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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
何となくハンター編~悪魔争乱序章~
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ブックマークありがとうございます。


更新遅くなりました

すみませんm(__)m

「ちょっと、クローさま。その男に何するの?」


「んあ? とりあえず俺は、こいつに用があるんだよ。起こさないと話ができん」


「えっ!! やめてよ。あたしその男と契約失敗してるんだから、顔も見たくないのよ。そいつすっごい気持ち悪くて怖いんだから……」


「失敗? …………なるほど。さてはお前、悪魔大事典に戻されるのが嫌で俺の配下になったんだな? 配下になれば、自分で契約取らなくてもいいもんな?」


「まっ、まぁ、そんなところね」


 ナナにそう言えば視線を逸らされた。どうやら、少し違うらしい。


 ――はぁ、全く。


「お陰様で俺はお前の分まで納値せねばならんのだぞ……」


「ん~それはいいじゃない。可愛い部下のためよ」


 軽い感じでそう言いながらナナは、悪戯っぽい笑み浮かべ自身の唇に人差し指を当てた。


 ――何をやってるんだか……


 俺はついナナの動かす人差し指を目で追っていた。


「なっ!?」


 完全なる不意打ちであった。


 ナナは、その人差し指をそのまま俺の唇に向かって伸ばしピトッと押し付けてきた。


 所謂間接キスであった。


「な、何をするんだ!!」


「えへへ、何だろうね」


 ――くそぉ~……可愛いじゃねぇか……って違う!! 俺はのんびりやってたんだ、そしてこれからも。

 感情値で苦労するなんて勘弁なんだよ……けしからん奴め……ったく……


 ナナは自身の後ろで手を組み笑って誤魔化すだけだが、俺はナナの不意打ちに動揺し、言葉に詰まった。


「ぐぬっ!」


 ――ええぃ、エリザとマリーが日に2千カナだから……365に乗じて……73……年73万になる……73万……あれ? 余裕じゃん。


 冷静さを取り戻そうと、乱れた思考を、切り替えるついでに年間に獲得できる感情値を確認してみたのだが、意外に余裕があることが分かった。


 ――うーむ。


「ふ、ふん。まあいいさ」


 俺はナナからの視線に背を向け、未だに腰を振っている男に手を向けそのまま回復魔法を放った。


 これが女性だったのなら間違いなく直接触れて優しく回復魔法を施していた。その方が効き目もよく、女性の柔肌に触れ自分も癒され、ウィンウィンの関係って奴だな。


 だが現実は、ままならないものなのだ。ハゲ散らかした頭が特徴の汚ならしい全裸の男。とてもじゃないが触りたいとは思えない。


 そんな散らかした男は、俺の回復魔法の光に包まれるもパーンと弾かれた。


「ふむ……」


「あ~クローさまぁ。そいつしばらくは無理……と思う……

 あたしこう見えても幻術魔法得意なんだよ。えへへ。あ、これ、褒めていいところですよ」


「……」


「ぶー、ふんだ、いいもん。それでその男にはほぼ全魔力を注いで……やっちゃったんだから……

 いくらクローさまがセバスと渡り合えるほど強くても、この魔法に関しては、あたしの右に出るものなんてそうそういないの……

 簡単には回復できないんだよね。えっへん」


 その後もナナが得意気に身振り手振りで長ったらしくウンチク語ってるが「そうか、凄い凄い」と適当に話を合わせて相槌を打ちつつ、そろそろ飽きてきたので所望魔法を展開する。


「まあ……予想外だったのが、クローさまの格が第10位だったって事実ね。ほんとにビックリよね。

 それなのに、あの石頭セバスの手を簡単に捻り上げてるんだから……うんうん……これは大したものよね……「あれれ、オラどうしてただかぁ? なんだかぁ凄んげぇいい夢さぁ見てた気がするだぁ」


 男がふぁ~と背伸びをしながら上体を起こした。


「へっ!? いっ、いやあぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 急に起き上がった男にナナは飛び上がって驚くと、そのまま勢いよく玄関の外まで逃げていった。

