変えて駆け込んできたラグナとラーズによって勝ちが確定したのだった。


「良かった無事だったか」


 ガラルドに向けられた鉤爪の一本を、華麗に弾くソートの姿を見て、安堵の表情を浮かべたラグナとラーズが口を揃えて声をかける。


「ガラルド、アクス! お前たち、いつこの部屋に?」

「全く気づかないかったぞ」


「あ、はい。どうもこの安全部屋は、入ることだけできる入り口が無数にあるようです。俺たちは、たまたまあの辺りから入ってきました」


「ほう」


 アクスから答えを聞いた直後、ラグナが別の位置に視線を移した。


「なるほどな」


 その先には、ちょうど安全部屋へと入ってきたセイルたち四人の姿があった。


「セイル様!」


 セイルたちが部屋の中に完全に入ってしまうとそこは何もないただの壁に変わっていた。


 ――――

 ――


「(な、なんでだ! 人族が増えていやがる)」


 この安全部屋へ案内したのはもちろんコツンだった。コツンはヤブキリを完全にとは言えないが、一応支配していた。

 そのため、おおよその位置を理解し、途中で見つけた通路からこの部屋へと、最短で戻って来たのだった。


 すでに、規格外の人族がいることが分かっていたコツンは、あわよくばヤブキリをいけ好かないセイルたちや、規格外にぶつけ、自分はその隙に地上へと逃げる、そう予定を変更したばかりだったのだ。


「(な、なんてことだ)」


 すでに、ほかに支配した悪魔族は倒され残っていないことまで理解していたコツンは、この場をどう切り抜けようか必死に考えた。


 コツンの憑依した人族はすでに生き絶えているため、触れられるだけでバレてしまうのだ。いつまでもコソコソしている訳にもいかないのだ。


 だが、予想に反してコツンとともにいた人族のひとりもまた、規格外だったらしく――


「皆さんと合流できて何よりです。私もお手伝いいたします」


「せ、セイル様、危険です」


「私のことよりも、アンとアルがいません。急ぎますよ」


「!? はっ」


 そう口にして、周りの人族と連携して動き出すかと思いきや、ひとりヤブキリに向かって歩き始めると、ヤブキリの胴体をあっさりと真っ二つにしてしまったのだ。


「なっ!(な、なんでだよ……あんな優男まで……!?)」


 これは、いよいよ覚悟を決めるしかない、そう思い至った時――


「わー、さすがセイル様」


「ああ、ラグナ隊長もやっぱり凄え!」


 隣に、緊張のかけらもない若い男女の二人がいることを思い出し、こいつらは明らかに弱そうだと思った。


「(そうか!?)」


 そして、今なら規格外の奴らは二つに別れてもなお、暴れ回るヤブキリに留めを刺そうと夢中でこちらの動きを見ていない。


 それから、この状況から逃げ出そうと必死なコツンの行動は早かった。


「(せっかく感情値が溜まっていて、砕くに惜しいが、これも俺様が逃げるためだ)」


 コツンは回収していた黒水晶を全て砕き、その破片を邪気で部屋中の上空に舞い上げ部屋中にばら撒き始めた。


 悪魔でも触れているだけで普通に狂わせるほど強力な黒水晶。


 それが、生身の人族ならばどうだ。


 コツンにも想像がつかないが、耐性の弱い人族ならば、自我なんてすぐにふっ飛んでしまうだろう。


「(……狂気に呑まれてしまえばいい)」


 上空に舞い上げる時に多めに吸い込んだらしい男女の二人は、すぐに、頭を抑えて座り込んだ。


「か、カイト、頭が……割れそう」


「ぐぅ……さ、サラもなの。お、俺も……だ」


「(よし)」


 幸いコツンが憑依した人族はすでに生き絶えているため、黒水晶の影響を受ける心配はなかった。


「(……い、いまだ!)」


 俺様はそれから走ってその部屋を出た。


「お前なあ……そんなことをしてきたのか?」


『そうっす。俺様にも破片がかかってしまってヤバかったけど、俺様は主のおかげ助かったっす。

 それで……ヤブキリの奴は、パスが切れているからもうやられちゃってるっすけど……

 人族の方は、黒水晶の破片を吸い込んでいるはずだから正気なんて保っていれるはずないっす。狂って殺し合っているかもしれないっすよ』


 ――なるほど、それでグウが人族の様子が変だと言ったのか……


「はあ、お前、なんて面倒なことを……」


 俺は、楽しげに笑っているコツンの頭を軽く指で弾いた。


『あうっ』

最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^









50万文字突破記念に、クローたちの妄想画でも描いてみようかな、と思ったりしてます。^ ^

うまく描けたら挿入するかもしれません。

挿入されなかったら、忘れてください(¬_¬)

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