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ヤバそう悪魔は第2形態になるつもりなのか、う○この姿勢をとっている。
「させるかよ……」
俺はう○こ姿勢で力むヤバそうな悪魔の横っ面に向け魔拳を叩き込む。
「ハッハァ!! かかったナ、誰がデビルヒューマン族ごとキニ……」
ヤバそうな悪魔は俺を舐めているのだろう、左手を前に突き出し防いだつもりだが、俺の魔拳はそのまま奴の左手ごと横っ面に叩き込んだ。
バキバキッ!!
「ブベッ!?」
今度は俺がヤバそう悪魔を部屋の壁までぶっ飛ばした。ヤバそう悪魔は壁にぶつかると崩れた残骸に埋まった。
確かな手応えがあった。左手くらいは砕いたはずだ。
「さて、今のうちに……この召喚門を壊すつもりだったんだが、こいつ生きて…………ちっ、効いてないのか?」
「ギギギッ! テメェェ、ブッ殺す!!!!」
瓦礫を吹き飛ばし姿を見せた奴の顔は、怒りで歪み真っ黒だった奴の身体を真っ赤に染め上げていた。
「いや、それは困るな……」
「グギギッ…………フゥ……、いいだロウ。テメェは血肉腫ヲ埋めてこき使うつもりだったガ、挽肉ダ。テメェは、挽肉ニシテ腐らせてヤル」
――血肉腫? こき使う? 傀儡化するってことか……手の内が分からない以上、これ以上長引かせるのは得策ではないな……
「挽肉なら、お前の方がお似合いだ……ぜっ!!」
俺は余裕たっぷりで笑み浮かべている奴に、一瞬にして詰め寄ると顔面に膝蹴りを入れ、そのまま両腕に反り返った奴のデカイ角を抱き込み、顔面に入れた膝を支点に――
ボキッッ!!!!
「………!? グベェ!!」
へし折った。
俺はそのままの勢いで後方へ宙を舞うと、再び奴に向かって地を蹴り、右手の魔拳で心臓の位置を貫いた。
「終わりだ……紫え……」
そのまま奴の身体の中から焼き尽くすつもりだったが――
メリメリッバキッ!!
「ぐあっ!!」
できなかった。奴に右腕を握られ、そのまま握り潰されたのだ。
さらに掴んだ手を離さず俺は身体ごと持ち上げられる。
「うぐっ……!!」
ドゴォォォォン!!!!
「がはっ!!!」
そのまま地に叩きつけられた。爆音と共に俺はクレーターの中に倒れ込んだ。
「ゴホッゴホッ……いってぇ」
――何故、俺には攻撃無効スキルが……っ!?
不穏な気配に俺は再生と、回復魔法を展開しつつ、その場から後方へ跳躍して離れた――
ドゴォォォォン!!
と同時に奴の大剣が俺の倒れていた場所に降ってきた。
「ふぅ、あぶねぇ!!」
「フシュゥ、フシュゥ……テメェ……コロス……」
――ぐっ、なんて頑丈な奴だ。腹心なんて相手するんじゃなかった……最悪じゃねぇか……
ヤバそう悪魔は真っ赤にした全身から湯気を出している。
せっかく、へし折った角と、貫いた胸がすごい勢いで再生され塞がっていく――
「これは予想外だわ……ん?」
すると、今度はヤバそう悪魔が突然震えだし白い泡を口から吹き出し始めた。
「おいおい、気でも狂ったか?」
それに、奴の目がおかしい。
――どこを見てる?
焦点が合っているのかも怪しく、様子を見ていれば、白みがかっていた瞳がみるみる真っ赤に染まっていく。
「コ……コロス……ナニモカモ……ハカイ……シテヤル」
「あいつキレやがったのか?」
元々、大きな気配に包まれていたこの空間内が、ここにきて更に嫌なプレッシャーに包まれていくのを感じた。
「この気配の感じは……!?」
それと同時に――
「ぎぁぁぁぁ!!」
「ぐぇぇぇぇ!!」
部屋の中にある穴の空いたカプセルの中から断末魔の叫びが無数に上がっていく。
――何がどうなっている……
「オマエ……ハカイ……ハカイシテヤル……」
「なっ!? お前、配下に何……っ!?」
――な、なんでだ!! ナナたちの気配がない!! ナナだけじゃねぇ、グラッド、イオナ、ライコ、ティア……それに外に感じていた無数の弱そうな悪魔たちの気配もねぇ!!
