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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
何となくハンター編~悪魔争乱序章~
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ブックマークありがとうございます。


皆様のお陰でブックマーク100件になりました。嬉しいです。

 ー悪魔界・某城ー



「ほう……」


「……いかなる処分も甘んじてお受けします」


 事の顛末を語った、セバスが片膝をつき頭を垂れる。


 黒く霞みがかった悪魔が禍々しい玉座に足を組んで座っている。

 セバスはその間ピクリとも動かない。いや、動けない。


「……」


「……」


 セバスは頭を垂れているため、相手の表情が確認できないが、放たれている悪気がセバスの身を削る。


「……」


「……」


 どれほどの時間が経っただろうか……セバスの額には玉のように吹き出した大粒の汗が浮かんでいた。


 並の悪魔ならば、瞬く間に強大な悪気に押し潰され地を舐めているだろう。


「……もういい……下がれ」


 地を這うような低い声がセバスの耳に入る。セバスはすぐに自身が許されたのだと理解したのだが……


「し、しかし……」


 だが、完璧を求めるセバスには納得のいくものではなかった。それだけセバスは今回の出来事を重く見ていた。

 自身の失敗だと、だからこそ、処罰を受けたかった。


「下がれと言ってる!!」


「……っ…………はっ」


 セバスは納得はしてないが、命令には逆らえない。


 セバスは返事をするとすくッと立ち上がり退室していった。

 たが、セバスの顔は屈辱で歪み、強く握り過ぎた拳は色を失っていた。


「イチ」


「はっ!!」


 黒く霞みがかった悪魔がそう呼ぶと、真っ黒なシルエットが目の前に現れた。


「聞いていたな?」


「はい」


「クックックッ。たまに思い通りにならんのも良いものだな、イチよ」


「はあ」


 思い通りに行く方が良いに決まってると思うシルエットの悪魔は言ってる意味が理解できず、気の抜けた返事をした。


「其奴をしばらく監視しろ…………なんなら接触してみても……面白いな」


「はっ、直ちにニコとミコに……」


「……ふむ、ニコとミコか…………たしか4位と5位だったな……」


「はっ、我が一族では中間位ではありますが、腕は確かです」


「そうか……では任せる」


「はっ、では……「っとイチ、待てっ!!」


「はあ?」


「……何もせんのもつまらん……隙あらば殺っていい。簡単に死ぬような(悪魔)ならば時間の無駄だからな……

 その時はナナを回収すれば済む。それだけだ……」


「……畏まりました」


 イチと呼ばれたシルエットは返事と共に姿を消した。


「クックックッ。……しかし、面白い。

 第10位であのセバスを……ククッフハハハッ。

 セバスのあの顔……クハハハッ……」



 ーーーーーーー

 ーーーーーー



『ミコお嬢ガウ』


『じゃあ、前に居るのが奴ガウな』


 木の上から眺めるこの二人の身なりは黒装束に身を包みまるで忍者のようだった。

 黒頭巾が口まで覆い銀色の瞳が爛々としている。頭には黒頭巾の切れ目からツンと真上に飛び出た犬みたいな耳に、たっぷりふわふわの体毛に包まれた尻尾がゆらゆらと揺れる。

 獣人族のようであるが、れっきとした悪魔であった。


 その特徴である角は額からは小さいものが1つある。


 羽は黒装束に隠れて捉えることができないが、黒装束の背の部分には羽を広げるための切れ目があった。



 銀狼悪魔族=シルバーデビルファング族

 隠密、暗殺に長けほとんど表舞台に顔を出すことはない悪魔。悪魔召喚されることはなく、代々上級悪魔に仕えている




 二つのチンチクリン悪魔が木の上からクローたちの行動を眺めていた。

 尻尾をゆらゆらと揺らし覗き込むその姿はとても微笑ましいものであったが……


『……お腹空いたガウ』


『ずっと監視面倒、もう帰りたいガウ』


『そうガウ。ミコ。さっさと殺ってお嬢と帰るガウ』


『ニコ頭いい。早く帰って飯にするガウ』


 きゅるるるる、きゅるるるる、と可愛らしくお腹を鳴らす二つのチンチクリンの会話、その内容はとても物騒なものだった。


『お嬢が奴から離れたです。一人になったガウよ』


『ミコ、今ガウ』


『いつもので殺るガウ』


『分かったガウ。近づいて油断したところをガブッとガウ』


『そうガウね』


 そう言った、二人はもふもふくりくりの小さな銀色の子狼の姿となった。


 ――――

 ――



 俺が村を出ると、妻たちがおっぱいを揺らし嬉しそうに駆け寄ってくる。

 

