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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
なんてこったの支配地編
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ブックマーク、評価、ご感想、誤字脱字報告ありがとうございます。


励みになってます。

ほうはへ、(そうだぜ、)ふほーはは。(クロー様。)……んぐっ。あたいたちも、どんどん頼ってくれよ」


 ライコが口いっぱいに詰め込んでいた肉を飲み込み、片目を閉じた。つもりだろうが、ライコは首を傾げ両目を閉じていた。


 その仕草が、男勝りな口調に反していて、おかしくもあり可愛く思えたのだが……


「ふっ、あぁ……」


 ――ぶふっ!!


 俺はライコの姿を見て思わず吹き出しそうになった。


「ら、ライコ……今日はいつもと姿が違うようだが……?」


「ん? そうか? セリスと模擬戦をした後はいつもこんな感じだぜ……なぁ、セリス?」


「うっ!? もぐもぐ、っくん……そうだな……」


 その隣に座るセリスが、話を急に振られたため、慌てて口に含んでものを飲み込みそう返事した。


「これは模擬戦で汗一つかかず、涼し気なセリスの姿を見て思いついたんだ。

 へへへ、強さを求める野生の勘ってやつか? ……火照った身体を早く冷ますのにちょうどいいんだ」


「ほ、ほう」


「ふふふふ。クロー様、褒めてくれよ。この姿になったあたいは、バテるまでの時間が長くなるんだぜ。

 だったこれだけなのにさ、体力がアップしたのと変わらない効果を発揮することに気づいたんだ。へへへ。なぁ、セリス?」


「ん? うむ……そうだな」


 セリスが顎に手を置き何やら考えた後、頷いてみせた。


 ――そうか、セリスが言うならほんとうなのだろうな。まだまだ実力じゃセリスの方が上だからな。ふむ。素の力だけで悪魔に勝てるセリスの体力は頼もしい限りだ。


 セリスの体力はそれだけじゃなく、夫婦の営みでもその実力を発揮し、俺の暴走を全て受け止めてくれている。

 おかげでエリザとマリーから度々漏れていた不満の声までなくなった。


 ――ふむ。


「ライコ、良かったな。セリスもありがとな」


「主殿?」


 俺が褒めた意味が分からず、首を傾げるセリスをよそに、ライコは更に自慢気に話を続けた。


「クロー様。これは、あたいたちの種族に、体毛の伸縮が自由にできる能力があったからできたことなんだぜ。あたいたちの種族もなかなかだろ?

 まあ、それでも、こんな使い方があるなんてセリスを見るまで思いつかなかったんだけどな……セリスのおかげだな」


「私は別に何もしていないぞ」


「あははは! 照れるなよ」と豪快に笑ったライコは照れて少し赤くなったセリスの背中を遠慮なくバシバシと叩き、急に立ち上がった。


 ――そういえば……


 妻たち三人が、この屋敷に早くに慣れるきっかけを作ってくれたのもライコのおかげだった。


 ライコらしく模擬戦という形ではあったが、実力を知ることで互いに遠慮がなくなった。


 ――それからか……妻と配下たちとの間に会話が増えてきたのは……ほんとうに、ライコには感謝だな。


「なぁクロー様? どうだ? 似合うだろ?」


 どや顔というのだろうか、腰に手を当てたライコは俺に自慢気な顔を向けた。


「ふむ」


 ――見ろというなら見てやろうではないか……


 俺は改めてライコを眺めた。


 いつもなら全身タイツのような体毛に覆われているライコなのだが、今はつるつるすべすべの人族のような肌を晒している。

 体毛があるのは大事な局部のみ、それも薄っすらと短い。


 そのため、ライコの姿はセリスのビキニ……じゃなく美綺の鎧よりも更に面積の小さい何かしらを、辛うじて身に纏っているように見える。


 ――け、けしからん……けしからんではないか……


「……なぁ……似合わなかったか?」


 俺が何も言わないことに、だんだんと不安になってきたのか、ライコが眉尻を下げそう尋ねてきた。


「いや、すまん。つい……よく似合ってる」


 ――けしからんが……俺が見る分にはいい……ん?


 俺がライコに答えた後、周りにいる皆の目が光ったように感じたが気のせいだろう。


「はぁ、よかった。さっきもこの姿で願い声を処理してきたところだったんだ」


「何? その姿で行ったのか?」


 ――そのけしからん姿を晒したというのか……!?


