閑話〜妻との日常マリー〜
興味のない方は申し訳ありませんがスルーして下さいm(__)m
「おっはよう〜」
今日のマリーは朝からテンションが高い。
「おう」
いつものように挨拶の抱擁をすると、マリーが俺の顔を見上げながら笑みを浮かべた。
「クロー、行くよ〜」
「ん? マリーだけか?」
「そうだよ。今日はわたしだけ」
どうも妻たちには俺の知らないところで暗黙のルールというものが存在するようなのだ。
「そうか……」
そう言って俺はマリーを抱擁したまま人界にある家に転移した。
「よし、着いたぞ」
今日はマリーから食事にいこうと誘われていた。
まさかそれが二人で行くことになるとは思っていなかったが、妻に誘われるってのもこれはこれで嬉しいものだ。
「早いね……」
マリーは転移が終えたのを確認すると、ルンルンと楽しそうに抱擁している俺の腕をするりと抜け出し、自分の腕を絡めてくる。
「(むにゅん)」
マリーは勢いあまっておっぱいを当てているがたぶん本人にその自覚はない。
「今日は何を食べようかな〜」
誰だって食べ物のことを考えて嬉しそうに頭を揺らしているマリーの姿を見ていればわかるってもんだ。まあ、そんな食欲に忠実なマリーも可愛くていいんだよな。
「なんでもいいぞ……」
――ん? おお!?
今更ながら俺は視線を落としマリーの服装に目を向けた。
今日のマリーはいつものスリット入りの長めのワンピースではなく、珍しく少し胸元の開いたノースリーブっぽい上着にふわっとしたミニスカート。
全体的に露出多目だが、可愛らしい雰囲気に仕上げているようだ。
――ふむ。
どうも妻たちの間では、今ミニスカートが流行っているように感じる。
俺的にはいつも長くてキレイな妻たちの足を眺めることができているので文句なんてないが、義理堅い俺はその分を夜の営みで返してやっている。
そんなことを考えた俺がいけなかったのか、日中は固く蓋をして胸の奥にしまっているムラムラ欲求が解放しろと俺に訴えてくる。
「なぁ、マリー。行こうと思ったがこのまま夜の営みモードってのもありか?」
「……な、何でですか……」
「マリーを俺が味わうんだ……」
今度は俺が絡めた腕をするりと抜き、再びマリーをむきゅっと抱きしめる。
ついでに首元にも息を吹きかけてやる。
「はぅ……そ、それはダメです、よ……みんながいるときで……わたしはクローとご飯を……」
顔を真っ赤に染めたマリーは、口ではそう言ってはいるが俺の背中に回した腕が離さないよ、とばかりにぎゅっと抱きしめ返してくる。
「ほら、マリーだってその気に……」
そんな時だった。
――ん?
ガチャリと家の扉が開き――
「がう」
「がぅ」
外から入ってきたチビスケとチビコロが俺とマリーの間に潜り込んで邪魔をしてきた。
「こ、こらチビスケ……チビコロやめろ。やめるんだ」
さらに図々しくも、チビスケとチビコロは俺の両肩まで登ってくると俺の顔をペロペロと舐め始めた。
「く、はは……ははは……やめ……やめろ……ははは」
俺はこそばゆくてマリーに抱きついていられなくなり、マリーの背中に回していた腕を離し、チビスケとチビコロの首根っこを掴み持ち上げた。
チビスケとチビコロは悪びれることをなくぷらーんとぶら下がっている。
「お前たちは……いつもいいところで邪魔をする」
俺がぷらぷら揺らしても逃げる素振りを見せない子狼は力を抜いたままぷらぷら揺れている。
「がう」
「ぅ」
気の抜けた姿を晒しぷらぷら揺れているチビスケとチビコロのせいで俺のムラムラ欲求は、いつの間にか胸の奥へと帰ってしまった。
「ったく……」
「ごめんねクロー……夜の営みはやっぱり夜がいいよ」
申し訳なさそうに謝るマリーも少し残念そうにしていたので、そこまで悪い気もしないが、やはり妻たちの間には俺の知らない暗黙のルールというものが存在しているようだ。
――――
――
「こら、お前たちは帰れ」
「がう」
「がぅ」
「あははは……」
その後、なぜかついてくるようになったチビスケとチビコロのせいで美味しい店での食事は取りやめ急遽、露店巡りに変更することになった。
この世界の露店に美味しいイメージがない俺としては正直面白くない。
面白くはないが――
「チビスケちゃんとチビコロちゃんは何が食べたい?」
「がう」
「ぅ」
「ん? 肉がいいのかな……? あはは、わたしと一緒だね」
チビスケとチビコロの前にしゃがんだマリーが、子狼に向かって楽しそうにそんなことを話している。
でもなマリー、そんなミニスカートでしゃがむと、白い下着が見えているのだよ?
