64話 転機
第三者視点です
1926年
東京オリンピックを控え建設ラッシュに沸く東京で一人の老人がその生涯を
終えた。
彼の名は山縣有朋、長らく政府の重鎮として名を馳せた人物である。
総理大臣も歴任した彼の為に国葬が行われ多くの人が参列した。
その後某所で譲の秘密を知る者だけの集まりが行われた。
「穏やかな最後であったな。」
伊藤博文が口を開くと同意する声が上がった。
「狂介(有朋の若い頃の名前)はわしに常々言うていたよ、
俺より先に死ぬな、お前が俺の葬式に来てくれなんだら
寂しい式になるからとな。」
それを聞いた譲は複雑な顔をした、彼の知る史実では
伊藤博文が暗殺された後の山縣の葬式は国葬にしては非常に
寂しいものだったからだ。
「その顔では本当にそうなるところであったか。」
「!」
顔色を読まれていたことを知り驚く譲に伊藤は言葉をつなぐ。
「奴が最後に言うておった、貴様もそろそろ表に出る頃合いだとな。」
「そんなことを?」
「もう海軍少将になったんじゃ怪しまれもせんじゃろう。」
「貴様には総研の所長を任せたい。」
横から口を挟んで来たのは斉藤実である。
「ですがそれでは?」
「同時に中将に昇進する、所長クラスは中将でという決まりがあるからの。」
「そうですか・・・判りました、務めさせていただきます。」
「そうか、これで安心した、明日迎えが来ても大丈夫じゃな。」
そう伊藤がおどけたように言うと上座から声がかかる。
「何を言う、そなたには生き字引として頑張ってもらわなくてはな。」
「ははっ、これはこれは参りましたな。」
陛下からの言葉に流石の伊藤も頭をたれるのであった。
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譲視点
うーんそろそろ陰に隠れてこそこそ動くのは限界か・・・
流石に総研の動きを怪しんでる連中は多いからなあ、
口止めはしてるんだがそこかしこで関与が噂されてるし
山城級の改装でも噂が立ってるしな。
まあ、今回は軍縮条約に不満は出ないはずだからクーデター
騒ぎは起きないだろう。
山城級は16インチ砲に換装することが正式に決まった。
要目はこうなる
満載排水量32500トン>34500トン
全長219.6メートル>224.7メートル
全幅32.5メートル
蒸気タービン2基4軸55000馬力>4基4軸95000馬力
速力24.5ノット>27.7ノット
航続距離9500海里(14ノット時)>9000海里(14ノット)
兵装 45口径35.6cm連装砲5基>45口径41cm連装砲4基
50口径15.2cm単装砲12基 >45口径12cm連装高角砲12基(シールド付き)
武式12.7ミリ機関銃(連装)10基
3番砲を降ろして機関部を強化した、砲が減るだの文句を言ってた奴が
いたらしいが「長門」と同等の砲力なら十分だろう、
基本的に長門に近い艦になった。
八八艦隊計画は頓挫したが長門級が四隻増えたと思えば儲けだと
思うけどな。
金剛級も改装できるが装甲を増さないといけなくなるので条約の範囲内では
十分な防御力が維持できなくなる、さらに速力が落ちる。
ガスタービンに換装したいがまだその時期ではない、どうせ次の軍縮会議が
あるからその後にすればいいとしてある。
武式機関銃はウインチェスターと契約で揉めていたジョン・ブローニングに
契約を持ちかけて日本に来てもらった、前世ではM2と呼ばれた
名機関銃だ、これが手に入れられたのは大きいな。
住友機械工業に製作させていて陸・海・空で活躍してくれそうだ。
レーダーの方も進展があった、スコープの方もPPIとAスコープが
どうにか形になった、マグネトロンの方も徐々に生産できるようになった
一番の問題だった電線や電気部品などの品質もJIS規格と生産指導で
品質が向上しているので故障も少なくなって信頼性が増してきている、
夕張に試作品を載せて試験に入っている、夜間や霧中でも
{見える}ので安心だと報告が入っている。
量産出来次第配備するようにしなくては。
本郷少将(昇進!)の話ではレーダー手の養成も始めているので
配備して直に使えるようになるだろう。
オリンピックも近いのに・・・そういえば新幹線はどうなったんだろう?
以前丸投げした情報がどうなったのか調べる事にして、
俺は自宅に帰るのであった。
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あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも・・・
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