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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
悪役っぽい令嬢編
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 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


 お腹も膨れ、エリザのおっぱいに後頭部をぐりぐり押し付けて遊んでいると、ふと、思い出した。


 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


『あいつそろそろじゃねぇか?』


「……あなたねぇ。人の胸で遊びながら、何意味の分からないこと言ってるのよ?……ちゃんと言いなさい」


 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


『あいつだよ、あいつ。エリザのお尻を触った憎っくき変態騎士だ』


 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


「ああ、あの方ですか。ふ〜ん……あら、でもどこのどなたかしら?

 人の胸にぐりぐり頭を押し付けて遊んでいらっしゃる、似たようなお方は」


『ぬ! そんな輩がいるのか……けしからんな』


 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


『うむ、実に……けしからん』


 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


『エリザのおっぱいにぐりぐり……など……ふむ……実にけしからん』


後頭部に柔らかい感触の他に、視線を感じるが――


 ――俺は今、忙しいのだ。


 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


「……はぁ」


 ぐりぐり、ポヨ〜ン。


「……まあいいわ」


 深くため息をついた、エリザは俺を胸に抱えたまま、ゆっくりと壁に手をついて立ち上がった。

 エリザは何だかんだ言うものの、俺を胸に抱っこして離そうとしない。


 ――ふむ。何だかんだ言ってもまだ17だもんな……不安なのだろう……


『お! いたいた! エリザ見てみろあいつだ。ふはは、自分のお尻押さえてるぞ。

 ほんとあいつお尻触るのが好きなんだな……あらら、可哀想に触り心地が良くなかったのか、顔が真っ青だぞ』


 ――ぷっ! 相当堪えてるな。


「まぁ、本当ね。隊列もおかしいわね。一人だけ後ろに下がってるじゃないの」


『……臭うんじゃないのか』


「……もう……汚いわね」


『ふははは、俺のエリザに手を出すから悪いのだ。ふん』


「…………おれのって?」


 エリザが騎士を眺めながら何やら小さく呟いた。


『んっ? ……エリザどうした? 急に黙りこんで。なんだか顔が赤いぞ?』


「な、何でもないわよ!!」


 もふもふっ!


『ちょっ、ぉぉぉ何故……もふもふをするぅぁぁぁぁ……んだぁぁ』


「い、いいじゃない。あなただって人の胸で、遊んでるじゃない」


 もふもふっ!


 もふもふっ!


『ふぁぁぁ……や、やめろぉぉぉぉぉ』


 ――――

 ――



 その後、しばらく2人で眺めた騎士の必死過ぎるざまぁ姿は見るに堪え難く酷い有り様だった。


 ――ふむ。これはさすがにエリザの教育上よろしくないな。


 そこで立っていると疲れるだろうからとエリザに座るように促した。

 エリザも“そうね”と素直に座り、再び馬車の床に横座りをした。


 俺は、変わらずエリザの胸に抱かれている。もう誰が何と言おうがここが俺の定位置だ。


 ――んっ?