「くそぉぉぉ!!!!」
弱い悪魔たちは奴の放ったプレッシャーに押し潰されたのだ。
――バカだ俺は……もっと早く合流しとけば……俺なら危険が減らせると思ったから……それなのに……肝心な時に……
『ナナッ!! おいっナナッ!!!! 返事しろっ!! 返事しろってっ!!!!』
それでも俺は確認せずにはいられなかった。ナナに向け念話を送るが全く繋がる気配がない。
「返事しろぉぉ!!!!!!」
俺はいてもたっても居られず、ナナ達の気配があった位置に向かおうとしたが――
「ドコニ……イク……テメェ……シヌンダ、グヘヘへ……」
奴が、俺の頭を掴みニヤリと口角を上げ、口の端からはヨダレが滴れていた。
――気配がないんだ、本当は……もう分かってるんだ……
「ツブレロ……ツブス……」
――ナナ……
「グへへ……」
怪力で掴まれ引き上げられた俺の身体は軽々と地を離れ、頭からは絶えずメキメキと悲鳴を上げている。
「うる……せぇ……」
――もういいや……
「グヘヘへ」
俺の視界は真っ赤に染まっていく。
「オマエ……ウルセエ……ヨ……」
脱力感と、喪失感に蝕まれていく、もう何もかもがどうでもよくなってきた。
――何も考えたくない……何もしたくない……
「グヘヘ……ツブレロ……ツブレロ……」
――ウルサイ……
「邪魔スンジャネェ……」
俺は無意識に不愉快な存在に手を向けていた。
「……死炎」
「グヘヘ……ツブレ……アア……」
俺の手から禍々しい炎がボトリッと落ちると、不愉快な存在の足下から侵食し始め、それと同時に燃えた先から消滅させていく。
「オレノ……アシ……」
奴が異変に気付き足下を見た時には腹部から下が消滅していた。
「アガ……ガァ、ガァガハッ……」
俺は奴が消滅していく姿を眺めていた。禍々しい炎が揺ら揺ら揺らめいている。
何も感じない。全てを破壊すれば何かを感じることができるのか?
―――――
――――
〈グラッド視点〉
少し時間は遡る。
「休憩終わりっ!! と……そろそろ始めるか?」
「もちろんよ。あたしたちだけ休むわけにはいかないもん」
「しかし、お前の主、疲れ知らずだな……ずっと動いてるぜ」
「えへへ」
「お前を褒めたわけじゃないんだけどな……あれ……今何か……」
銀色の閃光が走ると目の前に、先程のチンチクリン悪魔が二人が目の前に立っていた。
「おわっ!?」
「あなたたち……戻ってきたの?」
「ミコ、やるガウ、時間ないガウ」
「ミコあれ苦手がう。五秒しか使えない……がう……でもやるガウ! むぅ〜むぅ〜影魔法:繰り……この指と〜まれ、ガウ」
チンチクリン悪魔の一人が、急に目の前に現れたかと思うと、ピシッと人差し指を天高く挙げ爪先立ちの姿勢になった。といっても小さな悪魔なので、そのその指はちょうど俺の胸の位置だ。
「何? 何? えっ? あれれ、身体が勝手に……」
チンチクリン悪魔の声に俺たちは急に身体の自由が奪われた。
「俺もだ!! どうなってるんだ!?」
「えっ? えっ??」
気づけば隣にいるナナは、チンチクリン悪魔が高く挙げた人差し指を掴んでいた。
「あたし、どうなってるの?」
「私もです」
「くっ、身体が……」
「あれあれ〜」
次にイオナが戸惑いの表情を浮かべナナの指を握り、ライコ、ティアもそれにつづいた。といっても本人の意思とは関係なく身体が勝手に動いている。
「お、おわわわわ!?」
そして、最後に俺の身体も勝手に動きティアの指を握っていた。
久し振りに女性に触れ思わずにやけそうになる口元を引き締める。
――いかんいかん……
もう、禁固刑はこりごりだ。
――二度と悪魔になんかに、手を出すもんか! ここは、我慢だ。我慢。
全く関係ないことを考えてしまったがこの体勢……
もふさふさもふもふの尻尾が俺の目の前で揺ら揺ら揺れて邪魔をしている。
その為、俺は腕や身体を目一杯伸ばし苦しい体勢で握る形になっていた。
これも俺の意思とは関係なく身体が勝手に……
「お、俺だけ体勢が苦しいんだけど……」
辛うじて口を開いてみたものの……
「尻尾触れる、嫌ガウ」
感情の読み取りにくいチンチクリン悪魔。それなのに今の一言の感情は読み取れた。
俺の脳裏に禁固刑が過ぎる。
「す、すまん」
俺は反射的に謝った。
「わかればいい……ニコ準備してできた、がうよ」
「がう、ミコあとは任せるガウ」
もう一人のニコと呼ばれたチンチクリン悪魔は魔力を練りながらそう答えた。
その声は抑揚がなく感情を読み取りにくいが、少し焦っているようにも感じた……ナナたちもそれを感じたのか事の成り行きを黙って見守っている。
