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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
何となくハンター編〜悪魔争乱〜
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ブックマーク、評価ありがとうございます。

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 崩れた城砦の壁の中からイタチ悪魔が這うように姿を現した。

 顎の骨が折れているのか、口からダラダラと唾液を垂れ流していた。


「ギゲッ、ゴロじでやる、ゴロじでやるゔ!!」


 城砦の壁の上にもチラホラ他の悪魔が姿を見せ始めた。


「いいだろう!! 派手に殺ってやるよ!!」


 俺は両手に魔力を練り纏った。


 イタチ悪魔が何か仕掛けようとしているのだろう、奴の周りの空間が歪むが――


「もゔ、お前ジネッ……」

「ふん!!」


 俺は気にせず、一気に距離を詰めると今度はきっちりイタチ悪魔の頭を破壊し城砦の壁に向け吹き飛ばした。


 ドオォォン!!


 頭を失ったイタチ悪魔が高速回転し城砦の壁をいくつも突き破りながら吹っ飛んでいく。


「おととい来やがれっ!!」


 もう死んでいるだろう相手につい、昔のマンガのようなセリフを吐いてしまった。


 俺は胸の奥でモヤっとする感情を本能のままぶつけたのだ、八つ当たりのようではあるが、半分はコイツのせいだ。


「ったく、なんで俺は、一人寂しくこんな悪魔どもを相手せねばならんのだグラッド!!」


 俺はこれから色気(ナナ達)が失なわれ暑苦しい悪魔どもに襲われ続けることになる。


 そう考えるだけで、吐きたくもない愚痴を思わず吐いてしまった。


「くそぉ!!」


 また弱そうな悪魔が城砦の壁の上から飛び降りてきた。


「ここにいルゾォォ……おっ!?」


「邪魔っ!! だぁぁぁ!!」


 ドコォーン!!


 俺は飛び降りてきた弱そうな悪魔の顔面を摘むとそのまま壁へと叩きつけた。


「グェッ!!」


 もちろん囲まれないよう逃げまわり、城砦を破壊することも忘れない。


「逃げルナ! テメェぇぇ!」


「うるせぇぇ!!」


 俺をとり囲もうと背後から襲い来る弱そうな悪魔に回し蹴りをしつつ、そのまま踏みつけ地面とプレスする。


「ゴハッ!!」


 メキメキっと骨を砕く感触がしたが、殺れる時には殺る。俺はそのまま足に纏った魔力を軽く爆発させる。パーンと音がした後にはその悪魔が木っ端微塵に吹き飛んでいた。


 ――こっちは一人だ……手加減なんてするつもりはない……が……


「ああ!! 次から次と、鬱陶しいんだよっ!!」


「グェ!!」


 壁の死角から飛びかかってきた弱そうな悪魔の歪な剣を弾き、腹部に腰の入った正拳突きをお見舞いする。


 殴り飛ばす時にメリメリっと確かな手応えを感じるが、そいつの生死を確認している余裕などない。


 油断すれば、四方から襲われ行動が制限される。最悪追い詰められ行動できなくなってしまう。


 ――今のところは、その心配はない……が……


 これは近寄ってくる悪魔の気配が弱いからそう判断している。


「そっち二ッ……ゴハッ!!」


「ふん!! 他所を向くから悪い……」


 俺はまた一体の悪魔の背後に回りこみ手を添えると、魔力を軽く注ぎ爆発させた。


 ――しかし、数が多いな……まあ、強そうな奴が近寄りそうなら城砦の壁を破壊しまくって逃げてやるつもりだが……今のところそんな気配はない、もしかして、廃棄悪魔って力が吸われ過ぎて弱った奴しかいないのか?


