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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
悪くない? 支配地編(仮)
96/114

閑話〜配下たちの近況〜

ブックマーク、評価ありがとうございますm(_ _)m

嬉しいです^ ^


今回は閑話ですが、

本編も近いうちに更新します。


 ニワが迷宮魔法を使い、クローを転移したあとのことだった。


 みなの表情は、誰もがついて行きたかったという様子で、名残惜しそうな表情を浮かべていた。


 そんな中、エントランス内に明るい声が響き渡る。


「どーれ。ワシはそろそろ迷宮に帰るのじゃ。迷犬チロも待っておるしの」


 用はすんだとばかりに満面の笑みを浮かべて立ち上がったニワだったが、気づかぬニワの口の周りには、おヒゲのように、たくさんのきな粉がついている。


 しかも、ハの迷宮に帰ったら帰ったで、お利口にして待っている迷犬チロによって顔中を舐めまわされ、叱りつけることが日常的になっているニワでは、この事実に気づくことなど永遠にない。


「ん? またくるカナ」


「うむ……あー、ぅ……すまぬのじゃ。皆も、そうもの哀しそうな顔をせずとも、クローなら大丈夫じゃ! すぐに用を済ませて何食わぬ顔で帰ってくるのじゃ!」


 少し躊躇しながらも、ちっぱい胸を大きく張ってそんなことを言うニワの言葉にはなんの根拠もなく、皆には、それが気休めだと分かっているが、主を思う皆は、その心づかいを素直に受け取り笑顔で返した。


「……では、ニワ様こちらへ」


 その後は、セラバスが恭しく礼をとり、帰りのゲートへと案内したが、もちろんニワの両手には、たくさんのお土産(おかし)が抱えられ、軽やかな足取りで帰っていった。


「さぁーて、あたいは……っと、そっか。セリスは寝ているんだったな。じゃあ、あたいも風呂に入って一眠りでもするか」


 すっくと立ち上がったライコは、背伸びをしながら部屋に戻っていくと――


「ボクは帳簿でもつけるカナ。どんどん増えるから楽しみカナ」


 マゼルカナも続いて管理室へと戻っていった。


「さて、私も執務室に戻りますので、あなたたちも仕事に戻りなさい」


「わかったがう」

「がぅ」


 ニコとミコに指示をするセラバスに――


「ちょっと待ってセラバス」


 ソファーに腰掛けていたナナは慌てて立ち上がると、ずいっとセラバスに詰め寄った。


「ナナ様、どうかなされましたか?」


「あたし、クローさまと伴侶契約したんだよね」


 ナナがにこりと可愛らしい笑みを浮かべた。


「はい。存じてますが、それが何か?」


 セラバスの単調な返事に不安を露わにしたナナは、ぷくっと頬を膨らませた。


「むぅ、あたしとクローさまはこれから三日に一度は眷族作りに励むの。ちゃんと覚えておいて」


「初耳です」


 クローの使用空間を管理するセラバスは、当然に屋敷内のことはすべて把握している。ナナが伴侶契約した事実も、その時のやり取りも――


 そのため、さりげなく一日短く言ってくるナナの戯言を、なんとなく面白くないと感じたセラバスはさらっと受け流すこと徹することした。


「そうがう。初耳がう。クロー……さまはニコの番いがう」


「それも違うがぅ。クロー……さまはミコの番いがぅ」


「ちょっ、邪魔しな……あーそうだった。あなたたちに、よくもあたしたちを騙していたわねニコ、ミコ。シュラル様に聞いたんだから」


「違う任務がう」


「そうがぅ」


「はぁ。ナナ様にはもう少し考えてから発言してもらわないと困りますね」


 そう言ったセラバスが一度ゆっくりと首を振ると――


「イオナ様、ライコ様、ティア様、隠れていないで、出てきなさい」


「へ?」


 セラバスが何を言っているのか理解が追いつかないうちに――


「ははは、やっぱり分かっちまったか」


「おもしろそ〜なこと話しているな〜と、思ったのよねぇ〜」


「す、すみません」


 ライコが頭を掻きながら姿をみせたかと思えば、ティアが眠そうな瞳を擦りながら暗闇からのっそりと姿を現し、イオナが俯き肩を落としたままの状態で、ナナたちの目の前に忽然と姿を見せひざまづいた。


 ――――

 ――


 不本意ながら、これまでの経緯を掻い摘んで話したセラバスだったが、これから負うかもしれないリスクのことを思えば、憂鬱で仕方ない。


「……」


「じゃあなんだ、人界で飼っている子狼がニコスケ、ミココロってことなのか?」


「ニコがう」

「ミコがぅ」


「私は、シルバーデビルファング族なんて聞いたこともありませんでした」


「それはそうでしょう。手元に置けるかどうかは別として、上級悪魔にのみ、その存在が伝えられているのですから。

 本来ならば、こうやって姿を見せていること事態が有り得ないのです」


 一度大きく息を吐き出したセラバスは、ライコとイオナ、ティアの順に鋭く真剣な眼差しを向けた。


「みなさん、いいですか。ニコとミコはシュラル様の特殊悪魔です。

 クロー様の足を引っ張りたくなければ他言無用ですよ」


「シュラルさま、許可してくれたがう」

「がぅ。優秀な番い見つけるも任務の一つがぅ。クロー……さまなら問題ない、許可もらったがぅ」


「えっ! ちょ、ちょっとシュラルさまがそんなこと言ったの?」


「そうがう」


「優秀な番いの種、一族の繁栄のためになるがぅ。主の許可があれば誰でもいいがぅが、ミコはクロー……さまに決めたがぅ」


「ニコもがう」


 そんなメイドの格好をしたチンチクリン悪魔は、互いに額を押しつけて力くらべみたいなことを始めたが、そこにセラバスの両手が伸びると二人の頭を鷲掴みした。


「はい。そこまでです」


「……がう」

「……がぅ」


「そ、そうよ。二人とも何言っているの。クローさまはあたしと伴侶契約したんだもん。三日に一度だけど眷族はあたしがいっぱい作ってあげるんだから。あなたたちの出番なんてないよ」