 ナナは本当に嫌だったようだ。


 ――どこまで行ったのやら……


「ふむ……んっ?」


 ……と、思ったら、玄関からひょこっと顔だけを半分出して、こちらを覗き込んでいる。

 一応、気になって帰ってきたらしい。


「あんた誰だべ? 勝手にオラの家さ入って?」


 全裸の男が訝しげに俺を睨んだ。


「ん? ああ、俺はハンターだよ。依頼で来たんだ。お前がタゴスケでいいんだよな?」


「そうだ。だどもお前さ勝手にオラの家さ入ったらドロボーだべ。

 そう習わなかったべか? ほら出ていくべや!!」


 ――ちっ!! こいつ、なんか腹立つな。


 タゴスケは立ち上がり俺を追い出そうとしたのだが、何かに気付いた。


「んあぁぁ!! なななっ、オラ裸でねぇか、お、お前さ……」


 タゴスケが頬を紅潮させ恥ずかしそうに前と後ろに手を置き、大事な所を隠し、上目遣いで俺を見る。


「いやいやいや。勘弁しろよ。俺にそんな趣味はねぇからな。

 言っとくが、俺はお前が倒れてたからポーションを使ってやったんだぞ」


 実際は所望魔法であるが、相手に伝わらないのも困るので、いやマジで、俺はカラになったポーションの瓶をズボンのポケットから出し、フリフリと振ってみせた。


「ポーションだかぁ?」


「ああ」


 タゴスケの顔色がみるみる悪くなっていく。


「そ、そだども、お、オラは知らねぇだよ。

 あんたが勝手に使っただよ。オラ、頼んでねぇだかんな。ポーション代なんて払わねぇだよ」


「はいはい、俺が勝手にしただけだからな。それよりほら……」


 俺は依頼で預かっていた、分厚い手紙を投げ渡した。

 勿論近づきたくないからであるが、タゴスケは両手でその手紙を受けとり、股間を露にした。真正面である。

 俺は選択肢を間違ったらしい。


 ――ぐはっ!?


 結構なダメージだ、俺の中の何かがガリガリと削られる感覚に襲われた。


「お、おい。受け取ったなら、これにサインしろ。サインくらいならできるだろ?」


「できるだぁ」


 タゴスケは俺の渡したクレヨンのような物で、ミミズが這ったようなふにゃふにゃサインをした。


「よし、俺の依頼は終わりだ。邪魔した」


 俺はこの家から出たくてさっさと玄関の方に向かった……癒しが欲しい。


「ちょっと待つだあぁぁ!!」


 タゴスケがヌイっと俺の歩みを妨げ前に出てきた。ハゲ散らかした髪が激しく乱れた。


「ぬお!? な、なんだ?」


 ――お前は癒しじゃない……


「オラ字が読めねぇだ、読んでくれねぇだか?」


「はぁ? いつもはどうしてたんだよ?」


「いつもは村長に読んでもらってただぁ」


「じゃあそうしろ」


「無理だぁ。村長は今、身体を壊して町に治療に行ってるだぁ」


「じゃあ、帰ってくるまで待てばいいだろ?」


「こんな分厚い手紙、気になるだよ……お願いだぁ」


 タゴスケも必死だ、俺に纏わり付こうとにじり寄ってくる。全裸で……


「来るな、来るなよ。来いって意味じゃねぇぞ本気で言ってるんだからなっ!!」


「頼むだぁ、お願いだぁ」


 ――こ、怖ぇぇ!!


