第3話「魔法の存在、のち宿屋にて」
「それで何でマリーはあのモンスターに襲われたの?」
「はい、恐らく、報復じゃないかと思います。あのモンスターの狩りをして帰る途中でしたから」
この世界には、敵討ちみたいなことをする生物もいるのか等と、感心していて僕は気が付いた。
「そういえば狩りをしてたって割には武器が無いみたいだけどなくしたの?」
「いえ、私は魔法が使えるので。と言ってもこれだけしか出来ませんが」
えい!っとマリーは手元で魔法陣を描き、その場に弓矢のセットを出現させた。
「へぇー。これが魔法か間近でみるのは初めてだ」
すると、マリーは少し首を傾げた。
「?来人さんが私を助けてくれた時に使ったのは魔法じゃ無いのですか?私、てっきり魔法かと思ってました」
「あれは似て非なるものかな。あとこの事は秘密にしてほしい。 理由は聞かないでくれると助かる」
(創造の力はおそらく人前で使ったら混乱を招く。故に詳細は不明にしておいた方が良いだろう)
「話せない理由があるのですね。分かりました無理には聞かないことにします」
気がつくと、日が傾きかけていたので僕は宿はないかと訪ねる。
「それなら王都イーアソスへ行きましょう。ちょうど私も向かっている途中でしたので。あの見えている町が王都です。」
僕らが王都へ到着した頃にはすっかり日も暮れて夜になったころだった。僕はマリーの案内で宿に到着した時になって受付で、ある重大な事に気が付いた。
[お金がない!!!!]
そうこの世界に来たばかりで文無しなのだ。当然どの世界でもお金は必要だ、お金がなければ何も出来やしない。
僕が困り顔をしていると女神が救済の手を差しのべてくれた。
「マスター、二部屋空いてますか?」
すると、サングラスにスキンで口ひげを生やした男が僕に気づいてじっと見てきた。何で見るんだよ・・。ちょっと怖いじゃないか。
「悪いねマリーちゃん今日は一部屋しか空きが無くてねその男と一緒でもいいかい?」
「なら仕方ないですね。それでいいです」
「ありがとうマリー。神に誓って何もしないと約束するよ。お金は必ず返すから!」
「いいですよ!来人さんには命を、助けて貰いましたか……ら」
心なしかマリーの顔が少し赤い。熱でもあるんじゃなかろうか。ちょっと注意しておこうと僕は決めた。
「部屋はそこを曲がって右奥だよ」
そういうとマスターは親指を立てて『グットラック!』とても言いたそうにエールを送ってきた。いやいや!?そういうんじゃ無いからね!?何もしないから!?
部屋に着くとマスターの変な気遣いがみてとれた。二人が余裕で寝れる大きめのベッドと二人分の寝間着、ソファーのような長椅子、明かり取りの窓といった部屋だった。いやいや本当になにもないです。
「マリーはベッド使っていいよ僕はそこの長椅子で寝るから。女の子を長椅子で寝かせるのは男としてどうかと思うからさ」
「はあ、そういう事なら遠慮なく使わせてもらいます。あのー明日、もしよろしければ王都を案内させて下さい!」
マリーの申し出に僕はお願いをする。世界を創るヒントもあるかもしれないし。夜も更けてきたころ二人して眠たくなってきたので準備する。寝間着に着替えて明かりも消す。疲れていたのか直ぐに寝ることができた。
夜中、僕は寒くなって目を覚ました。
「ちょっと寒いな。あれマリーの毛布、はだけてる」
それに気づくと毛布をかけ直してあげようと歩みよる。月明かりに照らされているマリーを見て足をとめる。
「やっぱり、かわいいよなマリーって。おっと毛布かけ直してあげないと風邪引くか」
毛布を手に取りかけようとしたその時マリーが僕のほうへ寝返りをうつ。その時である。男の性には抗えず見えてしまった。男である以上女性の胸には見てしまうもの。そして、ちょっと大きめだったりする。
それに怯んで毛布を床に落とすと同時にマリーが目を覚ます。
状況は最悪だ。僕は毛布をかけようとして落としたまま両手を胸のあたりでフリーズ。目を覚ましたマリーの視点からみれば襲われそうになっているように見えなくもないだろう
次の展開は僕にも簡単に予想することができた。
「い、イヤアアアアアア!!!」
それから朝までの間、僕の記憶はない。ただ起きたときは頬が腫れていた。必死に釈明して納得してもらうまでに時間を要したのはどこの世界も同じことだった。