88話 ジョージ6世戴冠式記念観艦式
※遅くなってすいません
感想等も返事が遅れていますが見ていますのでよろしくお願いします
1937年5月2日
譲視点
艦隊は大西洋を北上しイギリス近海まで着き、遣欧艦隊の出迎えを受けている、遣欧艦隊旗艦駿河を中心に愛宕や最上などが見える、駿河は敷島・鹿島級の代艦で作られた艦で加賀級三番艦だ、八八艦隊で日の目を見なかった名前が引き継がれていて加賀・土佐・駿河・三河の四隻が就役している。
「どうしてこうなった……」
俺が夕張の艦橋で黄昏ていると後ろから声が掛かった。
「平賀所長、もう着きますからそろそろ……」
「ああ、すまん木村君」
気の毒そうな木村昌福大佐に返事をして艦橋から降りる、本当にどうしてこうなったんだ、俺は出発の日のことを思い出していた。
大神で夕張の出発の準備をしていたら「そのまま夕張でイギリスまで行け」と命令が来た、どうやら先行して欧州に行った本郷中将の差し金らしい、そのまま笑顔の彼の部下に夕張に乗せられて
今ここに居る。
途中寄港地で比叡に呼ばれて陛下と話す機会があった、内容は多岐に渡ったが、真面目な話が一段落した後で面白い菓子はないのかと尋ねられたので、禁断のきのこたけのこを出すか悩んだがここで過去の偉人の言葉を思い出した、「両雄並び立たず」二つでは争いの元となるだろう、だがもう一つある「天下三分の計」だ、本来は少し違う意味らしいが三つに分ければ安定するかもしれん、孔明も罠ばかりではなくいい事偶には言うね、帰国したら早速作らせてたか夫人に渡そう、陛下はあれから度々夫人にお菓子を頼んでいると言う、「えびせんは食べ出すと止まらないのだがたかが食べ過ぎてはと一袋ずつしか買ってくれない」とかだ「やめられない止まらない」のキャッチコピーは偉大だな、リクエストがあるとたか夫人はいそいそと買いに行くらしい、だが毎回宮中に上がるわけにも行かないので届けるのは侍従長の役目である。あれから侍従長からは配達夫ではないのだぞと文句を言われましたとも、だが東機関の奴の話では旦那のほうも喜んで持って行っているのを知っているのだ、その後付いてくる{軍艦撫子}のカードの話になってきて丁度隣に停泊している夕張の姿が見えたからだろう、夕張の容姿の話になった。
「夕張はやけに胸を強調しておるが何か訳でもあるのか?」
「やはり夕張と言えばメロンですから」
「夕張でメロンが?石炭の産地としか聞いてないが?」
しまった!夕張メロンが有名になったのは1961年ごろだった。
「……夕張も石炭に頼っていては炭田が閉山になれば立ち行かなくなります、そのために特産品として考えているのです」
「なるほど、さすがであるな」
やばい!帰ったら夕張のメロンの品種改良をさせなくては、大正時代からメロン自体は作ってるけど「夕張メロン」と呼ばれる品種はまだ出来ていなかったんだ、迂闊だったよ、冷や汗がでた。
そんな事を回想しているとブリテン島が見えてきたようだ、先ずは戴冠式に参列しないとな。
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戴冠式も無事に終わった、日本は同盟国だし陛下が参列されたので筆頭の扱いになっていた、
向こうも大事に思ってくれてるんだな、此方も安心したよ。
宝塚歌劇団が来て公演をする、御題は{ユトランドの華}と聞いて国王陛下と王妃様と天皇陛下が興味を示して急遽{天覧公演}となってしまった。丁度{軍艦撫子英国版}も売り出していたので
話題沸騰で爆売れしたそうだ、勿論歌劇の内容にも大満足でお褒めの言葉をいただきそのことが話題となり公演は大成功、追加公演が組まれることとなった。
そして観艦式であるが我が国からは戦艦金剛・比叡、空母赤城、巡洋艦足柄、戦闘指揮艦夕張、そして駆逐隊という順番で並んでいる、各国が一隻参加なのに対してこれだけ参加が認められているのは同盟国として特別待遇を示しているのだろう。
今回の我が国の艦の特色は機関をすべてガスタービンに換装していることだろう、その改装のためどの艦も大幅な改装が為されている。
金剛・比叡
基準排水量35500トン
全長225.2メートル
全幅32.1メートル
機関IHI-RRガスタービン4軸180000馬力
最大速力 33ノット
航続距離8800海里(16ノット時)
兵装 45口径41cm連装砲3基
54口径12.7cm単装速射砲8基
戊式70口径40mm連装機関砲6基
武式12.7mm連装機関砲 12基
その他
搭載機 VS327{翡翠}×6
足柄
基準排水量13000トン
全長205.2メートル
全幅20.7メートル
機関IHI-RRガスタービン4軸155000馬力
最大速力 35ノット
航続距離7500海里(14ノット時)
兵装 50口径20cm連装砲3基
54口径12.7cm単装速射砲4基
戊式70口径40mm連装機関砲4基
武式12.7mm連装機関砲 8基
魚雷発射機4連装2基
搭載機 VS327{翡翠}×1
