21
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俺たちは、軽く朝食を摂ると町に向かって馬車を走らせた。
「段々と人が少なくなってるんだよね。この国……」
そう、マリーが俺とエリザに教えてくれた。
確かにすれ違う人は、昨日までいた町の方へ向かう行商人が数人だけ……いよいよ、この国は不味いのでは? と思わずにはいられない。
――まあ、俺たちには関係ないが……しかし……
相変わらず凹凸のある道が続くため、ゆっくりと馬を走らせている。
それでも振動は抑えきれず、俺達はずっと身体が上下に揺られていた。
回復魔法をするまではないが、いい加減お尻が痛いと思った頃、クッションを敷けばいいのでは? と思い至り所望した。
これには2人も喜んでくれた。クッションが有ると無しでは全然違う。お尻の痛みが軽減された。
そうなると余裕のでてきた俺の視線は馬車と一緒に、たゆん、たゆん、と揺れる彼女たちの、いや、もう妻たちだ。妻たちのおっぱいが揺れている。悪くない。凄くいい。おっぱい様様である。
――ふむ。ガタゴト道も捨てたもんじゃない……
と俺は思うのだが、妻たち2人の体調を考えて何度か休憩を入れた。
前世の記憶によれば、俺たちはいま新婚真っ盛りなのだ。楽しく行かねば。無理はいかんよ。無理は……
――妻たちの体調を気遣うのは当然のことだよな。
クローの独占欲はいよいよ、過保護へと変わっていく。
休憩時、何気無く会話を楽しんでいるとマリーが、「この幌馬車、荷台に何も載ってないから馬の負担が少なくていいよね……収納って便利だね」と楽しそうに頭を揺らし――
「あっ! ラットちゃん……」
ラットが大きいチーズをコロコロ転がして遊んでいる姿を見つけキラキラと瞳を輝かせていた。
「荷台に何も載ってない……か……」
そう言われて俺はハタと気付いた。
――ふむ。
そうだ、冷静に考えれば幌馬車で移動してきたのに、その中には何も載ってない。
不自然に思うだろう、最悪、盗賊の仲間だと思われても困る。
――まずい。これで町に入ることができなかったら目も当てられん……まあ、ギルドの依頼書があるからそんなことは起こらないと思うが、何にせよ面倒事は遠慮したい。
マリーの何気無い一言に感謝しつつ、今更ながらそれらしく空の樽二つと、荷物を入れるための大きな木箱を二つ設置した。
――見た目よしっ!!
「ふぅ」
一息つくと、何かと俺を気をかけてくれる妻たちにちょっと癒しをあげたくなった。
――癒し……足りているのか?
俺は妻たちのおっぱいに度々癒されているが、2人は俺をチラチラにこにこ見てるだけ……
――ふむ、心配だ……ここは……よしっ、癒しをやろう。女性の癒しと言えばなんだ? ……甘いもの?
ということで飴ちゃんをプレゼントだ。フルーツキャンディーのたくさん入った、あの懐かしの缶。それを二缶所望する。
「エリザ、マリー。甘いものは疲れが取れるぞ。これを舐めるといい」
――飴ならいつでも舐められるからな。
妻達は飴の入った缶を両手で持ち、こてんと首を傾げていたので、蓋を開けてやりその中から飴を一つ取り出してやった。
――その色はアップルっぽいな……
「まあ、これは……んっ!? ……んんっ!! ……あ、甘いっ」
「んんっ!!」
――ふっ。
期待通り、妻たちは飴玉の甘さに驚いてくれた。
やはり、この世界には甘味が少ないようだ。
目を線のように細くし口の中の飴を幸せそうにもごもごさせていた。
「色んな味が楽しめるから、疲れた時にゆっくり舐めるといい」
飴を頬張りこくこく頷く妻たちは大事そうに飴の入った缶を抱えていた。
それが、いつもより幼く感じてかわいい。やってよかった飴ちゃんだな。
そうそう、マリーには妻に契約更新したところで、俺が元人間だったことを話した。
マリーはそのことに驚きはしたが、納得もしていた。ただ――
「えへへ、クローのいた世界には美味しい物がたくさん。……ふへへ」と色気よりも食いっ気たっぷりのマリーを少し残念な子認定しつつも、すんなりと受け入れてくれたことに感謝した。
その後は順調で、昼頃には次の町にたどり着き、中にもすんなりと入れた。
後ろの荷台が覗かれた時には樽と木箱を設置してて正解だったと思った。
「よし昼飯には少し時間がある。早速、薬師ギルドにポーションを届けて依頼を済ませよう」
「ええ」
「うん、そうだね。薬師ギルドは……えっと……あっ! ほら、あれっ!! あの2階建ての建物だよ」
「ふむ。近いんだな」
エリザには言わなかったが、俺はたった20本のポーションを届けるだけのこの依頼がDランクだったことに少し警戒していた。
だが何事もなく薬師ギルドにたどり着いてしまった。
――ちょっと拍子抜けか?