しかもその白い下着――
――ぶふっ、布面積が少ない……これは俺も、まだ見たことない下着だ。
胸の奥にしまっていたムラムラ欲求の蓋が再びカタカタ暴れているのを感じた俺は、気を紛らわせようとマリーに手を伸ばした。
「わぁ……手を繋いで歩くんだね……へへへ」
そんなマリーは何やら勘違いしたらしく嬉しそうに俺の手を握りながら立ち上がり、そのままぶんぶんと大きく手を振り歩き始めた。
「クローいこう。チビスケちゃんとチビコロは肉がいいんだって」
「マリーもだろう?」
「えへへ」
――――
――
今、俺の手には何の肉か分からない串焼きがある。しかも、ビッグサイズを二本。
食べようとするたびに、いつかの獣臭のする肉の味を思い出しなかなか口元へと運ぶことができないでいる。
チビスケとチビコロはしっぽを振りながらビックサイズを一本ずつ食べ、となりに座るマリーも口一杯に肉を頬張り幸せそうにしている。
――ふむ。どうしたものか……
俺がそう思い悩んでいると――
「もぐもぐ……ん? クローは食べないの……美味しいよ、はい」
「……うぐっ」
不意をつかれる形になった俺の口にはマリーの食べかけの串焼きが入っていた。
「クローも食べる、ね」
可愛く首を傾げマリーがにまにましている。
――やられた……
俺は仕方なく獣臭を覚悟しつつその串焼きの一片に噛みつきその肉を咀嚼した。
――あれ?
「どお?」
――獣臭臭くない、それどころか……
「うまい……」
「へへへ、そうでしょう。よかった」
マリーは、俺の返事に満足すると、また残りの串焼きにかぶりつき幸せそうにとろけていた。
「ふへへ、おいひぃ」
だがしかし、獣臭いと思っていた串焼きは、実は美味しいということがわかったが、わかったはいいのだが、そんなマリーにどうしてもイタズラがしたくなった。
――……いいこと思いついた。
可愛いやつほどちょっかいを出したくなるってやつだ。俺は子どもか、と思いつつも隣でもしゃもしゃ食べているマリーが可愛く思えてイタズラしたくなった。
――ふふふ……
俺は手に持っていた二本のうちの一本を豪快に食べ終え、残りのもう一本に七味唐辛子をふりかけた。
――この世界に七味唐辛子なんてないもんな……さて、どんな反応があるのかな……ふふふ。
「マリー、これもうまいぞ……」
「え……なに……うぐっ」
マリーに気づかれる前に赤く染まった串焼きをマリーの口に押し込めたのだが……
「もぐもぐ……ごくん」
普通に食べてしまった。
「うわぁ……クローのそれ、ピリッとしてて美味しい、なんで? なんで?」
マリーはよっぽど美味しかったのだろう。興味深そうに俺が手に持っている串焼きを眺めだした。俺もバレないように隠そうとしたのだが、マリーの視線が俺の串焼きを捉えて追尾してくる。
「クロー。それエリザとセリスさんにも食べさせたい」
二人にお土産として買って帰りたいとまで言い始めた。
「実はな……」
仕方なく俺は七味唐辛子を見せてやったのだが、美味しいから大丈夫と笑っていた。
――冗談なのか?
その後も、ハンバーガーっぽいものや、りんご飴っぽいもの、お好み焼きっぽいものを食べ歩いた。
マリーは異性と食べさせ合いっこすることに憧れを持っていたらしく気がすむまで付き合ってやったら、俺の腹がすごいことになった。
「うっぷ」
「あはは……お腹いっぱいになったね」
見ればマリーのお腹もぽっこり子どもみたいに膨れていた。
「そ、そうだな」
「がう」
「ぅ」
チビスケとチビコロもお腹がぱんぱんに膨れ、転がしたらどこまでも転がっていきそうなほどになっていた。
「帰ろうか?」
「うん。あっ、ちょっと待ってね。お土産買ってくる」
――本気だったのか?
そう言ってビッグサイズの串焼きを買ってきたマリーは、その串焼きに七味唐辛子をたっぷり振りかけ真っ赤に染めていた。
――俺は知らんぞ……
――――
――
「ふぅ。食べすぎてもう動けん」
俺が執務室の椅子に腰掛けていると――
「お土産買ってきたよ〜」
「何ですか、それ? 串焼き? ……に似てるわね」
「うむ。真っ赤だが、でもいい匂いだな……」
「すっごく美味しいんだよ……じゅる、串焼き見てたら、また食べたくなっちゃった」
「ま、マリー殿」
「もぐもぐ……うん、やっぱり美味しい!!」
「ちょ、ちょっとマリー。そんなに食べたら私とセリスさんの分がなくなっちゃうわ」
「だって美味しいんだもん」
「せ、セリスさん頂きましょう。このままじゃあマリーに全部食べられちゃうわ」
「うむ、そうだな」
「そんな酷いことしないよ〜はい、二人とも食べて……」
「ありがとう。マリー。いただくわね…………きゃー!! 辛い、辛いわ」
「うむ。マリー殿。ありがとう。私も……ぐわー!! 痛い、痛いぞ、マリー殿!!」
「あははは……ええ、美味しいよ……」
「ああ……マリー、み、水……水を……」
「……む、無念……」
「あははは……二人とも……あははは……大げさだって……あはは、おかしい……演技うまいよ……あははは」
今日も楽しそうな妻たちの笑い声がとなりにある俺の部屋から聞こえてくる。
最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^




