40
ブックマーク、評価ありがとうございます。
嬉しいです。
少し短めです。
すみません。
1/15
イケメン悪魔ラックの名前を変更致します
ラック→グラッド
――????――
「――様、首輪の外れたDが湧きましたが、如何致しましょうか?」
「あ〜やっぱり、おかしいと思ったんだよね。面倒くさいなぁもう。それで、君はどこまでやってくれた?」
「はい。廃棄悪魔ガチャは既に封鎖しましたが、それ以上のことはまだです。ご指示いただきたく存じます」
「うん。じゃあ〜……いつもの通りやっといて」
「はい。畏まりました」
「あ〜もう。次から次へと問題が発生するんだから……」
――――
――
―悪魔界、悪魔第7位の屋敷―
ゲーゲスから支配地を奪った第D2↓位悪魔は自らをディディスと名乗り手に入れた感情値を己に注ぐと第2位格の力を取り戻した。
通常の第2位悪魔ならば、納値が発生し第7位悪魔の支配していた圏域程度では、到底賄えるものではない。だが、あいにくとディディスは支配地持ちでありながら、主のいない廃棄悪魔。
納値義務などない。
ただ己の欲望のままその感情値を利用する。ディディスは集まる全ての感情値を己の力としていた。
「フム。まず、こんなもんだろウ」
感情値の光を失った大きな魔水晶に手をかざしていたディディスがそう呟くと、屋敷全体に激しい揺れと轟音が響き渡った。
だが、その轟音もすぐに終わり、ディディスは何事もなかったかのように、己の手を開いたり閉じたりと繰り返しセラバスに向き直った。
「フン、まあまあダナ……セラバス! 皆を集メロ!」
「はい。畏まりました」
セラバスはディディスに頭を下げると、管理の間を後にした。
支配地持ち悪魔は、管理悪魔からの補佐を受け、支配圏域に人口増加や感情を刺激する何かしらの施策を講じる。
だが、今のディディスにとってそれは関係のないことだった。
「納値対象ノ配属悪魔など不要なだけダ」
ディディスは訴え逃げようとするこの屋敷の配属悪魔を処分し、残っている者は唯一忠誠を誓ったセラバスただ一人となっていた。
「クックックッ! 懐かしイものダ……」
管理の間の内装に視線を向け、そう呟くとディディスはゆっくりと玉座の間に向かった。
――――
――
「よし、これでハンター登録は終わったな」
「ああ。すまない無理を言って……」
セリスはそう言うが、ハンターカードを手にしてからずっと、そのカードを眺めるセリスの顔は、にまにまとだらしなく緩みっぱなしだった。
聖騎士だった頃の姿からは到底、想像できないほどにセリスの表情は豊かになってきていた。
「その方が俺たちも都合がいいんだ。気にするな。これで、この都市にも用がなく……ぅ!?」
たまたまセリスの方へ顔を向けた俺の目に、マントがはらりとめくれ歩く度に大きく揺れるおっぱいが目に入った。
たゆ〜ん。たゆん。
美綺の鎧弍型、その効果は意中の異性に癒しを与える。
俺の目にはなぜかセリスのおっぱいが刻まれ、視線を逸らしてもなお、その余韻が残り、癒しを与えつづけている。
――なんだ、これは……おっぱいが……頭から離れない……
「ああ〜!! クローの顔が緩んでる!!」
「まあ、本当だわ。もう、クローったら」
マリーは両手を腰に当てぷくっと頬を膨らませ、エリザは俺に腕を絡めて頬を膨らませた。
「うぐっ、否定できん、が、決してエリザとマリーに不満があるわけじゃないんだ。むしろ大好きなんだ。ただセリスのが……なんでなのか、おかしい……よく分からんがおかしいのだ」
「はぁ。もういいですよ。理由は分かってますから……ね、エリザ」
「そうね。これは……しょうがないことだわ」
「なんか私のことですまん」
「どういうことだ?」
「「クローはいいの!!」」
「そ、そうか……」
おろおろとしていたセリスが俺を向いて頭を深く下げた。下げて戻るとまた大きく揺れる。
たゆ〜ん。たゆん。
俺はまた、思わず口元を緩めてしまった。それに反応するエリザとマリーはわずかに眉間にしわを寄せた。
「ぷっ、あははは。クローさまも大変だ、ねぇ」
笑い声を上げたナナが楽しそうに背中に抱きついてくると、わざとおっぱいを押し当ててきた。
「こ、こらナナ。背中に抱きつくな!!」
「え〜、ほらあたしはクローさまの配下だし、クローさまが困っていたら助けないといけないかなぁと、これでも思っちゃたりしてるのですよね、にひひ」
