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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
何となくハンター編~悪魔争乱序章~
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ブックマークありがとうございます。

 俺たちは、数人の男に囲まれつつ、人気の少ない道を通り、大きな倉庫へと案内された。


 倉庫に入ると更に30人ほどの男に取り囲まれた。ガラが悪い厳つい男ばかりだ。こちらを見下しニヤケた顔が妻たちを舐めるように見ている。と、言ってもクロー装備を身に付けている二人は、顔しか認識されていないのだが……


 ――また俺のエリザとマリーを……不愉快だな。


 この人数だが、俺は気配で分かっていたことなので別に驚くほどではないのだが、エリザとマリーは違う。

 二人はより身を小さくし俺に身体を寄せていた。少し涙目になっている妻たちを可愛いと思うも、これは今の俺が望むところではない。


「で、俺たちに何か用なのか?」


 俺は中央にいる、見た目キザったらしい男に問いかける。その男は、サラサラ髪を何度もかき揚げ、嫌な笑みを浮かべつつこちらを眺めている。


 ――こいつも悪魔か……髪を切れ。


 そのキザったらしい、悪魔(人化してる)が1歩前に出てきた。


「いやぁ、困るんだよね」


「……」


「余計なことをしてもらうと……僕にも計画があるんだよね」


 キザ悪魔がやれやれと言わんばかりに首を小さく振った。


「お前の計画など、俺たちには関係ない。不愉快だな」


「ほう、この人数を見てビビってないのか、言っとくがこいつらは元Bランクや元Cランクの猛者だ。

 お前たちDランクのハンターでは逃げることもできないと思うが。ははん?」


 ――こいつ、俺が悪魔だと気づかないのか?


「何が言いたい……」


「なぁに、ちょっと痛い目にあってもらおうと思ってな……どうした助けてほしいか?」


「はあ? 言ってる意味が分からんが……」


「だから、この状況から助けてほしいか? と聞いている」


 ――なんだ、こいつ、しつこく助けてほしいかってバカなのか、お前たちがこの状況を作ったというのに……ん? ……ああ……なるほど、こいつは悪魔だったな。

 ここから助けることで契約を結び、対価を取ろうって腹か……悪魔規約のグレーゾーンを……


「いや、必要ないな」


「チッ、人が下手に出てりゃあ、調子に乗りやがってっ! お前らやれ! ただし、殺すな、殺さなければ何をしても構わん……女は男の目の前で犯してヤればいいっ!!」


 キザ悪魔の合図に、男たちから歓声や雄叫びのような声が上がった。興奮して股間を盛り上げている奴もいる。


「気が変わったら、両手と頭を地面に擦りつけて命乞いするんだな……まあ、その両手も残っているか分からんがな……ハハハッ!!」


 キザ悪魔の合図で、ガラの悪い男たちが片手に剣を構えニヤニヤ、ニタニタしながら、ゆっくり歩を進めてくる。

 男たちの顔は、お楽しみを想像しているのだろう、だらしなく弛んでいる。


「「クロー……」」


 妻達が不安げに俺を見上げて呟いた。


「大丈夫だ。俺に任せろ。エリザとマリーはここに立っていればいい…………すぐに終わるからな……ラット頼む」


『あるじ……おっけー』


 ラットは俺に命令されて嬉しそうに、くるりっと回ってエリザの頭に駆け登った。


 クローの与えた装備品は規格外。

 ここにいる男たち程度の実力ではエリザとマリーに指1本すら触れることなどできないのだが……過保護なクローはそのことに気付いていない。


「ぎゃはは、なぁにが俺に任せっ……へブシッ!」


 クローの姿が霞むと、男たちの中で一番汚ならしい笑みを浮かべ股間を立てがに股で歩いていた男の体が、あり得ない速度でギルュュュ……と横回転し、地に伏した。


「何やって……ぐぇぇぇ…………ろろろろろ……っ!」


 次に、何かを叫ぼうとした男は体をくの字に曲げ口から滝のように汚物を撒き散らしながらグルンッと白目を剥いた。


「お、お前、汚ねぇ……ガハ……ッ!!」


 更に隣で叫んでいた男は背中に強い衝撃を受けそのままべちゃっ! と音を立て、汚物のある地を舐めた。


「おいおい、汚ね…………アガッ!!」


 そのまた隣の男は顎に強い衝撃を受け、糸の切れた人形のようにカクンッと膝から崩れ落ちた。


「まあぁ……」

「ほぇぇ……」


 エリザとマリーは、男たちがバタバタ勝手に倒れていく何とも不思議な光景にボーッと立ち尽くしていた。


「な、な、何なんだ。お前は……」


「……さあな?」


 ものの数秒で立っているのはキザ悪魔と、マッチョ悪魔だけとなっていた。


「くそっ! 何のために人族を使ってたと思ってるんだ、くそくそっ!! これだから人族は……おいっ! テンお前が遊んでやれっ!!」


「えっ! 兄貴……俺っスか。俺、手加減できないっスよ」


「ダメだ。規約がある。

 なぁに、息さえしてればいいんだ……その後に、勝手に死ぬ分には規約に触れないさ…….

