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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
2章 大正編
45/231

43話 カンブレーの戦い 3

9/7 誤字修正しました


※3/29修正しました

第3者視点です



 日本軍の前線突破を合図として連合国軍は全面攻勢に転じた。上空に両軍の飛行機が飛び交い空中戦がそこかしこで起こっている。今回もドイツ軍は懲りずに毒ガスを持ち込んでいたが、航空偵察で見つけ出されては集積地を襲撃されるのであまり効果が出ていない。


 戦車部隊も日本軍戦車隊との戦闘で消耗していった、そこに英仏両軍が戦車を先頭に前進してくる。英軍は新型のマークⅣとホイペット戦車で部隊を構成している、仏軍はルノーの製作した戦車だが外観は日本の14式そっくりである、実は先行量産の14式戦車を見た仏軍が購入を申し出たのだが自軍の割り当ても追いついていないのでそれならばとルノーで現地生産させた物である、エンジンは残念ながらルノーではディーゼルエンジンは用立てできずヤンマーも日本軍向けの生産が精一杯なのでルノー製のガソリンエンジンである。この戦車はFT-16と名づけられルノーの開発したFT-17が出るまでのつなぎとされた。


 果敢に反撃するドイツ軍であったが虎の子の戦車部隊は日本軍に当たっていてしかも苦戦中の為に完全に戦車に対抗する術を失っており潰走を余儀なくされた。僅かな慰めは野戦砲の水平射撃でいくばくかの英仏軍戦車を破壊したのと試作で前線に投入されていた対戦車ライフルと小銃用のタングステン弾芯の徹甲弾を使って損害を与えたことであろうかだが全体の戦局には寄与することはなく敗北は決定的になったのであった。


>>>>>>>>>>>>>


「負けたか…」


「申し訳ありません陛下」


「いや……もはやこれまでだ、だが我が本土を失うわけにはいかん」


 そう言ってドイツ皇帝ヴィルヘルム2世は更なる動員を命じた。時間を稼ぎ連合国との講和に持ち込もうとしたのだ。


 だがそれは国民や兵士たちには到底受け入れられる物ではなかった、キールを始めとしてリューベック、ブルンスビュッテルコーク、ハンブルク、ブレーメン、ヴィルヘルムスハーフェン、ハノーファーなどの都市で反乱が起こりバイエルン王が追われついには首都ベルリンまでも民衆のデモが

飲み込んでいった、身の危険を感じた皇帝はオランダに亡命しここにドイツ帝国は崩壊した、そしてそれがこの大戦の終わりを告げることになるのであるが、その後も混乱は終わらないのであった。


>>>>>>>>>>>>>


 同じ時期 ロシア ペトログラード


 「陛下、此方へ……」


「やはり脱出せねばならんのか…」


 情報部を預かる男の声にニコライ2世は声を震わせた。


「このままで行けば陛下は軍部によって強制的に退位させられシベリアに送られ軟禁されましょう、そうなってはお終いです今しかご家族そろって脱出する機会は無いでしょう」


「わかった…」


 そう答える後ろには彼の家族たちが不安そうな顔をして付いてきていた。


「お父様、私たちはどうなるのでしょうか?」


 第二皇女のタチアナが父帝に問いかける。


「皇女殿下、イギリスの軍艦が密かに救出に来ております、もう暫くの辛抱です」


「私たちはイギリスに行くのですか?」


「当面はそうなりましょう、ですがまたこの地に戻れるようになりますとも」


 情報部の男はそう答えた。


 一行は川に着いた、川に向かって明かりで合図を送る男その行動に応えるかのように明かりが川面で動きやがて低いエンジン音と共に一隻の船が姿を現した。


 そして川岸に接岸する。


「見たことの無い船だわ……」

 

 タチアナが呟くが情報部の男は彼らを急き立てた。


「お早く!今頃は陛下たちが居ないのが分かっているでしょう追っ手の来ないうちにお乗りください」


「そなたはどうするのか?」


 皇帝の質問に彼は寂しげに微笑んだ。


「私にはまだやることがこの国にあるのです、ここまでです陛下、皆様方お達者で!また会える日を楽しみにしております」


 そうして彼は船から降り立った男を紹介する。


「イギリスより参りました、ジェームズと申します、皆様方を無事にイギリスまで送り届けるようにとの命を受けております」


 この場に似合わない爽やかな笑顔で敬礼する彼にマリア皇女は顔を赤くし、タチアナ皇女は眩しいものを見たような表情をした。


 このジェームズと名乗る男はもちろん本郷中佐の仮初の姿である。


 この場にかれが居合わせれば『このリア獣め!』と叫んだであろう。


「後は頼んだ」


「ああ、任せてくれ…だが良いのか?」


「心配ない、この国の在り様がどのようになろうとも俺たちは生き延びるさ」



 本郷と情報部の長は皇家の者たちに聞かれないようにして会話していた。


「確かにな、此方は任せたぞ」


「ああ、いつか又皇家の方々をこのロシアにお迎えして見せるさ」


 そう言って彼は接岸していく船がみえなくなるまで手を振り続けるのであった。

ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

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