見守っているのだが……
――この体勢はキツイ……
「なあ、俺だけ……」
「うるさいわね、グラッドちょっと黙ってて」
「くっ……」
――くそぉ……
「ガウぅぅ」
やり場のない不満をどう処理しようかと思っていると、魔力を練っていたチンチクリン悪魔は、最後に掴んで一番上になっていた俺の指に軽く跳躍し止まった。
「うおっ!?」
――重くねぇからいいけど……びっくりしたわ……
「がぅぅ隠遁魔法:縄張り」
チンチクリン悪魔ニコが何やら魔法を唱えるとそのニコを、中心に半径1メートルくらいのドーム型の薄い膜のような結界らしきものが俺たちを包み、それに伴い何もかも遮断された気がした。
結界を見て、何故このチンチクリン悪魔の小さな指にみんなが集まっているか理解できた。
この結界、非常に範囲が狭いのだ。現に俺は背中が結界の範囲すれすれで、少しでも体勢を崩せばはみ出してしまう。
「あれ……外の音が聞こえない……それに気配も……」
「なぁ、これって何か意味があるのか?」
「よく周りを見るガウ」
チンチクリン悪魔ニコにそう言われて周りに顔を向けてみると……
「こ、これは!? どういうことだ!!」
今まで、ゲートへと向かっていた悪魔たちが地に落ちていく。しかも落ち方がおかしい。あんな落ち方をすればいくら悪魔でも首の骨が折れてしまう。
――あいつら生きてるのか?
気配を探ろうとしたができなかった。
「なぁ、この結界がなければ俺たちも……?」
「そうガウ」
「こ、怖ぇぇ……」
「ねぇ、クローさま、クローさまは大丈夫なの? さっきから念話送ってるけど送れないの……」
「それはニコのテリトリーに入ってるからガウ……ニコ分かるがう?」
「そうなんだ……それで……クローさまはどうかな?」
「ちょっと待つガウ……むぅぅ、むぅぅ…………だ、大丈夫そうだと思う……ガウ」
「じゃあ……もう出ても」
「まだ、ダメガウ」
「えっ、なんで……」
―――――
――――
「なぁ、いつまでこの体勢なんだ……」
――正直キツイ……体勢もだが、何より、こんなに女が密集している空間に俺がいるってのが、マズイ……
「ちょっと待つガウ……むぅぅ、むぅぅ……がう? もう大丈夫ガウ……縄張り解除ガウ」
それと同時にチンチクリン悪魔ニコは俺の指からくるりと回転して飛び降りた。
「うお!? 気配が、急に……これはクローなのか?」
――なんだ、この馬鹿デカイ気配……
「あれ? おかしいなぁ、クローさまにさっきから念話してるんだけど……反応がないんだよね」
「もっと、強く念じてみろよ!! あぁ、もう、俺も念話する」
俺は不穏な予感にそうしなけばならないような気がした。
「あ〜、あたしが先だよ……」
「では私たちは……できませんでした……」
イオナたち三人はしょんぼりと肩を落とした。
『おい、クロー!』
『クローさま!』
―――――
――――
俺は奴が消滅した跡の何もない空間をボーッと眺めていた。
――虚しい……この空間も破壊してしまおうか。
『お……ロー!』
『……ローさま!』
――……誰だ……うるさい
『おい、……ロー!』
『ク……さま!』
――……嫌な幻聴だ。ほっとけよ。
『おい、こらぁクロー!』
『クローさま、無視ですか……酷いよぉぉ』
――うるさい……
『うるせぇ!! 俺は今そんな気分じゃ……っ!?』
『あ〜!! クローさまから念話っ!! もう、クローさま酷いよ』
『お、お前……ほんとに……ナナ……なのか?』
『俺もいるぞ』
『そうですよ、当たり前です』
『お、俺は気配がないから……てっきり』
『おーい、俺もみんなもいるぞー』
『あれあれ……クローさま、もしかして配下の絆が繋がってるのに心配してくれました?』
『……た』
『ああ!! 分かったよ。あたしが死んだとか思って悲しんだりしちゃいました? えへへ』
『心配した』
『えっ? ええっ!! 何、クローさまもう一回?』
『おーい、俺もみんなもいるぞー』
『おお、グラッドか……お前も無事だったか……ん? みんなの気配もするな……』
『おうよ』
『ねぇ、ねぇ、クローさま、もう一回言って? お願い』
『それより、お前ディディスやったのか? この空間を包んでた奴の気配がなくなったぞ』
『はあ? バカを言え、なんで俺が……腹心は倒したが……ディディスはまだ……』
【廃棄悪魔ディディスより所有感情値1カナ獲た】
『あれ?』
少し長くなったのでキリが良いところで……




