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更新遅くてすみませんm(_ _)m
パキンッ!
『さてグウ。次はどっちだ』
俺は転がっている黒い水晶をぐりぐりと踏み砕きつつ、次に向かう目標の位置を尋ねた。
『そのまま真っ直ぐ。突き当たり左』
『了解』
相変わらず不機嫌そうなグウの声に案内され、次の悪魔くずれを捉えた。グウが言うに、今は地下十五階層の位置にいるそうだ。
これは気づかない間に三階層も登ったことなる。かなりいいペースじゃないだろうか。
「あいつだな……」
悪魔くずれは、ほんとくずれだけあって俺の気配に全く反応しない、が今回の奴は違った。
昆虫みたいな悪魔くずれが俺ではなく、俺の担いでいる女聖騎士に反応しその視線を女聖騎士にロックさせたようだ。
「ほう」
口元からは絶えず、粘り気のありそうなよだれが垂れ流しになっている。
これは思考能力の低下した悪魔くずれに見られる現象で、この状態になったらいくら格の高い悪魔だったとしても単調で直接的な攻撃しかして来ない。
「ふん。汚い奴だ。そんな、物欲しそうに見てもダメだ。あげないぜ」
ふふふ、俺だって楽しみにしてるんだよ。女聖騎士のトラップ。
セリスとの交渉で、女聖騎士の手の内は分かってる。次に聖騎士トラップを仕掛けられたとしても驚きはしない。
ふふふ、俺に二度も同じトラップが効くなんて思うなよ。
ギェェェッ!!
「おっと、お前、煩いな」
悪魔くずれから単調に繰り出された右鉤爪を軽く躱し、その手首を掴み握り潰す。
バキッ!
ギィィィヒィーッ!!
そして、右腕の痛みで下げた悪魔くずれの頭に手を伸ばす。
単純だが、これがなかなか効率がいい。
「煩い。ほら、大人しく頭を出せ」
後もう少しで悪魔くずれの頭を掴むというところで……
「う、ううん……」
「おわっ、急にっ! 動くと、危ないだろ」
肩に担いでいた女聖騎士がもぞもぞと身じろぎした。その間悪魔くずれは体勢を整え、両鉤爪を突き出してきた。
「くっ!!」
危うく、バランスを崩し、がむしゃらに繰り出してきた悪魔くずれの潰れた右鉤爪と左鉤爪が聖騎士に当たりそうになり、焦ってしまったが、俺の右手は悪魔くずれの頭をしっかりと捉えた。
「やっと掴まえた」
「みんな〜ごめん。私気を失って……た……え?」
メリメリッ!
ピギャャャャ!!
「気がついたか……すぐ終わるから少し待て」
俺に頭を掴まれジタバタ暴れている悪魔くずれの頭に指をめり込ませ、更にガッチリ掴み固定すると、女聖騎士にそう声をかけてやった。
――邪魔でもされたら面倒だからな。
「え? ぅそ……なんで、ぁ、ぁぁ、あくま……悪魔!? ぃぃぃ……は、はなせ、離してよ」
「おわっ、ちょっ、こら。動くな!」
暴れ出した女聖騎士に尻尾を巻きつけ身動きできないように固定すると、掴んでいた悪魔くずれの頭を力任せに地に叩きつけ圧縮させた魔力を内側から爆発させた。
パンッ!!
小さな風船が破裂するような音が迷宮内に響く。そして地にはまたしても大きな陥没を作った。
『……』
「……き、凶魔が……い、一撃……ぃぃぃ……」
女聖騎士の悲鳴に似た呟きが背後から聞こえてくるが、それよりも今は先にやることがある。
俺は慣れた手つき、じゃなく足つきで転がっている黒い水晶まで歩み寄り踏み砕いた。
パキンッ!
黒い煙が霧散し、破片が迷宮へと吸収されていく。
「これでいい」
先ほどまで背後で暴れていた女聖騎士がウソのように大人しくなっている。
ま、そうは言っても尻尾でしっかりと固定し宙に浮かせているので、女聖騎士程度がいくら力を入れて暴れようが、力なく項垂れようが何も変わらないんだけど……
「さあて」
これでゆっくり話ができそうだと思い俺は、背後にいる聖騎士の方へ振り返って、驚いた。
「ひぃぃぃぃ……」
顔面蒼白の女聖騎士が女とは思えないほど可愛くない悲鳴を上げて……
「おい」
呼びかけても肩をビクつかせぶつぶつと呟くだけでこちらを見ようともしない。
「ごめんなさい、ごめんなさい。食べないでください。私はおいしくないです。おいしくないんですよ〜」
「おいって」
「ひぃぃぃ、ごめんない、ごめんなさい」
――これは、もしかして、怯えてる? この俺に?
