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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
何となくハンター編~悪魔争乱序章~
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説明、補足が多くなってしまいましたm(__)m

『な、なっ!! き、貴様ぁぁっ!! よくも、よくもテンをぉぉぉ!!』


 カン高い声に振り返った俺の視線の先には、人化の解けたキザ悪魔の姿だった。



 その姿は黒い鬼。デビルオーガ族。

 先程倒したテンという青い鬼のマッチョ悪魔もそうだ。青い鬼よりもやや小柄だが、特徴的に反り立った二本の立派な角、盛り上がった筋肉、背中に鉤ツメのついた立派な翼が露になっている。


 ――ほう。


 俺の頭に無機質な音声が響く。


【本年の納値分に感情値が達しました10万カナ納値しますか? Y/N】


 ――ぶっ!! いやいや、今それどころじゃないN、NOだ。


【本年の納値10万カナを保留しました】


 ――ああ……



 ――――

 ――――


 デビルオーガ族(悪魔鬼人族)はその見た目通り頭脳よりも、身体が非常に優れている。

 物事を深く思慮するよりも、強靭な肉体を活かした力業によるゴリ押しを得意とするデビル種族だ。

 また、己の意思により、力を段階的に解放できるが、未熟な悪魔はその力に呑まれる。

 己の力を過信する傾向があり、基本単体での行動が目立つ。


 ――――

 ――――



 このことからも、多少なりとも思慮する能力を持ち合わせていた、キザ悪魔はデビルオーガ族としては珍しい存在だったと言える。 


 ましてや、人族を使い、同種のテンを従わせていた。それはデビルオーガ族の中では異常種とも言えるだろう。


『……ぼ、ぼく……僕の…………僕の計画が……後……2人だった……』


 キザ悪魔の身体が俺を見て小刻みにブルブル震えている。かなりご立腹のようだ。真っ赤な鋭い目が俺を睨みつけている。


『……そうか、そりゃあ残念だったな』


『……きさま……貴様は何者だっ!! 只の人族ごときにテンが殺られるわけねぇ……』


『俺か。やっぱり分からないんだな……俺は……』


 俺は人化を解いた。


 俺の貧相なツノ、羽、シッポが露になった。

格好をつけてみようかとも思ったが……やめた。


 ――締まらないよなぁ……


『……悪魔だよ』


『あ、悪魔だとっ……きさまぁ!! 騙しやがったなぁぁぁっ!!』


『騙してなどいない、勝手に勘違いして襲ってきたのはそっちだ、俺は正当防衛だ』


『グギッ!!』


 キザ悪魔の憤怒の歯軋りは凄まじく数本の歯が欠けて落ちていく、黒い顔なのに真っ赤だ。


『……っ!?』


 だが、キザ悪魔が何かに気づいたのか、真っ赤だった顔がみるみる元の顔色へと変わっていく。


 ――忙しい奴だな。


 俺がキザ悪魔を感心して見ていると――


『……ふぅ、ふぅ…………ハハハ。そうか、そうか。なるほどな。危ねえ、貴様の謀に乗せられるところだったぜ』


 ――何を言ってる?


 キザ悪魔は勝手に何やら解釈し納得したらしい。


『その狡賢さに、貧相さ……貴様デビルヒューマン族だな……どうりで気配が分からねぇはずだ……しかも、悪気が見えねぇってことは第10位の悪魔か…………ハハハ、雑魚……プハッ!』


