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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
90/231

85話 人間宣言と軍制改革?

※ 後半は少し遊びすぎたかも知れません

第三者視点


1934年 9月10日


 この年の3月10日に起こった日本政府始まって以来のクーデター{3・10}事件の最終審判が行われた日の事である。


「ここまでの拡がりを見せるとは……これもすべてわたくしの不徳であるな……」


 今上陛下はそう言って肩を落とした。


 事件に関わっていた者は主だった者だけでも以下の通りであった。



皇族


伏見宮博恭王


閑院宮載仁親王



軍人


真崎甚三郎大将


荒木貞夫大将


加藤寛治大将


小畑敏四郎中将


真崎勝次少将


橋本 欣五郎大佐


岡敬純 大佐


相沢三郎中佐


石川信吾中佐


 実行役であった下級士官たちを含め彼らも取調べを受けた結果関与の度合いは違えども今回の企てに加わっていた事が判明した。


 そして長期に渡った裁判の結果であるが実行役の下級士官たちは未遂という事で死刑は免れ免官の上禁固刑となった、また高級士官は首謀者と目された真崎大将と加藤大将は免官の上禁固刑、小畑中将、真崎少将、橋本大佐、相沢中佐らも同じく免官の上禁固刑となりその他の者たちは降格の上予備役に回される事となった。


 ここで問題となったのが皇族方であった、特に伏見宮は首謀者の立場にあり、閑院宮はそれに同調したため陸軍に混乱を巻き起こした、陛下にとっては容認できぬ事であった。


 この二人に関しては結局臣籍降下の上地方の御用邸にて静養という名の謹慎処分となった、陛下は他の者たちに対して示しが付かないと更なる処罰を考えていたが、御用邸の外には出さないとの説明を受けて引き下がった、その後それは守られていく事になる。



 それらが発表されて数日の後の正午にラジオから語りかける声があった。


 陛下がレコードに録音した玉音放送である。


 内容は今回のクーデターに対して遺憾の意を表し、その企てに皇族が関わっていたこと、その為付和雷同する者が続出して被害が大きくなったことを謝罪し、今後はこのような事が起こらぬように国民に『和をもって貴しとなす』と古に一七条の憲法に記された言葉で語られた。


 そして、自分の事を『現人神』と呼び表す流れを否定し、自分や皇族が過ちを犯すこともありうるとして、神聖不可侵な者として扱うことがないように表明したものであった。


 これは当時の軍部や政財界にその流れを作ることで自分たちに都合の良い政策などをごり押しするために天皇陛下や皇族を利用できなくするための措置であり、多くの国民にとって皇室への敬意と親近感が損なわれることはなかったのであった。


 この後防衛省はクーデターの反省から制度改革を行う事となる、世界大戦による欧州への派遣を行うに辺り他国の軍と共同で作戦行動を行う事が予想された為軍隊内での私的制裁の根絶、治安を乱す行為(略奪や暴行)を禁じることはすでに行われていたが更なる徹底と、下士官兵の待遇改善(准士官制度の新設など)を行い、さらに『国民に愛される軍隊』になるべく努力すべしとした。具体的な例として基地を一般開放する『基地祭』や『観艦式』への一般客の招待、富士山麓演習場での公開演習などで国民と交流して行こうと言う事になった。


 だが問題が残らなかったわけではない、この度のクーデターでは同調しなかった空軍や近衛師団、警察(SAT)や憲兵隊は株を上げた形になったが、海軍と陸軍は国民の信頼が地に落ちてしまった、陸軍はまだ乃木将軍の活躍によっていくらか取り戻せたが、海軍は美保関事件での遺恨から今回のクーデターに関与した者が出た上に第四艦隊事件で海軍の人気はガタ落ちとなった。


 軍制改革の一環で徴兵された者たちは一旦基礎教育を受けた後希望を募って三軍に振り分けられるが海軍の人気は最低で士官学校の進路希望も同じく最低であった、これは海軍の高官たちだけでなく、その上級組織である統帥本部でも問題となったのであった。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


