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少し短めです。
すみません。
――『コツン、ちょっと来てくれるか』
俺はさっそく魔導人形に憑依してもらおうと使い魔のコツンを呼び出した。とはいっても使い魔たちはいつもこの空間内を自由に動き回っているので念話をすればすぐにやってくる。
『主、およびっす?』
現れた小さなコツンは、呼ばれたことが嬉しいのか、それとも、ただ落ち着きがないだけなのか判断しづらいが、骨だけの羽をパタパタ羽ばたかせながら浮遊すると、俺の顔の位置でくるくると回りだした。
「おお、呼んだぞ」
ただまあ、コツンだけを呼び出したとしても――
『主』
『あるじ』
『ヌシ』
ラット、ズック、ニル、使い魔たちは勝手にやってくる。
「みんなも来たのか。ちょっどいい……」
俺は魔導人形に憑依の件と、グラッドの大悪戯について、その思念を使い魔たちに送った。
『主、任せる』
『まかせる』
『ワカッタ』
使い魔たちは久々の役目だとラットはくるくるとその場で飛び跳ね、ニルは尻尾をゆっくり振っている。ズックはボーッとしてて、よく分からないが、みんなそれぞれ張り切り――
『わぁ、主そっくりっすね……』
コツンはさっそく魔導人形の首の後ろに掴まり、もぞもぞしはじめていた。
『どうだ、できそうか?』
俺が、少し心配になり声をかけてみると、無事に憑依のできたコツンが魔導人形の右手を挙げた。
『主、大丈夫。できたっす』
そしてはコツンは、その証拠にと、応接室をとことこ歩いてみせたり、軽く飛び跳ねたり、身体をよじったり、しゃがんだりと見せてくれた。
あ、言っとくが、もう魔導人形は裸がではない。もちろんしっかりと俺の服を着ている。
まあ、やったのはセラだけど……
俺がやると言ったが、俺にそんなことさせれませんとまったく譲ってくれなくてしょうがなかった。
いつもクールなセラが、その時は楽しそうに見え、手慣れている感じがしたのは気のせいだと思いたい。
――まさかね……
「ああ、私のクロー様が動いてます」
――あれ、おかしい……
顔を紅潮させ、肩をぷるぷると震わせているセラが俺の目の前にいる。
――これも気のせい、だよな……きっと……
俺が両眼を擦っていると――
「ではクロー様、コツンの意識とリンクしてもらってもいいでしょうか」
――ほらな。
キリッとした、いつものセラがコツンを俺の目の前まで連れてきた。
「しかし、これはさすがにバレないか?」
俺は魔導人形の首根っこに掴まっているコツンを指差した。
「コツンの姿が見えているんだよな……」
俺がそう言うと、セラをはじめ、グラッド、ニコ、ミコが揃って首を捻り――
「クロー様、おっしゃってる意味が……」
「クロー、コツン見えないがぅ」
「コツンどこがう?」
「見えないな」
そんなことを言った。
「そう、なのか?」
「はい。でもこれは不思議でもなんでもありませんよ。コツンはクロー様の使い魔ですから」
どうやら見えていたのは俺だけだったらしいが、使い魔と主との関係は、その絆の深さで変わってくるらしいので、こういうことがあっても不思議ではないとセラが言う。
――うーん、そうなのか。あれ、でもコツンは使い魔にする前から見えていたよな……どういうことだ、俺の目がおかしいのか?
まあ、考えたところで答えなんて出てくるはずもない。見えないより見えたほうがいいに決まってるんだ。
そう思った俺はすぐに頭を切り替えた。
「『それじゃあコツン、リンクするぞ』」
思い返してみると、使い魔と意識をリンクをさせるのはこれが初めてではないだろうか。ふとそんなことが頭に過ぎって、少し楽しく感じている自分がいたのだが――
『主とひとつになるっすね』
コツンの念話でなんか台無しになった。
『コツン、リンクだ。意識のリンクだぞ』
「使い魔かぁ……使い魔なら俺もほしいわ」
ソファーに腰掛けたままのグラッドが俺の使い魔たちを物欲しそうに見て呟いていているのを最後に、俺の意識を飛ばした。
――――
――
「主だぁ……」
そんなかわいらしい声が聞こえたかと思えば、俺はぼやっとした幽霊のような女の子の隣に腰掛けていた。
「コツンか?」
「うん。そうっすよ」
俺自身もコツンみたいにぼやっと透けていて不思議な感覚だった。
「主とひとつっすね」
いかがわしい意味にもとれる言葉を吐いた女の子は、ニコやミコとそう変わらない背丈で、嬉しそうに笑みを浮かべている。
「にへへ」
「コツンはこうやって憑依するのか」
「うん」
そんなコツンの手足は、魔導人形のよく分からない素材にめり込んでいるが、その隣にいる俺は、めり込むことなく車の助手席に座っているような感覚だった。
「へぇ、外もちゃんと見えるな……」
前を目線を向ければ普通に外の世界が見える。たぶん、この景色が魔導人形に憑依したコツンが見ている外の世界なんだろう。ほんと不思議な感覚だ。
俺がきょろきょろ外の世界の感覚を確認しているとラットから念話がきた。