20本のポーションが入った木箱を手に、ギルドに入った。
――あいつでいいか……
禿げたおっさんが受付カウンターで暇そうにしていたので、少し木箱を持ち上げて見せ、依頼の品を届けに来たことを伝えた。
「お、ちょっと待ってな……担当を呼んでくる……そっちのカウンターにそれを置いて待っていてくれ……」
おっさんに言われたカウンターにポーションの入った木箱を置き待つこと20分……
――おいおい20分だぜ……
「遅いですね」
「そうね」
「うむ」
いい加減待たせ過ぎだと思った頃、偉そうな厳つい親父が出てきて、更にその後ろにはガタイのいい男が2人ついてきた。
「これか……」
偉そうな親父は、それだけを言うと、俺達に見向きもせず勝手に木箱の蓋を開けてポーションを手に取り眺めだした。
「むっ! おかしいなぁ、ポーションの色が薄いぞ……」
そこで、初めて俺の顔に目を向けた。嫌な目だ。腐ってる。
「そうか……だが俺たちは届けるだけだ、依頼書にサインだ」
「困るんだよなぁ……ポーションの中身を抜いて水で薄めてもらうと…………効果が悪くなるんだよね……」
親父がニヤニヤ、ニタニタと嫌な笑みを浮かべている。
――ふむ。なるほどな……
「そうか、それは残念だったな。あの町の薬師ギルドにクレームでも伝えるんだな」
「はあ……分かってないね君は。薬師ギルドの職員がこんなこと、するはずないだろ?」
「……何が言いたい」
「あくまでも誤魔化すか……さすが汚ならしいハンターだ。図太い……
ワシは君たちが、薄めて作った残りの半分を出せと言ってるのだよ。持っているんだろ? ほら、早く残りのポーション20本出せ。
まさか……出せないと言わんだろうな?」
「私たちは、そんな…」
ふにょん
マリーが何やら言い出しそうだったので、右手を出してマリーを制したのだが……
――おおっと。
マリーのおっぱいを触ってしまった。
「……出さなかったら、なんだ?」
「なあに、ちょいと痛い目にあってもらう。この依頼契約も無しだ。制裁は必要だろ? 金で払うなら……それでもいいが……ふむ……女でもいいぞ……」
親父がエリザとマリーを見てニヤニヤ、ニタニタといい加減うっとおしい。
「はぁ」
俺は呆れたように息を吐くと、ポーション20本を肩にかけていた鞄に手を入れ所望魔法で1本ずつ出した。
「これで、良いんだろ。早くサインしろ」
「……な……くっ……だが、ワシを騙そうとしたんだ、報酬は払わんからな」
「ああ、もうそれでいい。早くしろ。面倒だ」
「ぐっ!!」
親父は青筋を浮かべた顔を真っ赤にしながらも、それ以上は何も言い返してこず依頼書にサインをした。殴り書きだ。
「汚い字だな……はい、どうも……」
「ぐっ!!」
更に太い血管を額に浮かべた親父を無視して、俺は素早く、サインされたその依頼書を奪うように取ると、何か言いたげな妻たちの背中を押しギルドを出て馬車へと乗り込む。
「ちょっとクロー。どうして何も言い返さないの?」
「マリー。クローには何か考えがあるのよ」
「いや、特に何も考えてないぞ。まあ、強いて言えば、パーティーでの初依頼だ。達成したかったんだよ」
「クローったら……」
「ぶぅ。それ言ったら何も言えないよ」
「あはは、でも残念ながら……俺たちに用事がなくても……」
俺たちの馬車は数人の柄の悪そうな男たちに囲まれた。一人ムキムキマッチョでえらく目立つ奴がいる。
「彼方さんには用があるみたいだ」
――あいつ!?
一人の男がヘラヘラとこちらをバカにしたような顔で前に出てきた。
「ボスがお呼びだ、ついてこい」
男が顎でこっちだと指示をする。
俺たちは馬車から降り、仕方なしに馬車を薬師ギルドに繋ぎ直した。
「エリザ、マリー、あの中に1人悪魔がいた。予定変更してしばらく様子を見るな。不安だろうが大丈夫だ。俺に任せてろ」
エリザとマリーにそう小声で伝えると、不安そうにしながらも、こくりと頷いてくれた。
悪魔がいることは教えない方がいいかとも思ったが、俺と一緒にいる以上、こんなことはこれから多々あるかも知れない。
俺は勝手ながら少しでも慣れてほしいと思ってしまった。
それでも、やはり妻達は怖いのだろう俺にピタっと寄り添ってくる。
――まあ、2人には手出しさせんよ。
「て、てめぇー……なんてうらやま……」
「おい、どこに行けばいいんだ……早く案内しろっ!」
「ぐっ……ちっ!! こっちだっ!!」
俺たちは、数人の男に囲まれつつ、人気の少ない道を通り、大きな倉庫へと案内された。
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称号 クローの妻(2番目)
名前 マリー
性別 女性
年齢 20歳
体形 ボンッ、キュッ、ボン
固有スキル キョウ運(強運)
弓術 短剣術 狙い
不老
装備品と能力
クローの弓・矢 防御不可:改
クローの短剣 防御不可:改
クローのガントレット 金剛力:改、収納
クローのベルト 認識阻害:改
身体強化:改
回復:改
クローのブーツ 俊足:改、回避:改
保護ネックレス 防護:改、障壁:改、位置情報
クローの指輪 病気耐性
ハンター女服上・下
クローへの依存度(愛情) 100%↑
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