63話 各国建艦秘話
※ 3/10修正
第三者視点です
ワシントン軍縮条約会議後
イギリスでは条約によりネルソン級戦艦2隻の建造が許された、これは日本とアメリカが建造していた戦艦に対抗して16インチ砲搭載が決まっていた、だがそれまでの戦艦は最大でも15インチ砲搭載艦のみでありそれへの対抗措置が求められていた、そこで出てきたのが{主砲換装}である。R級と呼ばれる戦艦群を15インチから16インチ砲へ換装するという事に決まりネルソン級と同じ砲を搭載する事になった。
「日本からの提言が役に立ったな」
このとき議員の職を失い復帰を狙っていたウインストン・チャーチルは海軍大臣当時の事を思い出していた。
かつて海軍卿フィッシャー提督に送られてきた{ヒラガ}からの提言これを生かしきれなかった為にユトランド沖海戦では苦杯を舐めさせられた、日本の連合艦隊の参戦が無ければどうなっていたであろうか。
そして同じ人物からの提言を無視する事は彼には出来なかった。建造が決まっていたR級戦艦は将来の改装で16インチ砲が搭載できるよう設計されたのである。
「そして当時はわからなかったこの一文だが……」
それは「将来の改装には高速化の為に新型機関への換装が出来るように」との文言が書かれており当時は判らなかったのだがついこの間にもたらされた共同開発によって明らかになったのである。
「ガスタービンか、これなら場所をとらずにR級の馬力を倍以上にする事が出来るだろう、そうなれば低速戦艦が一気に高速戦艦の仲間入りだな」
この情報を提供してきたのは自分が大臣時代に伝を作った情報部からであったがまさかその情報部員が東機関の成りすましだとは未だに気が付いていないのであった。
こうしてイギリスは5隻の16インチ砲搭載艦を増やすことに成功するのであった。
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アメリカではこの条約の締結を問題視している集団がいた、海軍である。
彼らは政治家の面子の為に戦艦の比率を日・英と同じにした為にその他の補助艦の比率が低い事を問題視した、さらに16インチ砲搭載艦コロラド級戦艦3隻が認められたが日本とイギリスが16インチ砲に換装する事で数を増やした事に対抗し自分たちも改装を行おうとした。流石にワイオミング級の換装は不可能とされたがそれ以降の艦は対象とするという決定に艦を作る部門から反対の声が上がった、元々換装を予定して設計されていない上にこの換装における条文には換装による排水量の増大は殆ど認められていないからであった。(尤もネバダ級以降は元々の排水量が大きいのでそれすらも排水量上限に引っかかり不可能に近い。)
「この改装を実行しても防御力を上げる事が出来ないために、16インチ砲の攻撃を受けたときの保障は出来ません」
さらに
「艦のバランスが取れず実戦で問題を起こす可能性がある」
そこまで言われても面子と日英への恐れから彼らは強行する事になる、そのために16インチ砲艦の数だけは日英を優越する事になる。
さらに補助艦については数に対抗するために各艦の戦闘力を上げる事が求められる事になって行く事になる、また条約に定められていない小型艦を大量に配備する事にして対抗しようとした、この決定が後に重大な事になるのだが彼らは気付くことは無かった。
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日本 艦政本部第4課
「平賀先輩……貴方って人はどこまでも関与する積りなんですか。」
藤本喜久雄大佐はある計画図を目の前にして唸り声を上げていた。自分はすべての面で先輩である彼を超えている、そう今までは思っていた。
だがこの計画図は…
「まるで近い将来軍縮が行われるのを知っていたかのようじゃないか、この艦を設計していたときからそこまで読みきっていたなんて」
その計画図には{金剛級、山城級改装計画書}となっており主砲の換装など今後の近代化改装の計画が時系列に纏められ「今後30年は現役艦として使えるように」と書かれていた。
驚くべき事にはすでに16インチ砲を搭載できるようにしており防御のほうもそれに見合った改装指示もある。
「だが、この新型機関というのは?」
新型機関は金剛型をもし16インチ砲に換装するならば防御力をそれに見合ったものにしなくてはならないがそうなると大幅に速力が落ちてしまうために新型機関の完成後に改装が望ましいとありさらに山城型の最終改修案にも換装のことが触れられていた。
だが藤本大佐にもその機関の心当たりが全く無いのであった。
「大神で作られた実験巡洋艦夕張の艦船用ディーゼルか?しかしそれで従来の蒸気タービンに馬力で勝るというのか?」
いくら考えても判らずひとまず金剛型は改装しないので忘れる事にした、そして別の計画書を手に取る。
「彼の設計した最後の艦妙高型……もうすぐ竣工しますね」
そして新たに取り出したのはその妙高型に続く重巡洋艦の計画書と水雷戦隊の中核を担う駆逐艦の計画書である。
「負けませんよ、貴方を超えて見せますとも、僕の設計した艦が一番強いんだ」
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