「お前は、よけいに、ややこしくするだけだからやめろ……」
「ええ……そんなことないよ、ね?」
ナナはエリザとマリー、そしてセリスに笑顔を振りまくと、不穏な空気になりつつあった雰囲気を和ませた。
俺がセリスのおっぱいばかり気にしていたのがいけなかったことをナナはしっかりと見ていたらしい。
――ナナが……俺のために……初めて配下らしいことを……
「「ごめんなさい。クロー」」
ナナの行動を、内心びっくりしていると、今度はエリザとマリーがすまなそうに頭を下げた。
――むむ。
何も悪くない、妻たちやセリスが謝っている。ここは男として、夫として俺も謝るべきか? ……そう思った俺は――
「いや俺こそ、すま……!?」
謝ろうとして言葉に詰まった。
「……どうしたの?」
エリザとマリーは急に口を閉ざした俺を不思議そうに見て首を傾げた。
「いま、何か頭に……」
「あたしも〜」
今度ははっきりと俺とナナの頭に無機質な声が響いてきた。
【**お尋ね者**】
【悪魔ディディスとその配下、及び協力者の討伐を依頼する】
【**お尋ね者**】
【悪魔ディディス討伐者には感情値を1億カナを与える】
【**お尋ね者**】
【悪魔ディディスの協力者及び配下、その討伐者には一体につき感情値を1万カナを与える】
「なんだ、いまのは? お尋ね者って何だよ? こんなこと、初めてだが……まあ、これは関係ないな……」
「そうだね……」
「「「何かあったの? (のか?)」」」
「ああ、俺たちには……!?」
「関係ないことのようだ……」そう三人に伝えようと口を開いていたその時――
更に俺とナナの頭に無機質な声が流れてきた。
【場所はゲスガス小国王都】
【場所はゲスガス小国王都】
【対応が遅れれば、それ相応の処罰が下される。早急な対応を期待する】
「おいおい、こんなことってあるのかよ」
「おかしいな、あたしも知らないよ」
ナナには教育してくれた悪魔がいるらしく、その悪魔に向けぶつぶつ文句を垂れた。
「しかし、参ったな……」
俺は雲ひとつない青い空を眺め、そう呟いた。
――もう1人の転生者――
「くそ〜冗談じゃねぇぞ」
――あの時は咄嗟に土下座をしてしまったが……こんな所にいたら、結局は破滅だ。
「くそ〜、開いてねえじゃねぇかっ!!」
あの場では、“すぐ済む、しばらく好きにしてろ”、とだけ言い残した奴は悪魔執事と共に部屋を後にした。
今がチャンスだと思い、俺はこの敷地空間から抜け出そうとしたのだ。
他にも俺と同じように抜け出そうとしていた奴が数人いたが、皆青い顔をしている。
――くそ!! あの時、人形悪魔族に手を出さなければこんなことには……だって屋敷でメイドに手を出すってのはお約束だろ……?
俺はグラッド……そう俺が勝手に名乗っている。もちろん悪魔だ。
正式には悪魔大事典、第7号ナンバー777だった。
ラッキーセブンが、つい嬉しくなってグラッドと名乗っている。
元々は人間だったと思う。たまに記憶が蘇ってくるので間違いないはずだが、自分から深く思い出そうとすると頭痛がするのでやめた。
必要なら思い出すだろうと気楽に構えている。
そんな俺は悪魔男夢魔族=デビルインキュバス族だった。
力は弱いが、魔法が強くイケメンだった。これはもう勝ち組だと確信した。
そして俺は召喚された。島国の女王に。契約内容は部族繁栄。
その島国には男性が一人も存在せず、部族存続の危機だったのだ。
いつもなら大陸に渡り身籠って島へと戻ってくるらしいのだが、運悪く、大陸のいたる所で戦争が勃発し、精力ある男は戦争へと駆り出されてしまっていた。
女たちが、荒れ果てた大陸を奥深く渡るには危険過ぎてできなかったらしい。
俺はその願いを叶えた。どんどん叶え続け、島中の女に人族の子供を授けた。
生まれてきた子供は全て女だったが、俺と交わり付与したスキル美容によって島中の女は美女と化した。
次第に俺は神のように崇められるようになっていた。
いつしか大陸の方から美女の島国があると、風の噂で聞きつけた商人が渡り来るようになり。やがて貿易が始まった。
まあ、この噂は俺が流したんだが……
貿易が始まると行き交う人が多くなり、美女に惚れた男たちが島国に移り住むようになった。
島国は栄えていった。皆が喜び俺も嬉しくなった。
それでも生まれてくるのは女性ばかりで、俺の役目がなくなることはなかった。正にパラダイスだった。
そう俺が第7位悪魔となるまでは――
