74話 クーデターと事件
※ 5・4修正
第三者視点です
1934年 3月10日 東京
暦の上では春ではあるがこの日はまだ冬の寒さが残る朝であった。
だれが想像したであろうか、この日がこの国を激震のなかに叩き込む事になる日だと言う事に。
早朝東京の中心部に多数のトラックが隊列を組んで進んでいた、これらは途中で幾つかの方面に分かれて行きその内の数台が警視庁前に止まるな否や幌のついた荷台より兵士が駆け下り庁舎を包囲した、門衛は何事と駆け寄ろうとしたが小銃を構えた兵士たちに行く手を遮られた。
兵の中より指揮官らしい将校が現れ彼らに告げた。
「これより警視庁は我々の指揮下に入る、中にいる者たちに伝えるように」
「どういう事だ、叛乱か?」
「違う!我々は義挙を成している、もうすぐ判る、ラジオでも聞いているがいい」
門衛たちはこれはただ事ではないと踵を返して庁舎に駆け込み状況を告げて回った、これがクーデターの始まりであった。
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東京市内 某所
「本郷機関長!クーデターであります!」
「そうか、動いたか……規模はどのくらいだ?」
「歩兵部隊1個連隊、砲兵1個連隊が確認されています、あと海軍の艦船も東京湾で砲を東京に向けている艦があります」
「○対に動きは?」
「赤印は出征中の者を含めて動きなし、青印に動きが見られます」
「なるほどな、{義挙}とは名ばかりという事か」
「しかし、事前に検挙したほうが良かったのでは?」
「それだと尻尾を切って逃げる奴がいるだろう、こういうのは頭を潰さないとな」
「では予定通りに」
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譲視点
本郷少将からいきなり電話があった。
「クーデターが起きた、国会や官庁、新聞社が狙われた、あと特定の個人に襲撃をしてくるようだ、参加しているのは陸軍と海軍、狙われているのは首相と蔵相に陸軍の教育総監と軍務局長、侍従長に元老たちとお前さんだ」
「なんで俺まで?」
「お前さんが邪魔なんだろうさ{総力戦研究所所長}がな」
「なんだって!」
「もう部隊が向かっている、心配するな、飛び切りな護衛を廻しているから」
その電話から十分位して複数のトラックが来て止まる音と共に激しく鳴り響く音がした、それは戦場で流れる音楽、銃の発射音であった。
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第三者視点です
「くそ!どうなってやがるんだ、こんなに護衛が多いなんて聞いてないぞ」
平賀譲の家に送り込まれたクーデター派のトラックは3台、それぞれ十数名の兵が乗り込んでおり襲撃は成功すると思われていた、だが現実は厳しい物であった、目標の家を目の前にして彼らは前進どころか戻る事も出来なくなったのであった。
PAPAPAPA!
軽やかな発射音と共に降り注ぐ弾丸に倒されていく兵士たち。
「機関銃?いや自動小銃か!」
指揮官は一旦引く事も考えたが軍人としての矜持がそれを許さなかった。
「かくなるうえは突撃するしかあるまい、皆続け!」
残存兵力は雄たけびを上げながら突撃する。
「バカが! 突撃とは無駄無駄無駄ぁ!」
防御に回っていた指揮官が右手を上げて止めを刺すのであった。
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譲視点
そっと窓からのぞくと驚愕の光景が見えてきた。
次々に倒されるクーデター派の兵士たち、彼らを迎え撃っていたのは俺の家のご近所さんであった。
夕飯を作りすぎたからとおすそ分けをしてくれる隣の小母ちゃんが短機関銃を撃ちまくり、将棋のお誘いをしてくれる斜め前のご隠居が指揮を執っているみたいだし、隣に越してきた若夫婦は仲良く自動小銃を撃ちまくっている。
屋根の上から狙撃してるのはお向かいの商社勤めのサラリーマンだったはず。
「皆さん本職なんで上手なんですね」
そういう奥さんはなぜ二丁拳銃を持ってるんですかねえ?
「本郷さんが{御主人は命を狙われる事があるかも知れないから習っておいたほうがいいですよ}って」
本郷ェ。
変な事吹き込むなと思っている内に反乱兵は駆逐されたらしい、指揮官?のご隠居がやってきた。
「所長、反乱軍の奴らは制圧しました」
「了解、ご隠居たちは{東機関}だったんですね」
「そうです本郷機関長より御守するようにと、この町内すべて我らの手の者で押さえております」
頭が痛くなったよ。
頭を押さえているとご隠居のところに3軒先の家の大学生が来て耳打ちしている。
「なんかあったんですか?」
「ええ、満州国境で紛争が発生しました、モンゴル軍と満州国軍が激しく戦っていると」
これは又きな臭くなりそうだ、俺は国内と海外同時に起こった事件にさらに頭を痛めるのであった。
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