「ああ。自信はあったからな。思った通り人族は驚いていたし、悪魔としての威厳をたっぷり見せつけてやったぜ。へへへ」




 ―『願い声』ライコの場合―



「クソォォォ! あいつら、俺を騙しやがった。くぅ、俺の……アジトを乗っ取りやがって……クソォォォッ!!!!」


 汚らしい倉庫の中で仰向けに倒れ元盗賊団のリーダーらしい青年が雄叫びをあげていた。

 その青年の顔は腫れ上がり身体中アザだらけだった。


「そうか、そうか。お前も復讐をしたいのだな?」


「ぅぐ、……誰だっ!!」


「ふははは!! あたいは悪魔だ」


「なに!! 悪魔だと……」


 その声に反応した青年は、咄嗟に上体を起こそうとしたが、身体中に痛み走り顔だけしか向けることができなかったが――


「うおっ!?」


 それでも青年は驚いた。


「ははは。そう驚くな人族。あたいはお前の声を聞いてきたのだからな」


 青年が驚き戸惑う様子を見たライコは満足気に口角を上げた。


 だが、実のところ青年はライコが悪魔と言ったから驚いたわけではない。


「……」


 顔を向けた青年のすぐ隣にライコが仁王立ちしている。自信満々に腰を当てて……


 当然ながら青年はライコを下から見上げる形になった。


「……ぁ、ぁあ……」


 青年の見上げたアングルは、それは、それは絶妙で、そこから見て広がる絶景に驚いていたのだ。


 今のライコの姿は、大事な局部のみに、薄っすらと短い体毛があるのみ。


 そのため、青年が見たライコの姿は生地が薄く面積の小さい何かしらを身に纏っているように見え、非常に刺激的だった。


 ただ、タチの悪いことにライコは弱すぎる人族の男には、なんの感情も抱かない。

 ライコにとっては動物に見られているような感覚だった。

 その結果ライコはなかなか動こうともせず、声も上げない青年を見て大いに勘違いした。


「さてはお前……このあたいにビビって起き上がれないな?」


 青年を見下ろしていたライコは気分が良くなり、満面の笑みを浮かべると、前屈みになり青年の顔をじろじろと覗き込んだ。


「おい、何か言ってみろ? んん?」


 ライコのお尻から生えた尻尾がいつも以上にゆらゆら揺れているので相当気分が良いのだろう。


「ぶふっ!」


 そんなライコの姿を見た青年は思わず吹き出した。


 今度は、ライコが前屈みになったことで、形の良いおっぱいが垂れ、青年の目の前でゆらゆらと揺れているのだ。

 青年の鼻息は荒くなり、ボルテージはグングン上がっていく。


「なぁ……お前さぁ、いつまで倒れているつもりなんだ……だらしねぇな?」


「なにっ!!」


 青年はライコに小馬鹿にされたと思ったのだろう。口だけは強がってみせるも、ライコは青年の鼻から流れ出したモノを見て吹き出した。


「ぷっ!! ははは、なんだお前。鼻血が出てるぞ。随分と派手にやられていたんだな、っくははは、情けねぇ……」


「ぐっ、これは……か、関係ぇねぇ」


 青年は顔を真っ赤に染め、すぐに鼻を押さえた。


「それより……お前はなんだ? 何をしにきた?」


 この青年も、悪魔のライコに向かってどっかに行けとは言わない。


 目の前の悪魔は今まで見てきたどの女性よりも容貌が整っている。

 ここまでの美人なら悪魔だろうが何だろうが関係ないと青年は思い始めていた。

 しかもこの悪魔は今、全裸に近い姿をしている。


 青年の心はすでに復讐とは別の欲望の感情に満たされていた。


「あたいはお前の声を聞いてきたとさっきも言っただろう?」


「……」


「お前は(復讐を)今、ヤりたいのだろう?」


「うっ!」


「その顔は図星だな。だがな、見た感じ……お前にはまだ早いそうだ……

 まずは、最後までやりきれるように、あたいがたっぷりシゴいてやる……それから、ゆっくりたっぷりやればいい……どうだ?」


「ほぅ!!」


「そのかわり……お前の、その昂ぶった感情は、たっぷり搾り取らせてもらうからな」


「たっぷりね……くっくっくっ、さすが悪魔は言うことが違う。いいだろう」


 青年は、視線をライコの顔と、目の前にあるおっぱいと、何度も行き来させると、にやにやと口角を上げそう返事した。


 すると、パンッと契約が締結され青年の頭上に小さな魔法陣のようなものが現れてすぐに消えた。


 ライコは無事、契約締結できたことに安堵し、前屈みになっていた姿勢を元に正した。


「うぐっ……」


 青年は、身体は痛むが目の前のご馳走を逃がすわけにはいかないと、ライコを追いかけるように、ゆっくりと上体を起こした。


「おい! 今の言葉、嘘じゃねぇよな?」


「ああ。嘘じゃねぇぞ」


 その返事を聞い青年は満足そうに、ライコの身体を舐めるように眺め、安心したようにニタニタと笑みを浮かべ始めた。


「こりゃあいいぜ。くっくっくっ、たっぷりシゴいてもらおうか?」


「ふふふ、言っとくが、あたいは優しくねぇぞ。そんなのは趣味じゃねぇからな。激しくいくからな……実戦あるのみだ。ほら、まずは、その邪魔な上着を脱ぎな」


「激しく……実戦ね。くっくっくっ、いいねぇ。そうこなくっちゃな」


 青年はそう口にし、上着をガバッと脱ぎ捨てた。


「ん?」


 そこでライコは青年の下半身が異様に盛り上がっていることに気がついた。


「お前……変な性癖してるんだな」


「怖気付いたのか? お前が激しくシゴきたいと言ったからだ。こうなったら俺でも止められんぞ」


「まあ、あたいは人族にどんな性癖があろうが、知ったこっちゃないからな……それじゃあ全開でいくぜ?」


「くっくっくっ、いいぞ。さあ、こいよ」


 青年がそう言ってベルトに手をかけたその時――


 ボゴッ!!!!!