俺はやってしまったのだ。欲をかいた。契約者以外からも感情値を奪おうと。俺は第7位悪魔となり支配権を行使したのだ。
そして俺は支配地持ち悪魔として第7位の屋敷が悪魔界に与えられ、配属悪魔が派遣されてきた。
しばらくは物珍しさと、新鮮さもあり、契約者を屋敷に連れ込んだりもした。
契約者なら支配権を行使した時に設置するゲートを通って悪魔界の屋敷の中で過ごすことができるのだ。
ある日、配属されて屋敷にいる人形悪魔族を眺めていて興味が出た。
彼女たちは美しい容貌で目の肥えた俺でさえ際立って見えた。
たがその表情はなく、本物の人形のようだった。
あの表情が変わることがあるのだろうか? と、ふと俺は思ってしまった。それがいけなかった。
俺がその人形悪魔族の手を掴み寝床に連れ込むと、彼女は抵抗することなく事を終えた。
無表情だった顔は更に冷たさを帯びた気がした時には俺の意識がぶっ飛んだ。
今思えば本当にヤッたのかも記憶に無い。
たが、気づいた時には狭い部屋の中で、身体中にDの文字が浮かんでいた。何もない部屋だった、そこには不自然に一枚の貼り紙があり、強姦罪のため、無期禁固刑を、命じるとあった。
無期禁固刑は、ほぼ俺の消滅が決定されたに等しいことだった。だが、それよりも俺は、契約者との繋がりがなくなってしまっていたことに、絶望を感じた。
何もせずただボーっとするだけだった。時だけが過ぎ、悪気もどんどん落ちている。
早く消滅してしまいたい、そう思っていたある日、ちょうど俺が第8位くらいの力まで落ちた頃、それは起こった。
部屋全体が光り始めたのだ。廃棄悪魔ガチャ? そう頭に過ぎった俺は微かな希望を描いた。
――また、あいつらに逢える?
だが俺はガチャから出てすぐに額を地につけた。土下座だ。そうしなければ殺されると一瞬で感じた。
周りには同じような奴がどんどん増えていった。奴に啖呵を切ったバカが数体いたが瞬殺されていた。
俺の判断は正しかった。
しばらくして悪魔執事が現れ奴は出ていった。
そして俺は一目散にこの屋敷のゲートへと向かったのだが……
「ちくしょう!!」
そのゲートが閉じていたのだ。
途方に暮れていると、屋敷全体が激しく揺れ始めた。
「な、なんだ!! 何が起こった……」
俺は地に片手片膝をつけ轟音が収まるのを待った。
待っているうちに屋敷全体が霞んだように見えると第7位屋敷は、第2位屋敷へと変貌していた。
「こ、これは……」
その外観はまるで城砦だった。
これはディディスが力を取り戻した証明だ。俺はもう逃げられないと覚った。
そんな時だ――
【*警告*】
【*警告*】
【投降せよ】
【*警告*】
【悪魔ディディスに協力する者、またはその配下になった者は排除対象とする】
【悪魔ディディス討伐に協力した者はD処分を免除する。現格位にて希望の主へ所属する、又は第10位悪魔としてやり直す機会を与える】
「ま、マジかよ……やり直せるのか!?」
――奴を殺る……
そして俺はすぐに頭を振った。
――くっ……無理だ。格の差が……
どちらを選んでも死の選択だった。
下手に希望を抱いたため、グラッドはよけいに絶望に打ちひしがれてしまった。
グラッドはセラバスから集合の合図がくるその時まで、ただただ真っ黒な空間を見上げていた。
―――――デビルスキャン――――――――――
所属 悪魔大事典第29号
格 ランク第9位 納値30万カナ
悪魔 ナンバ―960
名前 クロ―
性別 男性型
年齢 23歳
種族 デビルヒュ―マン族
固有魔法 所望魔法
所持魔法 悪魔法
攻撃魔法 防御魔法 補助魔法
回復魔法 移動魔法 生活魔法
固有スキル 不老 変身 威圧 体術 信用
攻撃無効 魔法無効 状態無効
所持スキル デビルシリ―ズ
契約者 エリザ マリ― セリス
所持値 1,200,300カナ↑
使い魔 ラット(ネズミ) ズック(フクロウ)
配下 第10位悪魔ナナ(禄10万カナ)
―――――――――――――――――――――
場面の移り変わりが多くなりました。m(_ _)m
没作
「いや、俺こそすまん。そうだ、エリザとマリーにもセリスと同じ鎧の複製所望してやろうか?」
――さすがに2人には露出が多過ぎて…無理か…
「っていらな…「「いいの?」」
「えっ?」
「ずる〜い。あたしも、欲しい。」
こうしてクローは美綺の鎧弍型を着込む4人を眺める事になった。




