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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
1章 明治編
6/231

5話 紐育(ニューヨーク)と譲(おれ)

※11/22修正


※3/14修正

  頑張った俺は現在定期航路の船上にいる、出発の日黄色かった太陽はようやく普通に見え出した。


 さてこれからどうしたら良いか考えてみる。 歴史を変えるには良く「あの人が居れば」ということがあるようだ。


 その中で寿命や元の時代で直せない病気はどうしようもない、元の時代に治療薬や方法が分かっているものは何とか成るか、後は事故や災害で亡くなるのであればあらかじめ教えておけばいいだろう。


 あとは人為的な死亡、自殺や暗殺などはなるたけ防ぐということで。


 そこでその条件で調べていくと…


「ここはやはり伊藤博文の暗殺阻止だな」


 ハルビン駅で韓国人過激派に襲われて彼が死んだために日韓併合の計画が進んでしまったのだ、元々彼は併合反対派で1907年には記者会見で「併合の必要なし」とまで言い切っている、その後暗殺の年に転向した様だが…

 

 暗殺も真犯人が別にいるような感じがするし別の思惑もあるので是非生き残ってもらいたいのだが……


 まあ、それも茂丸のおっさんが俺を信じてくれるかどうかなんだが。


>>>>>>>>>>>>>>>>>


 紐育ニューヨークに俺は降り立った。


 本来ならここですぐにイギリス行きの船に乗らなくてはならないが都合良く便が無いということにしてある。


 理由はここである人物に会っておきたかったからだ。


 この時代、紐育はまさに大都会である、エムパイア・ステートビルはまだないけどね。


 ブルックリン橋を目指して進む、イーストリバーに架かるその橋は近代建築を見ている俺が見てもでかかった、そのそばにある日本人教会を訪ねその人物の所在を聞いた。


その人物のオフィスにやっと着くことができた、ノックをしてドアを開ける。


「こんにちは」と声を掛けると


「ああ、いらっしゃい、我が社にどんな御用かな?」


 温厚な感じを受ける30代の男が応対してくれた。


「こちらはミスター星の経営するオフィスと聞いてきたのですが…」


「ああ、そうだよ、僕は安楽栄治、副社長をしている」


「平賀譲と言います、海軍に奉職しております」


「そうですか、ロシアと戦争中でしたがアメリカに?」


「いえ、イギリスに駐在を命じられたのでアメリカ経由で向かう途中です」


「そうですか、我が社にこられたのはどのような?」


 少し不審に思われたかな?まあ軍人が来るようなところじゃないからな。


「社長をしている星さんに挨拶をと思いましてね、こちらで活躍されてると日本で聞きまして」


「なるほど、そうですか、いま所要で出てますがすぐに帰ってきますよ、こちらに座って待っていてください」


 そういわれたのでソファにかける。


 待ち人が来るまで俺は安楽氏と雑談をした、お互いの出身地やここに来るまでの話などをかいつまんで話していると…


「ただいま! おや?お客さんかい?」


「お帰り、君を待ってたお客さんだよ」


「そうかい、はじめましてかな?僕は星一はじめだ」


 杉山のおっさんの次に会う予定にしてたのはこの人物だ、俺は初対面で不思議そうな顔をしている彼を見て微笑んだ。


>>>>>>>>>>>>>>>>


「杉山先生のところで聞いてですか、なるほど」


 ほしと差し向かいで話している、話は彼が行っている事業についてである。


「ジャパン・アンド・アメリカはもう廃刊にする予定なんですよ」


 そう言って彼は少し寂しそうな顔をした。


「赤字続きなのでね、もう一つの日米週報は続けるつもりなんだ」


 日米週報は現地の日本人向けの日本語新聞、そしてジャパン・アンド・アメリカはアメリカ人向けの日本のことを紹介する月刊誌である。


 だが需要のある日本語新聞に比べて日本を紹介する月刊誌は売れていない、多くのアメリカ人のとって日本は取るに足らない国だと判る、日露戦争の結果では少し違ってくるかもしれないが…


「そうなんですか?とても意義のあることだと思いますが、日本の外務省は協力してくれないんですか?」


「杉山さんからのつてで伊藤閣下に頼んでもらったんだけどわずかな補助金しか出ていないんだ、それに僕もアメリカに来て12年にもなる、そろそろアメリカに留学して学んだことを元に日本で一旗あげようと思ってね、元々こちらに来たのもその為だしね」


「なるほど、ですが廃刊ではなく、休刊ということにしていただけないですか?」


「それはまたどうして?」


 俺はこちらに来る前に杉山のおっさんのところで献策をしたことを話す、未来の事については今は話すべきではないと省略した。


「じゃあ、杉山先生を通じて軍に援助をお願いしたのですか?」


「ええ、外務省はどうやらアメリカに対してあまり熱心とは言えないようですね、戦争のために多くの国債を引き受けてもらっているのに、むしろ半島と大陸の権益のほうが大事なので後回しの感じがします」


「伊藤閣下も動いてくださったのですが……」


「正直外務省の小村大臣は伊藤閣下より桂閣下寄りですからね、顔をつぶさない程度といったところでしょう」


「それなのに軍で援助しようとする、何故ですか?」


「アメリカは民主主義の国です、国民の声が政治を、国を動かします、時の政府が逆に国民を新聞などの報道で煽れば簡単に政策をおし進められる」


「確かに、それはありますね」


彼はこの国で実際に見ているので感じる物があるのだろう。


「もし、アメリカの政府が日本の存在が自国の政策に邪魔になったとしてそれを行われれば日本の事を良く知らない大多数のアメリカ人たちは簡単に日本討つべしと気勢をあげるのではないでしょうか?」


「まさか……でも、しかし」


「あくまでも可能性です、ですがお互いの国のことを良く知っていればそれはかなり防げるのではないかと思っております」


「なるほど、それで…」


「ですからここに来るまでに手は打ってきました、うまくいけばかなりの梃入れが行われるはずです、それまで休刊扱いにしていただけませんか?」


「判りました、僕は帰りますが安楽君はここに残って日米週報を続けます、後は彼に託す形になりますが…」


「大丈夫だよ、星君、平賀さん、補助金が来たら又再開することを約束するよ」


 それまで黙って聞き役になっていた安楽氏も快諾してくれてこれでこの地での作戦は終了だ。

ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。

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