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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
追放されてるっぽい少女編
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ブックマークありがとうございます。


評価もいただきました。ありがとうございます。嬉しいです。


更新遅くてすみません。

今回の更新はもう1話あります。

 ラットは俺の左肩が気に入ったようだ。二本足で立ち上がりきょろきょろと興味深そうに地上を見渡している。


 用がある時は召喚するからと、別れようとしたのだが俺の肩にしがみついて離れなかった。


 そこで俺はピンッときた。多分こいつ(ラット)は、悪魔時代、俺以上に永い年月を、悪魔大事典の中で過ごしたのだろうと――


 彼女たちの笑顔を見て思う、あの空間はやはり寂しい。


 ――他の悪魔がどう思うかは知らんがな……


 まあ、ネズミにしては、おかしいぐらい体毛がもふもふになったせいで、パッと見、ネズミに見えないから、このままでもいいだろう。


「しかしエリザ。ギルドでは助かった、ありがとう。

 あの時は聖騎士からどうやったら穏便に逃げ出せるか思案していたんだ。

 聖騎士や教会に目をつけられたら面倒だからな」


「ふふふ、良かった。クローにそう言ってもらえると嬉しいわ」


「そしてマリー! よく我慢したな。偉いぞ」


「へぇ? 何をですか?」


「ほら、ギルドにカイルたちが来てたじゃないか。聖騎士のケツを追いかけてさ……」


 俺の言葉に首を傾げていたマリーは、思い出したようにポンッと手を叩いた。


「あ、思い出しました。確かに来てましたね。

 わたし、アイナちゃんのことの方が心配で……気にも留めてませんでした、多分、クローが傍にいてくれたから……安心していたんだと思います」


「私も同じね、クローに言われるまですっかり忘れていたわね」


 二人の眼中に、カイルたちは存在しないものとなっていたみたいだ。


 ――ふはは、なんだ、この優越感。何故か嬉しいじゃないか。


 俺の口元は知らぬうち緩み、笑みを浮かべいた。


 ――エリザとマリーが他の男に見向きもしないってことがこんなにも嬉しいとは……ふふふふ。


「そうか。それならいいんだ。昨日の今日だったからな、仲間(・・)として心配していたんだ」


「えへへ、それがですね、自分でも不思議なくらい平気なんですよ」


「そうか、ならいい。なにかあれば俺やエリザに頼れ。なんでも……遠慮なく言うんだぞ」


「はい。ありがとうございます」


 マリーは嬉しそうに顔を綻ばせると、元気よく飛び上がり、俺とエリザに向かってペコリと頭を深く下げた。


「おう、気にするな」


 勢いよく頭を戻したマリーはハニカミ照れくさそうしているが、俺の視線は遅れて戻ってきたおっぱいの揺れに思わず釘付けになった。


たゆん

たゆん


 ――うむ。マリーもおっぱいも元気でよろしい。


「ふふふ、マリーったら」


「それから、昼飯を食べたら、もう一度ハンターギルドに行こうな。

 それくらいの時間だったらさすがにギルドも落ち着いているだろう」


 ――あの聖騎士は要注意だ。俺が悪魔だってことに気付いてないと思うが、無駄な接触は避けるべきだ、早急にこの町を離れよう。


「あの依頼を受けるんですね」


「そうだ。予定通りさっさと依頼を受けて次の町に行く」


「ふふふ、初依頼楽しみですわ」



 ―――――

 ――――



 俺たちは、ギルドが落ち着くまで屋台を食べ歩き時間を潰すことにした。

 昨日、俺とエリザが楽しみにしていてできなかったことだ。


 ――ふははは、初食べ歩きだ。


 そして良い匂いを漂わせた屋台を見つけては、購入して食い摘まんでいった。


 だがしかし!!


 何の肉か分からない焼き鳥モドキは、食欲をそそる良い匂いなのに――


 ――ぬ! ぐぁ!!


 獣臭くて吐き出した。


 気を取り直して次に見つけた、何が入ってるか分からない色の薄いスープ、これも良い匂いを漂わせている。

 だがこれを口に含むと、あら不思議……


 ――ぬ! ぬぬ?


 水っぽい! しかも生温い……


 これは飲み込むことができたが、一口でやめた。


 これならばハズレはないだろうと、焼き芋っぽいものを購入した。

 匂いもほぼ焼き芋。これは当たりだ!

 俺はそう思い、口を大きくかぶりついた……


 ――ぬ! ぐはっ!


