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今回短めですみません
セラバスは朦朧とする意識の中でディディスを眺めた。
「クックク、いいザマダナ」
「……」
私は、忠誠を誓うに相応しい主に仕えたかった。
ゲーゲスは私が仕える二番目の主だった。それ以前の主は第5位まで上り詰めたが別の勢力に吸収されその存在を消された。その時の私は後悔の念に駆られた。もっとうまくやれたのではないかと……
だからこそ、次の主には全身全霊をかけ支えたかった。
だが次の配属先、第7位悪魔ゲーゲスは高位悪魔の顔色、動向を窺うばかりで、周りを見ない、同位悪魔の情報を信じようとしない愚か者だった。
高位悪魔はたかだか一支配圏域しか所有していない第7位悪魔など興味もない、見向きもしていないというのに……
もっと管理悪魔に意見を求めれば簡単に手に入る情報だった……そのための囁きもあったはずなのだ。
高位悪魔になればなるほど面倒事を嫌い、つまらないことには興味を示さない。
それに手を出すにしても程よく勢力圏を広げた第5位以上の悪魔からだと暗黙の了解があった。
相手をするにも脅威とは程遠く適度に楽しめ、自身の勢力を高めるに最も効率的だという発想から自然とそういう流れになっていった……
これには何らかの意思があり、我ら配属悪魔にも課せられた使命があるのだが……今となってはもう後の祭りだ。
私は選択肢を間違えたのだ。
ある日、ゲーゲスにとって不測の事態が起こった。
ゲーゲスはよほど精神的に追い詰められていたのだろう、今まで避けていた私に意見を求めてきた。
いくら愚か者のゲーゲスだろうが、主から意見を求められれば応えねばないのが配属悪魔の使命。
私はゲーゲスの愚策で招いた聖騎士たち、これを利用することを提案した。ゲーゲスは喜色を浮かべ私の提案に乗った。
だが聖騎士を誤魔化すには第10位悪魔ただ一人を差し出したところで納得できるものではないだろうと判断し、ゲーゲス配下の二人を唆し聖騎士へとぶつけた。
ゲーゲスには言わなかったが、これで支配地を守れるのだ、安いものだろう。
配下を失ったゲーゲスがどう動くのか?
我ら配属悪魔をどう扱うのか?
それによっては、愚かなゲーゲスであっても全力で支えようとも考えていた。
だが、ゲーゲスは私が思っている以上に愚か者だった。
何を勘違いしたのか、我ら配属悪魔を駒のように扱おうとし始めたのだ。
しかも第7位では扱いが難しい廃棄悪魔まで利用すると言い出した。捨て駒に使うのだと。名付けも酷いものだった。
私はゲーゲスを見限ることにした。
これを利用し、ゲーゲスの降格を狙う。もちろん私自身の懲罰も覚悟してのものである。
私はまた数百年間、眠ることになるだろう。だが、それでもいい。こんな無能者の配下など御免である。
私はわざとガチャ召喚部屋から離れていた。しばらく離れ何事もなければ次の手を考えれば良いと……
だが事態は思わぬ方向へと進んだ。
ゲーゲスは廃棄ガチャにどれほどの感情値を注いだのか、もしかすると本人はどれほど注いだのかも自覚していないのかも知れない……よりにもよって廃棄悪魔の中でもレッドゾーン。
通常なら排出されることのない悪魔を召喚してしまったのだ。
結果、ゲーゲスは殺された。これは私の失態だ。
私はディディスに仕える振りをしてでも奴を止めねばならない。
慎重にその機会を窺うことにした。
だが、私の考えは甘かった。配属悪魔は私以外全て殺されてしまった。
そして、私も奴に血肉腫を植え付けられた、もう奴に抗うことはできそうにない。
どうにかしようにも頭に激痛が走り、何も考えられない。自分の意思とは関係なく身体が勝手に動く。
そして、私はある部屋に来て理解した。
「さア、セラバス出番ダ、聖騎士どもノせいデ、駒が足りん、聖域魔法陣ヲ破壊スルための駒がナ」
「……」
「クハはハ、何もできマイ。お前タチ、配属悪魔ガ姑息ナ手ヲ使うことハ、知っていタからナ」
ディディスがセラバスを召喚陣に貼り付け愉快そうに口角を上げた。
「まだマダ駒が足りんのダ、お前には廃棄悪魔排出口を開くカギとなってもらウ」
「ぐぁぁぁ!! ぐぐぐっ!」
どうやら、私の考えは始めから読まれていたようだ……そして利用された……
ディディスの手の先に廃棄悪魔を排出するための禍々しいトビラが召喚され、私はそのトビラの一部となった。
どこでその術を身につけたのか……