 分かったか!? そこだけだ、そこだけ気は付けろよ。計画が狂うからな……」




 ――悪魔には絶対的な行動規約がある――


 どういう経緯でこのような規約が盛り込まれたのか、一般の悪魔には知る由はない。

(もちろんクローも一般の悪魔に該当する)


 そしてこれは睡眠学習により、全ての悪魔に刷り込みされているモノだった。

 その一部に〜


 エサである人族は直接殺してはならない(悪因人含む)。

 ただし、抗う力のある者(聖騎士、司祭などの教団関係者、魔法師、魔法騎士などの国の関係者)は除く。

 また、契約の対価による場合はこれに該当しないとする。限りある資源有効活用せよ。


 ~とあった。


 もちろん反すれば悪魔執行員により制裁を受けることになっている。

 その制裁がどんなモノか知るものは少ないのだが、悪魔格を上げたい悪魔(刷り込みにより普通の悪魔はそのような行動をとる)にとって、その望みが絶ちきれるほどの重大な過失となる事由に該当するのでは? と漠然とだが理解していた。




「チッ、分かったッスよ……もう、面倒ッスね…………ということであんたが悪いんだ…………オモチャニ……ナッテモラウヨ?」


 マッチョ悪魔(人化してる)が俺を見て、ヘラヘラと気味の悪い笑みを浮かべ両手の関節をポキポキ鳴らし始めた。


 悪魔の本性が見え隠れしているのか、目の色が変化し赤色っぽく染まっていた。


 ――規約ねぇ……ああ、直接人族を殺ると悪魔行動規約がどうのこうのって習ったな(睡眠学習)……おっと……そんなことより……こいつも俺が悪魔だと気付いてないとは……


「そんな趣味はないんでな……断る」


 マッチョ悪魔は俺の言葉を聞きニヤと口角を上げると、腰を落とした瞬間姿がブレた。


 ――おお、なかなかの動き……だが……


 俺は1歩も動かず、マッチョ悪魔が突きだしてきた右正拳突きを左手でパシュッと受け止めると――


 ベキバキッボキッ!?

「……ほらよ」


 そのまま握り潰した。マッチョ悪魔は痛さに慣れていないのか、右手を押さえながらゴロゴロ地面を転がりながら呻き声をあげた。


「ぐぎぎぎぃぃっ!? ば、バカな…………な、な……ぜ…………聖騎士……でもない……ハンターごときに……はぁ、はぁ、イイダロウ……」


 そう言ったマッチョ悪魔の潰した拳がすぐに治り、身体がメキメキと音を立てて膨張して、背も俺の2倍ほどに高くなった。

 肌は青く額からは二本の角が顔を出している。

 その角は反り立つように伸びていき30㎝くらいの立派な角になった。正直格好いい。

 ふと、俺自身の角を思い浮かべた。


 ――くっ!? ……羨ましくなんてない。


 そして背中にも立派な鉤ヅメのある格好いい翼が生えている。青鬼みたいな悪魔だ。


 ――ぬっ!? くっ、くそ……


 何故か色々(悪魔として)負けた気のした俺が、悔しく思い唸っていると、それを見たマッチョ悪魔が満足気に高笑いしだした。


『どうだ、俺は悪魔だったのだ……恐ろしかろう……恐ろしかろう……フハハハ、泣いて詫びるか? エエ? ……フハハハ……でも、許さない……オモチャニなって……モラウぜ……フヘッ、フヘヘ……』


 笑いは段々と狂ったようになり、真っ赤な瞳が俺を睨んだまま突貫してきた…………ように見せ、俺の間近でガクンッとスピードを落とし体を捻り左足蹴りを放ってきた。


「……何度も言うが……俺も断るっ……」


 明らかにこちらを舐めている、単純な大振りの左足蹴り。フェイントを混ぜ、速度も若干速くなっているが、全然大したことない。俺はひょいと右手で掴むと――


 ベキバキッボキッ!?

「……っぜ!!」


 右足の脛を握り潰した。


 マッチョ悪魔はまた、痛さに慣れていないのか、右足脛を押さえながらゴロゴロ地面を転がっている。


『ぐぇぇぇ、グオオオォォォ…………ゥゥ!?』


 しばし待っていると自己再生したのか、何事も無かったように立ち上がった。


「もう……やめとけ」


『お、オイッ、は、ハンター……ナカナカ、やるではないか…………フヘヘ……いいだろう……』


 俺の忠告を無視したマッチョ悪魔は、ニヤリと口角を上げ、ゆっくりと腰を落とした。


 ――なんだ?