召喚当時、ただの貴族令嬢にすぎなかったエリザでさえも俺を見て怯えることがなかったというのに……
――信じられん。
多少姿が変わったと言っても、元々地味だった俺は、身長が少し伸びて、人相が少し悪くなって、強制的に上半身裸されて、黒くて大きくなった翼を広げたところで……
「おい、こっちを見ろ」
試しにそう呼びかけ、じろりと女聖騎士を睨んでみる。
「!?」
ちらりと一瞥した女聖騎士の顔色が青から白へとみるみる変わり、身体をブルブル震わせている。
「ひぃぃぃ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「……」
やはり俺に怯えている。そんなに変わっていないはずなんだけど、こうも怯えられると……
――ふふ……ふふふ、ちょっと嬉しいかも。ふふふ、そうか、俺が怖いのか……ふふ、ふふふ。
おっと、いかんいかん、初めて怯えられたのが嬉しくて、つい口元が緩んでしまう。
せっかく怯えられて気分がいいが、このままってわけにのもいかないよな。
「おい、おま……ぁ」
俺の尻尾で固定され後方で宙ぶらりんにしていた女聖騎士は、俺の睨みがそうとう効いたらしく……
「ごめ……な……さい、ゆるして……ください、どうか、食べないで……ください、おねがい……しま、す」
ぐすっ、ぐすっと鼻を垂れ泣きじゃくりながら……失禁していた。
ポタポタと水滴が滴れている。
「お前……」
「ちが……ちがう」
女聖騎士は俺が何を言いたいのか分かったらしいが、その言葉とは裏腹に、さらにポタポタと垂れる水滴の量が増している。
「ちがう……こんな……つもりじゃ」
そして認めたくない女聖騎士はぶんぶんと首を振る。それはもう必死に。羞恥と恐怖、少し女聖騎士が可愛そうになってきた。
「……ぅ、ぅぅ……」
――やりすぎたか……
俺はゆっくりと女聖騎士を地面に降ろしてやった。
「……な、なに、私をどうする気」
――……
正直、女聖騎士が一人でいた理由もグウに聞いて知っているし、俺は女聖騎士の方から交渉を持ちかけてくると思っていたんだが……
――むむ……恐ろしすぎてそれどころじゃない?
俺はいつの間にか、思案の渦に飲み込まれ、しかめっ面になっていたようだ……
「ご、ご、ご、ごめんなさい! 生意気いいました」
俺の機嫌を損ねたとでも思ったのか、女聖騎士が両手と額を地面につけながら再び謝り始めた。
とても女聖騎士の方から交渉したいと言ってきそうにない。
「ごめんなさい、ごめんなさい。何度だって謝ります。どうかお怒りをお納めください。そして許してください。できれば食べないでください。お願いします」
とても聖騎士とは思えない言動に少し呆れてしまうが、それでも本人は真剣なようだ。
「はぁ……喰わねえよ。あのな、俺を悪魔くずれと一緒にするな」
「……あくまくずれ?」
俺の喰わない、と言う言葉にすぐに反応してみせた女聖騎士は、がばっと頭を上げ俺の姿をじーっと眺め始めた。
「悪魔くずれは、お前たち教団が呼ぶ凶魔のことだ。今始末した奴らのことを、お前たちは凶魔って呼んでるんだろ?」
「う、うん」
あれだけ取り乱していた姿がウソのように落ち着きをみせている。
実力は別として、さすが聖騎士になっただけのことはある。失禁して、何事もなかったかのように振る舞うその態度。なかなか真似できないわ。
「あ、貴方は凶魔じゃないの?」
「違う。あんな悪魔くずれと一緒にするな」
「そうなんだ。あービビって損した。それで貴方は強いようだけど何者なの」
女聖騎士が立ち上がりながらそんなことを言う。俺は耳を疑った。空いた口が塞がらない、という言葉をどこかで聞いたことがある。
俺が凶魔じゃないというだけでこうも態度が変わるなんて……
もしかして悪魔を舐めてる? いや、やっぱり俺に迫力がないから舐められた?