 ガタンッと音がして、馬車の速度がゆっくりと落ちていく。


『おっ! 速度が落ちたな。休憩をとるのだろう。馬も休めないといけないからな』


「そうね、お日さまが真上に来てるから、そろそろお昼も兼ねるのね」


 エリザが鉄格子越しに見える青空を眩しそうに眺めていた。


『うむ』


 俺達の予想通り、御者と騎士たちは休憩をとりはじめた。馬の世話係と昼食の準備係に分かれ、テキパキ食事の準備を進めていく。


 ――こいつら……


 準備が終わると騎士たちは昼食をとりはじめたが、エリザにその昼食を持ってくる様子はない。

 騎士達はガヤガヤ騒ぎ、時折ドッと笑いが巻き起こっている。騎士なのに行儀がよろしくない。


 エリザが鉄格子越しに覗き見ていれば、鼻で笑う者やニタニタと嫌な笑みを見せる者、大袈裟に美味しそうに食べてみせる者などがいて腹が立った。

 俺は密かに報復対象を定めた。


「‥‥っ」


 エリザは悔しそうに俯き、俺を抱く両手は震えていた。


『エリザ。さぁ、俺たちも何か食べようぜ』


「へっ? あなた何を……!?」


『そうだな、うーん、よし! 決めたぞ。お昼は軽く海老天うどんセットだ。

 ツルツルしこしこの海老天うどんとお稲荷さん2つ、そしてサービスに、お新香も付いているのだ』


「えっ! ……よくわから」


『我は所望する』


 戸惑うエリザを放置し、俺は魔法を唱えた。

 魔法を唱えると俺が所望した通り、床にアツアツの海老天うどんセットが現れた。

 出汁の利いたうどんの良い香りが馬車の中に漂った。


 『エリザ。これ旨いんだぞ。あつあつだから気を付けてゆっくり食べるがいい』


 俺はエリザに抱かれたまま、右手の肉球で海老天うどんセットを指した。


 『箸は使えないと思ったから、代わりにフォークを出している。それで食べるんだ』


「ほんと……あなたって人は……もう」


 ――人じゃないんだが……


『ほらほら、早く食べろ。あつあつの今が一番美味しいんだ』


 エリザの目尻には涙が少し浮かんでいたが、あえて気付かない振りをした。


 エリザにうどんの食べ方を教えると、やっぱり俺にも食べさせようとする。

 エリザは体勢を体育座りのように変え膝を立てて座り直すと、その太ももの位置に仰向けにした俺をのせた。俺はお腹丸出しの格好である。


 非常に屈辱的な気持ちになるも、目の前で揺れるエリザのおっぱいが近くにあったのでこれはこれでありだな、と思い直した。


 ――絶景ポイントだ!!


 俺がそんな邪なことを考えているとはつゆ知らず、エリザは懸命に小さく切ったうどんを俺の口へと運んでくれた、のだが――


『あちっ!?』


 猫舌にはあつあつはキツかった。


「そんなに熱いかしら……私は平気よ?」


 エリザが俺の反応に目をパチクリさせ首を傾げた。


『はふぅ、はふぅ、俺は今猫なんだ。あぁ……猫になると、俺でもやっぱり猫舌になるんだな』


 俺はあつあつのうどんが大好きなのにしょんぼりと項垂れていると――


「もう、手がかかるわね」


 エリザはそう言いながらも、嬉しそうに小さく切ったうどんにふぅふぅっと息を吹き掛けて、冷まし自らの唇に当て熱さを確認すると、あーんと俺に向け差し出してくれた。


 ――ふぉっ!?