『ん、ラット、どうかしたか?』
『主……』
念話を聞くに、どうやらラットたちも俺とリンクしてみたいらしい。
『分かった』
それで憑依をしていないラットたちともリンクしてみた結果、こっちは意外と普通で、ラットたちの背中に股がっているような感覚だった。これが結構楽しい。
俺はこの感覚に早く慣れようとこの空間内を動き回るよう使い魔たちに伝えた。
『セラ、グラッド、ちょっと使い魔との感覚を掴んでくる。すぐ戻るから待っててくれ……とは言っても身体はそこにあるから頼むな』
「はい。お任せください」
「おう。待ってるぞ」
――――
――
クローの意識と、使い魔たちが応接室を出て行ってすぐのことだ。
クローの身体を大事そうに抱くセラの表情が変わる。
「さて、グラッド様。何が目的ですか?」
目を細めたセラがグラッドを睨みつける。
「えっ。せ、セラバスさん突然何? どうしたん……です?」
突然、漂う雰囲気の変わったセラバスを見て、冷や汗の浮きはじめたグラッドが慌てふためく。
「配下の件です」
「配下? 俺、配下いないけど……」
「それはお聞きしましたので存じてます」
「じゃ、じゃあ何、ですか?」
「惚けるのですか?」
「せ、セラバスさん。だから何を……そんな惚けるだなんて。俺には何がなんだか……お願いします。俺にでも分かるように言ってく……ださい」
その様子にウソがないと判断したセラが深く息を吐いた。
「……いいでしょう。ではお答えください。配下が手配できなかったという件のことを……」
「うっ……」
グラッドは思い当たる節があるのか、セラがそう言っただけで顔色を悪くした。
「いくら急だったとしても、我々執事悪魔族が、配下の一人や二人、手配できないはずありませんよ」
「……」
「グラッド様。クロー様ほどではありませんが、感情値も凄い勢いで稼いでいるようですし、何を企んでいるのです。
まさかと思いますが、クロー様を手懐けて配下にしようだなんてバカな考えはありませんよね?」
そう言って笑みを深めるセラだが、その視線は鋭く、グラッドの発言次第では今にでも殺され兼ねない。
それ感じたグラッドは必死に弁解の言葉を選んだ。
「いぃっ!? し、しない。すんわけないし、思ってもいないって」
グラッドが選んで出した言葉どれも理由になっていないが、ウソでもないようだった。
だが、本当の理由を言わないからこそ疑問も残る。クローを想うセラは、グラッドの口を割ろうとさらに圧をかけた。
「では、その理由をお聞かせください。ここで隠しても自分のためになりませんよ」
さすがに、これには顔色を悪くしたグラッドが、ガタガタと口を鳴らし、観念したかのようにゆっくりと口を開いた。
「い、い、い言う。言うから許してくれ」
「それは、話の内容によります」
「そ、そんな……」
「では、言わないつもりですか?」
そこで再び圧を込めたセラに、グラッドは慌てて口を開いた。
「あ、ああ、待って。お、俺、以前のことがトラウマになってて、悪魔を信用できないんだ」
「グラッド様、私をバカにしてるのですか?」
笑みを深めたセラが目を細め、グラッドを射抜かんばかりの視線を向けた。
「いぃぃ!? ほ、ほ、ほ本当なんだよ、ウソじゃない。本当にダメなんだ。俺は悪魔を受けつけない。
側にいるだけだ無性に怖くなるんだ。また、あの空間に送り込まれるんじゃないか、そして、今の幸せ、アネスたちから引き離されるんじゃないかと……怖いんだよ」
「ますます理解できません」
「ウソじゃない、本当なんだって信じてくれ……」
「……はぁ」
頭を深く下げたグラッドを見たセラは、深く息を吐き出していた。
「分かりました。私には理解できませんが、グラッド様はそうなのでしょう。ですがクロー様は悪魔です」
「え、いや、だってクローは……だから……」
グラッドはここにきて、ごにょごにょと口ごもって何らやら言いづらいそうにしている。
そこにはセラも、思い当たる節があり、グラッドが言わないならそれでもいいかと、少し信用のおける人物として評価を改めてみたものの――
「恩人だ。恩人だから……そのうち借りも返したいと思っている」
そんなことを言うグラッドに少し意地悪を言いたくなった。
「では、また、これで借りを作ったことになるのですね」
「うっ……はい」
少しやりすぎたと感じたセラが、話を切り上げようとしたその時、黙って俯いていたグラッドが突然顔を上げた。
「決めた。俺……なる」
「グラッド様?」
「どうせこの先も、俺は配下を持てる気がしねぇ。だが、あの島国だけは護りたい。だから俺は、クローの傘下に入る。入らせてくれ……」
そう言って頭を再び下げた。
「グラッド様。それは、よくお考えください」
今度はセラが困り顔だったが、すぐに、これはクロー様のためになるのかと思案をはじめるセラだった。
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