《 鼻孔 》 第三回
Rezultato de lia komerco.
( 承前 )
聞いていたこととちがってさっぱり売れぬ、グヮンはあせって鼻に手をつっこんでは次々に獲物を取りだし、地面の上に放っていく。人はどんどん集まってくるのだが、誰も手を出してこない。あざやかに花ひらいていた夢想がみるみるしおれていくのを感じ、なぜだい、なぜ買ってくれないんだいと、グワンは泣きべそまでかきはじめた。
村から大あわてでグヮンを追ってきた近所の住人も、人垣にさえぎられて彼に近づけないでいたが、町役人の一団が、領域を侵す獣を狙う猩々のように蹶然と通りをやってくるのを見、こりゃあもうだめだと、かかわり合いをおそれて、こそこそ逃げだした。
さて、役人たちは、人を乱暴に遠ざけて、騒ぎを起こした張本人を見定めようとした。すると、べそをかく在郷の者が、山となった魚鳥に囲まれて立っていた。
驚いた役人頭が、これはいったいどうしたことだと、きびしい顔と口調で問うたので、グヮンは小さな老人の一件から今日までを、だらだらと話した。
いまや役人たちも町人たちもあきれて、なんとまあこんな愚鈍な男に不相応な幸運が授けられたものよとやはり妬み、またちらりとそれぞれの頭のなかで邪曲を考えはじめるのであった。村人とちがうところは、他人を決して信ぜず、ひとり占めを狙う心のありさま。なるほど、たしかにこれは奇異な能力だ! こいつをなんとかうまく自分だけのために利用できないものか。星によって定められたせせこましい運命を、できることなら自分も広げてみたい……。
雨を受けられるほど上向き加減の大きな鼻孔、賢顔には見えない面構え。そんなグヮンを大勢の人間がじっとにらんで他人を出しぬく方法を考え、欲の心をむくむく膨らませてゆく。辺りに立ちこめる剣呑な雰囲気は、黒雲でも生じかねないほどである。
グヮンは自分がどうなってしまうのかわからず、仔鼠のように不安が増していくばかり。汗が顔を流れて絶えることがない。手を出し入れしすぎたせいで、鼻も口も赤く腫れひりついている。もう逃げだしたいと思うのだが、まわりを人や、ついでに猫たちが取り囲んでいて、隙間もない。彼は、これまでの人生でなまけになまけてきた頭を精一杯に使って考える。
そうだ、と思いついたこと、よしておけばよいのにすぐさま実行に移す。左の鼻の穴が山につながっていたはず、そこへ逃げこもう。グヮンは手を粘ついた鼻に入れ、もっと奥へ、もっと奥へと進めていき、はっと我にかえった人々がとめるひまもあらばこそ、グヮンの体はすっかり鼻の穴のなかに消えてしまった。
彼はまんまとその場から逃げだしたわけである。しかしいかんせん、やはりなまけ癖のついた頭ではぬけたところができてしまった。
グヮンは左とまちがえて右の鼻孔へと飛びこんだのだ。
了
FINO.




