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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
何となくハンター編~悪魔争乱序章~
34/114

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更新遅くなりまして、すみません。m(__)m


ブックマーク、評価ありがとうございます。

久し振りに評価貰えました。嬉しいです。


 ――ナナッ!!


 俺が目にした時、ナナの状態は酷い有様だった。


 背中の羽は無く、赤く流れ出た物で、真っ白な空間の地を真っ赤に染めている。


 真っ白な空間だからこそ少し見渡しただけでも至るところに真っ赤な血痕が目に付いた。


 手足は有らぬ方向へと曲がり、魔力で具現化し纏っていた服はすでにない。身体中いたる所に擦り傷やどす黒くなった痛々しい痣が目に付く。

 ナナの顔に色はなく、息遣いはいつ途切れてもおかしくないほど弱っていた。


 ――(クローさま……何か楽しそうな感じなんだよね。あたしちょっと見てくるね。ばいば〜い)


 脳裏に別れ際の天真爛漫なナナの笑顔が過ぎる。


「……ギリッ!」


 ――腹が立つ……


 過程はどうあれナナは初めての配下。俺は思った以上に好き勝手に行動するナナを気に入っていたことに気付いた。


 ――俺の(配下)を……


 胸の奥から真っ黒な衝動が湧き起こる。


 ――(許せん)……許せん!!


 拳を固く握り、奥歯を噛みしめると、莫大な悪気が膨らんでいく。

 真っ黒な衝動も胸の中で段々膨らんでいく。


 ――(許すな)許……る……さ……ん!


 抑えることのできない感情が溢れ出す。


 ――許さんっ!!


 体中から怒気と威圧を含む悪気が溢れているが構やしない。


 それは結界内を満たし、聖騎士たちをも呑み込んだ。


 何やら叫んでいるが、知ったこったちゃねぇ。俺の耳には遠く、何も入ってこなかった。



 ――――

 ――


「「「「ヒィィィィィ……!!」」」」


「ガラルドッ!! ほら、皆もしっかりしないか!!」


 ガラルドは新たに現れた悪魔に殴り飛ばされ地面に落下するも、その勢いは止まらない。


「回復だ、回復魔法を急げ!!」


「は、はいっ!! セイル様」


 ガラルドは落下してからも凄い勢いで転がりつづけ遥か後方止まったが、ピクリとも動く様子が見られない。


 一人の聖騎士はぶっ飛ばされたガラルドへと駆け寄り回復魔法を施しだした。


「が、ガラルドが……たった一発……」


「アイツ、嫌な奴だが、たしかAランク聖騎士じゃ……なかったか?」


「し、知らねぇよ。それより奴を見ろっ!! な、何なのだ、あの悪魔は?」


「お、おい、見ろ! 奴の姿が……」


 新手の悪魔がどんどん姿を変えていく――


 角は鋭く、倍ほどに伸び反り返る。小さく貧相だった羽は、大きく禍々しくも美しい黒翼へと変貌していた。


 尻尾こそ見えてはいないが、翼が大きく広がったせいで、上半身を露わにしているのだが、引き締まった体躯に薄っすらと両腕から浮かび上がっていく悉曇文字のような紋様。その紋様は中心に向けその数を段々と増やしていた。