「クククッ、さア、そノ身をカギとし、そのトビラを開ケ!! 魔力ヲ注ぎつづけるのダ、グハハハハ」
私はディディスの手によって廃棄悪魔排出口のトビラのカギにされた。
私も執事悪魔の端くれ悪あがきだけはしてやろう……意地でも強力な廃棄悪魔は通さん……魔力固定……
「うがぁぁぁぁぁぁぁ!!」
トビラの一部となったセラバスは顔しか出ていない。
全身から魔力が絞り取られる感覚と共にそのトビラがガチャリと開き、それと共に廃棄悪魔のカプセルが転がり出てくる。
いよいよ……か……だが……もう意識を保てそうにない、私は……どうやら……ここまでのようだ……願わくば……私の魔力固定が……尽きる前に……奴を……
「ククク、ちゃんト出るナ。いいネェ」
ディディスは一定の間隔で排出されてくるカプセルに穴を開け血肉腫を植え付けるとカプセルを解放していく。
「チィ! 10位カ……10位ト9位程度の力しか持タないザコばかりだナ…………マアいい、聖域魔法陣サエ破壊スレバ、マタ感情値が集まル、俺の糧ニシテヤルゼ、ククク」
―――――
――――
「ム!? ネズミメ……」
小さな気配に血肉腫を植え付けた悪魔共を操り差し向ける。
「無能ドモめ、何ヲやっているんダ!!」
しばらく服従させた廃棄悪魔共に任せていたが、いっこうにその気配を仕留めることができない。
それどころか、俺の城砦を破壊して回る破壊音が段々と大きくなる。
「舐メやがっテ……」
ディディスは廃棄悪魔たちに植え付けた血肉腫を使い、俺の意思を遂行するためだけの狂化をさせた。
「フン! 役に立たンザコはどんどん突っ込めバいい」
それでもその小さな気配を殺すことができず、更に城砦は破壊され続けている。
「クズどもガァァア!!」
どうにか、部屋にある調度品を破壊することで気持ちを鎮めるとその、気配がこちらに向かってくる。
ドォォォーン!!
「やべっ! 弱っちい気配がどんどん増えているおかしな所があったから、ちょっと覗こうと寄ってみたが壊しすぎたわ……えっ? 気配がなかった奴がいる……デケェ……」
事もあろうか、その小さな気配はこの俺のいる召喚の間の壁をぶち抜き乱入してきた。
「オマエは!! デビルヒューマン族じゃねぇカ……ちょこまか逃げ回っていたノハそのためか…………舐めやがっテ、ぶっ殺ス!!!!」
ディディスは廃棄悪魔の排出をセラバスに植え付けた血肉腫で操作し止めるとデビルヒューマン族を殴りつける、が躱された。
「テェメェ!!」
「お、お前、気配といい、大層な見た目だな……もしかしてディディスじゃねぇだろうな?」
「舐めやがってェェ!! デビルヒューマン族ごときがぁぁァァ!! ディディスダァ? ディディス様とヨベ!!」
――――
――
デカくてヤバそうな悪魔が雄叫びを上げ武器を具現化させた。
その武器は俺の背を優に超える真っ黒で歪な大剣だ。その大剣を振り回して突っ込んできた。
――ふむ。ディディス様……ってことは、こいつディディスの配下か? それも腹心クラスの……
見た目、悪鬼の頭領って感じで、ヤバそうだったから確認したんだが、相当ご立腹みたいだ。
主をバカにされたと勘違いしたらしい。
「あいにく、俺はディディスに用はねぇ。憂さ晴らしにこの城砦をちょいと破壊させてもらうだけさ……」
俺はその大剣の剣身を横から殴り剣撃を逸らした。その大剣はそのまま部屋の床へと突き刺さった。
――くくく、三分の一くらいは破壊したか。
「後、この厄介そうな部屋もな……」
――この部屋から廃棄悪魔が出てくるんだよな……ん? あれか? あのトビラ? わずに気配が……え、トビラが生きてる?
「きさまぁ……いいキニなるナァァ!!」
「なっ!!」
俺は急にスピードの上がったヤバそうな悪魔の拳を顔面に受けぶっ飛ばされると部屋の壁に叩きつけられた。
大剣がくると思っていた先入観が回避判断を遅らせた。
「ぐぅぅ!!」
――くぅぅ、さすが腹心だ、やられた。頭にガンガンくる。あっ、頭は怖いから回復魔法でもかけとくか……
「痛つっっ……なかなかやるが、俺も忙しいんでね……」
――腹心でもこれだけ、強いんだ。気配も感じない。うまく隠してやがる。
これでディディスも来たらヤベェな……さっさと殺るか……
「ウガァァァァ!!」
俺はいつか見た悪魔鬼人族のう○こをしそうな姿勢をとっているヤバそうな悪魔に向け、魔力を込めた拳を突き出し跳躍した。
そろそろほのぼの展開に……癒しが足りない……




