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魔王を目指すスケルトン  作者: 単色蓬
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スケルトン 本家スケルトンに、粉砕骨折させられました

 スケルトンつえぇぇぇ!

 なんなんあいつらの白くて硬そうな骨!

 淀んだ空気の満ちた空間にいたくせに!

 清潔で健康的な骨しやがって!

 やっ、やめっ!

 ああっ!

 肋骨が!

 大腿骨が!

 前腕骨がぁぁぁ!


【······敵スケルトンにより、コウジ様の体を維持するために必要最低限の骨の数を下回りました。体の維持ができなくなり、骨は落下します。······粉砕骨折しました】


 ちくしょぉぉぉ!

 俺はこの世界でスケルトンになるんじゃなかったのかよ!

 3層に来てすぐ、横道にそれた行き止まりで待機してるなんて聞いてないぞ!

 しかも何かの骨を武器みたいに持ってるし!

 あの武器にしてる骨硬いわ!


【あの骨は魔王アルクバートの尺骨です】


 えっ!?

 魔王でかくない!?

 あの尺骨1メートル越えてるけど!?


【魔王アルクバートはジャイアントスケルトンキングでした。ちなみに魂は変わってしまったようですが、ここグゴドダンジョンのダンジョンマスターは、アルクバートの肉体を使ったジャイアントスケルトンキングです。所々体の一部が無いのは、このようにダンジョン内に武器として配布されていたようですね】


 弱体化を無視できる程強いってわけですね?

 俺なんか1つの骨がなくなったら粉砕骨折の危機だってのに。

 

【コウジ様は骨密度の関係で問題外ですが、普通のスケルトンを含め、魔力による強化を行っています。隙間だらけの体をしていますが、骨の隙間は魔力の膜がはられており、魔石を直接狙われないようにしています。でなければ剥き出しの魔石に魔法一発で倒されてしまいますから】


 なるほど。

 魔石を残して骨だけバラバラになるから、俺はレイスになれるのか。

 スケルトンとしては0歳なのに、老化による骨粗鬆症が反映されているのはこれ如何に。

 

【あくまで転移してきたのであって、転生ではない。ここがポイントですね】


 『側近』ちゃん。

 レイスがスケルトンより強くても問題ないよね?


【······気を強く持ってください!】


 レイスになった今なら、魔王の骨を持っただけのスケルトンなんて瞬殺できるのに······!


《ファイヤークロー》


 カタカタ顎を鳴らして笑っている、スケルトンの魔石がある左側の肋骨を狙って、中二病時代に秘められし力があるはずと封印していた右手で攻撃した。

 しかしアルクバートの尺骨をギリギリで滑り込まされ、俺の爪を受け止めやがった。

 すると魔法が霧散し、ついでに手を構成していた霊体の魔力まで散り散りになって、空気に溶け込んでいってしまった。

 ······右手が持ってかれたぁぁぁ!


【アルクバートは魔力干渉無効化のスキルを持っていたとされています。自身の魔力すら無効にしてしまうのですが、肉体である骨を鍛え上げ、魔力による防護膜が無くとも強者たり得ていました】


 なにそれ怖い。

 つまりこのスケルトン、手元で魔力が使えなくても、アルクバートの尺骨を武器としてブン回せる力があるってことだろ?

 ······むりむりむりむり。

 スケルトン最強かよ!


【人間の冒険者が定めた規定によれば、スケルトンは雑魚です。S~Fまでランク分けされているようですが、適正はFです。まぁ、このダンジョンにかん······】


 雑魚にすらなれない俺ってなんだぁぁぁ!

 いいぜ!

 やってやるよ!

 見てろよ雑魚魔物、スケルトン!

 お前らなんかバッタバッタ薙ぎ倒してやるからな!


《エクスプロージョン》


 天井爆破で落石狙いだ!

 あの高さなら防げまい!

 あっ!

 あいつ移動しやがった!


「カタカタカタカタ! カタァッ!」


 何のこれしきっ!

 アルクバートの尺骨が魔石に当たれば即死間違いないからな!

 誰がそんな危険なものに近付くか!

 お前も右手を失う辛さを知れっ!


《収束レーザー》


「カタカタ!」


 ────カランッ!────


 痛覚無いから腕が無くなった事に気付けないのか?

 アルクバートの尺骨も落としたんだから気付けよ、まったく。

 ボディランゲージで教えてやろ。

 オマエ、ウデ、キエタ。

 アシモト、カクニン、シロ!


「······ガタガタガタガタ!」


 さっきまでは余裕ぶっこいてカタカタ笑ってたくせに、一瞬で腕落とされたらビビってガタガタ震え始めた。

 表情豊かなやつだな!


【この個体は進化目前なのかも知れませんね。程度が低くとも知性が見られる魔物は、進化が近いと判断してもいいです。スケルトンの上位個体は複数あるので、どの進化先になるのかはわかりませんが】


 えっ、そうなの?

 スケルトンなんて弱い魔物が、進化目前まで頑張ってきたのか······。

 殺したくないなぁ。


【······バッタバッタ薙ぎ倒すのでは?】


 ······考えろ。

 どうすれば殺さないでいい理由になる?

 『側近』ちゃんが納得できる理由を探せ!


【······仲間にしたいんですか】


 同情······それだと他のスケルトンも仲間にしなくちゃならなくなる。

 愛情······いや、あいつただの骨だし。

 父性······産んでねぇよ!