「お前聖騎士だろう、見て分からないのか?」
俺は気分が悪くなり女聖騎士を睨みつけた。
「ぇぇ……」
女聖騎士がビクリッと肩を震わせ一歩後ずさりした。
「俺は悪魔だよ」
「……ぁ、あく、ま?」
女聖騎士が何度も悪魔と口ずさむ。まるで記憶にある何かを思い出そうとしているかのように……
「っ!?」
そして何か思い出したらしい女聖騎士の顔色は、みるみる悪くなっていった。
「え、だって、聞いてないよそんなの、ごめんなさいゆるして。だって私見習いだもん。本物の悪魔だって見たことないんです」
鼻垂れ初めた女聖騎士の態度には呆れるが、俺はそれを聞いて納得した。
――見習いだったのか……
「私孤児で、でも運よく聖騎士になれたから、これからはお腹いっぱい食べれると思っていたのに……私が食べられるなんて……いやだよ。お願いですゆるしてください。食べないでください」
――また、こいつは……なるほどね孤児だったか、変に図太いと感じたのはそのせいか……ふむ。
「はぁ、だから喰わないって言っただろうが。俺は悪魔だが、人族の血肉に興味なんてないんだよ」
「……ほんと?」
「ああ、俺はお前が倒れていたから連れてきてやっただけだ」
――まあ、その原因をつくったのも俺だけど……
「俺は聖騎士たちの気配くらい分かる。どうする。対価を払えばお前の隊長の所までは連れて行ってやるが」
悪魔くずれを、処分しながらになるけどな、と続ければ見習い女聖騎士が、俺を探るようにじっーっと眺めている。
「まあ、いやなら別に……」
見習いだけあって、この女聖騎士の実力では、到底地上にたどり着くのは難しいと分かってて言う俺って卑怯だと思うだろう、けど、だって、ねぇ……
俺は女聖騎士の輝く胸部に視線を向けた。
「待って。そ、その対価って何、ですか。はっ!? もしかして私の純潔……」
「ちが」
「でも、命には変えられない、よね……純潔ていどですむなら……安いもんよ。うん、安い。いいわ。私の純潔……貴方にあげる」
しばらく一人で考えていた見習い女聖騎士は、あっさりと純潔を捧げると言い出して俺の方が逆に戸惑ってしまった。
――なんと、俺はおっぱいをと思っていたのに、この女の純潔を俺が……僥倖。じゃなくて俺を籠絡する気だな……け、けしからんな。いいだろう返り討ちにしてや……
ムラムラと俺の胸の奥に荒ぶる何かが昂ぶっていくと思いきや……
ふと、遠い遠い記憶の中で浮気に悲しむ肉親らしき女性が悲しむ姿が頭をよぎっていき、続けてエリザに、マリー、セリスと続く。さらにはナナやセラ、マゼルカナ、イオナに、ライコ、ティアと続き、ニコ、ミコ、ニワの顔まで……俺って……
昂ぶっていた気持ちがしんなりと下降していく。
「あー待て。誰がお前の純潔など……いるか」
「ええ、だって私の身体を舐めるように見てたし、今だって泣きそうな顔をしているようだけど……」
「うっ。そんなことはない。あ、あいにく、俺には愛する妻がいるんだ。だからおっぱいを揉ませてもらうだけで勘弁してやる」
「へ? つま? 貴方に?」
見習い女聖騎士が目をパチクリしている。そんな姿をる見ると年相応に少し幼く見えてしまう。でも……
――いいんだ。女聖騎士のおっぱい事情だけは堪能してやるんだ。
「そうだ。妻がいるから、おっぱいだけで勘弁してやる」
「妻……愛する妻がいるのに?」
「そうだ」
「それって、おっぱいもだめなんじゃ……」
「おっぱいはいいんだ。俺にとっての癒しだ。無理ならお前はここに残していく」
「待って、待って。おっけ。おっけいよ。私のおっぱい揉ませてあげる。だから置いてかないで……」
「ふっ、いいだろう契約成立だな。お前は責任持って聖騎士の隊長の所まで連れていってやる」
「……お願いします」
そう言った女聖騎士は不思議そうにじーっと俺の姿を眺め、歩き出した俺の後ろをついてきた。
「っと、忘れてたわ。ほらよ」
俺は身体半分を後ろに向け、後をついてきていた見習い女聖騎士にクリーン魔法をかけてやった。
「お前漏らして、少し臭って……」
「ああ―何も聞こえなーい。聞こえないもん」
「お前、ほんといい性格してるわ」
「聞こえなーい」
最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^
話が進まなくてすみません。次回こそは。
18歳以上のもう少し刺激のほしい紳士の皆さまへ。
ミッドナイトノベルズに息抜きとして書いている作品があるのですが気づけば十万文字になりました。
ミッドナイトノベルズで息抜き? と思うかもしれませんが、色々なジャンルに挑戦したくて書いています。
でも、面白いかどうかは別です(¬_¬)
ただR18でエロ要素があります。
仮に変態紳士さんにクラスアップされても
責任がとれません。すみません。
それでも読んでみようかなと思ってくださった
心優しく寛大な紳士さま、ありがとうございますm(_ _)m
あ、でも合わなかったらすぐにやめてください。
異世界は思ったりより優しい?
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