 このような悪魔見たこともない。


「や、ヤベー。さっきより凶悪になってねぇか?」


「ば、バケモノ!!」


「ち、違うだろ。よ、よく見ろ。あの悪気……奴は第9位の悪魔だ。ど、どこにでもいる、ただの悪魔だろ……」


「へ、へぇ、何だ、た、大したことねぇ……な」


 と言いつつも、聖騎士たちは一歩、又一歩と後退りしていた。

 変に高いプライドと出世欲。聖騎士は互いに弱味を見せたくなかった。


「な、なら。お前殺ってこいよ」


「俺はBランクの聖騎士だ。だ、第9位の悪魔など、Cランクのお前に譲ってやるよ」


「お、俺はいい。こ、今回はお前に譲るわ」


「なんだと……」


「ひぃぃ、おい、や、奴の目が赤に……血だ、血の色だ……」


「何っ!?」


「や、ヤベェ!!」


 新手の悪魔は変貌を遂げ、その瞳が真っ赤に染まっていた。


「お前たち!! 何をしている」


「「「セイル様」」」


 聖騎士たちの視線がセイルに集まる。


「下がれ!! 私の聖域結界を簡単に破った悪魔だ。奴は、ただの第9位悪魔ではない……アークかもしれん」


「「「「アークッ!!」」」」


 高位司祭であるセイルの声に、譲り合っていた聖騎士たちは助かったとばかりに新手の悪魔から距離を取り、高位司祭であるセイルよりも後方へと下がった。


 だが、新手の悪魔を見据えるセイルの額には大粒の汗が流れていた。


 *アークとはクルセイド教団が定めた悪魔階位とは関係なく、上位種や、脅威になり得る悪魔に名付けた名称である。


 ――――

 ――



 怒りが収まらない。寧ろ俺の中で大きく膨らんでいく。


 ――ぐっ! 腹が……立つ……許せ……ん……っ!!


 本能のままに悪気を解放しているが、一向に怒りが収まらない。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 ナナのボロボロの姿が頭から離れない。


 ――(許せん)これはダメ……だ。


 俺はナナのボロボロの姿を見てから、何もかも破壊したい、破壊してしまえ、という本能が、真っ黒な衝動となり胸の奥で蠢いている。


 ――(破壊しろ)ダメ……だ……(破壊してしまえ)ダメ……だ……


 俺は中で理性という感情と破壊の衝動が激しくぶつかっていた。

 だが、理性はすぐに破壊の衝動に押され始める。


 ――(破壊して殺せ!)はかい……こ、ころす……


「……こ……殺ろす……ぐぁぁぁ!!」


 俺は黒い衝動に呑み込まれそうになる自分が怖くなり、思わず叫んだが……


 ――(殺すのだ!!)ぐぬぁぁっ。だ、ダメ……だ……お、俺は……スローライフを……(殺せ!!)……おくる……(殺せ!!!!)……(殺せ!!!!)ころす……


「そうだ……殺さねば……」


 ――……


 湧き上がる黒い衝動は激しさを増し、俺の視界は真っ赤に染まっていた。


 ――(奴らは俺のモノに手を出した……殺す)……


 俺は真っ黒く深い意識の中に沈みつつあった。


 奥深い意識の中ではまだ、所々に明るく光る何かが見える。

 俺がそこに手を伸ばす度に懐かしく暖かい記憶が流れてくるが、それも一瞬のことで、真っ黒な衝動が波のように押し寄せてくると、俺は抗うことができず、次第に自分を保っていた意識が黒い何かに染められていくのが分かった。

