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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
なんてこったの支配地編
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ブックマーク、評価、誤字脱字報告ありがとうございます。


更新遅くなりました。

すみません。

「はあ、まさか配属悪魔の僕が進化してクロー様の専属悪魔になるなんて思いもしなかったカナ」


 我が身に起こった予想外のできごとのはずだが、どこか他人事のようにカナポンはぼーっと己の身に浮き上がったナンバー960を眺めていた。


「むぅ……専属悪魔なんて初めて聞くカナよ……」


「ふふふ。私も同じくクロー様の専属悪魔へと進化いたしましたが……喜ばしいことではありませんか」


 セラバスは己の身に浮かび上がったナンバー960を誇らしげに眺め口角を僅かに上げた。


「で、でもなぁ……」


 どこか少し不服そうにするカナポンにゆっくりと近づいたセラバスが、その耳元で小さく呟いた。


「クロー様に仕えている方があなたのためだと思いますよ……」


 何やら考えだし、すぐに返事をしないカナポンに、セラバスは急かすことなくその答えを待った。それは数秒程度のものだったのだが、しばらく考えたカナポンはゆっくりと口を開いた。


「……よく分からないカナ……」


「分かりませんか……」


「……管理悪魔は、その立場からも主と必要以上に仲良くしてはいけないカナ。

 だから誰かにずっと仕えていくという感覚がないカナよ」


「なるほど。そうでしたね」


「そうカナよ」


「でも、良かったではありませんか。これでほかの管理悪魔に大好きな和菓子を取られる心配はないのですから」


 カナポンの瞳がみるみる開いていく。


「和菓子……たしかに……そうカナね……むふふ、僕のお菓子……」


 先ほどまでの口を尖らせ不服そうにしていたカナポンはどこいったのやら。

 再び甘い甘〜い和菓子を思い出したカナポンはふへへと少しよだれを垂らし慌てて袖で拭っていた。


「セラバス……」


 ナナが、どこか雰囲気の変わったセラバスとカナポンに戸惑いの表情を向けていると、それを察したセラバスが向き直った。


「カナポンは言わなくてももう解ってますよね? では次はナナ様の番です」


「はいはい……魔水晶を守ればいいカナね」


 解ってますよ、と言わんばかりにカナポンは右手をひらひらさせた。


「はい。解っていればよろしい」


 はいはいっと右手を何度も挙げたナナが不思議そうな顔をセラバスとカナポンに向けた。


「ねぇねぇセラバス。あたしの番ってことだけど、あたし……何がなんだか分からないよ? この人数で魔水晶をどうやって守るの?」


「ふふふ、ナナ様。管理悪魔族はただ感情値を管理しているだけの悪魔というわけではなく、支配地の核である魔水晶を守っている悪魔でもあるのです」


「ふーん、ん?」


 まだ理解できないナナは、首を傾げてカナポンを不思議そうに眺めた。


「そんな悪魔が魔水晶を守る手段を、何一つ持ち合わせていないとお思いですか?」


「何かあるの?」


「ふっふっふっふ……ナナ様。僕たち管理悪魔族を舐めてもらっちゃ困るカナよ。

 僕たちは魔水晶の周囲のみで展開できる完全無欠の結界、主はついで感情値のために舞う狸舞い、略して〈どんぶり感情(主舞狸感情)〉が使えるカナよ」


 えっへんと鼻を高くしたカナポンのシッポがゆらゆると揺れた。


「な〜んだカナポン。そんな便利な結界があるんだったら、最初から教えてよね。

 あたし、魔水晶を地中深くに埋めて幻術魔法を全力でかけちゃおう、って思ってたんだよ。えへへ」


 少し自信なさげだったナナの顔がパーっと明るくなった。


「ナナ様。なかなか面白い発想ですが、それは無理ですよ」


「どうして?」


「魔水晶は動かせないのです」


「あちゃー、そうだったんだ」


「はい」


「あ、でも……セラバスどうするカナ? どんぶり感情結界は魔力の消費が激しいカナよ。

 二十四時間なんてとてもじゃないけど持たないと思うカナ」


 両手の指を折りながら少し考えていたカナポンがそう言った。


「それはもちろん考えていますよ。ではナナ様。早速、主代行として配下のみなさまを第8位悪魔に昇格させてください」


「みんなを昇格って……え? セラバス何を言ってるの? 昇格なんてそんな簡単にしていいの……?」


「冗談で言っているのではありません。みなさまの保有する魔力量を増やしカナポンへの手助けをしてもらうつもりなのです」


「ん〜? そんなこと無理だよね。悪魔同士は魔力同調できないと反発しちゃうもん」


 ナナが首を振ると、周りで待機しているイオナたちも頷きナナの主張を肯定した。


「はい。ですから、みなさまは昇格時にそのスキルを取得するできるように強く望んでください。

