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更新遅くなりました
すみませんm(__)m
「ニコスケとミココロか……」
「そうがう」
「がぅ」
「ちょっと待っててくれ。今セラと大事な話をしているからな」
「分かったがう……待つがう」
二人が素直に頷いてくれたのはいいが――
「仕事サボれるからいいがぅ」
「そうがう。セラバスは人使いが荒いがう」
「そうがぅ、荒いがぅ。ミコはもうお腹ペコペコがぅ。お肉食べたいがぅ」
「ニコもがう。お肉いっぱい食べたいがう……いつもちょっと足りないがう。セラバスのせいがう」
「……ミコもがぅ。いっぱい食べたいがうのに……」
「そうがう。セラバスのお肉を薄くしてニコとミコのお肉を厚くするがぅ」
「おお……ニコそれがぅ。ついでにナナのも薄くするがうか? ナナはいつもクローを見てて適当に食べてるがぅ。きっと気付かないがぅ」
「決まりがぅ。今日は厚いお肉が食べれそうがぅ」
「がう」
二人からじゃるっとよだれが垂れる音が聞こえると、口元を覆う忍び衣装が少し湿ったように見える。
――おいおい、お前たちはまた……本人がいるところで、それはどうかと思うぞ。俺だって聞こえているんだ、絶対聞こえてい、るぅ……ぃぃ!?
案の定セラはぷるぷると肩を震わせ、ここからでも分かるほどの太い青筋が額に浮かんでいる。
だが、当の本人たちはセラバスを背にしていることもあり、気づいていないというか、別に気にした様子はなく――
「そうがぅ」
それどころか何やら思いついたようで、突然、室内をすたすたと歩き始め俺の傍まで寄ってきた。
「……どうした?」
わざわざ執務机を避けて俺の横まで回り込できたのだから何かあるのだろうと思い、二人が口を開くのを待っていれば、二人は何も言わず、ただ俺の顔をじーっと見上げてくる。
「? 俺の顔に何かついてるのか……?」
「クローと待つがう」
「がぅ」
「俺と?」
二人の意図が分からず眉間にシワを寄せてしまったが、次の瞬間には――
「んしょがう」
「んしょがぅ」
二人は俺の膝の上にちゃっかり腰掛けていた。
「!?」
「ここがいいがう」
「ここで待つがぅ」
「……ほう。やるな」
ぽんぽん
二人の早技に感心しつつ、二人の頭をつい撫でてしまったが――
――あ、これはまずいやつ?
配下、ではないが、許可なく異性の頭を撫でるなど、普通ならセクハラものだ。
ふと、配下には手を出すな、というグラッドの言葉を思い出す。
「がう」
「がぅ」
だが、二人は気分でもいいのだろうか? それとも、こんなこと気にしない太刀なのか?
俺の手を振り払うことなく、両足をぷらぷらさせたり、自分の後頭部を俺のお腹にぐりぐり押し付けてきたり、体重をかけてきて身体をぐりぐり押し付けてきたりと、まるで、飼っていた子犬が自分の縄張りだと言わんばかりに匂いづけしているように見えて、見ていておかしく思う。
――ぷっ……そんなわけないか。
俺も二人が膝の上に腰掛けていたところで、二人は小さいし視界を遮るわけでもない。
このまま好きにさせていてもいいだろうと思った俺だったが――
――ん?
目の前のセラはそうは思わなかったらしい。
「クロー様」
すでに立ち上がりこちらに身体を向けていたセラが笑みを見せる。
「どうしたセラ」
「感情値の入りも安定してきましたので、そろそろ正式にメイドール族を派遣してもらいましょう」
「メイドール族?」
セラの意図が分からず思わず眉間にシワを寄せてしまったが、セラは気にせず話を続ける。
「はい。ちょうどいい機会かと」
さらに笑みを深めて見せるセラだが――
――ぃっ!?
