《 鼻孔 》 第一回
KOMENCIGXO: Unu juna viro estos donota kapablon.
空がやけに赤らみ粘ついている日のことだった。
なまけ癖のある若い男、グヮンが、家のそばに棲む猫になにか小さい生き物が捕まっているのを見て、たすけてやった。
それは、豊かに髭をたくわえた、仔鼠のように小さな老人であった。猫の耳を指差し、聞きとりづらい、不思議な言葉で、なにごとかをさかんに訴える。グヮンが猫をかかえてーーこの男の唯一の娯楽が、猫に餌を与えることであったため、猫の方も少々の無礼では暴れないのであるーー耳を覗きこむと、これまた小さな杖が引っかかっていた。グヮンは杖を折らないよう無器用なりに注意して取り、老人に渡してやった。まばたきするほどのあいだに、もう老人の姿は消えていた。
グヮンが自分に備わった奇異な能力に気づいたのは、翌日であった。
くしゃみをした際に、彼が近所の人間たちから雨受け鼻と莫迦にされている、上向き気味の、大きな鼻の穴から、細かなかたまりがいくつか飛びでてきた。なんだと思って見るうちに、それらはむくむくと膨れて、魚や鳥の姿になった。
のんきなグヮンもさすがに驚いて、自分の鼻やら口やらを念入りに調べた。そしてわかったのは、右の鼻孔は海に通じ、左の鼻孔は山に通じており、口のなかには空があるらしいということだった。いずれも、手をつっこんで触れた物を握り、取りだしてみると、塩辛い水やら黒い土やらがひと握り分だけ、しかしそれに混じっているごく小さなかたまりが膨れ、生き物としてのふだんの大きさに戻るのだった。
グヮンはこんな体になって喜んでよいのか悲しむべきなのかわからず、戸惑うばかり。原因はやはり昨日たすけたあの老人だろう、そう思ってもあれはどこにいるのやら。とりあえず、魚をたくさん鼻の穴からつかみとり、今日の猫の餌としたのは、老人にとっても不本意なことであったと思われる。
( つづく )
KONTINUAS:




