表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
何となくハンター編〜悪魔争乱〜
53/114

52

ブックマーク、評価、ご感想、誤字脱字報告ありがとうございます。


いつも励みにしてます。



 ―クルセイド教団、ゲスガス支部―



「私が司教……ですか」


「よかったですね」


 一枚の魔法紙を手にしたセイルがそう口にした。


「よくありませんよ。これで私は激戦区を任されました」


「あの激戦区ですか!? やってくれますね……しかし、それは当然……」


「はい、この支部に所属する聖騎士すべてが対象です。私と共に異動ですよ。ラグナ……すまない」


 眉尻を下げたセイルから顔を背けたラグナは頭を掻いた。


「しかし、いくらこの地の悪魔を一掃できたからといって、ゴーカツィ司祭の率いる実戦経験のない名ばかり聖騎士だけに全てを任せるかね……」



 ――――

 ――



 王城へゲート所在の確認に向かったラグナ率いるAランク聖騎士たちは、予想に反してすんなりと迎え入れられた。


 ラグナは所々にみられる悪魔と交戦した形跡や残骸を理由に多少強引にでも押し入る算段だった。


 拍子抜けではあったが、無駄に時間を浪費することなくラグナは状況確認に移ることができ感謝した。


 その現場では、複数の騎士、侍女、それに悪魔と直接対峙した魔法騎士団から、ゲートが玉座の間に存在し、悪魔の自滅と共に消滅したとの証言を得た。


 その複数の証言には、玉座の間から悪魔が溢れ出してきたとの証言が多く、どこにも矛盾点や、おかしな点がなかった。それによりゲート消滅はほぼ間違いないだろうと判断した。


 このような時にこそ、セリスのスキルがあればとふと頭に過ったが、もう過ぎたことだと頭を振った。


 今回の悪魔騒動では、セイル様の読み通り、欲にまみれた発言力の強い貴族や王族が、そろって悪魔に唆され契約を結んだ挙げ句、亡くなっていた。


 自業自得だった。


 それがいつの時点だったのかは不明だが、悪魔の残骸とまったく同じ状態で見つかったことや、刻印が浮かび上がっていたこともあり、悪魔との繋がりがあったことは間違いないとだけ依頼主の新王に伝えた。


 この国は王族の中で唯一の生き残りであった第三王子ジャナイト・ゲスガスが王座についた。

 ジャナイトは王族にありながら魔力がないと、疎まれ離宮に追いやられていた人物だった。


 歳も若く見えたが、おそらくまだ二十代前半だろう。


 この新王がどう治めるか? このままではまた国が荒れるのでは? と、俺は危惧した。国が荒れるとまた悪魔に付け込まれるからだ。


 だが、ゲスガス小国の王族派も、貴族派も発言力のある人物を失い、比較的温厚かつ冷静な判断ができる者たちがその後を引き継ぐことになるだろうと、まずは国力の回復を優先させるだろうと、新たに就任した宰相が和やかにそう言う。


 これ以上は、俺たちクルセイド教団に足を踏み入れられたくないのだろう。しつこく俺の後ろを宰相がついてきて、事あるごとに口出ししてきた。


 新たなゲスガス王からは傲然たる態度は見られず、むしろ賢明な判断をされたと思う。


 ゲスガス王は俺たちクルセイド教団を利用した。


 この国において、クルセイド教団の発言力が強まり、寄付金も多少なり高く。それでもゲスガス王はクルセイド教団に正式文書で感謝の意を伝えてきた。


 通常ならば国の威厳を保とうと、のらりくらりやり過ごす連中が多い中、権威よりも国民の不安を取り除き、国の混乱を治めることを優先した。


 悪魔が根城にしていた事実と、悪魔討伐が完遂された事実を大々的にクルセイド教団より発してもらうことで、長らく続いた紛争状態からも抜け出したと世に知らしめるつもりなのだろう。


