54話 ワシントン海軍軍縮条約
※若干長めです
※7/2修正
第三者視点です
1921年11月
アメリカ合衆国 ワシントンDC
アメリカの大統領ウォレン・ハーディングは前大統領が提唱した国際連盟加盟を拒み「アメリカが一番である」というキャンペーンで国民に絶大な支持を受けていた。
彼にとって大戦の勝利者であるイギリスと日本は脅威に映っていた。
もし彼らが同盟の元力を合わせれば合衆国さえも危ない……その危機感から両国の力を削ぐ事に動く事になる。
それが首都ワシントンで開かれた国際会議であった。
まず彼は多国籍同盟を提案して日英同盟を破棄させようと企んだが両国はすでにユダヤ人国家建設などで深い関係でありそれを成し得ることは出来なかった、それに自国のユダヤ系国民の反発も問題となった。
そこで彼は軍縮に力を入れるようになる、特に海軍の戦艦を中心とする建艦競争は大戦が終わりに向かっていても過熱し日本は八八艦隊を計画しすでに「長門」「陸奥」は竣工し基本計画変更で遅れた3、4番艦も起工されようとしていた、巡洋戦艦も「赤城」「天城」が進水を迎えてこれから艤装が行われようとしていた。アメリカもダニエルズ・プランによって建造が進められておりコロラド級戦艦四隻が「長門」の40センチ砲に対抗する形で40.6センチ砲搭載に変更されて建造が進められていた。
この計画のままで行けば両国は軍事予算が許容範囲を超えてしまうのでどこかで歯止めが必要であるとの認識があった、またイギリスもこれ以上の軍事費の増加は避けたいところであったので会議が始められる事になった。参加国はアメリカ、イギリス、日本、フランス、イタリア、トルコである。
ここでまず戦艦の保有比率が議題に上げられた。
「イギリスとしては英:米:日の比率は5:4:5としたい、他の3国は1.75が妥当であろう」
イギリスの代表であるバルフォア外相はこう提案した。
「お待ちいただきたい!我が国が何故貴国や日本よりも比率が低いのか!」
「合衆国は孤立主義を国是とされておられる、自国の防衛のみであれば妥当なのではあるまいか?」
憤激するアメリカ代表に対して日本の全権である加藤友三郎が畳み掛ける。
「いや、我が国は大国である、貴国らと……いやそれ以上の戦艦が必要だ!」
「その戦力をどこに使われるというのか?大戦の時に貴国の艦隊はどこを散歩して居ったのであろうか?」
バルフォアの痛烈な皮肉には当初参戦を求めても議会の反対を盾に参戦を拒んだ事に対する軽蔑が含まれている。
「我が国は欧州に新鋭の部隊を派遣しました、今後国際連盟常任理事国としてその役割を果たすためには必要な数なのです、決して飾っておくような為に建造しているのではありません」
自ら連合艦隊の指揮を執った加藤の発言には凄みがありアメリカ代表は蒼白になった。
他の参加国も英・日を支持しアメリカは不利になったがここで譲歩しては面子に関わるため粘りを見せた。
そこでお互いが譲歩する事で折り合いが付き主に以下の条件となった。
戦艦 英・米・日 合計50万トン 伊・仏・土17万5千トン
(基本排水量で、一艦あたり36000トンまで備砲16インチ以下)
重巡洋艦 英・日 合計15万トン 米 10万トン 伊・仏・土 3万トン
(基本排水量1万トン以下 備砲8インチ以下)
軽巡洋艦 英・日 合計16万トン 米 12万トン 伊・仏・土 2万トン
(基本排水量2000トン以上1万トン以下 備砲6.5インチ以下)
駆逐艦 英・日 合計12万トン 米 8万トン 伊・仏・土 2万トン
(基本排水量600トン以上1500トン以下 備砲5.1インチ以下)
航空母艦 英・日 合計13万トン 米 10万トン 伊・仏・土 3万トン
(基本排水量2万トン以上3万5千トン以下 備砲6.5インチ以下10門まで)
こうして戦艦の保有数で英・日に並んだ事でアメリカは満足する事となった。この時代戦艦こそその国における威信であり国力の象徴であったからだ。
こうして会議は条約の締結で終了しこの条約はワシントン海軍軍縮条約と呼ばれる事となった。
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譲視点
ワシントンでの会議の結果が暗号電文で届いた、どうやら予定通りアメリカは戦艦にこだわり他の艦に関しては此方の思い通りになったようだ。
戦艦に関しては「長門」 「陸奥」までが保有を認められた。「赤城」と「天城」は竣工したと見なされなかったので、航空母艦に変更される事になるな。
基本計画を見直した結果、起工が遅れた上に仕様変更で各パーツが届かず進水させるのがやっとだったようだ。軍令部の奴が歯軋りするのが見えるようだが自業自得である。
「金剛型」や「山城型」以前の戦艦も排水量の問題で殆ど保有できなくなる就役してそんなに経ってないので勿体無いし1万トンを超える装甲巡洋艦も保有できなくなるので考えないといけないな。
偶然だが先日進水した巡洋艦は基準排水量が1万トンで収まっているので問題ない。
同型艦が四隻で大神、呉、長崎、神戸で建造され「古鷹」「新高」「青葉」「衣笠」と名付けられた。
古鷹型
基準排水量 9800トン
全長 185.1メートル
全幅 17.5メートル
機関 100000hp
最大速力 36ノット
兵装 50口径20センチ連装砲 3基 6門
12センチ高角砲 4門
61センチ4連装魚雷 2基
7.7ミリ機銃 4基
対潜用迫撃砲2基
さらに俺の置き土産になる重巡洋艦も起工している。妙高型巡洋艦になる予定の艦だ。
ここまではすでに部品発注済だったので変更される事にはならなかった、藤本中佐たちは戦艦のほうにかかりきりだったので手が回らなかったとみえる。
もちろんこれは「夕張」のような新型機関などは使われて居らず重油ボイラーにより蒸気タービンを回す奴である。
これから「海軍休日」時代に入る、表立っての活動も控える事になるだろう、だがこれからが正念場なのだと俺は「夕張」の最終公試に臨むため大神工廠に向かうのであった。
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