 キザ悪魔は元々デビルヒューマン族を格下と見ていたのだろう。

 更に俺に悪気が見えなかったことで露骨に小バカにした態度を見せた。


 ――なるほど。勝手に勘違いして冷静さを取り戻しやがったか……




 ――――

 ――――


 デビルヒューマン(悪魔人族)は特質した能力はないものの、何でもそつなくこなすデビル族。能力は平均的で並の下。

 ただ、もっとも個々の能力にバラツキがある種族でもある。 

 更にデビルヒューマン族は身に纏う気配が人族の気配に最も近く人族に紛れやすい。

 弱いくせに狡い、卑怯者と、悪魔界においては蔑視の対象となっている。


 クローの場合、前世の記憶があったため、より人族に近い気配を発することができていた(クロー無自覚)。

 マッチョ悪魔やキザ悪魔が気づけなかったのも無理もないことだった。


 補足……通常、悪魔たちの発する気配は、人族の発する気配とは別のモノで、悪魔が近くにいればお互い気づきます


 ――――

 ――――



 ――しかし、悪気か……そうだったな。


 キザ悪魔は黄色い悪気を纏っていた。

 黄色い悪気は第8位の悪魔を示す。確実に俺より格上の悪魔だと分かっている。


 ――ふむ、気にするほどでもないな。


『……』


『ハハハッ!! そうか、言葉も出ないか……ははん……さては恐ろしくなったか? お前は第10位だもんな、テンは第10位だったが……僕は第8位だ。格が違う。

 この悪気黄(イエローマリス)がその証しだ。もう分かるだろ……貴様に勝ち目はない……アハッ! アハハハハッ』



 悪気の色はただ、悪魔の格を判断するためのモノ。

 自分でわざわざ格を伝えるのが億劫になった上位悪魔が創ったらしい。


 第10位←            →第1位

 無、白、黄、緑、青、赤、紫、黒、銀、金


 これは格が上がる時に色付き悪気(マリス)を賜るらしいが、俺は知らない。俺は第10位で無色なのだ。


『……それがどうした』


『フハハハ、精々虚勢を張るがいい…………貴様はたっぷり……そうだ、テンの分も御礼をしないと……貴様なら……うん、先ずはその女か……女をいたぶって……からの』


 キザ悪魔の視線が妻たちを捉えた。


『ハハハハハハハッ! なんだ……なんだぁぁ……ハハハハ、あっちの女二人から貴様と同じ気配を感じる……貴様の契約者かよ……クヘヘヘッ!!』


 キザ悪魔は俺に向けニヤリと不敵な笑みを浮かべた。捕食者の顔である。


『どうやら僕はツイてるらしい……貴様に契約者がいたとは予想外だったよ……ハハハ。

 貴様を、殺せば契約者は俺のもの。そして対価を得る……そうすれば……僕は晴れて第7位に……そして支配権を得る……』


『ふん……くだらんな』



 ――――

 ――――


 契約者は悪魔にとってモノである。


 契約者は契約悪魔が別の悪魔に殺された場合、殺した悪魔に譲渡される。契約者自身が拒否することはできない。

 しかも、契約は前悪魔との間に履行済とされ対価のみを求められる。故に、譲受された契約者は感情値にされることの方が多い(契約履行済のため命を要求してもペナルティー無し)。

 契約者にとっては理不尽極まりない結果になる。


 中には、楽に稼げるからと、それを目的に活動する凶悪な悪魔も存在する。


 これが、聖騎士などの抗う存在の場合は契約不履行となり契約者は解放される。


 ――――

 ――――



 俺の声など聞いていないキザ悪魔は己の妄想に浸り、言動がおかしくなっていく。


『ハーハハハッ!! よし、いいぞ。いいぞ。僕はこれで支配者になる……フハハハッ!! ……そうだ支配者だ……フフ、ハハハハッ!! ああ、もう、我慢できん……なぁぁ!!』


 どこか狂い気味のキザ悪魔は、マッチョ悪魔より様になったう○こをするような姿勢を取ると力みだした。


『グオオオオォォォォォッ!!!!』


 ミキミキッ!! メキメキッ!! と身体中の骨が軋み嫌な音を立てキザ悪魔の身体が膨張していく。


 角まで一緒に太く長くなっていく。

 

 ――どこまでやるつもりだ。


 だが、待てども待てど一向に治まる気配はない。


『グッ! ガガガッ!! グゥゥゥゥッ!!!』


 すでに腕は丸太のように太く、足はそれ以上に太く鋭いツメが剥き出しとなっていた。

 その姿は体よりも腕や足の方が太く、頭の角が重いのか両手を地につけ、少し前傾姿勢となったとても歪なモノだった。


『ガアアァァァァァァァァァッ!!!!』


 キザ悪魔の咆哮が倉庫全体に響くと、キザ悪魔の纏う気配が一気にはね上がった。


 ――ぬっ!?