 仮にうまくいかなくても、幸いみなさまにはクロー様からいただいた装備品があります」


「ああ」


「それには魔力同調の効果が付与されてましたよね? 効率は少し悪くなりますが、それを利用すれば問題ありません」


「たしかに……クロー様にいただいた装備品を媒体にすれば……できそうですね」


 イオナたちが感心したようにクローにもらった装備品を眺めた。


「ナナ様。これはクロー様のためでもあるのですからご安心を……」


「そうなんだ。クローさまも感情値は使っていいって言ってたもんね……うん。あたしやるよ」


 ナナたちは魔水晶のある管理室までいくと、セラバス、カナポンの立会いのもと第8位悪魔への昇格手続きを済ませた。


「これで……よしっと。ふふふ。これであたしも第8位悪魔になっちゃったよ……ふふ」


「わ、私なんかが、第8位悪魔……よかったのでしょうか……」


「す、すげぇ。あたい確実に強くなってる……これなら……」


「昇格したら〜、もっと眠くなったのよね〜」


 余韻? に浸る四人に向かってセラバスがコホンっと咳払いをした。


「では、ここは戦場になりますので、必要な物は各自で人界の方に移しといてください」


「は〜い」



 ――――

 ――



「なるほど。悪戯はマゼルカナが魔水晶の周囲に張った結界の中でやり過ごして勝利したってわけだな」


「はい。少々感情値を消費することになりましたが、無事に勝利いたしました」


「ああ。みんなが無事なら気にすることないさっと、その前に……」


『我は所望する』


 壊れた屋敷を所望魔法で綺麗さっぱりと復元した。さすがにボロボロにやられたままの屋敷ってのは気分が悪いからな。

 何の気なしにやったことだが――


 みんなから「おお〜」と感嘆の声が起こり少し気分が良くなったせいなのか、それとも気づかないうちにみんなのおっぱいに癒されていたせいなのか、カタカタ暴れていた黒い衝動も大人しくなっていた。


「ふむ」


 ――本来ならば屋敷の復元に必要な感情値も必要ないし、迷宮を支配地に置けたってのも大きいな。


 思い出したら心にもゆとりが戻ってきた。


「でも、あの時のカマンティスの顔ときたら……ぷくく、思い出しただけでも笑いがでるカナ。くふふ」


 すっぽんぽんのマゼルカナがなにやら思い出したらしく、全身を震わせながら転げている。

 お菓子を持って転げまわるのでお菓子のクズが床にポロポロと落ちていく。


 あとで掃除するのが嫌なのか、ニコとミコが早速お菓子のクズを拾いに行って……セラに捕まった。

 なにやらボソボソ話した後すぐに解放されたようだが、心なしかしょんぼりと肩を落としている。


 ――おっと、そんなことより……


「マゼルカナ? 悪戯だったんだよな? そんなに笑うような出来事があったのか?」


 ――悪戯は危なかったんだろ?


 首を傾げマゼルカナを眺めているとナナの楽しそうな声が聞こえてきた。


「ひたすら無視して女子会をしたんだよ。それに交代でお昼寝もした(むにゅ)」


 起き上がれるようになったらしいナナは、ここぞとばかりに「つかまえた〜」と言う明るい声とともに俺の腕に絡みついてきた。


「はあ?」


 ――お前たちは悪戯をしていたんだろ?


 俺の右腕は柔らかな感触に包まれたが、先ほどのナナの放った言葉の方が気になりそれどころではない。


「女子会、昼寝って、ナナ!? くっついてないでちゃんと説明しろよ」


「えへへ、すんすん。クローさまの匂いだ(むにゅん)」


 ――こ、こいつ。


 ナナが少し合わなかっただけで纏わりつきぐりぐりすんすんと顔を右腕に擦りつけてくる。


「クロー様……私も今回の悪戯には少々腹が立っております。

 そこで挑発の意味合いを兼ねて、ひたすらナナ様がおっしゃる女子会とやらを実行して無視をするという手段をとってみたのです。

 まあ、ハデな厚化粧の上からでも分かるほど、顔を真っ赤に染めたカマンティスが「キーッ、出てきなさいよっ、出てこいコラァっ!」と張り上げる野太いダミ声には、さすがに不愉快になりましたがね……」


「ん?? 危なかったのに挑発?」


「はい」


 セラは俺の質問ににこりと笑みを浮かべて答えてくれた。


「そ、そうか……」


 ――セラはたしか……どうせメンツを潰されたカマンティスはなりふりなど構っていられず大悪戯を申し込んでくると言っていたのはこのことが理由か? 女子会をして挑発したから……


「ぷくく、終いにはクロー様の屋敷に当たり散らしたカナ。駆け寄ってきた配下にも殴る蹴る……可哀想にだったカナねぇ、あちらの配下さんアザだらけになってたカナよ……もぐもぐ」


 ――メンツですか……


 再びお菓子を頬張り始めたマゼルカナはキレイな正座をして食べているが、やっぱり服は着ていない。


 ――ふむ。しかしなぜだ……聞けば聞くほど怒っていた自分がバカらしく思えてきた……

 これはもう……目の前にあるおっぱいたちを見て楽しめってことか? 