 それに身を任せると不思議と心地よい。


 ――(殺って当然のことをした、殺せ)……


 ――(殺せ)そうだ……殺さないと……


 俺は何故か俯いていた顔を上げ聖騎士たちを睨みつけると、まとまっていた聖騎士たちは面白いように俺を怖がり始めた。


 ――クックク、そうだ……


 もう、先程まで粋がっていた聖騎士たちの姿はどこにもない。


 ――もっとだ……これからもっと絶望を与えてやる。


「クックックック!!」


 先程まで苦しく重かった頭と、身体が段々と軽くなっていく。


 ――なんて清々しいんだ……



 ――――

 ―――


「「「ひぃぃぃ、せ、せ、せ、セイル様ぁ!! あ、悪魔がぁぁ!!」」」


「こ、これだけの悪気、私の結界からも漏れているはずです。時間さえ稼げば応援が来るでしょう」


「で、では」


「はい。あれを使用します。まだ試作品ですが、時間稼ぎにはなるはずです」


「「「わ、分かりました」」」


 セイルの合図に三人の聖騎士がセイルを囲み向き合うと、手印を作り魔力を込める。


「「「はぁぁあ」」」


 すぐに聖騎士の作った手印から靄のようなモノが溢れ出しセイルの作った手印にと集っていく。


「ぐうっ……」


 セイルは身体全体から溢れるほどの靄を受けると片手は手印のまま、もう片手を地に当て何やら真言を唱え始めた。


「◯◎▲★□◆……」


 それを確認した残りの聖騎士たちは頷き合うと、セイルたちを悪魔から遮るように前に出たが、顔色は悪く足はガクガクと震えていた。


「や、奴が……」


「お、おいお前しっかりしろ!!」


「だ、だが……」


 ――――

 ―――


 聖騎士たちが何やら始めているが、俺には関係ない。


 ――殺してやるよ……


 俺の頭の中は目の前の聖騎士たちをどう殺すかで一杯だった。


 ――クックク、殺してやる。


 俺は聖騎士へ突貫しようと身を屈めその足を一歩踏み出した……


  カラカラッ……


 ちょうどその時、足下で何やら容器のような物が転がり、俺が踏み出した足で、その何かを踏み潰した。


 バキッ!!


 乾いた何かを踏み潰した音と、その感触に、俺の視線は自然と足下へと向いた。


 ――邪魔…………なっ!?


 視界に入ったモノを見て俺の頭に電撃が走った。

 目の奥には何か熱いものが流れてくる。


「…………これ……は!?」


 俺は、その場に相応しくない代物を踏み潰していた。その踏み潰した物に見覚えがある。


 俺の真っ黒く染まった思考に僅かな光が灯った。


 ――……何故……


 その僅かな光が、真っ黒に満たしていた思考の中に波紋のように広がり、理性という感情と懐かしい記憶が入り込んだ。


 ――何故こんな物が!?


 そう、俺の踏み潰したした物はプリンの容器だった。


 俺は一つ一つ手作りなめらか絶品プリンをナナに渡していたのだが、何度も欲しがるナナが面倒になり、前世で市販されていたプッつるんプリン3個入りを所望し渡した。


 ナナはそれも美味しそうに平らげていた。


 これはその時の容器に見える。ナナは俺が与えた物をカラになっても大事に取っていたようだ。


 ――(プリン、プリン頂戴)


 ナナのプリンを欲しがる声が聞こえた気がした。


 その声に湧き上がっていた真っ黒な衝動が不思議と収まっていく。


 ――ナナ……!?