 どちらにしても悪魔の残骸が町中に広がっていたのだ。隠し通せるものではなかった。


 まあ、俺たちにできるのは、これから少しでも国力が回復することを祈るだけだ。


 なんと言っても新たなゲスガス王が教団に感謝の意を示してくれたお陰で、セイル様の孤児院への転属がなくなったのだから……


 ――――

 ――



「ゲートが消滅したのです。一掃されたと判断されたとしても致し方ないでしょう。その聖騎士たちの地位はAランク六名、Bランク六名、Cランク六名です。十分な戦力です」


「使えれば、ですけどね。あいつら親の金で地位を買っているような奴らです。実力はDランク並。せいぜい悪魔が現れないのを祈っとくぜ」


「ラグナ、口を慎みなさい。どこに耳があるか分かりませんよ?」


 そう言ってセイルは部屋のトビラの方へ視線を向けた。

 するとすぐに、コンコンコンとドアを軽くノックする音が響いた。


「セイル様、神父様たちがお帰りになるようです」


 トビラ越しに年若い侍祭の声が聞こえた。


「分かりました。すぐに向かいます」


 結局、セイルたちは、悪魔が自滅してから三日間、聖域魔法陣を展開した。


 聖域魔法陣は都市全体に展開されるため、魔力消費が非常に激しい。

 ラグナ率いるAランク聖騎士たちは悪魔の残骸処理から、状況確認に追われ魔力供給にまで手が回せなかった。


 そんな時、近隣の村や町から神父や、聖騎士が駆けつけてくれたのだ。


 そこに戻ってきたCランク聖騎士たちも加わり魔法陣への魔力供給が滞ることなく事を終えた。


 当然に悪魔からソウルシーズが放たれている気配はなかった。


 セイルは教会の出入口まで急ぐと、その手荷物を持った年配の神父、聖騎士たち数人が待機していた。


「お待たせしてすみません」


 セイルは神父たちに待たせたことを詫びた。


 神父と司祭の地位は同位。ただ司祭には聖騎士団を率いる権限がある。それだけの違いだった。

 神父は主に前線を離れた年配の者が、小さな町や村の教会を任される。場合によっては併設された孤児院の院長を務める神父もいる。


 よって神父たちは皆、セイルより年長者だった。


「いやいや、ワシたちも、任された教会があるのでな、あまり留守にできんのじゃ」


「この度はご助力いただきありがとうございました」


 セイルは神父たちに頭を深く下げて感謝の気持ちを伝えた。


「ほんとじゃよ。ワシは久し振りに搾り取られたワイ、カッカッカ」


「お主はもっと出さんか、たまには搾り出さんと使いモノにならんぞい、わははは」


「ふおっ、ふおっ、ふおっ、ワシは毎日出しとるからな、いつでもたっぷりするする出るワイ、して、セイル殿はちゃんと出しとるのか?」


「は、はあ……」


「セイル殿、あのじじい共はまともに相手せんでもええぞ」


「は、ははは……」


「まぁ、これでしばらく悪魔どもが大人しくなれば良いのじゃがな……」


「はい、そう、願ってます……」


 神父たちは一人一人セイルに挨拶をすると、連れの聖騎士と共に帰路についた。


「セイル様、お疲れのようですが、大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫です」


 ラグナを見たセイルの顔は一瞬にして老け込み頬がこけていた。セイルはふらふらの足取りで教会に戻った。


 それから数日後――


「こちらが主な引き継ぎの内容になります、不明な点が……」


「セイル殿は完璧にしているのだろう?」


 セイルが差し出した紙の束を受け取った恰幅のいい男が椅子の背もたれに寄りかかった。


「は、はあ?」


「そんな心配な顔をせずとも良いぞ、後のことは私に任せるがいい。セイル殿、おいっ!!」


 そう言いつつもその男はセイルから受け取った紙の束を、傍で待機していた侍祭へ乱暴に渡した。


 どうやら仕事は全て連れてきた侍祭に振るだろうことが容易に想像できたが、本日付で出ていくセイルが口出すことができない。


「……では私はこれで失礼します」


「うむ」


 小太りで脂ぎった顔をしたゴーカツィ司祭が着任し、それと入れ替わるように聖騎士を率いたセイルは新天地へと向かった。



 ――――

 ――



 宿に戻った俺は、エリザたち三人の頭を撫でつつ労いの言葉をかけた後、第7位になり支配地を持つことになったことや、イオナ、ライコ、ティアが配下になったことを伝えた。


 エリザたちがシャンプーのいい香りを漂わせていたので、つい頭を撫でてしまったが、セリスまで勢いで撫でてしまった。

 セリスは口元をにまにまするだけで怒ってはいなかったので大丈夫だろう。


「わぁ!! クローさまが、支配地持ちですか!?」


「やっぱり!!」


「おおっ!!」


「そうだと思ったよ〜!」


 悪魔であるナナたちだけがすぐに理解し賑やかに騒ぎ出した。


「ん? 支配地?」


「この方たちが、クローの新しい配下ですか?」


 一方エリザたちは賑やかに騒ぐ三人を見て首を傾げた。


「ああ、支配地に、配下だ。まあ、支配地は俺もまだ、実感がないからよく分からん。配下は後輩が増えたようなもんだろう。近いうちに悪魔界の屋敷に行くことになる」


「へぇ、すごそうだね」


「ええ、なんだか楽しみだわ」


「そうか? エリザとマリーがそういうなら俺も少し楽しみになってきたな」


「クロー様、こちらが?」


 一人落ちつきを取り戻したイオナが俺の傍に寄るとエリザたちを眺めてそう言った。


「ああ、俺の契約者であり、妻たちだ」


「こちらが」


「おお、主殿、それは私も……」


「ん? ああ、勿論セリスも大事な契約者だぞ」


 セリスがなぜかガクリと肩を落とし、それをエリザが慰めている。


「そうだった。まずは、これをナナたちにもやっておく……」


 今回、如何に俺が慢心していたか理解した。


 俺はエリザたちはラットとズックが傍にいたので正直、それほど心配していなかった。

 それに、何かあれば装備品の位置情報からすぐに転移すればいいと思っていたのだ。


 だが、後から聞いたナナたちの話では、偶々いた気配のしない悪魔がいなければ、今頃ほんとうにいなくなっていたかもしれないのだ。


 俺は反省した、反省した結果――


「クローさまがあたしに、えへへ、嬉しいなぁ」


「クロー様が私のために……」


「これって、何だ……力が湧いてくる……」


「わぁ、すごいね〜」


 新しく取得したスキル魔力同調を利用して、エリザたちと同じ付与つき装備品をナナ、イオナ、ライコ、ティアにも渡した。


「うむ。お前たちは配下だからな、ちゃんと身につけておくんだぞ」


「「「「はい」」」」


 そんな時、ある人物から念話が届いた。


『クロー様……』


 その念話では、あと数日で使用空間の準備ができるので、ゲートの位置を決めておくようにと依頼するものだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