 キザ悪魔の身体からは絶えず悪気黄が湧き出ている。


 この量なら、普段感じることのできない人族である妻たちにも目視できるレベルだ。

 だが、これほどの悪気を発すれば当然……


 ――ちっ! この気配……聖騎士かっ!?


 魔力を保有した人族の気配を感じた。それもこの倉庫にすぐに向かってきている。


『ハァハァ、フゥシュー……グフッ、グフフ……どうだ……ボクは、ネズミヲ……狩るにも、ゼンリョクでヤル……ゼ?』


 目の前のキザ悪魔は、こちらに向かってくる聖騎士の存在に全く気付いていない。

 やはり無理な形態で思考が短慮となっている。


 ――時間がないな……


 ふと、妻たちがガクガク震え抱き合っている姿が目に入った。


 ――ぬ!! いかんな……あれは悪気に当てられたか……ラットは? ……ふむ……俺の妨げにならないように回復魔法を自重してるのか……



 悪気は人族にとって有害であった。


 受け続ければ体調不良を引き起こす。受ける時間が長ければ長いほど症状は酷くなる。

 クローの場合、人化によって完全にそれを抑えていた。人化を解いても巧みな操作で自身の体に薄く纏う程度にまで抑えている。

 それが、悪魔からすれば、大した悪魔ではないと侮られる一因となってしまうのだが、クローは知る由もない。



『デビル゛……ヴェ゛ボ ン゛ッ!!』


 俺が妻たちに意識を向けている隙にキザ悪魔は地の底から湧き上がるような低い声を発し両手に二本の硬鞭を具現化させた。


 その硬鞭は前世の記憶にある知識の武器(モノ)よりも1本が長く3メートルほどの長さはある。そして鉄柱のように太い。


 ――鬼に金棒かよ……


 人族が、この硬鞭で殴られれば一瞬でひき肉となるだろう。


 ――まあ、それが人族ならば……だな。


『フゥ、フゥ、フゥ…………ハハ、ヘヘへ』


 キザ悪魔は己の勝利を確信するかのように気持ち悪く不敵な笑いを浮かべた。


『キサマ……オワリ……ダゼ…………ヒャッハッハッ!!』


 キザ悪魔が腰を低く構えると足下の地がミシリ、ミシリと悲鳴を上げはじめボコンッ! と急に陥没した。

 陥没した地は更にクモの巣状にヒビを広げていく。


 キザ悪魔は身体が地に着くか着かないかの所まで腰を深く落とすと、爆発が起こったかのように一気に跳躍した。


『ヒィヤハハハハハハハッ!!!!』


 明後日方向に跳躍したキザ悪魔は、素早く地に着地すると稲妻の如くジグザグに俺を回り込み後方から迫ってきた。


 ――後ろ……


『キエエェェェェェェッ!!!!』


 地が抉れ一瞬にして己の間合いへと持ち込んだキザ悪魔は、カン高い奇声を発し二本の硬鞭をクロスに振り下ろす。


 ――マッチョ悪魔より速い……が……


 俺は上体だけを左右に反らし最小限の動きで避け、己の最も得意とする間合いへと歩を進める。


 ――大振り……舐めてるのか?


 力任せに振り下ろされる硬鞭をスルリスルリと掻い潜り、いとも簡単にがら空きの鳩尾を捉えた。


 後は右拳を突き出すのみ。


『ふんっ!!』


 俺の拳は結果カウンターとなってがら空きの鳩尾に叩き込んだ。


 手加減など一切しない。魔力を籠めた俺の渾身の一撃だ。


 ブチブチッ! ボキボキッ!! ブチブチッ!! 


 俺の拳に確かな感触を残し肉と骨を簡単に断ち切っていく。


 ――ん? 脆い……


 拳がキザ悪魔の身体を突き破ると――


 パァァァーーンッ!!