 ジャリとした食感と共に、土臭さが口の中一杯に広がった。

 これは呑み込むことができず吐き出した。


 ――ぐぬぬ!


 口直しに、果実水みたいな飲み物を買った。


 ――ぬ!


 これはほとんど水だった。これは普通に飲めた。


「ふぅ」


「はぁ」


 俺とエリザのテンションはだだ下がり思わず顔を見合わせ、「不味いな……」と喉まで出かかった言葉を慌てて飲み込んだ。


 マリーが隣で幸せそうな顔をして口一杯に焼き鳥モドキを頬張り食べているのだ。


 ――ふむ。


 でも不思議だ、人が美味しそうに食べている姿を見ると思わず自分も食べたくなる。


 ――やっぱり美味しいのか?


 俺は手に持っていた焼き鳥モドキをもう一度眺め、かぶりついた。


 ――ぶはっ! 獣臭っ!!


「ふむ」


「うーん」


 隣のエリザも俺と同様に、マリーを見ていたらもう一度食べてみたくなったのだろう、かぶりついたようだが顔をしかめている。

 エリザはなかなか飲み込めないのか涙目になり、ずっと口をもごもご動かしている。


 ――これは……やはり不味い。


 俺はそう思い手に持つ焼き鳥モドキを眺めていると――


「あれ? クロー……それ食べないの? エリザも?」


「あ、ああ」


「え、ええ」


「じゃあ貰うね」


 マリーはひょいひょいと俺とエリザの手から焼き鳥モドキを取り上げ、その食べかけを美味しそうに食べ始めた。


「ふむ」


 ――ダメだ全然足りん。


 とりあえず、お腹に何か入れたい。


 食堂らしい所は二軒しか見あたらなく、客が結構入ってる。今から並んで待つのも面倒くさい。


 ――しょうがない何か出すか?


 今度は、人目がない所を探したが、見える範囲にそれらしき場所が見あたらなかった。


「ふむ、仕方ない」


 俺は露店で見つけた鞄を購入すると、町の中央広場の凹凸に腰掛けた。


 そして、その鞄の中に手を入れ、栄養補助食品ブロックメイトを所望魔法で出した。


 チーズ味に、プレーン味、それにチョコ味だ。


「エリザ、済まない。俺が屋台で食べたいと言ったばかりに……今は人目があるから、とりあえずこれでも食べててくれ……栄養はあるはずだ」


「まあ!? ビスコットみたい。懐かしいわ」


「そうなのか?」


「はい。見た目と色合いだけ……ですけどね」


 どうやら、貴族の世界には似たようなお菓子があったみたいだ。

 それなら人に見られても問題ないな。言い訳はできそうだ。

 エリザは目をキラキラさせながらチーズ味を一口食べた。


「……!?」


 エリザはブロックメイトを口に含んでいるため、無言だが、目を大きく見開き俺に向けた。

 良かった。口元が嬉しそうに緩んでいる。


「美味しいわ」


 エリザはたった一言、それだけを言うとその後はゆっくり、黙々と食べていた。

 時折、水と変わらない果実水を口直しに含んでいた。


「あ〜いいなぁ。わたしも食べてみたい」


 エリザの美味しそうに頬張る姿に気をとられていると、マリーの声が横から聞こえた。


 両手に持っていた焼き鳥モドキは既にない。俺たちが食べられなかった分もきっちり食べたようだ。


「なんだ、マリーも食べて見るか? んっ、しかし、そのお腹は……大丈夫か?」


 マリーのお腹が服の上からでも分かるくらい少しぽっこりしている。


「大丈夫。食べられる時に食べる。これハンターの鉄則です」


「ほんとにか?」


「むっ、クローその顔、信じてませんね。ほら、見てください。まだ全然いけるのですよ」


 そう言ったマリーは俺の前に向き合う形に立ち上がると、急に上着を捲り上げお腹をぺろんと見せポンポンと叩いてみせた。

 マリーの程よく引き締まった腹筋が露になった。


「ほら、ほら、ね? 大丈夫でしょ?」


 見たところ、少し盛り上がっている程度だが、あいにく、人のお腹具合なんてお腹を見たところで分かるはずない。


「マリー、服は別にめくりぁ……」


 ――ぶほっ!?