 

【いいですよ別に。私はただの『側近』ですから。助言こそすれ、魔王様の決定にはさからいませんもん。そこのスケルトンを仲間にしちゃえばいいじゃないですか】


 ······『側近』ちゃんの機嫌が悪くなってるぅぅぅ!

 てかなんで機嫌悪くなったの!?

 確かに倒すって言って、すぐ手のひら返したけど!

 助けて、未来のお仲間スケルトン!


 ────そこの君! 俺の仲間にならないか!?────


 ────うえっ!? 頭の中に声が!?────


 ────あー、オレオレ。オレだよ!────


 ────オレオレ詐欺!?────


 ────違わいっ! ん? オレオレ詐欺のことなんで知ってんの?────


 ────あなたこそ! もしかして日本人ですか!?────


 ────あっ、申し遅れました。私、薄井耕史と申します。この世界ではコウジで通しています。────


 ────これはこれは、どうもご丁寧に。私は佐山浩子です。名乗ったの20年ぶりなんで、名前忘れそうでしたよー。────


【これは驚きですね。コウジ様の言葉しかわかりませんが、このスケルトンは元日本人なのですね? ······検索終わりました。彼女も魔王候補ですね。ただ、長年の引きこもりで資格剥奪。現在は野生のスケルトンってところです】


 なんだ、魔王候補って聞いて身構えて損した。

 そうか、引きこもって資格剥奪か······。

 資格剥奪?

 剥奪されることあんの!?


【あります。魔王になるための活動を怠れば、『魔王の因子』が自然消滅し、人間に加担して魔物達に牙を剥き過ぎても、何らかのペナルティが発生します】


 あっぶね!

 そんな話聞いてねぇよ!

 強くなる努力は魔王のための行動だよな!?

 

【自己強化は魔王になるための準備として認められています。なのでコウジ様は何も問題ありません。しかし彼女はダンジョン内を散歩したり、宝を集めたり、寝たりと自堕落な生活だけを送ってきました。剥奪に該当する行動しかとっていません】


 スケルトンのスローライフってか。

 ん?

 それならなんで俺のことを襲ってきたんだ?


 ────なぁ、コウコって呼んでいいか?────


 ────いいですよっ! 私はコウジさんって呼ばせてもらいますね!────


 ────ああ、呼び方はなんでも構わん。聞きたいことがあるんだけど、何でさっきは襲ってきたんだ?────


 ────この強そうな骨を手に入れてから、気が大きくなっちゃって、見るからに弱そうな骨をしているコウジさんなら倒せる! って思ってしまって────


 なるほど。

 魔王の体は武器として使うと精神異常を起こすと。

 でもそのおかげで引きこもりが進化目前まで成長したのか。

 この骨はコウコに持っていてもらうか。

 あ、その前に仲間になるか返事聞いてねぇ。

 

 ────コウコ、最初の質問に戻りたいんだが、俺の仲間にならないか?────


 ────是非! 喜んでお供します!────


 ────物理攻撃に関しては俺よりコウコの方が強そうだから、アルクバートの尺骨は使ってくれ。俺は魔法で援護に回る。────


 ────女騎士ですね! くっ殺ですね!────


 ────コウコ、お前いくつだよ······。────


 ────転移してきたのは16歳の時です! こっちで20年経ってるんでもうおばさんですけどね。────


 1回り以上歳下だった。

 向こうの世界だったら33歳差。

 まぁ、今は骨だし。

 年齢なんか気にしても仕方ないか。


【話はまとまったようですね。『側近』のユニークスキルは、『魔王の因子』と共に消滅します。コウコには私のような存在が居ないでしょう。リンクを確立すれば私とコウコが話すことも可能になります。同意の元、コウコに魔力の譲渡を行ってください。それでリンクができます】


 ほう。

 コウコも『側近』ちゃんと話ができるようになるのか。

 これは『側近』ちゃんの可愛さを広めるチャンスだな!


【かわいっ······、コホン】


 ────コウコ、俺の『側近』ちゃんが話したいって言ってるんだけど、俺とリンクしない?────


 ────リンクするってなんですか?────


 ────よく分からないけど、リンクって言うんだし、繋がるんじゃね?────


 ────······エロ同人みたいに!?────


 ────できねぇよ! ······いや、できてもしねぇよ! 魔力を譲渡しろって言われたから、魔法みたいな何かだろ────


 ────魔力を······はい、いいですよ。リンク、しましょう!────


 ────全く、脳内花畑なやつだな······。魔力の譲渡は魔石にした方がいいだろうし、少し触るぞ────


 ────キャッ! いきなり胸を触るなんて! この変態!────


 ────胸じゃねぇよ! 肋骨だよ! ちょっくら魔石触らせろっ!────


 俺がコウコとじゃれ合っていると、どこからともなく無言のプレッシャーが。

 明らかに犯人は『側近』ちゃん。

 許してくれ、すぐにリンク繋ぐから。

 アルクバートの尺骨を離したから、肋骨の隙間に魔力の防護膜が張っている。

 抵抗しやがってからに!

 体を構成している魔力を右手に集めて強行突破じゃぁぁぁ!


【同意を得ていれば防護膜は消えるはずなんですがね。中身が人間なのが災いして、男性に触られるという点で、心のどこかで拒否してしまっているようです。コウジ様、頑張って屈服させてください!】


 無理矢理魔石に触るとか、襲ってるだけじゃね?

 だがしかぁし!

 押し通る!


 ────ら、らめぇぇぇ!────

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