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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
悪くない? 支配地編(仮)
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ブックマーク、評価、誤字脱字報告ありがとうございます。


更新遅くなりましてすみません。

「はい、さような、らっ!!」


 俺は素早く悪魔くずれの背後に回り込みと、その頭を掴み、力任せに地に叩きつけ圧縮させた魔力を内側から爆発させた。


 パンッ!!


 小さな風船が破裂する程度の音に反して迷宮の地には大きな陥没を作っていた。


「こんなもんか……」


 たぶん、悪魔くずれは俺に気づくことも、何が起こったのかさえも理解しないまま消滅し黒い水晶を残した。


『ぁぁ……また……陥没……』


 代わりにグウから何やら声が漏れてきたような気がしたが、所々途切れてよく聞き取れない。


「おっと、忘れないうちに、こいつは潰しとかないとな」


 その黒い水晶を、俺は靴の踵を使いグリグリと踏み潰し細かく砕いた。すると水晶から黒い煙が上がり霧散した。


「よし」


 こうなってしまえば、その場に残る砕け散った水晶の破片も迷宮に吸収されるから心配ない。


 この水晶、はじめこそドロップアイテムだろうか? と何の気なしに拾い、痛い目にあった俺は、その後は一つ残らず踏み潰している。


「ほんと、厄介なもんを持ち込みやがって……」


 この黒い水晶はマズかった。正式には、この黒い水晶が悪魔神の言っていた邪魔水晶だったのだ。


 何がマズイかと言うと、触れるだけで邪な感情が沸き起こり自分じゃない自分が俺を呑みこもうとしてきたんだ。


 さすがに、この程度では自分の意思さえ強く持っていれば、完全に呑み込まれることはないが、あの時、グウが念話してこなかったら解くのに、もう少し時間がかかっていただろうことは分かる。


『グウ、俺の感覚ではこの二十階層の悪魔くずれは処理したと思うが、どうだ?』


『うん。大丈夫』


『じゃあ、十九階層に向かうから、ナビ……案内してくれ』


『うん』


 このドの迷宮内の壁は、ゴツゴツした岩肌がむき出しになっており、まるで洞穴の中を進んでいるような迷宮だった。


 構造も非常に複雑で迷路のようになっている。しかも、この迷宮、階段がなく緩やかな斜面や起伏があり自分が何階層にいるのかさえ判断がつない。


 自力で攻略しようものなら、どれ程の時間を要するのやら……


 ――ニワの迷宮だってここまで複雑に……あー、そうか。俺、ニワの迷路は途中までしか攻略してないんだっけ。


 ただ、有り難いことに、このドの迷宮の最下層は地下二十五階層とわりと浅い。ニワの迷宮なんて地下八十二階層まであるらしいからな。


 もし、この迷路が百階層あるなんてことになっていたら……俺は泣いていた、嘘だけど……


 でも、なんでだろうか、迷宮に来るとつい、妻たちが恋しくなる。

 狭い通路を歩いているから心細いのか……いやいやまさか、ね……


 ――しかーし……


「あ〜、広い、広すぎるわ。グウも、よくこんな広い迷宮を作ったな」


『むふふ……』


 グウの笑う声が漏れてきた。ニワもそうだが、グウも褒められると嬉しいらしい。


 ――素直ではないけど……


 はぁ……グウに不純物ポイントが残っていれば、通路をちょちょいといじってもらって、悪魔くずれへのルートを作ってもらうんだけど……はぁ……


 グウの迷宮が、俺の支配下にあれば不純物を目一杯出してやるんだけど……


 ニワの迷友だから大丈夫、だとはいかないんだよな……相手はこの迷宮を支配する主。その不純物ポイントの能力がどれ程のものなのか俺には全く検討もつかないからだ。


 配下を持つ身としては、完全に信用するわけにはいかない。


 それに異形な姿に変貌しているとはいえ今駆除しているのも悪魔だが、俺自身も悪魔だ。

 これだけの損害だ、悪魔に対しての恨みだって相当あると思う。


『そこ右に進む。そこから地下十九階層になる』


 グウの声が心なしか高くなっていて、少しおかしく思う。


『分かった。でも、ほんとグウの案内は的確で助かるよ』


『ふふ……こんなの序の口』


 またもや、グウの愉快そうな声が聞こえてくる。もしかしたらニワのハニワ姿の時のように仰け反って身体全体が斜めに傾いているかもしれない。


 ――ぷっ!


