70話 アメリカでの工作
※少しやりすぎたかも
※3/10修正
※2018/05/18修正
ロスアンゼルスオリンピックの最終競技は生で見ると凄い迫力だった。動画サイトで見た事があったけど現地で見るのはやはりいい。
史実通り西中尉が金メダルを取れて良かったよ。
「さて、それではお仕事っと」
本郷少将……もう少し余韻を楽しませてよ……
ロサンゼルスにある何の変哲もない教会に入り懺悔室に入る。
「貴方はカミを信じますか~」
顔は見えないが神父らしき人物がおかしなことを聞く、それも日本語で。
「とんでもなぃ!あたしゃ神様だよ」
本郷少将の答えにずっこけた。
「機関長~この合言葉やめませんか~皆に不評なんです」
「どうして?これなら絶対に間違えないだろ?」
苦りきった顔の神父に本郷少将はすまし顔で答えてるよ、部下らしいけど苦労してるな。
酔った時教えた(らしい)ネタを本当に使ってるとは・・・東機関恐るべし。
「しかし……」
「驚いたか?現地諜報員の中には見た目現地の人に見える者たちもいるのさ、これなら疑われる事なく活動できるだろう」
「{草部隊}って言われてるんですよ~」
なるほどこれも{冥府魔道に落ちた親子}に敵対する裏柳生から取ったんだな、俺の知識で遊ぶなと小一時間問い詰めたい。
「状況はどうだ?」
俺の内心の葛藤を気にせずに少将が尋ねる。
「ぼちぼちでんな、オリンピックのお陰で日本に対しては概ね好意的ですな」
おかしな大阪弁で喋る神父は東京と今回のロスのオリンピックのお陰で日本に対しての認知度が高まりさらに西中尉の金メダル獲得で友好度は上がっていると話してくれた。
「それに、最近は日本への観光旅行が流行ってまして」
定期航路が出来て豪華客船が行き来するようになって日本への観光熱が高まっているそうだ。
「京都・奈良・富士山等々観光するにはいい場所が多いからな」
「日本を紹介する活動が実を結びつつありますな、今や{ジャパン・アンドアメリカ}は日本紹介誌としては一番と評判になっとりまっせ」
発刊当初は赤字だったのに今では全米でも名前を知らぬ者は居ないと言われる雑誌に成長したという。
安楽君から経営権を引き継いだのはアメリカ人ということになっているが実際は{草部隊}の連中が引き継いで拠点にしてるというわけだ。
「最近気になることとかはあるか?」
「そうでんな、最近西でも東でもコミンテルンの息の掛かった奴が増えてまんな」
「ソ連のスパイが?」
コミンテルン(共産主義政党による国際組織)の連中とは物騒だな。
「どうやら、日本とアメリカを対立させようとしてるんだな」
「狙いはロシアということか」
ロシアを支援するイギリス・日本・イスラエルなどに対して満州国の事実上の支配者であるアメリカに接近して対抗する気か。
「スターリンはロシア打倒を公言してますからね」
だが我が国とイギリスが牽制し国連も非難決議を出しているからうかつに動けないからな、アメリカを狙ってきたか。
「{草部隊}は引き続き情報の収集に努めてくれ、だが収集だけだ正体がばれると不味い、情報を受けて動くのは実行部隊に任すんだ」
「了解でおま」
現地諜報員との接触を終えた俺達は東海岸へ向かう事にした。
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ロスアンゼルスからはシカゴまで鉄道で移動してそこからは車に乗り換える譲たちであった、そこに用意されていた車は……
「こいつは……完成していたのか!」
「ジュネーヴ・モーターショー で発表されたばかりの奴だ、デモンストレーション用に借りてきたんだ」
本郷が自慢する事だけあってその車は周りを走るアメリカ車と比べて抜群の走りを見せていた。
「みんな目を丸くして見てるな、まあこんな車見た事ないんだろうからな」
そう言ってやがて車はケンタッキー州のとあるガソリンスタンドに着いた。そこでガソリンを補給して、傍のレストランに入る。
「お客さん、あの車はどこのだい?見た事も無い形をしてるねえ」
レストランの主人が興味深そうに聞いてくる。
「あれは日本の車でMAZDAというメーカーのコスモと言うんだ」
本郷が説明する車はかつて総研で譲にロータリーエンジンを教えられた松田が苦節十数年かけて作った車である。
ロータリーエンジンは従来のレシプロエンジンと根本的に違うエンジンである、ピストンの往復運動ではなく回転運動のみで動くエンジンはコンパクトで排気量の割りに大きな出力が出せ加速も滑らかである、その為この時代の車が4000ccの排気量で100馬力も出ないのにコスモは1000cc以下なのに110馬力も出せたのだ。
形状はコンパクトなエンジンのお陰で小さく低いボンネットのお陰もあり全体の高さも低く抑えられており見た目にも早く走りそうに見えた。
「凄い車だねえ、あれはもう販売されてるのかい?」
「今度発売されるんだ、興味があったら買ってくれよ」
主人やレストランの客にちゃっかりと売り込みをかける本郷、中々の商売上手である。
「そうだな、まあうちのフライドチキンを食っていってくれや、ここの名物メニューだよ」
出されたフライドチキンを頬張る二人。
「ふぉぉ・・・これが本家本元のケンタッキーか!」
譲が感激しているが主人には聞こえなかったようだ。
「そうか、お客さんは日本から来たのか、最近は日本の観光案内の本なんか出てて行きたい人も増えたなあ」
本郷と日本の話しに夢中だったからである。
「ご主人!ここに寄ったのは何かの縁だ、日本の代表的な名物料理を教えよう!」
そう言って厨房を借りてごそごそと譲が何かを揚げている。
「出来たぞ!食べてみてくれ!」
「「「「「!」」」」」
「なんだ……この外はさくさくで中はジューシーなフライは?しかもこの肉は鳥でもない、牛でも豚でも……」
「こいつはな{鯨の竜田揚げ}って言うんだ」
「タツタ?それに鯨だって!あれは油やひげを取るためだけの魚じゃないか!」
「残念だな、鯨の肉のおいしさを知らないとは……この竜田揚げを食べれば判るはずだ、アメリカはもったいない事をしていると!」
「そうだな……教えてくれ!この料理を!」
そして主人は譲から竜田揚げの作り方と味付けに使った醤油を教えてもらうのであった。
後にフランチャイズ商法でフライドチキンとタツタアゲを広めてケンタッキー・フライドチキンの名前を世界に轟かせたハーランド・デーヴィッド・サンダース のちにカーネル・サンダースと呼ばれる男が始めて竜田揚げを口にした日であった。
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