 たゆん

 たゆん


 妻たちの豊満なおっぱいが揺れに揺れている。


 ――ふむ、元気があってよろしい……


 先ほどの出来事で、もやっとしていた俺の心がリセットされ、癒されていく……俺の口元は思わず緩んだ。


「クロー……良かったわ」


「心配した、ん、だ……よ?」


 マリーが俺の後ろからついてくるナナの存在に気づき首を傾げて立ち止まった。

 続くようにエリザもゆっくりと止まった。


「クロー。その後ろの方は誰です……の?」


 妻たちが俺の後方をチラチラみながらそう尋ねてきた。


「ああ、こいつはな……「はい、は〜い。あたしは悪魔のナナですよ。クロー様の伴侶なので~……ぃ痛~いっ……何すんのっ!!」


 ナナが頭を押さえ涙目で俺を睨んできた。


「お前が紛らわしいことを言おうとするから叩かれるんだ。

 こいつはナナと言って、勝手に俺の配下になった悪魔なんだ」


「ぶぅー、ひどーい。さっきキスしてあげたじゃない」


「ぶはっ!! なっ、違う、あれはお前が勝手に……」


「「じぃぃぃぃ……」」


 俺は妻たちに白い目で見られ距離を取られた。


「お、おい」


 俺は妻たちにもっと素直になってほしいと望んだが、白い目で見られるのを望んだわけではない。

 

 ――ま、まずい……何か言わないと……


「エリザ、マリー……そんな目で見るな、か、間接だよ。間接。しかも不意打ちだったんだぞ」


 まあ、妻たち二人がこんな態度をとってしまうのも無理もない。


 危険な所に向かう俺を悲痛の思いで送り出したはずが、いざ蓋を開けてみればスタイル抜群の美少女を連れて帰ってきた。


 そして、キスまでしたと言う、いったい何があったのか、気になっても仕方ない。というか俺の知識の中では完全にアウトの部類に入ると思う。


「ふええぇ!! あたしとのキスを……ひ、酷いよぉぉ、しくしく……チラ……しくしく……チラ……」


 ナナが両手で顔を覆いわざとらしく泣く真似を始めた。


 みんなの反応が気になるのか、手の隙間からこちらをチラチラ覗いている。


 ーーそんな子供騙し……誰も……


「クロー……女性には優しくしてほしいですね」


「えっ? ちょっとエリザさん……」


「わたしもエリザに同意ですよクロー?」


「ま、マリーまで…………」


 妻たちから更に白い目で見られているような気がする。


 ――いかん。このままでは、いかんぞ。今まで築き上げた俺の信用が……一瞬で崩壊の危機だ。

 この光景……明らかに浮気がバレたダメ男の構図だぞ。


 俺は思わぬ展開に激しく動揺した。


 ――どうする、どうする……はっ!!


「いやいや……エリザ、マリーよく見てくれ。こいつ泣いてな……」


「クロー心配しなくても大丈夫だから。ふふ、これからもちゃんと私たちも見てくれる?」


「何、当たり前のことを……」


「そう、それなら私たち……」


 エリザがマリーに向き、そしてまた俺を見て、諭すようにくすっと笑ったかと思うと……


「……何人増えようが構わないのですよ?」


「へっ?」


 可愛く小首を傾けそんなことを言った。


「うんうん」


 マリーも隣で頷いている。


 ――何、何があった? しかも嬉しそうだ。


 妻達の態度の変わりように俺は段々と訳が分からなくなってきた。


「いや……エリザ。俺は……別に……こいつを……エリザ?」


 エリザは何を思ったのか、先ほどからぽかーんと立ち尽くしているナナにゆっくりと歩み寄っていた。


「私はクローの妻のエリザといいます。こちらのマリーも同じくクローの妻です。人族ですが、よろしくお願いしますね」


「は、はあ」


「3人で力を合わせてクローを支えていきましょうね」


 エリザはナナの片手を取り両手で優しく包むと満面の笑みを向けた。


「ナナさんよろしくね」


 そこにマリーの両手も重ねられた。


「えっ? え~と……」


 元々ナナは、悪戯好きの天真爛漫な性格なのだろう。俺をからかい楽しんでいた風に見えていたが、どうも話があらぬ方向へ進んでしまったらしい。


 どうしてこうなったのかナナ自身もよく分かっていないようであるが……考えを放棄したらしいナナは……


「えへへ。仲良くしようね」


 何だか楽しそうに妻たちと打ち解けている。


「ちょっ、ちょっと待て……エリザ、マリー何を言っているんだ……」


 俺の言葉は3人から聞き流され仲良くお喋りを始めた。


 ーーなんだ、この展開。訳が分からん……まあ、先ほどの気まずかった雰囲気よりはいいんだけどさ……


 俺は大人しく先に御者席に戻ることにした。


「ん!? こんな所に……何故子犬? ……違う、こいつは狼の子供か?」


 二匹のふわふわもふもふした銀色の狼の子供が鼻をヒクヒクさせ、ひょこひょこ俺に近づいてくる。


 いつもならば相手にもしないのだが、今はのけ者にされたように感じ少し寂しい。


「どれ……おおっ!! お前たち逃げないのか? ……野生なのに珍しいな……ふむ……肉食うかな?」


 俺は何故か逃げなかった子狼の態度に嬉しくなり、最高霜降りステーキサイズの分厚い肉を取り出してやった。

 子狼より明らかに大きい。


「ふははは、ほれ食べるか~、ほれほれ」


 二匹の小さな子狼の瞳は、すぐに俺の手にある肉に釘付けになった。


 肉を左右に振れば、子狼の顔もその肉を追って左右に振れる。

 口元はすでにヨダレでベトベトだ。


 ――ぷっ!!


