第4話「発見、のち生活拠点」
その日は朝からマリーに王都を案内してもらってまわった。夜中のこともあったからちょっと気まずい。
対してマリーは「あそこのお店美味しいですよ」「日用品はここで揃います」なかなか楽しそうだ。
僕が街並みに見とれていると横から意識を呼び戻された。
「来人さん?聞いてます?来人さん!」
「ん?ごめん周りにみとれてた。それで、なにかなマリー?」
マリーがもう!っとちょっとむくれる仕草をする。
「もう一度言いますね?昨日狩りをしたモンスターの素材を換金してくるので待っててください。すぐおわりますから」
ほどなくしてマリーが換金所から出てきた。これは昨日の宿でみたことだが、この世界での通貨は銅、銀、金の順で十進法がとられていた
「お帰り。どのくらいになったの?」
「えーと、金貨27枚と銀貨6枚銅貨4枚ですね。こんなもんでしょう。来人さんこの後まだ行かなきゃいけないところがあるのですけど護衛をお願いできませんか?報酬もだします。大きい金額なので用心のためです」
僕は少し悩む。元居た世界じゃ喧嘩事とは無縁だったし武術の類も小学校までやっていた柔道くらいだからだ。でもいざとなれば、力を使えばなんとかなるかもしれない。
「わかった。引き受けるよ任せておいて!」
「良かったー。知らない人より知ってる人のほうが安心できますから。それではいきましょ!ちょっとここから歩きます、ついてきて下さい」
そういいながら僕らが歩き出そうとした時いつの間にいたのかガラの悪いいかにも強盗とみえる男たち3人に囲まていた。前後で挟み撃ちといったとこか。
「わかってるな?抵抗しなきゃなにもしないからよぉ。おとなしくしてくれねーか」
「あーそういうのいいから来れば?」
それを合図に前から強盗Aがナイフを手に突進してくるとき僕はある異変を感じた。見えるのだ、それこそスローモーションのように動きがわかる。動きさえ分かればできる事が増える。そこで強盗Aのナイフを叩き落としそのまま一本背負いで地面に叩きつける。
それを見てか後ろから強盗Bが攻撃しようと猛然と駆け寄ってくる。だがわかるのだ。なぜか音で空間が分かりイメージができる。おそらく地球でいうところのエコーロケーションだろう。ぼくはタイミングよく肘をみぞおちに入れてやる。強盗Bは悶絶しながら意識を手放してしまった。
「う、うごくな!動いたら女を殺すぞ!」
僕は舌打ちをする。マリーに強盗Cがナイフを突きつけていた。油断したなぁ。どうするかねえ。疑わしいが試してみるか。
「まあ、落ち着けよ。お前の後ろから来てるのって、あれ衛兵じゃないか?」
はっ!と強盗Cが振り返るその刹那、僕は地面を蹴る。周りの景色がまるで新幹線のように一瞬でながれ簡単に強盗Cの後ろにまわりこむことが出来た。手刀を首の真横へ直角に叩き込んで意識を奪った。
そんな中で一部始終を見ていたマリーがぽかーんと口を開けていた。
「す、凄すぎます!来人さんは一体何者なんですか!?」
何者って聞かれてもなぁ。現状神様の使いか?困ったな。結局「ただの人間だよ。ささ、先を急ごう!あ、衛兵さんこいつらお任せします」なんて誤魔化すことしかできなかった。
しかし自分でも驚いた。神様は簡単には死なないって言ってたのはこういうことか。常軌を逸脱した身体能力。今のところ視力、聴力、脚力、思い返せば閃光弾を投げた腕力もそうだ。ここまで体感できれば疑うまでもなく身体能力の強化がされているのだろう。それも尋常じゃないほどまでに。
そうして考察を重ねているとマリーの目的地に着いた。
「到着です!ようこそわが家へ!木漏れ日の孤児院はあなたを歓迎します!!」
そういって中へ招き入れてくれた。大きな中庭があり、そこには立派な大木があった。木漏れ日が降るそこには修道福を着たおばあさんが編み物をしている。マリーがおばあさんの元へ歩く。
「ただいまシスター。これが今週の分ね。はい、預けるね」
マリーが金貨7枚を抜き取り、残りをシスターへ預ける。
「来人さん。これが報酬です少ないですけど受け取ってください」
「そういうことなら報酬は断る。その代わりに僕をしばらくここにおいてくれないかな?流石に野宿はしたくないし」
マリーがシスターに了解をとってくれた。僕は心の中でガッツポーズをする。宿ゲット!
僕はしばらくこの木漏れ日の孤児院を拠点に活動することにした。