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少し短めです
すみません
『よーし。待たせたな』
俺が使い魔たちと応接室に戻ると、少し疲れた様子のグラッドと、ソファーに腰掛け俺の身体を抱くセラが向き合っていた。
――妙に背中が温かく感じていたのはこれか……
セラに抱かれる俺の身体を少し羨ましく思っていると――
「クロー。待っていたぞ。それで……セラバスさんにあいつらのことを聞いたらもう一つ頼みたいことができたんだが、いいか?」
『頼み?』
「ああ」
『まあ、内容によるが……』
グラッドの言うそのお願いとは、いざという時には、島国の人々をどこかに逃がして欲しいというものだった。
『なるほどな……』
大悪戯はお互いの使用空間が接続されて開始されるのだが、その開始まであと数時間後。
大悪戯は時間制限や参加する人数に制限はない。勝敗が決するまで続けられる。
その勝敗のひとつには、悪戯と同じく管理室にある魔水晶に触れるか、触れられること。もちろん触れたほうの勝ちだ。
そしてもうひとつが、主が討伐されること。戦力差があろうが、とにかく相手の主さえ倒してしまえば勝ちってことだ。
あとは……降伏することくらいかな。意外にルールは簡単なんだ。
ただ、その降伏は、相手に通用すればいいが、通用しなければ敗北した時と同じく、殺られて全て奪われることになる。
そこで、セラに分かる範囲で相手の戦力を確認してもらっていたのだが、相手悪魔は第六位悪魔で、悪魔猛禽族のオヤブサというヤツらしい。
悪魔猛禽族は悪魔なのに飛行速度が速く、鋭い足の爪があるのが特徴で、狙った獲物は逃さない。悪く言えばしつこく執念深いなんとも面倒で厄介な相手だ。
それでいて、配下は十人ほどで第七位格から第十位格までいるらしい。
グラッドは島人を連れて、よく逃げ切れたものだと思ったが、すぐに、泳がされていたとしてもおかしくない? と思い直した。
グラッドの背後に強力な悪魔の存在があるのかどうかを探るために……まあ、ないんだけどな。
その話を聞いたグラッドは、グラッド自身が殺られる可能性があることを考えたのだろう。顔色だって悪い。
「頼む」
少し焦ったように見えるグラッドが、俺のほうを向き直り頭を深く下げた。
『そう、だな……』
グラッドの真剣な表情を見ると、妙に肩の力が入り過ぎているようにも思える。
もちろん、俺は不測の事態は極力回避するよう全力を尽くすつもりだ。だが……
――……逃がして、やるか。まあ、俺たちが大悪戯の最中に、配下たちに動いてもらえばいいことだしな。でもな、その後は知らないってわけにもいかないんだよな……それならばいっそのこと。
俺はすぐにカマンティスから巻き上げた小島を思い出した。
いずれ機会があれば、みんなで泳ぎに行きたいと思っていた俺の理想郷。
ほとんど裸に近い際どい水着を、どうにかして皆に着てもらうつもりだった。
準備だってバッチリだったんだが、その島のことを伝えて少し安心させてやることにしようか。
『俺の支配地に小島がある。そこなら、少し狭いかもしれないが、ほかの悪魔に狙われるってことはないだろう』
「本当か!」
『ああ』
「それは良い考えです。いつでも動けるよう、ナナ様たちに伝えておきましょう」
『ああ、念のためだ。皆にもよろしく言っといてくれ』
「はい」
ソファーに座るセラが、さりげなく俺の頭をふわっと撫でている。
――なんか、やたらと身体を撫でられている気が……
『じ、じゃあ、グラッド案内してくれ。コツン頼む』
「ああ」
『任せるっす』
隣に居るコツンが、待ってましたとばかりに少し膨らんだ胸を張ってやる気を見せてくれるのはいいが、コツンは自分が女の子だという自覚がないようだ。
幽体っぽい身体だけどコツンは全裸なのだ。揺れないけど。
――――
――
「ここが、俺の屋敷だ」
悪魔界を経由してやってきたグラッドの使用空間は、俺の空間よりかなり小さな空間だった。屋敷も小さく、十一人で攻められたら、あっという間に屋敷の中に侵入を許してしまいそうなくらい守り難そうだ。
「これはクロー様。よくぞお越しになられました」
そこへ、執事悪魔族のアクトバスをはじめ、メイド悪魔に管理悪魔が出迎えてくれた。
アクトバスは中性的で顔が整っていて、メイド悪魔は可愛らしいメイド服を着た人形みたい。