戊式機関砲はスウェーデンのボフォース社の物だが大戦終結後の不況で資金繰りに困っていた同社をヴィッカースが買収して子会社化して開発させた新型である、勿論裏から総研発の資金が出ていたのは言うまでもない、現状はともかく航空機の高性能化は時間の問題なのでテコ入れである。
そして戦闘指揮艦という見慣れない肩書きを持つ夕張も改装が行われていた。
夕張
基準排水量 6700トン
全長 174.1メートル
全幅 16.5メートル
機関 IHI-RRガスタービン4軸130000馬力
最大速力 36.5ノット
兵装 54口径12.7cm単装速射砲3基
戊式70口径40mm連装機関砲2基
武式12.7mm連装機関砲 4基
対潜用迫撃砲2基
その他
搭載機 VS327{翡翠}×1
主な改装点は主砲を換装したことと艦橋回りの改造だ、主砲は新型速射砲に換装した、原型は前世での第二次大戦後イタリアのオートメラーラ社が開発した127ミリ速射砲をモデルにしている、残念ながらレーダーと連動しての遠隔操作による無人砲塔化はできなかったが自動装填システムは何とか出来たので良しとしよう、艦橋とは別にCIC(戦闘指揮所)を作って作戦指揮ができやすくしている、通信系と電探も強化されているので艦隊指揮を執るのにふさわしくなっていて実際に御召し艦隊の総指揮はこの艦から執っている。
外目には金剛が執っているように見えるが金剛はあくまで直接護衛隊の指揮だけだ、直接護衛隊と赤城の率いる間接護衛隊はすべて夕張の指揮下にある。
今回夕張の艦長には木村昌福大佐が就いた、皆が意外に思ったはずだ、基本海軍は士官学校の成績でその後の出世が決まるので中の下の成績だった木村大佐は良くて大佐で予備役になるので艦隊旗艦の艦長などのポストが回ってくることは無い、クーデターのせいで上のポストが空いたために回ってきたのだと対外的には説明がされているようで好都合である。 木村大佐にはこのチャンスを生かしてもらいたいものだ。
居並ぶ艦艇の中を観閲艦が進んでいく、その艦上にはジョージ6世陛下と王妃、我が国の天皇陛下を始めとする各国のVIPが乗っている。彼らの興味は日本の艦隊に注がれている、どの艦も外観が以前とは大幅に変わっているからだ、金剛級は電探等の電子装備が搭載されたために艦橋回りが様変わりしたのと機関をガスタービンに換装したために煙突などの変更そして副砲などの換装(夕張と同じ速射砲を両用砲として搭載、機関砲の搭載)そして艦載機を一新している、フロート付の水偵から回転翼機に乗せ換えれておりその格納庫を装備している、その為夕張と足柄は艦後部に四角い格納庫を持ち金剛・比叡は4番主砲を撤去した後に艦内に格納庫を整備して昇降機で飛行甲板に出す形態にしている。
搭載しているのはかつて夕張で試験飛行をしていたVS327翡翠である、エンジンがレシプロエンジンで輸出用の格安モデルの位置づけとなる、ガスタービンを搭載したVS327-2翡翠改は国内で試験運用中だ、どちらも機体の底面を舟形に成形しておりフロート型のスポンソンも相俟って水上での離着水能力もあるので対潜・救援用として使われる事になる、これらも艦の周りをデモ飛行してアピールしている、後で各国からの引き合いが多数あるだろう、この辺は商売上手の人たちに任せよう、きっと我が国に利益をもたらしてくれるだろう。
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観艦式が無事終わり新聞の記事を見てみると参加していた日本艦艇の記事を見つけた、金剛の事は{英国生まれのユトランドの英雄故郷に凱旋す}となっていた、比叡は{同盟国日本の天皇陛下の御寵愛の艦となっていた、確かに御召し艦としての出番は多いけど、最初偶然に御召しになった時に気に入った感想を述べられたために関係者が気を使っての事だと聞いたがそのために海外ではそういう反応のようだ、平出大佐辺りがこれを見て変な設定を持ち込まないことを祈ろう。足柄は前回の{勇ましい猟犬}から{猛々しいフェンリル}になっていた、北欧神話でラグナロクの時にオーディンを飲み込んだ怪物である、それだけ強いと解すべきなのか悩む評価だな、夕張はまあ特に評価はされていなかった、他の艦が目立ったからだろう、だが玄人である軍関係者は注目しているようだと東機関の方から連絡があった、震災の時にイギリスの巡洋艦をぶっちぎった謎の艦としてである、確かに装備実験の為に表に出てこないから実物をみて興味深々なんだろう、まあ気が付いているのはほんのわずかな国だし問題はないだろう。
むしろ問題はだれが吹き込んだのか知らないが平出大佐の方が問題だろう。
「艦に{撫子}たちを書き込んで観艦式に出せば……」
なんてぶつぶつ言ってたらしい、{痛い艦}だけは勘弁してほしい、さすがにそれはやりすぎだろう、彼がそれに走ったらぜひ阻止せねばならないなと思うのであった。
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