 それから俺はナナたちに注意が向かないように派手に暴れまわった。


 ――――

 ――


「ここまでくれば、もう大丈夫ね」


 ナナのその声に霞んでボヤけていたナナたちの姿がはっきりと現われた。


「お、おい! いいのかよ。アイツ一人残してきて……クローはお前の主なんだろ?」


 グラッドのその言葉に反応したナナは珍しく眉を吊り上げた。


「仕方ないじゃない!! あなたが不用意に魔法を使うからよ……ほんとうはあたしだって……なかったんだから……」


 だんだんと勢いのなくなっていくナナの言葉を受けグラッドはすぐ謝罪した。


「す、すまん」


 それはグラッドも自覚していたことだった。自分の軽はずみな行動でクロー一人を残して来てしまった。


「あの時は……」


 グラッドは拳を堅く握った。


 普通の悪魔なら何とも感じなかったかもしれないが、グラッドは違う。

 だからこそ何かしなければと、責任の重圧に押し潰されそうになっていた。


「グラッド! ほら……あなたも気配で分かるでしょ? クローさま、あたしたちのために派手に暴れている。強そうな悪魔はクローさまを排除しようと必死に向かってるわ」


「そう……だな」


「あ、あの……その……クロー様は大丈夫なのですか?」


 黙って聞いていたイオナがおずおずとした様子でナナに尋ねた。


「何が?」


「クロー様は第9位ですよね?」


「そうだよ!! アイツ第9位じゃん、ここから感じる気配でも全然負けてるじゃねぇか」


「ん〜……大丈夫と思うよ」


「何でそう思うんだ? やはり主だからそう信じたいのか?」


「違うよ……あたしの場合は……勘かな」


 ナナはクローが本気になった姿をはっきりと見たわけではないのだが、クローのかもし出す雰囲気が、そう思わせ信じさせてしまうのだ。


「勘ってお前……大丈夫かよ」


「それよりほら。ゲートに向かう弱そうな悪魔を少しでも狩るの。あなたのせいでこうなってるんだが、悪いと思ったら少しくらいクローさまのために働いてよ」


「分かってるよ……なあ、でもいいのか?」


「何がよ?」


「俺は結果的に自分のためになるから良いんだが、これって、元々はクローの可愛い契約者を助けるためなんだろ?」


「そうよ、それが何?」


「いや、だから、お前以外の女のために……ってことだよ」


「あなたの言ってることの方が分からないわよ」


「えっ? 何でだよ。だってお前、どう見てもクローのことが……」


「あー、わー、わー、あ、あなた何を言ってるのかな?」


 グラッドの言葉の先を察したナナは顔を真っ赤にして慌てた。


「だから……」


「あー、あー、あーもおおっ!! 契約者は人族よ! 悪魔じゃないもん、あたしと関係ないじゃない!!」


「へ?」


「だから、クローさまは悪魔なの。人族は関係ないの」


「え? ええっ? そう、なのか? ……イオナたちもそうなの?」


「私もグラッドが何を言いたいのか理解できません。悪魔と人族、それ以外に何を想えと?」


「ああ、悪魔は悪魔。人族は人族だろ。それ以外に何がある」


「そうだよ〜。グラッドは忘れたのかな〜? 人族はわたしたち(悪魔)にとってエサ(感情値の素)だよ〜?」


「……そう……だったな。変なこと聞いてすまん。俺、何か勘違いしていたようだわ。

(そうだった……忘れてたよ。俺としては前世の記憶のせいか、人族だろうが、悪魔だろうがどちらも関係ないと思っちまうんだよな……だから俺はまたあいつらの所に帰りたいと思うんだ。

