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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
2章 大正編
50/231

48話 帰国と変事

※ 4/1修正

 横須賀


 やっと日本の地を踏めた。


 水平線の彼方に日本列島が見えたときには涙が出たよ。二本の足で踏みしめる地面。こうしてからやっと帰ったんだという実感が湧いてくる。


「平賀中佐お疲れ様でした、是で任務終了でありますな」


 草鹿中尉と木村中尉(進級した!)が敬礼して見送ってくれた。


「君たちも資料整理を手伝ってくれて有難う、感謝するよ」


「いや、長い航海でしたのでいい仕事でしたよ」


「又いつか御一緒したいですな」


 こうして彼らに見送られて俺達は金剛を下艦した。


「これから行くのはな…」


 本郷中佐の言葉を遮る。


「家に帰って奥さんと……」


「却下だ、まずは防衛省に向かうぞ」


 ああ、無情だ……


>>>>>>>>>>>>


防衛省 艦政本部



「平賀君、よく帰って来てくれた、中々凄い成果のようだな」


 山本開蔵第4部部長に帰朝報告をすると労いの言葉をいただいた、纏めた報告書を説明してそれが終わるとその表情が曇ったのに気が付いた。


「それで今後の事なのだが……君に辞令が出て居るのだよ」


 渡された辞令を読むと……


{海軍中佐 平賀譲を大佐に任ずる、現海軍技術本部第4部員の役職を免じ、東京帝国大学工学部教授に任ず}


 と書いてあった…これは?


「これは……どういうことでありますか?」


「すまん、君には後進の教育に専念してもらうことになったのだ、又欧州で得た知識や技術を我が国の利益になるように研究して貰いたい、そういうことだ」


渡されたもう一つの辞令を持つ俺は呆然自失で部長の前を辞去した。


>>>>>>>>>>>>


 久々に帰った自分のデスクだが帰っていきなり荷造りをすることになろうとは思わなかった。


 片付けていると後輩の福田大尉が近づいてきた。


「平賀先輩、大佐進級と無事の帰朝おめでとうございます、それと……帝国大学教授就任おめでとうございます」


「なあ、福田君この人事なんだが…」


「ここでは…あちらに行きましょう」


 彼の目線の先にある小部屋に移動する。


「それでどうなんだ?」


「それが、先週の事です、急に人事異動の知らせが来まして先輩が帝大の教授になると知らされたんです」


「いやに急な話だな」


「はい、山本部長も不本意な様ですが噂では軍令部からの横槍だとか…軍令部の者が自慢していたそうです我々に逆らう者はこうなるのだと」


「ふむ、それで俺の後任は誰なんだ?」


「はい、それは…」



>>>>>>>>>>>


それから再開した荷造りを終えた俺は一休みしていた。


 そこに件の人物が近づいてきた。


「これは平賀大佐、帝大の教授になられたそうでおめでとうございます、後輩の指導などさぞや遣り甲斐のあることだと思います」


「ああ、そうだな君が後を引き継いでくれるのなら安心だよ」


「そうですね、八八艦隊計画の事ならお任せください、さらに強くなった連合艦隊をお見せできると思いますよ」


「やはり、計画を変更するのか?」


「もちろんです、あのような艦では用兵側が不安になるのも尤もでしょう、すでに建造にかかった1番と2番艦は仕方ありませんがそこから先はもはや別物になりますよ、まさに不敗の連合艦隊に相応しいというものです」


「自信と過信とは別物だよ藤本喜久雄中佐、新機軸を恐れずに採用することも必要だだが……」 


「それがどうしたというのです!」


「用兵側の希望を適えるのが我らの使命です、そして我々にはそれをなしえる技術力があります、恐れる事などありません」


 藤本中佐かれの表情は優越に酔いしれている。聞く耳は持ってなさそうだ、だが言わずには居れないな。


「そうか、もはや此方が言うことは無い様だな、唯一つ忘れてもらいたくない事がある、それは艦に命を預ける兵たちのことを常に忘れないことそれだけだ」


 そう言って俺は長年奉職した職場を去った。

ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

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