第12話「空、のち潜伏生活の始まり」
どのくらい離れただろうか。後ろから手下が追ってくる気配はしないので速度を緩める
「マリー、サラ少し休もう」
「だらしないな少しだけだぞ。こんなとこじゃのんびりしてたら追っ手がくるぞ」
「私は大丈夫ですが休みますか?」
「やっぱりいいです……」
え、体力なしは僕だけなの? 三十分以上全力で走り抜いたはずなのにこの子たちは底なしなの? 本格的に体力つけないとまずいな。女の子に劣る体力とか格好悪いし
結局、そのあとしばらく走り続けて十分な距離を確保できたところで一息いれることになった。サラの違和感に気が付いた
「サラ、そういえばそのはめてるグローブと靴いつの間に?」
「これか。さっき取り返してきたんだ。これもひいじいさんがつくった魔法具でな、手分けしてたときに偶然見つけたんだ」
「へえ、どんな効果があるんだ?」
「えーと確か。あった、使用者の部分的な身体能力補助って書いてあるな」
サラが取り出したのは古い手帳だった。なんでも、発明した物のメモらしい。これでランプの存在を知ったという
ちなみにこの発明品の身体能力補助はグローブがライト級ボクサーがヘビー級のパンチを繰り出せるようになるもの、靴が蹴る力を最大20倍まで引き上げるというものだった
「そうだ、どこか潜伏できる場所はないか? このままではいつか見つかってしまうかもしれない」
「それなら街へ行くときに俺が使ってるアジトが王宮の近くにある。ここからは歩いて三日くらい」
「結構距離がありますね。追われてるこの状況ではなるべく体力は温存したいところではあるんですが……」
「じゃあ、いますぐ王宮近くに移動してしまおう」
「「そんなことできるんですか⁉ 『できるのかよ⁉』」」
自分でなんで今まで思いつかなかったと後悔していた。この歩きにくい陸はやめて空をいけばいいじゃないか。
そして現在、王宮方面上空である。ヘリコプターを創り出して快適な空の道を進む。楽ちん楽ちん。操縦は完全自動化してある。ナビに座標を打ち込めば完了だ。おもしろいことに二人の反応は対照的だった。
「すっげぇ! 飛んでるよ! 来人ってスゲーんだな」
「ふえぇ……浮いてます……高すぎますうぅ」
一方は好奇心なのか、はしゃいでいた。かたや一方は座席の真ん中で小動物が震えているようになっていた。僕は笑を堪えるのに精一杯だった
そうこうしているうちに王宮付近の目標地が近づいていた。一時間かからないから科学技術はすごいよなぁ
王宮城下町までやってきて僕とマリーは王宮に度肝を抜かれた。ところどころ金が散りばめられた色彩豊かな外装、中央にドーム型の建物と四角にチェスのルークのような建物、またその奥にひときわ豪華な外装で飾った高い塔があって全体的に派手に作られた城だった。
「すごく豪華だな。相当の権力者なんだろうな」
「イーアソスの王城と比べてとても派手ですごいですね」
「二人ともボケーっとしてると置いてくぞー」
城下町の路地を入った一角にサラが使うアジトがあった。ここは治安部隊の見回りが少なく丁度いい立地なんだそうだ。治安部隊にしてみたら灯台下暗しだろう。なんせ盗賊が潜伏しているわけだし
せっかくこんな大きな街にきたからなにか料理を見つけよう。目的は元々それなわけだし、美味いものがあればメニューに採用しよう。街の案内はサラにやってもらうことになった。
案内の準備があると言って出かけてしまったのでアジトにマリーと二人きりだ。ちなみに彼女はシャワー中なので今だけは一人の時間を過ごしている。これがまた妄想をしてしまって抑えるのも必死だったりする。落ち着け僕不動心を思い出すんだ……。
明日は城下町の散策に出ることになった。お金は無理なく一年は過ごせる額をもってこれたらしく心配無用との事、ヒント探しもしないとな。その日の夜は疲れもきてぐっすり寝てしまった