 目の前では誰かしらのおっぱいがぷるんぷるんと元気に揺れている。


 ――……うむ。そうに違いない。


 ボーッとおっぱいを見て寛ぎ朗らかな気分を味わっていると、セラが身ぶり手ぶりで楽しげに俺に語りかけているのが視界の隅に入った。


 ――はて?


「……それで、私とマゼルカナは専属悪魔になりクロー様の配下になったとはいえ、クロー様の支配地から離れますと力が少々落ちてしまいます。

 ならば今度はクロー様がいる時にもう一度こちらに足を運んでもらった方が都合がいいですよね。

 なにせクロー様を侮辱されたのですから、それ相応の報いを受けもらいますよ。ふふふ、楽しみですね」


「そ、そうか……」


 ――聞かなきゃよかった。


 セラが肩を震わせ笑みを浮かべたが、残念ながらおっぱいは揺れていない。

 それどころかその笑みを見て背中にへんな汗が流れるのを感じた。


 すると誰かが俺の背中をちょんちょんと触れてきたので顔を向けて見るとすぐ傍にライコがいた。


 ――ん? ライコ。


「クロー様、セラバスって怒らせると怖いんだぞ……何せ、相手を油断させつつ気づかれないように、一人ずつ第4位悪魔を簡単に狩っていったんだぜ……終わった時には、相手悪魔の半数以上が戦闘不能になっていて、さすがのあたいもビビっちまっただぜ」


 魔力保有量が一番低いためなのか、すでに立ち上がっていたライコは俺の耳元で小さく囁いた。


「ほう。じゃあなんだ。時間さえあればセラは一人で……(むにゅ)」


「しーっ。クロー様、声がでかい」


 ライコが慌てて俺の口を塞いだ。その際、柔らかなライコのおっぱいを背中に感じたが、それも一瞬のことでぎこちなくゆっくりと離れていったライコは――


「ふふふ。ライコ様はクロー様に何をお伝えしたのですかね、詳しく教えていただきたいものですが……」


「あ、あたいは……何も知らないよー」


 鳴らない口笛をヒューヒューと吹きつつ、復元してキレイになったソファーへ腰掛けた。


 ほかのみんなも、そんなやり取りをしている間に、立ち上がり背伸びをしている。大中小のおっぱいたちが元気に弾んでいる。


「おい。まだ無理して起きなくてもいいんだぞ」


「いえ。みんなも軽く魔力枯渇をしていただけですのでもう大丈夫です。ご心配おかけしてすみません」


「そうか……それならいいんだがって、あれ? そういえば、なんでエリザたちまでここに? 避難はしなかったのか?」


 いつもみんなと一緒にいるから疑問に思わなかったが、よく考えたら人族であるエリザたちに悪戯は関係ない話だ……特にエリザとマリーは魔力すらないし。


 そう思い至った俺は、同じく背伸びをしていた妻たちを不思議に思い尋ねてみた。


「はい。悪魔同士の悪戯は人族であるエリザ様たちには関係のないことでしたので、人界の方に避難するよう促したのですが……」


「主殿の支配地なのだ。我々も助力するのは当然だろう」


 セリスがゆっくりと俺の側まで歩み寄り、その後ろをエリザ、マリーとつづいてくる。


「幸い、エリザ様たちは魔力を保有しておりましたので、そのご厚意に甘えさせていただきました」


「そうなの。せっかく授かった魔力だもの、私たちもクローの役に立ちたかったの」


「うん」


 エリザとマリーの二人はお腹に手を当ててにこりと微笑んだ。


「え? お腹のそこは、授かった……って魔力……んん?」


 色々ありすぎてすぐに状況を理解できない俺が首を捻っていると――


「エリザ殿とマリー殿も魔法が使えるようになったようなのです」


 セリスが一番分かりやすい言葉で教えてくれた。


「へ? ……魔法!? ああ魔法か」


「ふふふ」

「あははは」


 エリザとマリーから笑い声が聞こえてきた。


「クローの戸惑った顔、久しぶりに見たわ……ふふ」


「うん、何と勘違いしたんだろうね……」


「……いや、まあ」


 ――おかしいと思ったが、二人がお腹を押さえているから……ったく。


「しかし、二人が魔法をね……」


 セリスが言うには夜の営みがその原因だろうとのことだった。

 セリス自身も魔力が増えているのを感じていたのでもしやと思い確認したのだと教えてくれた。


 ただ使える魔法というのが特殊な固有魔法らしく俺に確認してほしいのだと言う。


 そしてデビルスキャンの結果、セリスを含む妻たち三人に同じ固有魔法が発現していた。


 それは960魔法(クロまほう)って言うんだが、魔法名からして間違いなく俺のせいだ。


 魔法名を理解するとそれからは早いもので、すぐ、魔法を発動できるようなり、ぷかぷか浮かぶ魔法の球体を二つ出現させることができていた。


 使い慣れると色々できそうな感じがするが、今はそのままぶつけるだけしかできないようだ。



 ――――

 ――



 後日、妻たちは毎日のように魔法の球体を楽しそうに操っているのだが――


 ――あれって……おっぱい?


 そう見えてしまう俺にはまだまだ癒しが足りないようだ。


最後まで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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