管理悪魔は何か獣みたいな姿に化けているようだが、ここにいる配属悪魔たちは、どこか冷たい印象を受ける。
『ああ』
「おや。念話ですか? 何処か調子でも悪いのですか?」
――ほう……
執事悪魔にすら魔導人形だと気づかれなかった。セラはやはり優秀だ。
『少しな。だが大悪戯は全力を出すつもりだ。心配ない』
ここに居る配属悪魔たちは悪魔界に避難して、グラッドやこの空間の心配なんてしていないだろうが、敢えてそう伝えてやった。
「それはありがとうございます。では私どもは仕事に戻りますので、これで失礼いたします」
まあ、それで感情を表に出す執事悪魔ではないことは分かっているが、なんとなく面白くない。
『ふむ』
そして、アクトバスたちは軽く会釈をして屋敷の中に入っていった。
――後ろ姿も、色気がないな……
俺は心から、俺の執事がセラでよかったと思っていると――
「なんかすまない」
横で見ていたらしいグラッドが、申し訳なさそうな顔を向けてきた。
『何がだ? 配属悪魔たちのことか?』
「ああ、なんか愛想もくそもなくて……」
『気にしていない。これが普通なのだろう』
そうは言ってみたものの、俺の配属悪魔たちと比べてしまう。
それに、どう見ても歓迎されているようには見えない。それはグラッドに向ける眼差しを含めてのことだ。
俺は少しグラッドがかわいそうに思えてきた。そこで……
『グラッド。このままだと俺たちはかなり不利だ』
「うぅ」
グラッドも分かっているのか、すぐに言葉を詰まらせた。
『そこでだ。俺がちょっとだけ、この空間に手を加えようと思うがいいか?』
「空間に手を加える?」
『まあ、詳しくは言えないが、俺の力のひとつとでも言っておこうか』
「そう、なのか……」
グラッドは、俺が何を言っているのか理解できないようだったが、すぐに何かを思い出したような表情を浮かべると――
「まあ。どちらにしてもこのままじゃあ侵入を防ぐにも困難なのは分かってる。クローが何かできるのなら頼む」
好きにしてくれ、と言って何かを期待する眼差しを向けてきた。
『了解。任せな。コツン』
俺はコツンに、地面に手をつけるように指示をすると、グラッドには悟られないよう所望魔法を使った。
『我は所望する』
すると、グラッドの使用空間内に次々と壁が迫り上がっていく。
「おわぁっ。ちょっとクロー何をしたんだっ」
『まあ、黙って最後まで見てな』
「……お、おう」
驚くグラッドを放置して、俺はどんどん壁を作っていく。頑丈な壁を……
グラッドの小さな屋敷を取り囲むように、入り組んだ壁が次々と現れ、最後に上空を遮断した。
使用空間内は、別に上空から光が降り注いでいるわけではないので、上空を遮断したとしても暗くならない。
『これでよし』
そうこれは俺が以前考えていた迷路だ。
人数に不利があるなら、少人数で対峙する空間を作ればいいと思ってのことだ。
だが今回は大悪戯ということで、それだけではダメだ。
だから、迷わせて時間を稼ぎつつ、こちらが先に相手の魔水晶に触れてやろう。そう考えて入り組んだ迷路を取り入れた。
ラットたちを魔水晶の前で守らせ。俺とグラッドが相手の魔水晶まで侵入するのもいい。
もちろん相手の悪魔が、グラッドの使用空間に入るのを確認してからになるが……
ちなみに上空の壁は、破壊され上空から侵入できないよう、出来る限り硬い壁になるようにした。
「お前……すげえな」
先ほどまでの不安な顔が一転して、やっと明るい表情をしたグラッドが笑みを浮かべた。
「これならやれる。やれるぞ」
この後、気分の晴れたグラッドが避難する予定にある島国の人々を紹介してくれたが、だれもかれもが、かなりの美人。お色気ムンムンのむっちむちのボインボイン。
特にアネスはその色気がかなりヤバイレベルに達している。俺は必死に妻たちのことを思い浮かべてその場を凌いだ。
これはグラッドの美容スキルによる影響なのだそうだ。しかもグラッドを神のように崇拝しているし。
アネスと島人に言い寄られ、ダラシなく鼻の下を伸ばすグラッドを一瞬でもかわいそうだと同情していた自分を殴ってやりたい。
最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^
次回は「クローボット発進っ! 頑張れコツン」を投稿します。
冗談です。
そろそろ妻たちの日常のネタがたまってきているので、そのうち投稿したいと思ってますm(_ _)m




