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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
何となくハンター編〜悪魔争乱〜
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ブックマーク、評価、ご感想ありがとうございます。励みになりました。


誤字脱字報告有り難かったです。


修正に手間取り皆様にはご迷惑おかけしました。申し訳ありませんm(__)m

まだまだ気になる点は残ってますが、少しは落ち着きましたので、更新しながらの修正に切り替えたいと思います。


今回は少し短めです。


イケメン悪魔ラックの名前を変更致しました。

ラック→グラッド


「こら、ナナいい加減に……離れ……」

「おいって!」


「はいはい、分かりましたよ〜、離れますよ〜だ…………クローさまのケチッ!」


 不貞腐れて俺の背中から離れたナナが俺に向かってべーっと小さく舌を出す。少し可愛くも思えたがここで甘やかしてはいけないのがナナだ。


「ったく……って、ナナ……お前っ!!」


 離れたナナの肌は俺にひっつき擦れたせいで青墨が広がりDという文字が読めなくなっている。特におっぱいや両腕両足はただ青墨が塗られただけのように見える。


「ほら、見てみろ。……ナナがひっつくから……身体中が、青くなってるぞ……お、俺の苦労が……」


 ナナが俺の視線を追って自身の胸や腕に目をやると――


「ああっ!? ははは」


 気まずそうに笑い顔を背けた。


「……ぁ! ふふ、ふふふ」


 だが、それも一瞬のことで、次の瞬間には何やら良からぬことを思いついたのか俺に向けるその目をらんらんと輝かせている。


 ――ぬ? ……筆と青墨……?


「もう手直しは嫌だからな……」

「なぁ?」


「ええ!? なんで分かっちゃったの? ……いいじゃない。クローさま……もう一回書き直してよ……」


 ナナが筆と青墨を両手に持って頬を膨らませた。


「面倒だ……」

「なぁ……」


「でも、元気が出るでしょう?」

「おいっ!!」


 ナナが可愛く首を傾げる。


「それな、意味が違う……って、誰ださっきから……うるさぃ……ぃ!?」


 俺がしつこい声に振り返れば黒髪のイケメン悪魔が怪訝な顔を俺に向けていた。


「お前が人の話を聞かないから悪いんだろうが! ……そんなことより、お前たち……廃棄悪魔じゃねぇな?」


 イケメン悪魔のストレートな問いに思わず言葉が詰まる。


「なっ!! なんのことかな……俺たちはハイキアクマ……ダゼ? ナ? ナナ」


 必死に笑みを浮かべてみるも、ぎこちない。頬が引きつりそうだ。


「ウ、ウン。アタシタチ、ハイキアクマ……ダヨ」


 ナナはもっと酷い、壊れたロボットのように話しぎこちなく笑みを浮かべている。


 ――あっ、これダメかも……


「はぁ、お前たちバカだろ? それ! 見ただけでバレバレだし、身体の廃棄文字を書き直そうと大きな声で話をしていれば嫌でも聞こえる……」


「ぐぬっ!」


「それに……この空間を支配している悪魔ディディス以外の者に『様』と敬称をつけて呼んでいることもおかしい」


「あっ!!」


「ふん! 俺の目は誤魔化せねぇ!!」


「ば、バレてしまってはしょうがない。こうなれば力ずくで、深い眠りに……」


 俺が拳に魔力を注ごうとしたところで――


「ちょっ、わぁぁぁ待て待てっ!! 待ってくれ。早まるな!! お、俺が悪かった。話をしよう、いや話をさせてくれ!」


 イケメン悪魔が俺に向かって綺麗な土下座を決めた。


 ――土下座?