 ついには真っ黒く靄がかかった意識の中にプリンを美味しそう食べるナナの笑顔が鮮明になった。


 ――……そうだ、俺は……


 気づけば真っ赤に染まっていた視界が元に戻っている。俺はすぐ足下で蹲るナナの前にしゃがみ込んだ。


 ――待たせて悪かったな……


 俺は本能のまま怒りの感情に塗り潰されそうだった己を振り払うように首を振ると、ナナに視線を向ける。


「ふっ」


 俺は思わず口元を緩めていた。


 ――お前の……プリン好きに助けられたよ……


 気持ちが落ち着くと、先程まで俺の心をかき乱していた、黒くまとわり付いていた何かが抜けいく。


 ――ったく、口元にも、変なタレが付いてるぞ……


 ナナの口元を指でそっと拭ってやると、ナナの肩に手を当てた。


『我は所望する』


 ナナの身体が眩い光に包まれた。


 見た目以上にケガが酷かったせいか光が細かい粒子になり、暫くナナの回りを回っていたが――


 すぐにその光の粒子がナナに吸い込まれていく。


 ケガなど何もなかったかのように元のキレイ状態へとなった。

 当然、ナナの可愛いらしい羽も綺麗に戻っていた。


「……ん、んん」


 さすがは悪魔、身体が元に戻るとすぐにナナは目を擦りながら目を覚まし上体を起こした。


 ナナの双丘がぷるんと揺れる。


「あれれ、クロー……さま?」


「ああ、そうだ。ったく。だから勝手な行動はするなと言いたかったんだがな……」


 ナナの頭を一撫ですると、俺の上着を収納魔法から取り出して、ナナの頭に落とした。


「……わっぶっ、クローさま何を……あっ、あたし裸だ」


「ふっ……それを着て、お前は大人しくそこで待っていろ。……すぐ済む」


 言葉を言い終わる前に立ち上がり、聖騎士たちに視線を向けた。


「えっ、あっ、う、うん。(クローさまの悪魔姿、地味だって見せてくれなかったけど……ウソつき……えへへ)」


 ナナは嬉しそうに俺の上着を羽織るとその場にちょこんと座り直していた。


「さあて、誰から相手してくれるんだ?」


 俺は聖騎士たちに向け、威圧を込めて言葉を発するも、視線は忙しく状況を確認していた。


 ――む? あれは? 聖騎士たちの後ろで何をしてる。



 ――――

 ――



「せ、セイル様、奴の悪気が小さくなりました。もしやセイル様の結界が効いてきたのでは?」


 セイルたちを悪魔から遮るように前に出ていた一人の聖騎士がセイルに意見を求めようとした。


「お前黙れ。セイル様が集中できないだろ」


「し、しかし、今なら……」


「今は大事な……「どけっ!! あんな雑魚、俺一人で殺してやる!!」


 聖騎士の言葉を遮り、後ろから一人の聖騎士が割って前へと出てきた。


「が、ガラルドお前…………」


「不意打ちじゃなきゃ俺が、たかだか第9位悪魔如きに、やられるわけねぇんだよ」


 別の聖騎士に回復を受けたガラルドは気持ち悪く口角を上げ口元を歪ませると、ゆっくりと悪魔に向け聖剣を構えた。


「ふははは、セイル様の結界で力が湧き上がるぜ。悪魔はやっぱ殺さないとな。

 生きて捕らえるなど、糞食らえ!! 反吐が出る」


「ガラルド、奴はアークかもしれん……ここは、セイル様たちと……」


「んあ!? 知るかよ、んなもん!!」


 ――――

 ――


「あの聖騎士が一人で……来るか」


 俺の目の前に一人の聖騎士が聖剣を突き出し飛び出してきた。動きはトロい。

 よく見ればこいつはナナに蹴りを放っていた奴だと分かった。


「お前か……」


 聖騎士の聖剣が光を放ち出したが、構うことはない。


「アハハハッ……お前死ねよ、聖剣術、聖……」


 ガラルドが己の間合いで得意とする聖剣術を放つ正にその時、俺は一瞬にしてガラルドの目の前に跳躍した。

 ガラルドの間合いが一瞬にして俺の間合いへと変わった。


「ほらよ」


 俺は掌底を軽く突き上げる様に鳩尾に打ち込むと――


 バキッ!!


 聖騎士の鎧を簡単に突き破り、ガラルドの生身まで突き刺さった。


「ガハッ!!」


 ガラルドの身体はくの字に曲がり簡単に重力に逆らい浮き上がった。


「おっと、どこに行くんだ……」


 俺は浮き上がった聖騎士の右足を掴み今度は、地面へと叩きつけた。


「……よっ!!」


 ドゴォォーン!!!!


 隕石でも落ちたかのような爆音と衝撃が響き渡り、陥没した地面に一人の聖騎士が白目を剥いて倒れていた。


 手足は有らぬ方向を向いている。


 いくら丈夫な聖騎士の鎧を身に纏っていようと全身に受ける衝撃には耐えられなかったようだ。


 ――ふん。


 別の聖騎士達から悲鳴とも取れる声が聞こえたが、聖騎士たちから仕掛けられた今回の喧嘩、俺から止めるつもりはない。


「さて、次は誰だ?」


 

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