42話 カンブレーの戦い 2
第3者視点です
地上ではドイツ軍の陣地に変化が起きていた、
「なんだ?この煙は、視界が遮られるぞ。」
前方の敵陣地から打ち出される砲弾の中に白煙を上げる物が混ざっていた
そのために遠くが見えなくなり歩兵たちは銃や機関銃の発砲をやめた。
敵陣からも撃って来なくなったのは向こうも見えないからだと思われたが・・・
「なんだ?この音は?」
ゴゴゴッと地鳴りのような音が複数聞こえてきてその音が大きくなっていく
やがて白いベールを突き破って出てきた物たちを見て兵士の口から
言葉が漏れ出した。
「これは・・・戦車!」
戦車は一両ではなく何両も途切れることなく現れてやがて唐突に停止した。
「なんだ?」
ドイツ軍兵士たちがその行動の答えを得たのはその直後であった、
車体の上に載っている砲塔から発砲があったのだ。
接近されたところで撃たれたので陣地のそこかしこが吹き飛んだ、
機関銃が折れ飛び、兵士たちだったものが吹き飛んでいく、
一気に凄惨な戦場を生み出していく。
「うぁああああ!ダメダァ!」
生き残った者たちは完全に腰が引けてしまい後方に逃げ出す者さえいる
そこにいったん停車していた鉄の獣たちは発動機の唸り声を
上げながら突き進む、そしてその後ろには歩兵たちが付いて来ており
敵の逃げ出した塹壕を制圧していく、戦車たちはさらに塹壕を乗り越え
先に進むのであった。
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「戦車第一旅団と第二旅団は敵陣地を突破しました、
各歩兵大隊、工兵大隊が同行しています、
砲兵大隊も前進させますか?」
「もちろんだ、偵察部隊に敵に毒ガス部隊がいないか確認させろ、
いたら先制砲撃で叩く。」
「はっ!」
永沼少将の指令に参謀が答え直ちに連絡を送る、
後方にいる砲兵大隊は砲戦車(自走砲)40両、牽引車両付き野戦重砲20門で
構成されている、砲戦車は14式戦車の車体に11式75ミリ山砲改造搭載した物で
砲が重い分砲前方にのみ装甲がされている開放式である。
重砲も車輪のついた移動が簡易な物で石川島造船自動車部(のちのいすゞ)の
トラックが牽引するようになっている。
「栗林中尉、君はどう見るかね?」
「はっ、今回はドイツ軍にも戦車が配備されていると言う事です、
そちらとやりあう事になるのであれば後方からの砲兵支援は
重要であると考えます。」
永沼少将に問われたのは司令部付きの栗林忠道中尉である、
彼は騎兵学校を卒業してすぐにこの師団に来たのである。
「そうだな、しかし騎兵である我々が馬に乗らずに戦場を駆けるとは
時代も変わった物だ、日露戦争からいくらも経っては居らんのにな。」
「御心情お察しします。」
栗林の声に頷きながら永沼は卓上に広げられた地図を見る。
「今回はドイツもソンムの戦訓を受けて戦車を投入してきている、
史上初の戦車同士の戦いが見れるかもしれんな。」
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ドイツ軍第2陣地
「第一陣地突破されました、敵は戦車を先頭に突入してきております!」
「やはり来たか、日本軍共め、今度は此方にも戦車があるのだ
目に物見せてくれるぞ!」
彼らの元にはドイツ製A7V戦車20両とイギリス軍より鹵獲した
マークⅠ戦車100両が揃っていた。
「敵の戦車に向けて前進せよ!」
命令に従い轟々とエンジンを轟かせ戦車が動き出す。
「これだけの戦車があれば・・・我が国は負けぬ!」
兵たちは自分たちの勝利を疑わなかった。
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連合軍中央司令部
今回連合軍は右から日本、フランス、イギリスと並んでドイツ軍に相対している。
その中で日本軍が当初の作戦の通りドイツ軍に向けて突出する
その中で未だ英仏軍は動き出していない。
もちろん射程の長い重砲を主体に攻撃はしていたのであったが、
戦車も見えず、歩兵も塹壕から顔すら出さない。
中央に位置するフランス軍司令部に日本軍第一陣地突破の連絡が入る。
「閣下、機は熟しました!」
「信号弾打て、全軍攻勢に出る!」
司令官フェルディナン・フォッシュの決断が下された。
『進撃セヨ、神の恩寵が我等にあらんことを!』
この指令に英仏両軍の中段に動きが起こった、カーキ色の幕が取り除かれた
後ろには多数の戦車がエンジンを始動させていた。
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日本軍第一機甲師団、第一戦車旅団、第一中隊
「前方に敵戦車確認!A7V5両、マークⅠ8両、距離800!」
「敵発砲!」
敵の戦車砲の着弾はかなり前方に土煙を上げただけだった。
「敵さんあせってるな・・・停車しろ、砲手撃て!」
14式戦車たちは一旦停止すると一斉に主砲を発射した、
37ミリ戦車砲が火を噴きドンッという音と共に赤い砲弾が
敵戦車に飛んでいき前面に展開していた鹵獲マークⅠの前面に
すいこまれるように命中した。
命中した戦車は動きを止め火を噴きだした、どうやら燃料のガソリンに
引火したようだ。
周りでも同じ光景が起こっておりドイツ軍の戦車部隊は通用しなかった。
「この戦車では奴らに勝てない。」
この戦いを目撃したドイツ軍将校ハインツ・グデーリアンは吐き捨てるように
語ったという、この戦いから約20年後彼は機甲部隊の指揮官として
歴史に名前を残すことになるがそれはこの日がその第一歩だったのかも
知れない。
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