第15話「ガールズトーク、のち再会」
「おう、マリーおはよう」
「あ、サラさんおはようございます」
「あいつはまだ寝てんのか?」
「来人さんは朝に弱いのでもう少し起きないかもしれませんね」
「ここ最近悪いな飯作ってもらってよありがたいぜ」
「今のところ出来る事が少ないのでせめて料理だけでもやらないといけませんから」
マリーはしっかりしてるけどあいつはと思うとなんかため息が出る。たぶんあいつが野垂れ死なないのはマリーの献身のあってこそだろうな
「なあ、よくあいつに尽くせると思うんだけどよ、マリーにとってあいつはどんな存在なんだ?」
「恩人であり私の大好きな人です。といっても片思いなんですけどね」
「へぇ、いいじゃねーか。でも苦労しそうだな、あいつ恋に鈍感なタイプって感じがするしさ。そういう奴にはまっすぐな気持ちを打ち明けたらどうよ?」
「い、いや。そのまだ勇気がありませんので……」
密かに見守ってあげよう。しかしあいつをそろそろ起こさねえとな。そろそろメシができるころになってきたし
「おらー! いい加減に起きやがれー!」
「ん、サラおはよう。じゃあおやすみなさい」
「寝るんじゃねぇ!」
おもいきり平手打ちを叩き込んでやったらようやく起きた。自業自得だし感謝して欲しいもんだね
さっさとメシを済ませてもう少し魔法具の訓練しとこう。自分の身は自分で守りたいしな、それに自分になにかあって二人が怪我でもしたら自分を許せねぇ
「メシ食ったらまた練習行ってくるよ。昼頃にまた戻る」
「僕もあとから行くから先に行って」
そんな朝の会話をして準備にかかる
街を通るので変装をしていく。赤い髪を三つ編みして普段のラフな格好ではなく白のワンピースを着る。木を隠すなら森の中、周りの人と同じような服装にすれば分かりにくい
練習用の着替えと形見とも言える魔法具を持って昨日と同じ場所へ出発したその道中でぐったりしている女性に出会った
「おばさん、大丈夫……ですか?」
「ありがとう、少し休めば動けるようになるから大丈夫……」
「どうかしましたか?」
「いえごめんなさい。あなたの髪をみて娘の事を思い出してね。私やあなたと同じ赤い髪色をしていたのよ」
「その子はどんな娘さんだったんですか?」
「ひいおじいさんが大好きでいつもくっついて離れないような娘だったわ。よく魔法具職人のひいおじいさんの職場に遊びに行ってたわね」
「もしかして娘さんはお亡くなりになられたんですか」
「分からないの。住んでいたところが襲われて生き別れてしまったから。娘を守ろうと必死に戦った夫は深手を負って助からず私は奴隷商人へ引き渡されたけど大恩人が無理して商人から買い取ってくれた。以来、その方の家政婦を続けているわ」
「娘さん生きていればいいですね……生きていれば歳はどのくらいですか?」
「十八になっているはずよ。あの日からもう十四年たつけれど私は生きてると信じてる。付き合せてごめんなさい、もう動けるわ」
「いえ……良かったら最後にその魔法具職人さんの名前教えてくれますか?」
「アラジンよ。私が仕えてるのはこの近くの貴族様の家なの。またお話しましょうね」
そういってサラは女性と別れてしまった。これ以上平常心で話す余裕がなかったからだ。踵を返しアジトへむかう
「あれ、サラさん忘れ物ですか?」
「悪いしばらく一人にしてくれ……」
そう伝えて自室へと消えた
ああ、ああああああああ! 生きて生きて生き抜いて良かった!! 生きていてくれて本当によかった!!! 奇跡は起こるし突然訪れるんだ!!!! 生きていられたことに感謝します!!!!!
そこで涙腺の堤防が決壊して一日中泣き叫んでいた。少し気持ちの整理が出来て余裕が出来たのはその日の夜だった。
「サラ……大丈夫か……?」
「来人か。なんとか……な、それで何か要かよ」
「何があったんだ。マリーと一緒に心配してた」
戻ってきたと思ったら朝から晩まで泣きっぱなし。ようやく静かになったところで部屋の前まできて僕は声をかけたわけだ
「うん、悪かったな。出かけてすぐ母さんと再会したんだ」
「すごいじゃないか! それで話はできたのか?」
「すこしな。だけど名乗りでることは出来なかった」
「どうして? せっかく奇跡的に再会したなら打ち明けてもよかったんじゃないか?」
「今の立場を考えてみろよ。休業中でもこの国にとっちゃ一介の盗賊だぜ。それが母さんにバレたらあの人の立場はどうなる」
「でも……それでも伝えたいことはキッチリ伝えないと必ず後悔する。次の機会があれば必ず伝えるんだ」
「ああ、こんどはそうする」
僕は一度死んでいるから伝えたくても不可能だ。だからこそ言える言葉はサラに伝えられたと思う。言い残して僕はリビングへいった
事のあらましをマリーにも説明すると複雑だったようで
「そうですか。お母様に再会を。今のサラさんは不安定だと思いますし注意が必要ですね。なんか少しだけサラさんの気持ちも分かるなぁ」
「ねえマリー、サラの友達になってほしいな。君だからこそ共感できる部分もあると思うんだ」
「はい、やってみます。私も今のサラさんは放っておけないですから」
僕とマリーでサラのケアを協力してやっていくと僕たちは決めた




