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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
69/231

66話 美保関事件

11月7日 修正

1927年8月24日


島根県美保関沖


 この日連合艦隊の主力艦艇が夜間演習を行っていた、甲、乙の二つの部隊に分けられ、乙軍は水雷戦隊を主力とする部隊とされて夜間襲撃をおこなう予定であった。


 ここで問題が生じた、第一水雷戦隊に所属する「柿」以下8隻の駆逐艦は臨時に第二水雷戦隊に所属して襲撃に参加する事になった。


「意見具申、組んだ事も無い俄か編成の部隊を高度な連携が必要な夜間襲撃に加えるのは危険であります、再考をお願いします」


 こう意見を述べたのは第一水雷戦隊先任参謀小沢治三郎中佐であった、彼の意見には現場の指揮官は大概賛成したが連合艦隊司令部では違う見解であった。


 「我が軍は戦艦の排水量上は互角であるが16インチ砲搭載艦の保有数では米国の半分にも満たない、その数的劣勢を補うのは巡洋艦以下の水雷戦隊を主力とする部隊である、戦場では何が起こるか判らない、臨時編成をする事もあろうそのための訓練である、変更は必要ない」


 こう連合艦隊参謀長であった高橋三吉少将は言い放ち却下した、近藤信竹先任参謀も小沢の意見具申を取り上げなかったので小沢は憤慨して帰艦することになる。


「どうでした?」


 帰艦した小沢に参謀を務める山口多聞少佐が尋ねる。


「どうもこうもない、参謀長は木で鼻をくくったようだし、近藤中佐もだめだ、山口少佐今回は大変な事になるかも知れん」


「ですが電波探信儀レーダーが軽巡以上には装備されています、あれは凄いですよ、夜間でも霧中でも安心して動けます」


 それを聞いた小沢は厳つい顔を少し緩めて言った。


「確かにそうだな俺の心配のし過ぎなのかも知れんな」


 そう言って訓練の確認をする二人で有ったが、まさかこの後とんでもない事になるとは思いもしなかったのであった。


>>>>>>>>>


「何だって!正気なのか?」


 乙軍の第五戦隊に属する「神通」の艦橋では艦長が通信参謀の渡した連合艦隊司令部からの電文をみて声を荒げていた。


 電文には「電波探信儀レーダーの使用は厳に禁ずる」というものであった。



「これでは闇夜に提灯も持たずに散歩しろというものだ、副長!見張り員を臨時に増やすんだ」


 神通ではこうして電探レーダーを切る事になったが同じ小隊に属する那珂ではその命令を無視する事にした、艦長があくまでも安全を優先したからだ。


 そして悲劇は幕を上げる事になる、戦艦たちからの探照灯に捕らえられた神通は戦線を離脱しようと右へ舵を取ったところ後続していた第一水雷戦隊の「蕨」の中央部に突き刺さりボイラーを破壊された「蕨」は大爆発を起こし真っ二つに折れて沈没した。


 そして「神通」も艦首下部を失い大破した。


 後続していた那珂は電探を動かしていたので「蕨」たちの動きを知っており回避する事ができた。


 事故の一報が旗艦「長門」に届くと司令部は大混乱になった、参謀の中には「長官が電探を使わないように言うから…」と口にするものまでいたが、参謀長は混乱を避けるために「長門」を退避させようとし、加藤寛治長官も賛成したが参謀の大河内伝七中佐が「死傷者が多数出ているのに長官だけ先に帰るとは何事か」 と抗議したため高橋参謀長が陳謝して取りやめになった。


>>>>>>>>>>


譲視点


本郷少将が電話で連絡してきた。


「美保関で衝突事故があった、電探で避けられるはずだったのだがどうして避けられなかったか現在調査中だ」


「判った、調べが着き次第教えてくれ」


 電話を置きながら俺は自問自答していた。


(どうして衝突事故は起こったんだ?電探の装備は間に合ったのに……)


 俺は事故が起こらないようにした対策がうまく行かなかった原因を考え続けていた。


 本郷少将がその答えを持ち帰ったとき俺は眩暈がした、どうして電探の使用を禁ずるのか考えられない!


「本郷少将、査問会が行われるはずだ、参加するぞ」


「判った、爺さんたちにも連絡するよ」


 さて、この落とし前どうつけてくれようか!


 俺は査問会が開かれるまでに打つべき手を考えるのであった。








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