 なおも全裸の男が迫ってくる。今ならナナの言っていた意味が分かる。


「分かった、分かったから読むだけだからな……」


「ほんとだかぁ?」


「だあぁぁ、ほんとだ、だから近寄るな!!」


 俺はタゴスケから手紙を受け取ると、すぐに距離をとる。そして封を破り中を出した。


「……ええっとだな……こ、これは……」


 内容は催促の手紙だった。

 簡単にまとめるとこうだ。

 タゴスケが服を買ったはいいが、全額支払ってなかったらしい。その額、なんと金貨4枚、つまり400万くらいだ。

 そして、近いうちに奴隷商をタゴスケに送る、それが嫌なら金貨4枚の支払いを早急にしろ、と荒々しく書いてある。


「そ、そんなのおかしいだよ。その場でちゃんと払っただよ」


 タゴスケが手紙の内容に動揺し、慌てふためいた。脂汗も凄い。いつの間にか手に持った貫頭衣で汗を拭ってる。


「ふむ。俺に言われても困るが……そう書いているんだ、お前は本当に店員に払ったのか?」


「違うだ。その時に服を贈った女、アルマにお金を渡しただよ。

 オラ、店の中には入ってねぇだからな」


「なるほど……」


 ――まあ、俺もあの女性専門店に入る勇気はなかったな……しかしアルマって……ん? アルマ? アルマ……どっかで聞いたことがある名前だな……


「アルマが持ってきた紙にもちゃんとサインもしただよ、必要だって言われただから」


 ――恐らく、そのサインをしたのが借用書だったのだろう……


「まあ、何だ。それは、そのアルマって女に嵌められたな、掠め取られたんだよ」


「アルマに限って、そんなはずねえだよ」


 ――ふむ。


「そうか……じゃあ、店に抗議しに行くんだな。まあ、捕まって奴隷商の前に連れていかれるのが目に見えるがな……」


「だども、だども……もうオラはそんな大金持ってねぇだよ。オラ借金奴隷いやだぁ、なりたくねぇだよ」


「そうは言っても……なぁ、今大金って言ったが、その大金である服代はどうやって貯めてたんだよ?」


 ――何でそんな大金持ってるんだよ。


「あれは15年かけて貯めてたお金だぁ。アルマがオラと結婚するさ言っただから、奮発して全財産出して服を贈っただよ」


 ――それなら……あり得るか……


「それは、それは、んで、その女は?」


「ハンターだっただぁ。最後に迷宮さ行くと言って死んだだよ」


 ――死んだ? ふむ、それは恐らくウソだろうな。しかし性格最悪だなそいつ……

 アルマって名前は性格悪くな……ん? アルマ……アルマ……ははん、思い出したわ、カイルのパーティーにそんな名前のハンターがいたわ。納得だな。


 まあ、言わぬが花か……


「そうか、まあ、俺には関係ないけどな」


「だども、だども……」


「死んだんなら仕方がないだろ。その信じた女のために働くのも悪くねぇんじゃねぇの? 借金が無くなれば解放されるんだし。諦めたら?」


「だども、何十年と掛かるだべ、そしたら家も畑も他の者に渡るべ。

 帰ってきても生活できねぇだべよ。どうしたらいいべか、なぁ、なぁ」


 タゴスケ必死な形相で今にも飛び掛かってきそうな勢いだ。じわりじわりと俺ににじり寄る。


「知るかよ。ってこら、来るな!!」


 俺とタゴスケはお互いが一歩寄れば一歩下がるとコントのようなやりとりを繰り返した。


 ――タゴスケは必死なだけで、そう感じるのは、俺の記憶のせいか……


「あ、諦めも肝心だぞ」


「オラ、嫌だよ……嫌だよ……」


 とうとうタゴスケは床に崩れ落ち、両手をつけた。


 タゴスケは俺の真正面にいるため、ハゲ散らかした頭がまともに見える。

 淋しくなったその頭を見てると、少し可哀想にも思えてきた。それに、何故か懐かしい感じもする。


 ――オヤジ……ってあれ……今のは何だっけ?


 急に過ぎった記憶に戸惑っていると、タゴスケが勢いよく顔を上げた。


「……だべ!!」


「ん? ど、どうした?」


「そうだべ。アルマが言ってただ。ダンジョンや迷宮は儲かるって……」


「はあ?」


 タゴスケは勢いよく立ち上がり部屋の角にある汚ならしい物入れを何やらゴソゴソと漁りだした。


「あっただ!!」


 タゴスケは黒ずんだボロボロの地図みたいな物を取り出した。ここから見ても所々破れて使い物にならなさそうに見える。


「なんだそれは? 地図っぽいが……」


「これは、アルマの忘れ形見だぁ。

 何でもえーらんくのハンターしか買えない貴重な地図だって言ってただぁ。

 破けたから新しいの買ったってオラん家に捨てて言っただよ。

 オラ、アルマの匂いがついてたから取ってただよ」


 ――アルマの匂いって……変なことに使ってないだろうな……


「ちょっと貸してみろ。使えるなら俺が金貨4枚で買ってやる」


 ――あの頭を見ると……何だったんだろか?


「ほ、本当だか!!」


「……ああ」


 タゴスケからその地図を受け取り確認すると、ボロボロで所々、破けたり、擦り切れたりして見づらいが、これは間違いなくゲスガス小国の地図だった。何やら書き込みがあるがこの程度なら問題ない。


「ほう」


 この世界の地図は貴重で簡単には買えないようになっている。

 ハンターでもSランクじゃないと買えないと聞いていたが、恐らくアルマが不正に入手したものだろう。

 もしくは、タゴスケのようにギルド職員を騙して……


 ――ふむ。丁度いいか。この世界の地理は全く分かってなかったしな、これなら俺の魔法で修復すれば使える。

 まあ、こいつも騙されていたみたいだしな……

 それにあの頭を見ると……いやいや、無いよなぁ。


「丁度俺も地図を買おうと思っていたんだ。ボロボロだが、使えんことも……ないから、買ってやるよ」


 タゴスケの顔がみるみる喜色に染まる。なんとも忙しい奴だ。


「良かっただぁ、オラ正直字が読めねぇからな、全然意味が分かんねぇかっただよ」


「そうか、ほらよ」


 俺は金貨4枚を所望しタゴスケに手渡した。


「ああ、ああ、ありがとうだがぁ。ありがとうだがぁ」


 タゴスケが土下座して何度も頭を下げた。ハゲ散らかした髪が激しく乱れるも、それでもやめようとせず、何度も何度も俺に頭を下げつづけた。


 ――あの頭を見るとやはり、モヤっとするな。何なんだ。


「気にするな。じゃあな。ちゃんと払えよ…………あと……頑張れ」


 何をとは言わない。


「分かってるだよ」


 これ以上はさすがに絡まれたくないので、さっさとタゴスケの家から外に出た。


「もう。遅い!!」


 すると、膨れっ面で、仁王立ちしたナナが待ち構えていた。


「ぶー、何であんな奴を……」


「さあな……」


「何よそれ」


 膨れっ面でついてくるナナを適当にあしらいながら、俺は妻たちの待つ村の外に向かった。


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