 はぁ、しかしクロー! お前はなんて羨ましい奴なんだ)」


「ほら、あんたも変なこと言ってないで働く!!」


「分かった、分かったから、背中を叩くな!!」


 そう言ったグラッドはゲートに向かい、頭上を飛んでいく自分より弱そうな気配を放つ悪魔に向かって右手を構えた。


「爆撃魔法:網弾(ネットバレット)!!」


 魔力の塊が飛び出し、悪魔の手前で弾けると、広がった魔力の網が飛んでいる悪魔を拘束した。


「何よ、その魔法、見たことない……」


 ナナはグラッドの放った知らない魔法を見て純粋に驚いた。


「そうか? まあ、俺のオリジナルってことかな……」


 グラッドは得意げに笑みを浮かべると、拘束しもがいていた悪魔を引っ張り地面へと叩きつけた。


 不意打ちを受ける形になった悪魔は訳もわからず地面に叩きつけられ、その痛さに呻きゴロゴロ転がっている。


「ぐアアァァ!!」


「よし!! うまくいった」


 結構な音を立ててしまったはずなのだが、ナナの幻術魔法の影響だろか? 不思議なことにゲートに向かう他の悪魔たちには気づかれていないようだ。


「まずは、イオナたちのその武器を試してみろよ」


 グラッドは拘束した悪魔が逃げないよう魔力を注ぎ、イオナたちに視線だけを向けた。


「分かった」

「ああ」

「はいな〜」


 イオナ、ライコ、ティアの順にクローに貰った武器を振る。


「ぎぁぁぁぁ!!」


 悪魔は痛さに呻き転げ回るが、致命傷ではない、受けたキズはすぐに再生し始めている。


「ほう……その武器でも肉体的なダメージを与えることができるのか、でも悪魔そのものを倒すまでには至らないんだな」


「そりゃそうよ。普通の武器でダメージを与えられるだけでもおかしいんだから、トドメをあたしとあなたが刺せばいいことでしょ?」


「ああ。それでも、これからのために確認しときたかったんだよ」


「はい、はい。それでどうするの?」


「ああ、イオナたち三人は、手足、翼を集中して狙ってくれ、そうすればその悪魔の行動を一時的でも押さえ込める」


「分かった」

「ああ」

「分かったわ〜」


「ふーん」


「何だよ?」


「あなたもなかなか考えているのね」


「ふん、これくらい誰でも考えつくわ。それよりいいか? イオナたち三人は特殊攻撃や、魔法攻撃には気をつけろよ、耐性が無いんだからな」


 その後、グラッドたちは弱い悪魔を狙って一体一体、着実に狩っていく。


「よしよし、いい感じ、だが……」


「はぁ、はぁ」


 イオナたち三人は体力も奪われていたようで、すぐに息ぎれを起こしていた。


「ちょっと休憩しましょ」


「すみません」

「すまん」

「ごめんなさい〜」


 三人が肩で息をしながらしゃがみ込んだ。


「気にするな、結構狩ったつもりだったが……そうでもないな」


 グラッドは悪魔たち十数体の死骸の山を見てそう呟いた。

 一人頭、三、四体の計算になる。


 クローの方からは相変わらず派手な音が聞こえ、結構な悪魔の気配が消えていっている。

 ナナの言った通りクローは大丈夫そうで、グラッドの気持ちは少し軽くなっていた。


「しかし、こいつらの目。やっぱ異常だよな、血走って真っ赤な目をしてやがる」


「そうね。あたしも思ってたけど、これ絶対何かやられてるわね。動きも単調だし、思考能力も……落ちているわね。まるでゲートに向かうことしか頭にないみたいよ……」


「……あ〜それ、俺も思ってた……俺もあそこでディディスの所に戻っていたらこいつらみたいに……」


 グラッドはそこまで言うとブルブルと肩を震わせ顔を青くした。


「な、なあ、そんなことより、これっていつまで続けるんだ?」


「ん? 決まってるじゃない、クローさまがやめるまでよ」


「げっ!? それっていつだよ」


「さあ……あたしには分からないわよ」


「ウソだろ……」


「クケケ、オレが教えてやろう」


「ああ、たすか……ぐはっ!!」


 グラッドはいきなり現れたヘビみたい悪魔のシッポによって払い飛ばされた。


「ネズミ見つけた。お前たちはもう終わりだ、それで続ける必要はない。クケケ、嬉しいか?」


 ヘビみたいな悪魔は細長い舌をチョロチョロと出し大きく裂けた口をにやりと歪めた。


「てっ、てめぇ!!」


 グラッドは口から流れる血を右手で乱暴に拭き取ると、よろよろしながらもすぐに起き上がったが、相手の気配を探り顔色を悪くした。


「……こ、こいつはヤベェ、第D6位↓だ!!」


