41話 カンブレーの戦い 1
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第三者視点
連合国側は今回の戦いが最後の山場だと知っている。ドイツ軍はすでに動員も限界に達しておりここで勝利すれば全体の戦局も勝利へ転がることになるだろう、だがこの戦いにかけるドイツ軍は新兵器を多数送り出しており油断は出来ない。
連合国軍もこれまでは各国が独立して作戦指揮をしていたため連携が取れていなかった反省もあり統一指揮を執るためフェルディナン・フォッシュ を総司令官に任命した。
フォッシュはカンブレーに連合国軍を集結させると各国の司令官を集めて作戦会議を行った。
「この一戦ですべて決まるといって良いだろう、ここで我等が勝てば永遠ならざる平和が、負ければ地獄の戦いが続くことになる」
フォッシュの言葉にうなずき溜息をつく各国の司令官たちその中の一人が言葉を返した。
「ならば我が軍が道を切り開きましょう、増援の部隊も着きました、必ずや敵を切り裂いて見せましょう」
「やってくれるかね」
「お任せください」
日本陸軍の一戸兵衛大将はそう言って胸を叩いた。
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「こうして定数がそろうと見応えがあるな」
永沼秀文少将の前には遥々日本から来た増援部隊が整列していた。
新編の部隊で第一機甲師団と呼ばれるその部隊はその隷下に戦車、歩兵、砲兵、工兵、偵察、部隊を持ち主力である戦車部隊は2個旅団250両で構成されており、ソンムの戦いで投入された14式戦車を装備している。
ソンムのときは増加試作車を投入したその性能は以下の通りである。
全長4.3メートル
全幅2.1メートル
全高2.1メートル
重量7.4トン
速度30k/h
武装 37ミリ戦車砲
機関銃×2
エンジン 山岡製空冷直列6気筒ディーゼルエンジン
装甲厚 最大12ミリ
エンジンは当初航空機用ガソリンエンジンの流用が考えられたが総研である目的のため幾つかの企業にコンペをさせていたエンジンが思っていた以上に優秀だったのでそちらが使われることになった。
大企業である三菱や石川島造船所自動車部などを押しのけて採用になったのは当時町工場の山岡商会であった。採用になったと同時に山岡にはある筋よりほぼ無利子に近い巨額融資を受けて近代的な工場を立て量産に励むことになった、その時に社名を改めることになったが元々農業機械の生産を考えていた創業者の山岡が豊作の象徴としてトンボを候補にしていたのに対し総研に所属していたある技師が彼に「どうせならばトンボの王と呼ばれるヤンマから名前を取れば?」と言われ自身の姓ももじってヤンマーとなった。
工場が竣工すると同時にエンジンの増産が行われ、本来の用途と戦車への割り当てが行われて戦車の開発は進んだ…事になっている。
もちろんこの裏には譲のチート技術が反映されており山岡への梃入れも彼の差し金である。これは山岡を特に優遇したと言うよりも、意外に早く先進技術を自家の物としたことに対するご褒美のつもりであった、当分は戦車などのエンジンはガソリンで賄うはずであったからだ。
先陣として増加試作された部隊が欧州に旅立ってから日本で戦車を配備されるのを待っていた部隊は配備を受けた者たちから富士山山麓の演習場で訓練を受けてきた、そしてその成果がこの場で発揮されるのだ。
「よし、作戦を開始する、戦車隊前へ!」
命令は下り居並ぶ戦車のエンジン音が高く響き部隊が動き出したのであった。
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すでに両軍はお互いの塹壕に部隊を配置して激しく戦闘を繰り広げている、野戦重砲が打ち合い、陣地に砲弾が降りしきるが大戦当初のように歩兵同士の突撃はしていないので両軍の犠牲者は意外と少なかった、上空では機首にプロペラ同調措置付きの機銃を付けた飛行機が飛び交っておりお互いに隙あらば敵陣地に攻撃しようとしていた、そしてそれを妨害するためにここで激しい空中戦が行われていた、その中に機体全体を赤く塗ったドイツ軍機がいた、パイロットの名前はマンフレート・フォン・リヒトホーフェン『レッド・バロン』の異名を持つエースパイロットである。
彼は迫るイギリス軍のヴィッカース戦闘機の攻撃を軽くかわし機銃を打ち込む、するとパイロットに命中したのか敵機はよろめくように姿勢を崩すときりもみしながら落ちていった。
「これでスコアは40の大台に乗ったな」
こう嘯くリヒトホーフェンの前に2機編隊をとる新手の機体が現れた。
「あれは日本機か、面白い!」
たちまち距離を詰める両者、リヒトホーフェンの僚機も援護に向かおうとしたが別の2機編隊に阻まれてしまい単機で立ち向かう赤い機体であったが優速の上旋回性の良い日本機の前に姿をさらしてしまう。
「畜生!」
突き刺さる機銃弾の為にリヒトフォーヘンの機体は火炎を吹きながら高度を下げやがて戦場の外れの丘に不時着した、一命は取り留めたが重症を負い戦場を去ることになる、結果彼はこの戦争を生き延びることが出来たのであった。
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