 内側から何かが弾ける音が響いた。


『ァ……アア……アガッ……アガッ……ガァハッ!!』



 デビルオーガ族は己の肉体を過信し、守りを疎かにする傾向がある。

 その理由は明確で強靭な肉体を持ったデビルオーガ族に打撃はほとんど通らないからだ。痛みに弱いのもそのためだ。



『ヴッ、ヴ、ウグッ……』


 キザ悪魔のお腹に拳大の丸い穴が開いていた。


 開いた穴から奥の景色が見える。背中はもっと酷い、肉や、臓器、背骨などに至る何かしら、身体の後ろ半分、背中のほとんどが吹き飛んでいた。


 ――魔力を込めすぎたか……


『ガッ……バッ…………バ……カ……ナ……』


 背骨がなく、支えのなくなったキザ悪魔は己の腹を確かめようと、視線を下ろすも重力に引っ張られドスンッと地を揺らしうつ伏せに突っ伏した。


『マチガイダ……ボグ……ハ……ハチイ……キ……サ……マ、ナ……ドニ……ヤラレ……』


 通常の生物なら即死レベルのダメージなのだが、さすが生命力の高いデビルオーガ族。


 酷い状態にもかかわらず再生を始めている。凄いスピードで逆再生したみたいに身体が盛り塞がっていく。


 ――これは面倒だ……


『ふん、悪いが……お前の話を聞いてる暇はないんでな……』


 ――む!? この気配、あの時の聖騎士か……速い……この距離、誤魔化せるか……


 俺は、右手をキザ悪魔に向けると攻魔:紫炎を使った。いつもより魔力を籠めた攻撃魔法。


『グヘッ……モウ……スコシダ……グヘヘッ……コレハ……ナニカノ……マチガイ……マッテロ……グハハ……モウスコシデ……』


『さよならだ。紫炎!!』


 キザ悪魔は再生に注力し魔力障壁も何もなかった。


 超再生により身体に力が入り手応えを感じたキザ悪魔は、うつ伏せのまま細く微笑み反撃の機会を窺っていた。


 まさか、己が死ぬなどと微塵にも考えてなかった、キザ悪魔は不敵な笑みを浮かべたまま、シュッと蒸発し消滅した。


 後には紫色の蒸気が少しだけ漂いすぐに消散した。


 ――ふぅ。


 クローの頭に無機質な音声が響く。


【悪魔アシュラムより所有感情値を1,180,000カナ獲た】

【悪魔アシュラムの契約者チョビンが譲受された】

【本年の納値分に感情値が達しました10万カナ納値しますか?Y/N】


 ――なっ! ちょっと待て、後にしてくれ。聖騎士が来てる。


【本年の納値10万カナを保留にしました】


 もたつく暇はない、俺はすぐに人化すると震える妻たちに駆け寄った。


「エリザ、マリー。大丈夫か?」


「「く……ろー」」


 二人は必死に何やら言葉を発しようとしているのだが、強い悪気に当てられ、上手く言葉にできないようだった。

 俺は妻たちに回復魔法を掛けようとした……が……


「君は確か、ハンターのクロー……」


 できなかった。俺の耳に凛とした張りのある心地よい声が届く。


 ――間に合わなかったか。


 その声の主は以前、ギルドで挨拶したSランクの聖騎士セリスだった。


 セリスは倉庫の入口からキレイな銀髪を靡かせゆっくりと俺たちの方へ歩み寄ってくる。


 その視線は常に周りを警戒し隙がない。


 静かな倉庫に、セリスが歩を進めるブーツのカン高い音だけが響いていた。




 ――――デビルスキャン――――

 所属 悪魔大事典第29号 

 格 ランク第10位

 悪魔 ナンバー960

 名前 クロー

 性別 男性型

 年齢 23歳 

 種族 デビルヒューマン族


 固有魔法 所望魔法 

 所持魔法 悪魔法

 攻撃魔法 防御魔法 補助魔法

 回復魔法 移動魔法 生活魔法

 固有スキル 不老 変身 威圧 体術 信用

 攻撃無効 魔法無効

 所持スキル デビルシリーズ

 契約者 エリザ マリー

 所持値 1,287,300カナ↑

 使い魔 ラット(ネズミ)

 ――――――――――――――――――

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