 想像したら笑いがこみ上がってきたが、今は笑うわけにはいかない。もし、機嫌損ねて、案内はもうしないと言われでもしたら俺が困る……


 まあ、俺にはナビ魔法があるけど……疲れるからパス。


『まだまっすぐでいいんだよな?』


『うん』


 十九階層に入ってもしばらく進んでいるが、全く代わり映えしない光景が広がっているが、すぐに二体の悪魔くずれの気配を感じた。


『近くに……悪魔くずれが二体いるな、どっちだ?』


『どっちでも大丈夫……けど、右からの方が背後をつける』


『了解』


 グウに案内され、もうすぐ悪魔くずれのいる場所にたどり着くというところで、急に聖騎士の気配が現れた。


「ん?」


 ――悪魔くずれの気配の中に聖騎士の気配が急に……どういうことだ?


 その気配は一人だけだった。しかも、その気配は聖騎士にしては少し貧相に感じる。とてもその聖騎士が、悪魔くずれをどうにかできるようには思えない。


『グウ。聖騎士の気配が急に現れたが、なんでか分かるか?』


『うん。聖騎士たちのうち、その人族が転移トラップ踏んだ』


『転移トラップ? トラップは全部解除したんじゃないのか?』


『した。でも迷宮の魔物を逃すのに転移トラップだけは残してた』


『じゃあ、その聖騎士……人族たちはバラバラになったのか?』


『うん。みんなバラバラ』


 ――地上の方から片付けてもらってたし、少しは楽できると思ってたんだけどな……


『そうか……』


 グウは迷宮の魔物の避難の妨げになり悪魔くずれに効かなかった罠トラップはすべて解除したが転移トラップはそのままにしていたそうだ。


 どちらにしても、悪魔くずれは駆除対象なわけだし、転移してきた聖騎士では悪魔くずれを倒せそうにない。


 ――どんな奴なの見てみるか……


 悪魔くずれと聖騎士の方向へ近づくに連れ、聖騎士の悲鳴にも似た甲高い声と悪魔くずれの奇声とも取れる雄叫びのような声が大きく聞こえてきた。


 ――いた!


「く、来るなっ、来るなよ!!」


 ガァア!

 ガルル!


 その聖騎士はショートカットの可愛らしい感じの女聖騎士だったが、身を小さくし聖盾だけを前面に構え悪魔くずれの攻撃を必死に防いでいた。


「た、隊長!! セイル様! みんな!!」


 ――ふむ。ん??


 ギガァァァ!!

 ギガァァァ!


「きゃぁ……」


 二体の悪魔くずれには知性のかけらも感じられず、醜くよだれを滴らせ血肉を求めている。


 血走った目は目ん玉が飛び出そうなくらい見開き、力任せにガンガン殴りつけていた。


 グガァァァ!!

 グガァァァ!!


「いや、いやぁぁ!! 来るな。来ないで!!」


 ――こいつは、たまげた。


 一方の女聖騎士は腰が引け、短絡的な行動をとっている悪魔くずれの攻撃が、たまたま当たりどころがよく、ほとんど運だけでやり過ごしている感じに見えた。


 ちょっとでも当たりどころが悪ければ、すぐにバランスを崩し聖盾は破られてしまうだろう。そんな紙一重の状況だった。


「来ないで、来ないで、来ないでよぉ!! た、隊長! だ、だれか、た、助けて……」


 ――泣いてるし、ほんとうに訓練を受けてきたのかこの女聖騎士は、まるで素人だ、ぞ? ……ん? 女聖騎士……女聖騎士……?? 女性聖騎士……あ!


