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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
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89話 アメリカの焦りと陰謀

第三者視点


1937年 


 この年に大統領に就任したフランクリン・ルーズベルトは大変不機嫌であった。その理由は彼が大統領選を勝ったことと関係する、前大統領の時代に起こった{ハルハ川の戦い}でソ連に敗北した事によって{強いアメリカを取り戻す}を公約に掲げて当選した彼であったがこのところ満州国で起きている事象に頭を痛めていたのであった。


「大統領、満州国内での張学良一派のゲリラ活動は日増しに激化しております、鉄道の破壊工作、都市や集落への放火・略奪など被害は無視できぬものになっています」


「満州国は何をやっているのか、国内の事すらまともに収められないのか!」


 副大統領の罵声に身を竦めながら報告者は報告を続ける。


「北京にいる張学良は元自軍にいた馬賊崩れの仕業であると関与を否定しております、ですが武器弾薬・食料などが中華民国から流れているのが確認されており張の関与は間違いありません」


「張ごときが一人で出来るわけがあるまい、奴は満州事変の時20万以上の軍を擁していたのに、我が国の2個師団3万の兵に満州から追い出されたのだぞ」


 陸軍長官の言葉は相手に対して辛らつであった。


「奴らの後ろには蒋介石がいるな」


 財務長官の問いに報告者はうなずく。


「蒋の奴は我が国に支援を受けておるのですぞ! なのに裏でこのような事を!」


 商務長官の激高にも国務長官を務めるコーデル・ハルは冷静に答えを返す。


「同じ分ほどソ連から支援を受けている、奴は中国共産党を表向きは弾圧しているが、裏では{国共合作}をしていると言うわけだ、これは情報機関の仕入れた情報で間違いは無い」


 その言葉に居並ぶ大統領のブレーンはある者は唸り声をあげ、ある者は沈黙した。


 そこに大統領から言葉が発せられる。


「諸君の懸念は尤もだ、蒋介石には我が国を取るか惨めな死を選ぶか考えてもらうとしよう、だが国務長官いま我が国が問題としているのはそこだけではあるまい」


「日本……ですな」


「そうだ、我が国のペリー提督に起こされるまで居眠りをしていた国が国連の常任理事国で我が国に不当な勧告を出すという恥知らずな奴らに教育してやらねばなるまい、あのような劣等人種が踏ん反り返るということはあってはいけない」


「大統領お言葉ですが彼の国を過小評価するのは危険ですぞ、ペリー提督によって開かれてからあの国の進歩は驚くべき勢いです」


「その挙句にイギリスと組んで軍縮条約で我が国を超える規模の艦隊を持とうとしているではないか! あのような屈辱的な条約は直ちに廃棄したいものだ」


「軍縮条約はともかく日英が同盟を結ぶ限り我が国が不利なのはお分かりの事と思います、イギリスにはカナダがあるのですぞ、万が一戦争になれば太平洋側は日本、大西洋はイギリス、そして北米大陸の北にはカナダと包囲されてしまいます、我が軍は多方面に対応するだけの軍備は整ってはおりません」


 陸軍長官はこう言って首を振った。


「何とか日本だけ標的にできぬ物か、同盟を破棄させる事は出来ないのか?」


「大統領、それはかなり困難な事と思います、我が国は以前よりその工作は行ってまいりましたが両国の間は非常に強固です、皮肉な事に我が国に対抗するためにその結び付きを強める傾向にありほぼ不可能でありましょう」


「ううむ、せめて日本だけでも叩ければ良いのだが」


 こうして閣僚たちの集まりは散会したのであったが……後に大統領はある人物を密かに招き入れていた。


「大統領閣下、我が国は貴国と争うつもりはございません、蒋介石を抑える手伝いも致しますぞ、それに閣下のお悩みも解決できるかもしれません」


「ほう、大きく出ましたな、貴国の指導者殿はいかなる秘策をお持ちなのか?」


 大統領に怪しげな献策をするのはアメリカに派遣されてきた特命大使である。彼は何故か大統領が望んでいる物がわかるらしくその策を披露する。


「要は日本と直接戦わなれれば良いのですよ」


「直接戦わない?それでどうやって戦うのです?」


「すでにやっているではありませんか、それを大規模にすればよろしいのですよ」


「……なるほど、それは盲点でしたな、義勇軍というのであれば我が国が戦っている訳ではないですからな」


「後は同盟国イギリスですが彼らも自分にかかる火の粉で手いっぱいになります、参戦はしたくても出来ませんよ」


「ほう?では欧州の方でついに起こるのですな」


「そうです、新たな欧州の秩序作りが始まるのですよ、我が国はそのささやかなお手伝いを申し出るというわけです」


「いいですな、イギリス・フランスに代わりドイツとあなたの国が指導的役割を務めるのですな、我が国は歓迎しますぞ」


「そう言ってもらえると助かります、我が国とあなたの国が共に栄えるのを我が指導者も願っております」


「それはこちらもです、是非あなたの国の偉大な指導者、ヨシフ・スターリン閣下にお伝えください、ミスター・モロトフ」


 こうして密かに米ソは手を結ぶことになる、こうして僅かばかりの平和な時代は終わりを告げることになるのであった。



ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。

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