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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
68/231

65話 夢の超特急

※ 12月12日修正

1927年3月15日


 東京オリンピックを1年後に控え東海道新幹線が開通した。


 仕込みを事前にしていたにしては異様に早い。本気モードの島安次郎はすごいね。


 路線は前世まえとは少し違う、関が原を通らずに鈴鹿山脈を貫いて大阪に向かっている、その方が距離が短くて済むからだが、長大トンネルを掘る技術があればこそだ。


 車両のほうも間に合った、先に在来線用に作った電気機関車などは電化した東海道本線で試運転を行い信頼性を高めていった。

 

 その中で新幹線の車両は電車でという事になった、もちろんこれも動力分散方式の優位性を吹き込んだからだ。


 主に息子の島秀雄の方にだが。


 彼は先ず東海道本線の東京<>沼津間に電車列車を走らせて試験をした、{湘南電車}と呼ばれる事になる電車だ。


 そこでの運用実績をフィードバックして車両システムを組んでいきついに{0系}車両の開発に成功した。

 

 鴨宮モデル線でATC(自動列車制御装置)やCTC(列車集中制御装置)のテストをしながらついに速度で256キロを出す事に成功する。


 営業最高速度は210キロになるがこれで東京駅と新大阪間は3時間10分となった。


 初年度は馴らしもあるので来年からは3時間切りが目標だ。


 早く九州まで引いてくれたら大神までの出張が楽になるのにな。


>>>>>>>>


島秀雄視点


 東海道新幹線が開通した、国鉄に奉職してこんなに晴れがましい場に立ち会うことが出来たのは誇りに思う。


 だが俺の気持ちは釈然としない、この成功はそうまるで見えない誰かが俺や親父の後ろからぐいぐいと押してもたらしたように思えてならないのだ。


 最初に親父に聞いたときとても工期内に完成するなんて信じられなかった。


 新しく鉄道を引くのに必要なその最初の用地買収に手間取ると思っていたからだ、が予定していた路線上の土地の大半が軍の所有地だったのだ。


 演習用の土地や兵舎予定地、軍用鉄道予定地なんかもあったが軍の持ち物は国の持ち物あっさりと譲ってくれた。


 最初は幸運を喜んでいたがそれが続くと余りにも異常で有るのに気が付いた、親父も余りに不審だと思っていたが工期の短縮には背に腹は変えられない結局何も言わずに受けとった。


 俺の担当していた車両開発もそうだった、偶然・・新型電車用に旧来の釣り掛け式駆動方式から欧州で手に入れたカルダン駆動方式に変更したり、ATCやCTCのシステムが偶然・・ドイツの鉄道研究部門から流れてきたり、バラストを使用しないスラブ軌道が偶然・・軍の工兵研究所から提供されたり余りにも怪しい。


 さらに車体の空気抵抗や空力の為に航空機製造会社や空軍の協力があったり路線や橋梁の建築などには陸軍の工兵将校が来て設計を手伝ってくれたが秋山という将校がポロリともらした{総研}という言葉が引っかかる、もしかしたら新幹線建設の裏には「総研」が絡んでいるのでは?


 何も根拠も無いが俺にはそう思えてならないのであった。


>>>>>>


第三者視点 


 島秀雄は後に父親の島安次郎と共に「新幹線の生みの親」と呼ばれる事になるが親しい知人には凄く嫌がっていたという、理由を問われると「あれを作ったのは親父や俺じゃない」と言ったと言われる、知人は謙遜だと思ったそうだが、死後発見された書簡に「新幹線は陰謀で作られた」という一節があり様々な憶測が流れる事になった、特にム○というオカルト雑誌は「ユダヤとフリーメイソンの工作」という記事を書いた。


 記事によると日本の中枢部にフリーメイソンの裏指導者たちがいて政治や軍事を裏面より動かしている、彼らのネットワークによって資金やオーバーテクノロジーがもたらされ日本は繁栄を迎えた

というのであった、フリーメイソンはともかくかなり真実の部分も有ったのだが、なんと言ってもオカルト雑誌の記事であったのでその道の人たちが喜んで終わったのであった。


>>>>>>>>


譲視点


 開業した新幹線に乗る事ができた、前世では乗る事が無かった0系だがもちろん前世と同じとは行かなかったようで内装は今風・・の物になっている此方の人たちには十分未来感漂う物だろうが俺にとってはクラシカルな佇まいだ。


 この時代なのでグリーン車とかではなく一等車、二等車となっていて、座席も転換式クロスシートの二等車に対して一等車は回転式でリクライニング出来る様になっている。

 

 この辺は固いボックスシートでなくなって本当に良かったといえる。


 さて、新大阪からは在来線だ、夜行特急「国東」に乗り換えになるやはり山陽新幹線と九州新幹線の早期完成の為にも用地買収を急ぐとしよう。


 おっと、本業の方のことも考えなくては。


 脇道に逸れかけた思考を戻す事にして俺は鞄から計画書を取り出す、「夕張」で試験していたレーダーの成績が合格点に達したので量産が始まった。


 艦船用の対水上レーダは主要な艦から順に着けていくことになっている、これで夜間や霧中での衝突事故は減るはずだ。


 航空機用や陸上でのバリエーションも試験機がそれぞれの軍に送られて試験が始まっている、あとは射撃用レーダーの試験をいつから始めるかだが試作機の出来具合を見てから「夕張」に搭載して試験する事になるだろう。


 大井川鉄橋を渡る「ひかり号」の中で俺はそんな事を考えていた。



 

ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも……

ブックマーク・評価ありがとうございます。

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