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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
2章 大正編
46/231

44話 譲の出立した後の日本 1

※3/29修正

第三者視点


 第一次大戦勃発時の内閣総理大臣である大隈重信が大臣の疑獄事件で総辞職したあと大命が下ったのが当時各大臣を歴任していた後藤新平である。この時マスコミはこぞって『大風呂敷に大命下る』などと揶揄した。彼は腹心の中村是公を大蔵大臣に据えて政権を万全の物とした、もちろん伊藤や山縣たちも影で支えており思い切った政策を打ち出してきた。


 それが『日本列島改造計画』である。


 このことが発表されると『またやった大風呂敷』『火付けの新平に火消しの是公奔走か?』などと

新聞に書かれたが彼らは全く意に帰さなかった。


「日本国内を高速な交通、情報通信インフラを整備することで地方の工業化を促進し格差無き社会を作る」


「本土と九州、四国、北海道、樺太を橋又は海底トンネルで繋ぎ自由に行き来できるようにする」


 これらの政策を打ち上げて実行に移したのである。


>>>>>>>>>>>


「まずは交通に関してだが全国に鉄道と道路網を整備する、但しその地方の状況、地形などを考慮して鉄道と道路を組み合わせて最適な選択を行う、金をドブに捨てるような建設は許さない」


「あと東海道本線と山陽本線は複線化しても旅客と貨物輸送で飽和状態になっているようです、何らかの対策が必要です」


「君はどうしたいのかね?島君」


 後藤総理に質問された鉄道技術長の島安次郎は迷いなく答えた。


「平行して高速鉄道路線を敷設することです」


「軌間を広げて高速化に成功したのにかね?」


「はい、複々線化も検討しましたが線形や途中駅などを考えますと大都市間のみに駅を作り線形もなるべく直線区間を増やして高速で走れるようにします、現在の最高速は120キロですがこれは信号を見て列車を止めることが出来る限界の速度でもありますこれ以上の高速化は信号システムを根本から見直す必要もありますそれと曲線区間の半径が現在の線では高速運転には向いていません速度を上げるには全線の見直しが必要ですので別に新線を引いたほうが現在の線を止めずに安上がりに出来るのです」


「ふむ、君の見立てでは新線…新しい幹線になるから新幹線か、それは最高速度は幾ら位を見ているんだね?」


「そうですな営業速度で時速250キロを当面は目指す予定です、ですがそれは現在出来る機関車などで考えてのこと最終的には300キロ以上は行きたいですな」


「私は大概大風呂敷と言われているが君も中々だな」


「閣下に感化されたのでしょう、連結器と軌間変更の件ですな」


そう言って二人はお互いの顔を見て呵呵と笑うのであった。



>>>>>>>>>>>>>


 鉄道関連が終わると次に軍、主に空軍の関係者が呼ばれた。


「君たちを呼んだのは他でもない、これからは航空機が重要な時代が来ると思っている、軍でも民間でもな、もちろん民間での飛行機利用はもう少し先になるだろうが今の内に手を打っておきたいそこで君たちの意見を聞きたいのだ」


「では閣下まずは航空機が発着できる場所、空港を整備していただきたい、場所は都市の近くに大規模な物が必要です、これからは航空機は必ず大型化するでしょう」


「民間にて今後は航空機の旅客運用もあるでしょう、その場合も大型機の登場も予想されます」


「うむ、その意見には私も同感だな、その辺も取り入れていくのでよろしく頼むぞ」


そう言って彼らを下がらせた後藤は引き出しからある書類を出すと机の上に置いた。


「総研のレポートは凄い物だ…本職たちの意見と同じ事が書かれている、いや…早くから気が付いていたのだからそれ以上か」


 机の上に置かれたレポートには大きく{極秘}と赤判が押されており下に書かれている製作された日付は1907年となっていたのであった。


>>>>>>>>>>>>


「世界大戦勃発で注文が殺到する!大もうけのチャンスじゃ」


「全くです、買い付けを強化しましょう」


 神戸に本社を置く商社鈴木商店ではこの大戦は{神風}が吹いた様に感じていた。


 大番頭の金子直吉は海外の支社にこう電報を打った。


{金に糸目をつけず、ありったけの鉄・物資を買え }


 こうして彼らは莫大な儲けを出すのであった。


 金子はさらに上を目指した、すでに巨大な存在になっていた三菱、三井に追いつけ追い越せと発破をかけていた。そこに主要銀行メインバンクの台湾銀行の使者が訪れ株式上場による資金調達を薦めてきた。


「うちは別に株など上場する必要はない」


「ですが正直これ以上の貸し出しは我が銀行では出来かねます」


「何故だ!我が鈴木商店が信じられないのか?」


「貴方の拡大路線が少々強引過ぎます、戦争景気で潤うのは精々3年も無いでしょう、戦争終結後急な需要減で拡大したつけを払わなくてはならなくなります」


「… …」


 その後金子は資金調達をしようと方々に当たるが皆乗ってこなかった、台湾で知りあいになった

後藤総理に掛け合ったがそこでも思うように行かずむしろ自重を求められる始末であった。


 金子は大戦中は思うさまに売り上げを上げられないので恨み言を言っていたが大戦終結での損失が少なかったのと『日本列島改造計画』に噛んでいたのでその後も安定した売り上げが得られたのであった。

ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

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