 それはう○こをするような姿勢で、何やら唸り声を上げ息み出した。


『ウウウオオオオォォォォォ!!』


「おいおい……こんな所で……なんてことを始めっ!?」


 すると次の瞬間、マッチョ悪魔の角が更に30㎝ほど伸びた。後ろに……

 角が不自然に長く正直格好悪い。


 それだけだった。


『はぁ、はぁ…………フハハハッ! どうだ。恐ろしかろう。この姿になると俺の強さは1.2倍になるのだ。恐ろしかろう。フハハハッ! どうだ?』


 ――1.2倍……って、また微妙な……


 俺が呆れているのを驚いていると勘違いした、マッチョ悪魔は仁王立ちで胸を張っている。


『恐ろしかろう。恐ろしかろう。でも許して……アゲナイ……ゼェッ!!』


 そう言葉を発したマッチョ悪魔は、凄いスピードで突貫してきた――

 先程より微妙に速くなっているが、俺は身体を捻るだけでヒョイッと躱すと、体が流れガラ空きになっていた鳩尾に拳を叩き込んだ。


 ドゴォォンッ!!

 『グェェェェ……ッ!!』


 地に響く轟音と共に、潰れた蛙のような声が倉庫内に響き渡った。


 ――ふん、アバラも何本も逝ったはずだ。


 マッチョ悪魔は腹部を押さえゴロゴロ転がっていた。


「だ、か、ら、もうやめろ。相手にならん」


『ウグ、ウグェェェェ…ッ! ………ハァハァ……』


 暫くすると、自己再生したのか、何事も無かったようにスクッと立ち上がったマッチョ悪魔はニヘラと気持ち悪く笑うとすぐにう○この姿勢をとっては唸り出した。


「ば、バカ。テン止めろ!! お前は、まだ最終形態なんてできねぇだろがぁ!!」


 慌ててキザ悪魔が止めに入ったが、マッチョ悪魔は聞く耳をもっていなかったようだ。


『グヌヌヌヌヌヌヌアアァァァァッ!!』


 メキメキメキッと音を立てマッチョ悪魔の角が更に30㎝ほど伸び太くなった。


 ハッキリ言って頭が重そうである。デコピンでもすればすぐに後ろに転びそうな感じだ。


 ――ふむ……あの角は無いな……


 俺が一人首を振っていると、何を勘違いしたのか、再びマッチョ悪魔が高笑いしだした。


『フゥーフゥーフシュゥ……できたゼ……フハハハ、恐ろしかろゥ、恐ろしかろゥ。これがオレノ最終形態だ。オレモやればデキルんだよ、フヘ、フヘヘヘ。フシュゥ……

 オレハまた、コレで1.15倍強クナッ……」


 ――1.15倍とはまた微妙な……ん?


 だが、最終形態のマッチョ悪魔は様子は少しおかしい。


 目も先程と違って焦点が合っておらず口は三日月のようにつり上がりヨダレがダラダラと垂れている。というか垂れ流しになっていた。


 ――狂った……か。


『フハハハ……ユルサナイ……バカ……ニシタ……フヘッ、フヘヘ……オマエ……ユルサナイ……ヨ……オマエノ……ゼツボウ、グヘヘヘ……オレニ、ミセル……オマエノ……ゼツボウ……』


 そう言い放ったマッチョ悪魔はニヤリと今までよりも、薄気味悪く背筋が凍りつきそうに感じた。


『ソコダァァ……ッ!!』


 そのマッチョ悪魔は、事もあろうに妻たちに向かって突貫した。


「ぬ!?」


 俺は遅れて追いかけることになったが、アッサリと追い付く。


「愚かだな……」


 二本の長い角を後ろから思いっきり掴むと背負い、地に叩きつけた。


 メキメキッと掴んだ角からは軋む音が聞こえ――


 続けてボゴンッ!! と轟音と地響きが起こった。


 その音の先は酷い有り様で、地面は大きく陥没し叩きつけられたマッチョ悪魔の角は折れている。

 手足の向きもおかしいマッチョ悪魔の意識はなく白目をむいていた。


「俺のエリザとマリーに手を出そうとしたんだ…………さよならだ……」


 ――狂った悪魔は…………戻れない。


 俺はマッチョ悪魔に向かって右手の平を突きだすと野犬に使った、紫炎を使った。


「紫炎っ!!」


 マッチョ悪魔は蒸発するように一瞬で消滅した。


【悪魔テンより所有感情値を102000カナ獲た】


『な、なっ!! き、貴様ぁぁっ!! よくも、よくもテンをぉぉぉ!!』


 カン高い声に振り返った俺の視線の先には、人化の解けたキザ悪魔の姿だった。



 ――――デビルスキャン――――

 所属 悪魔大事典第29号 

 格 ランク第10位

 悪魔 ナンバー960

 名前 クロー

 性別 男性型

 年齢 23歳 

 種族 デビルヒューマン族


 固有魔法 所望魔法 

 所持魔法 悪魔法

 攻撃魔法 防御魔法 補助魔法

 回復魔法 移動魔法 生活魔法

 固有スキル 不老 変身 威圧 体術 信用

 攻撃無効 魔法無効

 所持スキル デビルシリーズ

 契約者 エリザ マリー

 所持値 107300カナ↑

 使い魔 ラット(ネズミ)

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