「ほう、いいだろう」


 ――――

 ――


 イケメン悪魔はグラッドだと名乗った。


「なるほど、廃棄悪魔に……警告か……」


 俺たちはお互いの話をすり合わせていくうちに頭の中に響いた声に違いがあることに気付いた。


「お尋ね者……マジかよ……」


 グラッドは俺の話に顔色を悪くし、ブルッと肩を震わせていた。といってもこいつは男だし、肩を抱いてやったりはしない。


 それに、こいつの後ろにはスレンダーな悪魔美女が三人もいるんだ。


 ――ふむ。けしからん奴め……


 でも、その彼女たちは先程から俺をチラチラ物色するかのように見てるんだ。一応俺も男だ、美女からの視線は気になる。


「なぁ、お前……本当に第9位格なのか?」


「ああ、さっきからそう言っていると思うが……」


「マジか……やべぇーぞ俺。思っている以上に弱くなってる」


「ん? どういうことだ?」


 グラッドは廃棄悪魔について簡単に語った。


「俺は元々第7位格だったんだ。禁固され力を奪われたとはいえ、第8位格程度の力は残っていると思っていたんだ」


「そうか……じゃあ後ろの彼女たちも?」


「ああ、彼女たちはもっと酷い。第10位格以下だ。ほとんど力が残ってない」


「そうか……」


 ――ふむ。なるほど、だから気配が小さく感じたのか。


「だが俺は諦めねぇ。ここでお前たちに協力すれば……廃棄悪魔から第10位悪魔に戻れるんだ!!」


 イケメン悪魔グラッドは力強く立ち上がった。後ろの彼女たちも同じ想いなのかうんうん頷いている。


 ――廃棄悪魔から……第10位ね……


「ん? 第10位? お前の場合は逆に降格になるんじゃないのか?」


「そうだ。確かに今の力は失うが、力を初期化されたと思えばいい。もともと消滅を待つだけの身の上だったんだ。

 それにだ、廃棄悪魔の状態では運良く生き残れたとしてもこき使われるだけだ。奴隷と一緒なんだよ……俺はまた自由になる!! 自由になりたい!! さあ、クロー!! 俺たちは何を手伝えばいい!」


 グラッドが拳を硬く握りしめ熱く語ると、今度は俺に向かって爽やかな笑顔を浮かべ右手を差し伸ばしてきた。


「いや、別に何も……」


 俺はその手をスルーした。


「へ? い、今なんと!? よく聞こえなかった。すまんがもう一度言ってくれ」


「ん? そうか。俺たちは何もする気はないんだ。だからお前たちのすることは何もないぞ」


「な、何でだよ!」


「当たり前だろ。俺は第9位、こいつ(ナナ)は第10位……大して何もできんよ」


「えっ! でも……じゃあ何しに?」


「たまたま俺たちはこの現地に居たんだよ。逃げるのは嫌な予感がしたからな、取り敢えず乗り込んだ」


「取り敢えず乗り込んだ……って……」


「後は、高位悪魔が乗り込んでくるまで隠れるだけ……わざわざリスクを取る気はない……」


「ま、マジですか……」


 グラッドが、いや彼女たちも、見るからに肩を落としていた。


「力になれなくてすまんな……」


「そう……だよな……第9位格ならそうなるよな……」


 ――俺は仲間の方が大事だからな……


 俺は、隣で何も言わず、ただボーッと話を聞いてるナナを横目に見た。


「しかし、悪魔たちの動きが少しおかしくなった気がするんだが……まるでゲートに向かっているようにも感じる……」


 ――ゲートの先には妻たちがいるんだぞ……


「へ? ああ、確かに……」


 第10位以下の力になった彼女たちは気配が探れないようだが、グラッドは気配を感じ取れたようだ。俺の話を聞き、気配を探ってみたのだろう相槌を打った。


「クローさま……これってゲートの外に……」


『主……』


「ん? ナナ、ちょっと待ってくれ……ラットから念話がきた」


「ラット?」


「ああ、俺の使い魔だ……」


『どうしたラット? …………ぬっ!? …………うむ……そういうことか……そうしてくれ…………ああ、構わん…………じゃあ、頼む…………ん? まだ何かあったか? ……おおっ……おお!! ……ラット分かってるじゃないか……よしよし、後で大チーズ二個な』


 ラットから嬉しそうな思念が伝わると念話が切れた。


「ねぇねぇ、ラットちゃんなんて?」


「ああ、それが――」


 ラットからの念話は、町全体に起こった異変から、教会側が町全体に聖域魔法陣を展開したことについて、更にはその聖域魔法陣を破壊にくるだろう悪魔たちを、俺の助けになると、そう判断した彼女たちが討伐する気満々になっている、と伝えてきた。