譲視点


「で、俺に何とかしろと?――俺はアイドルのプロデューサーと違うんだが」


「愛ドル?プロジューサーってなんだ?正直皆困ってるんだ、海軍の人気がここまで落ちるなんてだれも思っていなかった、このままでは軍の士気にも関わる、何とかしてくれ」


 久々に日本に帰ってきた本郷中将(昇進!)から酷い無茶振りなお願いが来た。


「どうしろっていうんだよ?」


「国民に親しまれる海軍……軍全体がそうなればいいと思って色々試行錯誤はしているが海軍は更なる梃入れが必要に感じられるな」


「具体的にはどうしたいんだ?」


「憂慮されているのは士官学校での進路選択で海軍を忌避するのを何とかしたいのと同じく徴兵での進路希望が最低な件だ」


「なら若い世代の人気を獲得しないとな、そちらでは具体的な対策は何か考えているのか?」


「うむ、海軍カルタなんかはどうかという案があるな」


「まあ無難だな……『長門と陸奥は日本の誇り』とかか?」


「そんなとこだな……なんだ?不味いのか?」


「インパクト無さ過ぎだろう! もっと訴えかけるものが欲しいよな、それにそれでは世代が若すぎるんじゃないか?」


「なんかいい案でもあるのか?」


「まあ、やってみるさ」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


第三者視点


 暫くしてある変化が起こった、それはいわゆる駄菓子屋の店先に新しいお菓子が売られていることから始まった。


「この{えびせん}って旨いなあ、それに付録に付いてくるカードがいいよ!」


「ポテトチップスも美味しいよ、カードも付いてるのは同じだね」


「やったー! 長門様が来たー!」


「ぐぬぬ解せぬ、何故だ……摂津が来るのは嬉しい、だが被ることは無いだろう、来月の小遣いまで待てという事か!」


 このような会話が日本中の駄菓子屋の前で行われていた、販売しているのは軍艦{えびせん}と{ポテトチップス}で袋の中におまけで軍艦カードが一枚付いてくるのであった、カードは裏面に艦のイラストと諸元が簡単に記してあり戦艦から潜水艦まで海軍の艦艇が全てカードにしてあるとの触れ込みであった、だがそれはあくまでも付録的な物に過ぎない、このカードの表面にはそれ以上の衝撃を買うものに対して与えていた。


「{軍艦撫子}可愛いよ、こんな娘をお嫁さんに欲しいよな~」


「俺大きくなったら陸奥さんを嫁にするんだ――」


「おっ、おう頑張れ……俺は間宮の羊羹で癒されたい」


そう、表面にはその艦の仮装をした少女のイラストが印刷されており、その絵もこれまで見たこともないような絵柄であったが問題なく受け入れられているようであった。


「どうだ、これなら海軍の人気もV字回復だろう!」


ある駄菓子屋の前の情景を見ながら譲が本郷に自慢する。


「確かにあれが発売されてから海軍に対しての注目度は上がってきている、進路志望も増えてきてるようだ……」


「だろう? カルビーと任天堂に頑張ってもらった甲斐があるというものだ」


 今回譲はいつもの手を使い広島にいたカルビーの創設者にえびせんとポテトチップスの製法を教えて起業させ全国で販売させた、やり方としては前世で流行った仮面ヒーローチップスの物真似である、さらに付録のカードは花札とカルタメーカーだった任天堂に作らせた、その目的は只のおまけではなくカード遊びにも使えるようにしようという企みでこれもすでに基本セットが飛ぶように売れて任天堂に嬉しい悲鳴を上げさせている。


「だが、わざわざここまでの仕掛けをする必要があったのか? お前がえびせんやチップスが食べたいから仕掛けたんじゃないか?」


「ソンナコトハナイデスヨ……」


 図星であった譲は思わず目を逸らす……転生して数十年ジャンクフードが懐かしかったのは否定できない。

それを見た本郷は首を振りため息をついた。


「まあ目的は達しているからいいけどな、だがあれに傾倒する若者もなあ……」


 実はこの計画で考えていたよりも高い年齢層に受けていたのは誤算だった、軍艦撫子に夢中になる青少年に不安を覚える本郷であったが譲は予想がついていたようだ。


「まあ時代は変わっても人の本質は変わらないのかねえ、このままでは{痛い艦}とか出てきそうだねえ」


「なんだよそれは! 嫌な予感しかしないじゃないか!」


譲は軽く冗談を言っただけであったのだがまさか本当に出てくるとは思っていなかった、その認識が間違っていたことを悟るのはそう遠くない未来であった。

ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

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