 マリーは気付いていないらしいが、腰掛けた俺の位置からは――


 たゆ〜ん


 マリーの生のおっぱいがしっかり見えていた。


 周囲からは認識阻害が効いてるのか、誰も気にかける様子は見られない。


 ――当然か……


「んん?」


 マリーは不思議そうに首を傾げた。


 ――いかんいかん。


「い、いや何も……」


 俺は上着は捲らなくても良いと言おうとしたが、慌ててその言葉を飲み込んだ。せっかくだ、もう少し拝ませてもらおう。


「そうだな、確かに……」


 最後にもう一度、お腹じゃなくおっぱい見る。


 たゆ〜ん


「ふむ。元気そ……じゃなく、大丈夫そうだな」


「でしょう」


 首を傾げながら、伺いを立てるように待っていたマリーは俺の言葉にホッとすると、にっこりと微笑みを浮かべた。


「マリー、手を出して」


「えへへ。やった」


 俺はマリーにもこっそりチーズ味とプレーン味、チョコ味を渡した。

 マリーは嬉しそうに受け取ると、初めはチーズ味を1口、かじり固まった。


「‥‥‥‥」


「どうした?」


「おいしい!! な、な、何なんですかこれ……甘くてすごく美味しい!!」


 マリーは手に持つブロックメイトを眺め、そう呟くと、にまにましながら夢中で食べ始めた。


 どうやら俺に話しかけたわけではなかったようだ。


 ――しかし、ブロックメイトでこの反応って、もしかして甘いからか?


 俺もブロックメイトを一口頬張った。


 ――ふむ、想像通りの味だ。しかしそんなに甘くは……ないな。


『主、おれも……たべたい』


 先程まで、焼き鳥モドキの欠片を両手に持ち、口一杯に頬張って食べていたラットの声が聞こえた。


「なんだ、ラット。お前もまだ食べ足りないか‥‥

 ふむ。そうだなラットにはこっちの方がいいか……

固形チーズ、これをやろう」


 鞄の中で固形チーズを出し、小さく千切ってラットに与えた。

 ラットは器用にチーズの欠片を両手で持ってかじり出した。


『主、なんだこれ……うまうま……うまうま。主……ずっとついてく』


「そうか旨いか。ゆっくり食べろよ」


『うまうま……』


「うま、うま?」


 ――あっ!


 ラットの"うまうま"で、俺はハンターギルドの前に繋いだままにしていた馬のことを思い出した。


「エリザ、マリー、食べているところすまんが、ギルドの前に馬を忘れてきた」


「あっ、そういえば、そうですわね。大丈夫かしら?」


「数時間しか経ってませんし大丈夫ですよ。

 基本、町の人も、ハンター達も面倒事は避けますから……ただ、これが1日過ぎるとダメですね。

 確実に盗られてしまいます。

 迎えに来ない=持ち主は死んでいる、そう判断されます」


「なるほど、勉強になるよ。ありがとうマリー」


「えへへ、いいですよ」


 ―――――

 ――――


 食べ終わってギルドに戻ってみると、馬は無事? 繋いだままの放置状態だった。


「すまん、忘れてた」


 馬のたてがみを優しく撫でてやると、心なしか馬の目が涙目になっていた。

 可哀想だったので水とニンジンを取り出して食べさせた。


「ふむ、よし、依頼を受けたら、幌馬車を買うぞ。二頭立ての幌馬車だ」


「まあ! いいですわね。でも……二頭立てですと、あと一頭馬が必要ですわね」


「ああ、馬も買おう」


「え? え? 幌馬車? 馬? ってそんな手軽に買えるものじゃないよ?」


「問題ない。気にするな」


「でも……クローがそう言うなら……気にしないけど……」


「そうよ、マリー。気にしたらダメよ」


 マリーはしきりに首を傾げていた。何故マリーが首を傾げていたのか理解できないが、その後は、無事にハンターギルドで依頼を受けた。


 二頭立ての幌馬車も馬も下手な詮索をされないよう、色を付けて買った。

 やたら手揉みしてくる店主だったが、軽く躱しさっさと次の町に向かう。


「ちょっと……クロー? 水も食料も何も積んでないよ?」


「マリー大丈夫だ。気にするな」


「そうよ。気にしたらダメよ」


「いやいや……気にするよ。これじゃ、ごはん食べられないよ……クロー! クローってば、ほら、エリザも言って……」


 「マリーは心配性だな」と俺はマリーの頭を撫でてやると――


「違いますから……常識ですから……」


 何故かマリーは涙目になっていた。エリザはもちろん可愛いが、頬を膨らませたマリーもなかなか可愛かった。


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