76話 黒幕の捕縛と反乱後始末
※11月25日修正
譲視点です
3・10事件と呼ばれそうなこのクーデターは最終的にはあっさり終了した。
乃木将軍の討伐宣言の後控えの間にいた者たちが続々と入場する。
「総理大臣に大蔵大臣?総監に軍務局長まで!」
そう、死亡したと知らされていた人たちは全員怪我一つしていない。
彼らを守ったのは警察が組織した特殊急襲部隊(Specialassault team 通称SAT)である。彼らは身辺警護を通常しているSSと連携して、襲撃部隊を鎮圧していったのだ。
軍務局長のところには軍刀を引っさげた相沢中佐が来たそうだが待ち構えていたSATのスタンガン付き特殊警棒で制圧されたそうだ。
「東機関の人間にも限りがあるからな、お前さんのとこだけ例外だ」
本郷少将が教えてくれた、まあ住民に成りすまして警護なんてする連中が連隊規模でいたら怖いわ。
おっと話が逸れた、俺も会議室に最後にこっそりと入る。
隣室で聞いていたが東条次官はやはり大蔵官僚になって正解だな。児玉内閣時代に作られた官僚養成学校に推薦してもらった、
彼の父親は軍人として自分が出世できなかったのは長州閥からにらまれていたからと考えていたからそのことに賛成し官僚の道に進むことになった、記憶力と情報を整理する能力計算の速さは群を抜き次官まで上り詰めた、今回の件で陛下の覚えも目出度くなったので更なる出世も出来るかもしれない。
そして今回の黒幕たちを断罪するときが来た。
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第三者視点です
「さて、今回のクーデターですが実行部隊は陸海軍の若手将校が
中心となっていますが、彼らに指示していた人物がいます」
鎮圧の為乃木将軍が退出した後の会議室では侍従長の鈴木貫太郎が真犯人たる黒幕を暴こうとしていた。
「伏見宮、真崎大将、加藤大将、貴方達が関与していた事はつかんでいます、特に伏見宮は皇族であらせられるのにこのような謀議に参加する事自体あってはならないことであります」
「馬鹿な! 何を証拠に!」
「つかんでいると申し上げました、つまり動かぬ証拠を得ていると言う事ですよ、料亭での謀議、電話でのやり取り、果ては海軍軍令部長室でのやり取り、すべてです」
「汚し! 盗み聞きなど!!」
「事は国家の根幹に関わる事、それらの批判は臣が受ける事とします」
そこで陛下が口を開いた。
「伏見宮、貴方には皇室の先達として教えを請い教導していただいた恩がある、だがこの度の事は我が国にとって到底取り返しの付かない事になる可能性があった、それは看過しえない事である、故に宮には今後は慎みいただく事になるであろう、その事承知いただきたい」
この言葉は宮に重く突き刺さり彼は悄然とうなだれた。
両大将は憲兵に脇を固められ会議室から退出させられた。
この後は彼らの指揮下で動いた者たちの詮議が行われる事になる。
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乃木将軍が鎮圧に動くという報はラジオで直ちに放送されてその放送を聴いたクーデター派の下士官や兵は動揺した、元々上官の命令で目的地も作戦内容も知らないで来た者が殆どであり特に官庁や国会などを占拠していた者たちはそれらで形成されていた、目的も理解している連中は要人襲撃にまわされておりすでに鎮圧されていたので残った彼らは乃木将軍来るという情報ですでに半分腰が引けていたのであった。
そこに来たのが乃木自身が書いた文章の載っているビラである。
そこには{兵たちへ}という題で始まり、{反乱軍}にならない為には{直ちに原隊に復帰せよ、これは天皇陛下のご意向でもある}としておりこれを読んだ下士官や兵は続々と上官の命令に反して原隊に復帰していき、残った者たちも怒れる将軍には恐れをなして投降した。
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譲視点です
やれやれやっと鎮圧したか、陸軍は乃木将軍の呼びかけで帰営し残りは逮捕した。
東京湾の軍艦は乗っていた艦長や司令がクーデター派であったが陸軍部隊が投降したと聞いて彼らも投降した。すでに湾の出口を長門を始め第1艦隊で押さえており抵抗は無駄だと悟ったのだろう。
空軍はクーデターの誘いを断った、元々政治に関与する気風が
無かったのと源田實少佐が上官たちにクーデターがあっても関与しないように進言していたからだそうだ、流石源田少佐だ、空軍まで関与してなくて良かった。
後は満州国で起きた衝突がどうなったのか気になるな、情報収集をしなくてはな。
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艦政本部 第4課
「藤本大佐、クーデターは鎮圧されたそうですぞ!」
「そうですか、此方は関係ありませんよ、軍縮条約終了後の主力艦建造計画を纏めなくてはいけないんですからね、忙しいんです」
彼が持っている書類には{A-140計画書}と書かれていた、
それを大事にしまいながら彼は一人呟く。
「今度こそ、究極の戦艦を作って見せる…何の制約も無く自重も無しで生まれる、絶対に作るんだ」
その時彼はこれから起こる事件がこの高揚した気分を吹き飛ばすものであるとは想像もしていないのであった。
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