「三日に一度……とはなんですか?」


 首を傾げるイオナたちにナナは満面の笑みを浮かべた。


「クローさまは妻たちが、って何かと逃げるから、あたし、エリザたちにはちゃんと許可もらったんだよね。人族のエリザたちでは眷族は作れないけど、悪魔には裏切らない眷族が必要なのってね。だから、眷族はあたしがいっぱい作ってあげるってね」


「ナナ様。ナナ様は、クロー様と人族のような行為はせずとも、互いの血と魔力を悪魔球に込めればいいはずですが」


 セラバスがどこからか取り出したピンポン玉サイズの球体をナナへと見せた。

 その球体は黒い渦が渦巻いており、まるで小さなブラックホールのような見た目をしている。


「んー、でもクローさまと出会った当初に、クロー様言ってたんだよね。

 妻との触れ合いは大事なことで自分も癒されるって。だからあたしもそうしたいんだもん。クローさまいい匂いするし……くふふ」


「ああ、たしかにクロー様はいい匂いがするな。そうか……ふーん。クロー様と人族の行為には、そんな意味があったのか……あたいもやってやろうかな」


「え!?」


 ライコが「クロー様ってほんと変わっているな」とナナの隣でぼそりと呟くと、みなの視線が一斉にライコへと向く。


「ん? あ、いや、クロー様には色々と恩だけが溜まっていくんだよ。あたいだってたまには返してやりたいと思ったっていいだろう?

 あーあ、そんなことくらいでクロー様のためになるんだって分かっていたらもっと早くに癒してやれたのに……」


「え、ええ! 伴侶契約したあ、あたしだけでいいよ……あたしがみんなの分まで癒しといてあげるから」


「でもなぁ。あーそうか。あたいもなんだかクロー様の身体に触ってみたいのか……」


「だ、ダメだよ」


 だんだんと涙目になるナナの目に、なおも残酷な光景が目に入る。


「それなら私もかな〜なんだか楽しそう〜ふふふ」

「……も、もちろん私も、よろこ……ん、んん、微力ながらお手伝いさせていただきます」


 それは、はーいと大きく手を挙げるティアに、顔を背けてはいるが、手はしっかりと挙げているイオナがいたからだ。


「て、ティアは人族と楽しみながら、たっぷりしているでしょ?」


不安そうに尋ねるナナにティアが笑みを浮かべて返す。


「ふふふ、そう思う〜?」


「違うのか?」


「残念〜。正解は〜夢の中だけでした〜。私、実際に人族に触れたことなんて一度もないんでぇす〜。触れたくありません〜人族は夢とは思ってないだろうけど〜」


「ウソよ」


眷族を作る以前に、クローに触れて欲しくないナナは、セラバスさえ言い含めれば大丈夫だ。あとはうまくいくとはずと思い、信じて疑いもしていなかったナナは、思わぬ伏兵たちの予想以上に早い参戦に狼狽していた。


「はい、みなさん。クロー様がいないところで、これ以上話し合っても無意味です。

 今回のことは私の方からクロー様にご報告しておきます。もちろんニコとミコの件も含めてです」


「いいがう」

「がぅ」


「あいよ」

「は〜い」

「はい」

「むう、分かったよ」


 みんなが返事をして部屋と戻って行く中、このままでは四日に一度どころの話ではないと内心焦るナナは、神妙な面持ちで自分の部屋へと戻っていった。


「さすがクロー様です」


 皆から崇拝されるとは当然だと思うセラバスは、そんなことをぼそりと呟きつつも、一度自分の個室に戻り、あるものに視線を向けた。


「ああ、クロー様」


 それはクローそっくりの等身大の人形だった。もちろん、なんでも完璧にこなすセラバス手製の人形で、その精度は高い。


「こうしてあげれば、あなた様は癒されるのですか?」


 セラバスは、執事服へと注いでいた魔力供給をやめ、全裸になるとクロー等身大の人形へと抱きついた。


「はぁ、クロー様……不覚です。私はあなた様を知った気でいましたが、まだまだ理解が足りていなかったようです。お許しください。

 まさか、人族との行為に、感情値のためだけではなく、あなた様ご自身への癒しも兼ねていたのですね……はぁ……」


 たまに脱ぎ捨ててあるクローの服を着せているそのクロー人形にはクローの匂いがたっぷり染み込んでいた。


「悪魔神様。私は、クロー様の専属悪魔です。ですが。なぜ眷族は作って差し上げれないのでしょうか?」


【悪魔神より特別に眷族を作ることが認められた】


「な、なんと……悪魔神様が……お認めになられた」


 涙目流して喜びを露わにするセラバスは、その想いをぶつけるように等身大のクロー人形にぐっと抱きついた。


その背景には面白いと、笑い転げる悪魔神の姿があるのだが、そんなこと知るはずもないセラバスはただただ許可をくれた悪魔神に感謝の念を送った。


「クロー様、クロー様。私はあなたのものです。身も心もすべてあなたのもの」


 そして、クローの知らぬところで、配下たちの想いは思った以上に重いものになっていた。


 ――――

 ――


「うおっ!」


『クロー、どうした?』


「グウ。すまんすまん。急に寒気がしたんだ」


『んー、迷宮内温度……良好。気のせい』


「あ、ああ……そうだよな」


最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^

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