「じゃあ、これで!! 幻術魔法:幻影……きゃっ!!」


 ナナが間髪いれず幻影魔法を放とうとしたのだが、叶わなかった。

 ナナが手を突き出した時にはヘビ悪魔のうねうね伸ばした影が鋭く尖り襲っていた。


 咄嗟にナナは腕をクロスさせ後方へ跳躍したが、両腕、脇腹に激痛が走った。


「う、うう」


 ナナの両腕、脇腹には10円玉サイズの穴が開き、すぐに血が溢れ流れ出した。


 イオナたちがナナを庇おうとするも、ナナが手で制して断ると、すぐに回復魔法を自身にかけた。


「ダメ……今のあなたたちだと耐えきれない」


 そう言うナナも再生では追いつかず、回復魔法を施してはいるが、脂汗が額に浮かび上がり苦痛で歪みそうになる顔を、必死に耐える。


「おい!! 大丈夫か!?」


「大丈夫と言いたいけど……無理」


「クケケケッ、ネズミはネズミか……オレは忙しイ……まとめて死ニナ」


 そう言ったヘビ悪魔の腕が無数の毒々しいヘビへと変貌していく。


「ヤベェ、こ、このぉ、爆撃魔法:火炎砲(フレイムガン)!!」


 グラッドの両手から高熱の炎が渦が巻きヘビ悪魔を襲うが、無数のヘビがその炎を呑み込んでいく。


「う、ウソだろ!!」


 ナナに注意が向けられている間に練った魔法だった。グラッドは致命傷までは期待していないが、逃げる時間くらいは稼げるだろうと思い放ったものだった。


「ククク、カラ、カラ、カラ!!」


 ヘビ悪魔がご機嫌なのか、不愉快に聞こえる笑い声を上げた。


「楽しかっタ、これデ最期ダ。ご褒美にオレのペットの餌にシテヤルヨ」


 ヘビ悪魔の腕から生えた無数のヘビが鋭い牙を剥き飛びかかってきた。


「う、動けねえ!!」

「私もです」

「くっ!!」

「あぅ〜」


「影!? アイツの影が……」


 ヘビ悪魔の影が五人の足首に巻き付いていたのだ。

 五人は逃げられないと悟ると襲いくるヘビからの痛みに耐えようと全身に力を入れた。


「ぐっ!!」


 だが、待てども待てども、痛みが来なかった。不思議に思い顔を上げた五人は二本の銀色の閃光をその目に見た。


「な、何?」


 閃光が走る度にヘビ悪魔がどんどん細切れのように小さくなっていく。


「これは、どういうことだ!!」


 五人はこの不可解な現象を眺めることしかできなかった。

 何故ならその出来事はほんの一瞬の事で動こうと思った時には目の前に小さな黒装束を纏った悪魔が二人立っていたのだ。


「良かったガウ」


「うん。良かったガウ」


「ニコ自信無くしてたガウ、弱くなった思ったガウ」


「それ、ミコもそうガウ」


 黒装束のチンチクリン悪魔は向き合って銀色のふわふわした尻尾をゆらゆら揺らし、何やら語っている。


「ニンジャ……」


「あ、あなたたちは? もしかして助けてくれたの?」


 ナナはグラッドが意味が分からない事を言っているが、今は目の前の悪魔が気になった。

 果たして、目の前の悪魔は敵なのか、味方なのか……


 気配を探るが全く読めない。こんな悪魔は初めてだった。ナナはまた違った恐怖に襲われていた。


「あ」


「あぅ」


 二体のチンチクリン悪魔がこちらを向きそう言ったが、口元は布キレに覆われているので、大きな瞳しか見えないが、その瞳にも、動きが見えず感情が読めない。


「たまたまガウ」


「ミコは、飽きたからもう帰るところだったガウ」


「そう、なの?」


「そうガウ」


「ニコ、早く行くガウよ」


 チンチクリン悪魔は抑揚のない口調で感情が読みにくいが、敵意はないように感じた。


「でも助かった。ありがとう」


 グラッドが、チンチクリン悪魔に向かって頭を下げた。


「うん。あたしも何かお礼をしたかったけど……」


「なら肉……もごもご」


 一体のチンチクリン悪魔が、もう一体のチンチクリン悪魔の口を慌てて塞いでいる。


「えっ? にく?」


「な、なんでないガウ、ニコ行くガウ」


「ガウ」


「ま、待って!!」


 ナナがそう叫んだ時には銀色の閃光が走り抜けた後で、チンチクリン悪魔の姿はもうどこにもなかった。


「やっぱりあれはニンジャだ」


 紅潮した顔で興奮するグラッドがまた意味の分からないことを口走っていた。





最後までお付き合い頂きありがとうございます。


あと数話でこの章も終わるかと思います。

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