その目が笑っておらず、俺ですらセラから顔を背けたくなるほどの恐怖を感じる。
「せ、セラ……お」
落ち着こうな、と俺が口にしようとした時には、セラがすぐ目の前に立ち二人の頭を鷲掴みにしてヒョイと持ち上げた。
「あうっ」
「がぅ」
「これは捨てておきます」
ふふっと笑みを浮かべるセラに、一瞬だけ見惚れそうになるが、セラの手元からメキメキと嫌な音が聞こえ俺は慌てた。
「よ、よーしセラ。予定を変更しよう。先に二人を交えて話をしような、話」
「そう、ですか? クロー様がおっしゃるのでしたら、そう致しますが……」
そこでセラの手が緩んだのだろう。無事に脱出できた二人が少し涙目のまま俺の両脚にしがみついてきた。
「がう」
「がぅ」
「ふ、二人もそれでいいよな?」
コクコクとすごい速さで何度も頷く二人に、初めから余計なことを言わなければいいのにと、思いはしたが、いつまでも自分の頭を撫で撫でしている二人がおかしくて、二人の頭をもう一度撫でてやった。
――――
――
セラから纏めてもらっていた報告書を元に、その内容を二人に確認した。
ニコとミコの二人は、配属悪魔のメイドール族ではなく、特級悪魔シュラル様、正確には南人界の管理を司る特級悪魔に仕えるシルバーデビルファング族らしく俺の記憶にない種族で、人界で居着いたチビスケとチビコロの正体もニコとミコだった。
たしかに人界にいる二匹は、子狼ですぐに納得もできたが、悪魔の気配がまったくしなかったことには驚いた。
「さて……」
だが実際のところ、俺は二人に騙されていた形になるが、共に過ごし、楽しくもあった。
廃棄悪魔ディディスと戦った時なんて、ナナたちはかなり危なかったが、それも助けられていたわけだし、もしかしたら、他にも俺の知らないところでもっと助けられているかもしれない。
子狼の時なんて、もふりまくって……
「……」
「がう?」
「がぅ?」
なぜか二人は、また俺の膝の上に腰掛けているが、言葉に詰まった俺の顔を不思議そうに見上げてくる。
――ま、まあ、二人がメイドール族ではないことはハッキリしたんだが、できればこれからもいてほしいくらいなんだよな……
「……俺に正体がバレてしまったわけだが、二人はこれからどうするんだ?」
――まあ、今の忍者姿を見れば出て行くだろうことは、なんとなくわかっているんだが……寂しくなるな……
そんなことを思いつつ二人の頭を撫でてやっていると――
「ん? いままでと変わらないがう。正体をバラしたのはシュラル様がう。ニコたちのせいじゃないがう。責任ないがう」
――はい?
「そうがぅ。任務は続行がぅ」
――え?
「に、任務って、俺にバレてんだから意味がないだろう」
「ん、そんなことないがう」
「ないがぅ」
俺が二人を床に下ろし、屈んで二人に目線を合わせれば、二人はブンブンと首を振って否定すると、いままで黙って聞いていたセラが口を開いた。
「これはシュラル様に、クロー様の性格をうまく利用されたのでしょう」
「シュラル様に? 俺の?」
「はい。ある程度気心しれた仲になった今のタイミングだからこそ下手に隠しているよりも正体をバラしてしまったほうが何かと都合がいいと判断されたのでしょう。
現に今、お二人の正体を知ったわけですが、クロー様はお二人を追い出したいとお思いですか?」
――……
「……それは……ないな」
「そういうことです」
「……ふむ。なるほど」
――……でもまあ、この状況は俺の情報がシュラル様に筒抜けになっているってことでもあるのか……
あ、でもこれって、逆に敵対する意思がないとの証明にもなっているわけだから、スローライフを目指す俺としてはありがたいくらい?
「まあいい。何はともあれ、二人にはこれからもよろしく頼むってことでいいのか?」
「いいがう。クローは、ニコの番がうから」
「はあ?」
「違う、ミコの番がぅ。シュラル様もどんどんせくしーあぴーるをするといいって言ったがぅ。許可が出てるがぅ」
「だから、なぜそうなる。お前たちはまだ子ども……ん?」
そして、こんな時に限って来客用のゲートに悪魔の気配を感じる。
だが、それよりも今はちゃんと否定しとかないと大変なことになりそうだと俺の感が働く。
「それで……」
「ニコ、ミコ、後で私からも話がありますが、まずは仕事です。お客様を出迎えなさい」
「い、いや、待て。まだ話が……」
「わかったがう。行くがう」
「がぅ」
「あ、こら」
俺が二人を止めた時には、急に張り切り出した二人が、残像を残して姿を消していた。
――なぜだ、なぜいつも邪魔が入る。
最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^
少しプロットを練り直しました。時間軸の関係で邪魔界は次の章にずらして懐かしい人物を出してみようかと思います。