「ぐぇ」


 青年の腹部に激痛が走り、一瞬にして意識を刈り取られ前のめりに倒れた。


「おい。こら。一撃で寝る奴があるか!! こらっ、寝るには早いぞ? おい!!」


 バシッ! バシッ!


 前のめりに倒れた青年を仰向けにしたライコは、青年の頬を軽く叩き、無理やり起こし立ち上がらせる。


「ま、まて……話が……」


「こいつは思った以上に貧弱だな。安心しな、あたいがたっぷり鍛えてやるからな」


「ち、ちが……」


 ボフッ!


「ぐぇっ!」


 そして、青年はまた意識を失う。


 それを何度か繰り返した青年は……


「か……かんべん……して……くれ……」


「はぁ? お前はこの程度でいいのか?」


 倒れボロボロの青年はこくこくと僅かに顔を動かした。


「やりたいのだろ?」


 倒れボロボロの青年は涙を流しこくこくと僅かに顔を動かした。


「うん? どういうことだ……では、シゴきはもういいってことか?」


 倒れボロボロの青年は鼻水と涙を流しこくこくと僅かに顔を動かし、そこでまた意識を失った。


「む? おいっ! こらっ! 話の最中に寝る奴が……」


 青年を叩き起こそうとしたライコの頭に契約履行の囁きが聞こえた。


「なんだ、終わりか……はあ、だらしねぇ。これだから人族の男は……まあ、契約は履行されたんだ、いいだろう」


 その後、ボロボロの青年は昂ぶった感情を取られ、ブラックアウトスキルで記憶を飛ばされた。


 残ったのは身体中に増えたアザと激しい痛みのみ。


 翌朝、身体中に走る激痛で目を覚ました青年は、たまたま見回りにきた衛兵に担がれ、ケガの養生生活が始まった。


 ただし、こちらも根本的には何の解決もしていない。

 そのうちにまた、願い声が聞こえてくることになるだろう。



 ――――

 ――


「そりゃあ、人族も驚いただろうな」


「おお。さすがクロー様だ。よく分かったな。人族の、あの驚いた顔、ぷぷぷ。いや〜面白かったな」


「そうか……まあ、その、なんだ……ほどほどにするんだぞ」


「ああ」


 ライコは嬉しそうに返事すると、俺に向かって可愛く両目を閉じ、椅子に腰掛けた。


 ――ぷっ。


 ライコはウインクしたつもりなのだろうが、やっぱりなっていない。


 ――見てて面白いから、突っ込まないからな……


 俺が必死に笑いを堪えている間に、ライコは残っている目の前の料理を美味しそうに食べ始めていた。


 ――しかし、こうもナナ、ティア、ライコが自信満々にしていると逆に不安になるのは何故だ? 不安? 不安といえば……


 そこで俺はイオナに目を向けた。


「どうかなされましたか? クロー様?」


「イオナは危険を伴う任務を任せているが……大丈夫か?」


「はい、問題ありません」


 イオナは行儀よく食べていた手を止めにこりと笑みを浮かべた。


「そうか……問題なければそれでいいんだ……」


 イオナが少しだけ考える素振りを見せると――


「そういえば、今度の司祭なのですが……」


 思い出したよう首を少し傾げた。


「お? もう、何か面白くなってきたか?」


 あれからイオナには、任務のついでに教会用の寄付金を渡している。

 まだ二回しか実行していないから期待していなかったが、何か面白くなったのだろうか?


「少し肌ツヤが良くなり、聖騎士たちも、巡回に出る回数が少し減ったように感じられます」


「ほほう。それは……」


「なかなか、面白い方向に進んでますね」


 セラも教会の動きに興味があったのだろう。少し楽しげに俺を見ている。


「セラバスさんもそう思われますか。私も少し手応えを感じ始めていたところです」


「ふむ。よし、イオナ! 引き続き頼むな。だが無理はするな、危ない時は遠慮なく逃げるなり、念話なりするんだ」


「はい!! ありがとうございま……」


 感極まったイオナが頭を深く下げ――


 ゴチンッ!

「あぅ」


 テーブルで頭をぶつけた。


 ――不安だ……配下とは、みな、こんなものなのだろうか?


「あ〜、イオナ……は大丈夫そうだな。いいか、これはみんなもだぞ。危ない時は遠慮なく念話をするんだ。分かったな」


「「「「「う〜ぐっ(は〜い)」」」」」


 皆は口いっぱいに食べ物を含んでいたため、何を言っているのか分からない返事ともに手に持っていたフォークを掲げていた。


 俺の不安は募るばかりだった。

最後までお付き合いありがとうございます。


話の展開が遅くてすみませんm(_ _)m

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