53話 即位と竣工
※4/4修正
※2018/05/18修正
1923年 11月10日
この日大正天皇の退位と摂政宮の天皇即位礼が行われた。これにより元号が「昭和」となった。
この年一杯は{大正}となり翌1924年から{昭和}となる。これは区切りよく新年から年号を変えたかったのだが新年は皇室行事が多いためずらされたのであった。
今回は先帝の崩御の後ではなく「諒闇」と呼ばれる服喪期間が無かったため行事の自粛などが行われることは無かった。
そしてその祝賀ムードで日本中が沸きかえっていた頃密かに竣工した艦があった。
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譲視点
「只今の速度は37.8ノット」
公試を続けて今日最速が出た。
「やりましたな」
艦長が祝福の言葉をかけてくれる。
「ええ、長かったですね」
俺はこの艦がここまでになるまでの日々を思い出していた。
この艦が起工したのは1917年の事だ、欧州に行っている間に大神で起工し進水は翌年、そこまでは順調だった。だが艤装を進め新型の機関を搭載して試験を開始した時から苦労の連続となったのであった。
新型機関そのものの不調、それに対応したギアボックスの度重なる破損更には可変ピッチプロペラを採用したスクリューの故障、俺が帰国してからも中々解決のめどは経たなかった。
それを素材の生産から見直し、エンジンの工場に出向いて指示を出しギアボックスを生産する工場には生産設備の最新の奴を送り込みスクリュー生産の為に技術者をスカウトした。エンジンの製造にはある会社を合併させるまでの大技まで繰り出した。
こうして出来たのが高知沖を疾走する軽巡洋艦「夕張」である。史実では3000トン級で5500トン級の性能を持つために生まれた艦だったが艦自体としては失敗であった、もちろん後に参考となる技術は得られたのだが。
今回のコンセプトは同じ5500トン級でありながら新機軸を取り入れた今までに無い艦を作ることである。
同時期に起工された5500トン級の球磨と比較してみる。
球磨
基準排水量 5560トン
全長 162.1メートル
全幅 15.5メートル
機関 90000hp
最大速力 36ノット
兵装 14センチ単装砲 7門
8センチ高角砲 2門
53センチ連装魚雷 4基
対潜用迫撃砲2基
装備他
夕張
基準排水量 5800トン
全長 165.1メートル
全幅 15.5メートル
機関 120000hp
最大速力 37.8ノット(現在)
兵装 14センチ連装砲 3基 6門
8センチ高角砲 2門
53センチ4連装魚雷 2基
対潜用迫撃砲2基
装備他
因みに夕張の最大速力が(現在)になっているのは、エンジンの信頼性が得られるまで最大出力を抑えているので実際には100000hp位しか出ていないのである。要はタービン周りに不安があるという事だ。
「帰ったらタービンの検査を行う、それをクリアしたら次回公試で最大出力を試験する」
そう艦長に告げて艦橋を後にした。
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大神工廠
「よう、どうだった?」
数ヶ月ぶりに本郷大佐が公試を終えて帰ってきた所にやってきた。
どうやらロシアに出張していたらしい。
「マリア皇女に会ってきたのかね、ジェームズ君?」
「ああ、皆さん元気そうだったぞ」
俺の皮肉にも全く動じない、ぬけぬけと言いやがった。
「イギリス情報部のジェームズなんて名乗るなよ」
MI6のジェームズといえば女王陛下に殺人許可証を貰ってるあの男と間違うだろうが!
まあ原作者が小説を書くのは1953年の事だけどな、本当に存在してる事になって都市伝説にでもなったらどうするんだ!
そう文句を言ったのだが。
「俺の名前だって小説から取ってるんだから大概じゃあないか」
との事だった、最初に伊藤の爺さんや児玉総理に渡した計画書に悪乗りして書いていたんだよな、まさかほんとにそういう名前で来るとは思わなかったよ、原作者の山中峰太郎はこの間淡路丸偽電事件で収監されてたのだが下獄している。
今から小説を書いていくはずだ、気がつかないで欲しいものである。
「この夕張だが変わった形をしてるな、これが新しい艦の形になるのか?」
「まあな、まだ世間に知られたくは無いからな細かいところは見せないつもりだ」
この夕張の外観だが艦首から艦橋までは今までと同じ構造だがその後ろの煙突の部分から違う、丸くて長い煙突でなく太くて四角い煙突が二本立っている、さらに後方には巨大な四角い構造物がついており従来艦に無い異様さを表している、砲は艦橋前部に2基艦後部に1基連装砲がついている。
「新型機関の問題の洗い出しも終わったし、大型艦船の乗せ換えも考えなくてはな」
今回の試験艦の成功で俺は次の計画実行に考えを馳せるのであった。
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