 セリスは元聖騎士だけあって魔力を体内に保有している。俺の与えた魔法剣をもってすれば悪魔討伐は可能だろう。


 だが、エリザとマリーは違う。一応、俺の付与魔法付きの装備品を身に付けてはいるが、万全だとは言い切れない。何かあったらどうするのだ、と心配でならない。


 そこをラットとズックがフォローしたいから魔力使用の許可を求めてきた。

 つまりラットがエリザに、ズックがマリーの傍で魔力を纏わせ悪魔に備えるというのだ。さすがはラット、それなら俺も安心する。


 ――しかし、俺が言えた義理じゃないが彼女たちが自ら考えて行動する行為、嬉しくもあるが、できれば俺がいる時にしてほしいものだ。


 俺の気持ちが沈むのを感じとったのか、ラットは念話の最後に彼女たちの揺れるおっぱい思念を送ってきた。こんな技術持っていなかったはずだが、さすが優秀ラット、俺のことをよく分かってる。嬉しくて涙が出そうだ。


 ――まあ、元聖騎士のセリスもいるんだ、無理はせんだろう。


 ラットの気配り思念に元気をもらった俺は、前向きに考えることにした。


『あるじ……』


「ん? 今度はズックからだ……」


「あら、ズックちゃんもなんだ……」


『ズック、どうした?』


 ズックもラットの真似をして念話してきた。特に何か伝えてくるでもなく、ラットを追うズックの思念が延々と伝わってきた。


『うむ。ズックはラットばかり見てないで、マリーも頼むな。後でズックにも大チーズ二個あげるからな』


 ズックの嬉しそうな思念が伝わり念話が切れた。


「ナナッ!! 予定変更だ、ゲートに向かって少しばかり廃棄悪魔を狩るぞ!!」


「そう言うと思ったよ……」


 ナナがやれやれと首を振る。


「ナナ、俺から離れるなよ」


「はーい」


「ちょ、お前、急に……どうしたんだよ、何もしないんじゃ……」


「彼女たちが俺のために戦うんだ、俺も少しは働かんと示しがつかんのだ」


「彼女たち?」


「クローさまの契約者だよ」


「それって女?」


「そうだよ。すごく可愛いの」


「ぐっ……羨ましくなんてないぞ」


「ほら、ナナ! 何してる、行くぞ!!」


「はーい」


「お、おい!! 待ってくれ!! 俺も行くっ!!」


 グラッドに手首を掴まれたかと思うと――


「あたいたちも連れてってくれっ!!」


「ん?」


 後ろでずっと黙って聞いていた彼女たちだった。彼女たちは俺に必死な眼差しを向けてきた。


「私たちも……お願いっ!」


「お願いします〜」


「お前たちは……」


 足手まといになる、そう口にしそうになるが、彼女たちの必死な顔を見て、その言葉を飲み込んだ。


「悪魔の数も減るだろうから、ここに居れば安全だと思うが?」


「何もしなければ、どうせ消される、最期まで好きに生きたい」


 虎の女悪魔が首を大きく振り、決意の表情を浮かべ俺を見ている。

 ここで断れば勝手に突貫して自滅しそうな怖さを感じる。


 ――なんでそう……死にたがるかね……


「……お前たちの名前は?」


 俺と同系統の悪魔女人間族=デビルウーマン族の彼女は107号だと名乗った。


 次に獣系の悪魔牝虎人族=デビルティグリス族の彼女は815号だと名乗った。


 最後の悪魔女夢魔族=デビルサーキュッバス族の彼女は100号だと名乗った。


「お前たち……呼びにくいな……よしっ!! 107号はイオナ、815号はライコ、100号は……ティア? と呼んでもいいか?」


「ああぁぁ、クローさま!! 名付けは……」


「はいっ!!」

「いいぜ!!」

「いいですよ〜」


 ――ん?


 彼女たちが返事した途端、俺の魔力が少し抜ける感覚がした。


【第D10位↓悪魔イオナが配下(仮)になった】

【第D10位↓悪魔ライコが配下(仮)になった】

【第D10位↓悪魔ティアが配下(仮)になった】


 ――うおっ!!


「ちょ、ちょっと待て! なんでそうなるんだ!!」


「もう、クローさまのバカ。名付けは配下契約の基本だって知ってるでしょう?」


「うぐっ!」


 ――そうだった。確かにそんな知識がある。だから配下契約されたくない奴は適当な名を名乗るのだが……やってしまった……何故か、数字で呼ぶことに抵抗があったんだよ……物みたいでさぁ……


「でも、廃棄悪魔は管理悪魔の決裁が必要だと聞いているから、正式な配下にはなってないはずですよ、ね? クロー・さ・ま?」


「へ?」


「なってないですよね?」


「あ、ああ。大丈夫、なってない。なってないぞ」


 俺は笑みを浮かべるナナが初めて怖いと思った。

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