 ふと、契約した頃のセリスのおっぱいを見た衝撃と言葉、女性聖騎士たちのおっぱい事情を思い出した。


 ――『女性聖騎士の鎧下は皆こんなモノ……こんなモノ……こんなモノ……こんなモノ……』


「……」


 ――け、けしからん……実に、けしからん……


「おい、そこの聖騎士、助けてほしければ俺と……!?」


「だれっ! ……きゃ!!」


 ――あ!


 なんてことだ。間の悪いことに、俺が声をかけ女聖騎士がこちらに振り向いた際、突き出していた聖盾に悪魔くずれの長い爪が少しかかった。


 だったそれだけで、女聖騎士は盾ごと吹き飛ばされ、全身を飛び出ていた大岩に叩きつけられた。


 ゲガァァァ!

 ゲガァァァ!!


「ちっ……」


 頭を激しく打ったのか、女聖騎士はピクリとも動かず、その聖騎士に向かって奇声を上げた悪魔くずれが牙を向けた、が……


「……汚い牙を向けるな!!」


 その牙が女聖騎士に向くことはなかった。


 なぜなら俺の両腕が悪魔くずれの頭を掴んでいたからだ。


 ゴガアァァァ!

 ゴバッ!


 俺はいつもと同じように、掴んだ二体の頭を力任せに地に叩きつけ圧縮させた魔力を内側から爆発させた。


 パ、パンッ!!


 小さな風船が連続して破裂する程度の音の後には、大きな陥没が二つできていた。


『ぁ……グウの迷宮が……』


 またしてもグウが何やらぶつぶつ呟き始めたが、今は気を失っている女聖騎士が先だ。


「おい、起きろ」


 回復魔法をかけてやり、ぺちぺちと頬を軽く叩いてみるが一向に起きる気配がない。それどころか息が荒く苦しそうにしている。


 ――どういうことだ? 息はある、ケガもない……と言うことは……魔力枯渇か?


 スキャンして確認すると、名前はアン、年齢15歳。状態が魔力枯渇となっていた。


 ――えらく若そうだと思ったが15歳……ですか。


 どうやら、この女聖騎士は限界以上に魔力を消費していたようだ。

 魔力枯渇は魔力譲渡してやるか、しばらく安静にしていれば回復する。


 ただ、今回の相手は若いとはいえ聖騎士だ。魔力譲渡までしてやる義理はない。かといって、気を失っている少女をこの場に置き去りも人としてどうかと思う。人じゃないけど……


 結果、俺が肩に担いで連れて行くことにした。


「よっと……ん? 軽いな……」


 決して、鎧を着てて残念だとか、鎧下のおっぱい事情が知りたいなぁとか思ったわけじゃない。


 ほら俺の感覚では15歳ってまだ学生で子どもだし、しかも、俺が声をかけて振り向かせたせいで気絶させてしまったわけだ。まあ、そんなところだ。


 だから、むさ苦しい悪魔くずれの顔に飽き飽きしてきたとか、そろそろ癒しが欲しいなぁとか思ったわけじゃないんだ。


 言い訳じみた自問自答を繰り返していると立ち直ったらしいグウの声が聞こえてきた。


『そこ、右曲がってまっすぐ行ったところ。一体いる』


『了解』


 心なしかその声のトーンが少し低い。何かあったのだろうか……ラットに確認してみるも、何も変わりないと返事がきた。


 俺はその一体を同じように手早く処理した。するとグウのトーンがまた下がった。


『グウ大丈夫か?』


『……大丈夫』


 俺の知らないところで悪魔くずれが良からぬことでも始めたのだろうか……

 俺は少し処理ペースを上げた。

最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^




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