 俺に衝撃が走った。


 ――これは正に前世で憧れていた”ふぅふぅ”からの“あーん”じゃないか。

 しかもこんな美人さんからだ。唇で確認もしてくれた、間接キスっぽいおまけ付きだ。


 『ぇエリザぁ!!』


 胸の奥から熱いモノが沸き上がる。嬉しすぎて、差し出されたうどんに勢いよくかぶり付く。


 この時の俺はすでに暴走状態となっていた。


 もぐもぐと口を早く動かしながらそのまま、エリザのおっぱいにダイブ。といってもすぐ目の前におっぱいがあるから、おっぱい顔面ぐりぐりコンボをすぐに発動した。


「ちょっ……きゃ!」


 ぐりぐり、ポヨョ〜ン、ぐりぐり、ポヨョ〜ン。


 エリザは突然のことで何が起こったのか理解できず、きょとんとしていた。

 次第に状況を理解できたのか、ぐりぐりする俺を眺めながらフォークをゆっくりうどんの器の上に置いた。


「……はぁ、まったくもう。信じられない。あなたは何をやってるのよ」


 俺はエリザに首を掴まれ、ぷらーんぷらーんと揺れている。


『……うぐ……面目ない……』


「はぁ……もう、いいわ。ほら食べるわよ。まだ、たくさん残ってるんだからね」


 エリザは寛大であった。


 ――これで悪女って言われてたんだよな……他の奴らの目は腐ってるわ。


『……エリザすまん』


「気にしてないわよ。ほら、食べるわよ」


 その後、二人で海老天うどんを美味しく頂いた。

 騎士たちからは声をかけられることなく、暫く座っていると、再び馬車は動き出した。


『なあ、エリザ。どれくらいで国境を越えるんだ?』


「多分3日くらいだと思うわ。前に騎士たちがそんなことを話しているのを聞いたことがあるわ」


『ふむ。ということは、ここはまだローエル領なんだな』


「そうね。明日には隣のトーナル男爵領に入ると思うわ」


 ――そうか、なら仕掛けてくるなら、明日以降だろうな。


「でもね、問題は今向かってる方向に隣接する国が二つあるってことなのよ」


『ほう』


「1つは亜人の国ケモール王国、もう1つがゲスガス小国。

 どちらの国も良好な関係とは言えないし、治安も良くないの。

 ケモール王国とは奴隷問題でギスギスしてるから、当然人族に向ける感情は良くないわ。

 ゲスガス小国は内部紛争が絶えず、治安も悪いの。当然こちらの国も食べるために盗賊に身を落とした人々から襲われる恐れがあるわ」


『ふむ』


「どちらにしても、その国には留まらず、その先にあるクルーリ帝国まで行きたいわね」


『ふーん。クルーリ帝国ね』



 さすがはエリザ。王族になるためにしっかりと教育を受けていたので、各国の情勢に詳しかった。

 後は何でもない雑談を交わし、退屈な馬車の中を有意義に過ごした。


 騎士が偶にチラチラ馬車の中の様子を確認しに来るのでマンガやお菓子は出せなかった。

 今は我慢時なので仕方がないと割り切ろう。


 猫がお菓子を食べながら本を読んでいたら違和感半端ないもんな。


 有意義と言えば、俺はエリザの趣味や好きなことを無理やり聞き出した。

 もう、と困った顔をするものの、ちゃんと話をしてくれた。


 趣味は令嬢らしく刺繍だったが、好きなことは意外にも体を動かすことだそうだ。


 ――ふむ。


 それなら、お金は俺が魔法で出すから困らないが、少しはハンターの真似事をしてみてもいいかもしれないと思った。ちょうど隣国でハンター登録して身分証をつくる予定だったのだ。少しくらい寄り道してもいいはずだ。


 幸いエリザは護身用に嗜む程度に剣を扱えるらしいし、それに――


 ――こんなに大きいんだ。


 ふと、エリザがおっぱいを揺らしながら剣を振る姿を想像する。


 ――いい……凄くいい。


 エリザのハンター登録は必ずしようとクローは思った。



 そして、俺もつい気が緩み、魔法で出した食べ物の話をきっかけに、俺の前世は人間だったという話をしてしまった。


 まあ、俺が元人間だったからと言って、今のエリザとの関係が変わるわけでもない。


 ただ、“だから悪魔なのに変わってるのね”と一人でうんうん、と納得していた。


 俺を抱く腕が少し優しくなった気がする。


 エリザとの会話が途切れたところで、空はオレンジ色から暗くなり始めていた。


 馬車はゆっくりと停まり、騎士達は野営の準備に取りかかっていた。


「ここで野営するのね」


『そのようだな』


 暫くして、馬車の外からいい匂いが漂ってきた。

 今回はエリザにも食事が出たが、固い黒パンと具の入ってない、味が薄そうなスープだった。


 明らかに外の騎士たちが食べているメニューとは違う。

 俺がその食事に目を向けると、パンとスープの上あたりに文字が急にポップした。


 ――ぬ! これは……


 俺の目には黒カビの生えた黒パンと、腐りかけのスープと表示された。


『エリザ、それは食べたらダメだ。間違いなく体調を崩す』


「どういうことなの?」


 首を傾げるエリザに黒カビの生えた黒パンと、腐りかけのスープだと教えてやり、代わりに野菜炒め定食を魔法で所望してやった。


『こっちを食べよう』


「ありがとう」


『エリザ。明日は少し具合が悪くなった振りをしてみてくれないか?

 騎士たちからは、エリザは今日1日何も食べてないことになっている。

 これで、ここでも何も食べなかったら不自然に思われるからな。

 勿論こっちの黒パンとスープは俺が食べたように処理するな』


「分かったわ。あなたがそう言うなら……そうするわ」


 野菜炒め定食を美味しく頂き、エリザは俺を抱き横になった。

 黒パンとスープは俺の魔法で粉末にして、食べる前の奴らの鍋に入れてやった。

 食べ物を粗末にしたらダメだからな。ちゃんと責任持って食べてもらわないと。


 空になった皿を取りに来た騎士が体調はどうですか?と尋ねてきた。


 何を食べさせようとしていたのか分かっている俺としては、内心ムッと来るも、不安そうにしているエリザを見てぐっと我慢した。


 エリザは“大丈夫ですわ、でも先に横になります”とだけ短く返事した。


 案の定、騎士はニタニタと嫌な笑み浮かべそれを隠そうともせず空いた皿を満足そうに引き取っていった。


 ――ふふふ。いいだろう。


 俺は奴らに対する報復レベルを上方修正した。




 ――――デビルスキャン――――

 所属 悪魔大事典第29号 

 格 ランク第10位

 悪魔 ナンバー960

 名前 クロー

 性別 男性型

 年齢 23歳 

 種族 デビルヒューマン族


 固有魔法 所望魔法 

 所持魔法 悪魔法

 攻撃魔法 防御魔法 補助魔法

 回復魔法 移動魔法 生活魔法

 固有スキル 不老 変身 威圧 体術 信用

 攻撃無効 魔法無効

 所持スキル デビルシリーズ

 契約者 エリザ


 所持値  100カナ

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