「肉どーこだ。ほれほれ」


「残念、こっちだ。ほれほれ」


 肉を手に子狼と十分に遊んだ俺は、もやっとしていた気持ちがいつの間にか払拭されていた。


「ふははは、ほら褒美をやる。ゆっくり食べろよ」


 二匹の目の前に霜降り肉を置いてやった。


「がぅ」

「がぅがぅ」


 二匹の子狼は目の前に置かれた肉に勢いよくカブリついた。


「お、おお、ちゃんと噛むんだぞ」


 二匹の子狼は自分の体より大きな肉をあっという間にたいらげた。

 食べてる隙に子狼の頭を撫でようと考えていた俺の手は、子狼に触れる前に止まった。


「うおっ、もう食いやがった、早いぞ……」


 まだくれと言ってるのか、可愛いつぶらな瞳を向け、尻尾をブンブン振っている。


「ダメだ。今のも十分大きかった。食べ過ぎは良くないぞ」


 二匹の子狼が、不満そうにする。


「そんな顔をしてもダメだ」


「がぅ」

「がぅがぅ」


 子狼がまるで話し合っているかのように感じたのは一瞬でいきなり俺の腕に噛みついてきた。


「ガァッ!! …………ゥ?」


 更にもう1匹の子狼が俺の首元を噛もうとしてきたのだ。


「おおっと」


 俺は子狼たちを軽くあしらった。


「チビスケ。お前たちも一丁前に噛みつくんだな……ふむ、だがな、まだまだ甘いぞ。ふははは、でもな、いくら不満があろうが、いきなり人様を噛むのはダメだ……どれ、お仕置きが必要だな……よっ、ほれ」


 俺は頭を触れなかった憂さ晴らしも兼ねて二匹の子狼を腹一杯もふもふした。

 子狼たちも気持ちいいのか逃げるようにゴロゴロ転げ回る。


「よーし、よしよしよし」

 もーふ、もふもふもふっ!


「ほらほら、もっと喜べまだまだこれからだぞ」


「よーし、よしよしよし」

 もーふ、もふもふもふっ!


 子狼たちが身をよじっている。気持ちいいのかヨダレを垂らし始めた。


「おっ、気持ちいいか? そうかそうか、じゃあ特別だ」


「よーし、よしよしよし」×10

 もーふ、もふもふもふっ×10


「ほーら、ほらほらほら」×10

 もーふ、もふもふもふっ×10


「あれ? やり過ぎたか?」


 二匹の子狼はよほど気持ちよかったらしく、俺が気づいた時には、だらしなくヨダレとおしっこを垂らし、ピクピクと失神していた。


 ――ふーむ、どうするか。


 さすがに失神した子狼をこのまま放置して他の獣に食べられでもしたら寝覚めが悪い。


「仕方ない……」


 そう思い至った俺は二匹の子狼をひょいと持ち上げ幌馬車の後ろに寝かせた。


「これで、よしっと……ん?」


「可愛いぃぃ」


「まあ!! ほんとね」


「へぇ」


 いつの間にか俺の側に来ていた3人が子狼を覗き込み弾んだ声を上げた。


「どうしたのこの子犬?」


「狼の子供だ。俺が遊び過ぎたら、失神させてしまってな、側に水と肉でも置いとけば、起きたときに勝手に食べてどっか行くだろうと思ってな」


「そっか……そのままだと危ないもんね……でもどっか行っちゃうんだねこの子狼」


「野生の狼だろうからな……」


「残念ね……可愛いのに」


「ふむ」


 だが、この子狼たち、起きてからも暴れ回るでもなく勝手に居座った。


 俺が外に逃がしても、くるりと回り込んで幌馬車に戻ってきている。


 仕方なく、俺たちは二匹の子狼も幌馬車に乗せたまま王都に向かった。



 ――――

 ――


「イチ様、ニコとミコから連絡がありました」


「ほう、早速何か掴んだか? で二人は何と?」


「は、はあ、それが……」


「何だ。口にできないようなミスでも犯したのか?」


「いえ、そういうわけではないのですが……」


「では、早く伝えよ」


「は、はあ……分かりました。では、申し上げます。

 肉美味しいニコ。……もうお嫁に行けないミコ。以上です」


「はあ?」


「ですから、肉美味しいニコ。……もうお嫁に行けないミコ。以上です」


「ど、どういうことだ」


「私にもさっぱりです」


「腕は確かなはずなのだ。も、もうしばらく様子を……見る、か? ヨーコ、御苦労だったな……」


「はっ」


 微妙な空気を察したヨーコと呼ばれた者は、逃げるようにスーッと消えた。

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