表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平賀譲は譲らない  作者: ソルト
2章 大正編
37/231

35話 ユトランド沖海戦 3

※11/21修正

第3者視点です


 ユトランド沖での海戦はついに両軍の戦艦部隊が戦場に登場したことでクライマックスを迎えたに見えたがドイツ大海艦隊が反転離脱を図った。これを追撃するべくジェリコー提督率いる戦艦部隊とビーティ提督の巡洋戦艦部隊が追撃に入るが残存の巡洋戦艦と駆逐艦部隊が我が身を犠牲にして行く手を阻んだので取り逃がしてしまうかに見えた。だが逃げる戦艦部隊に併走するように駆逐艦の部隊が現れた。


 第2作戦艦隊の駆逐艦を中心とした挺身部隊である。本来所属の「利根」「筑摩」を第1作戦艦隊に振り向け代わりに2個駆逐隊を指揮下に入れており5個駆逐隊20隻の編成である。


 それらの部隊が30ノットの快速で戦艦部隊に接近している。


駆逐艦 桂


「先任どのくらいの距離で魚雷を発射するんです?」


「まあ、常識で考えれば5000メートル位か?」


「それでは遠すぎです!せめて3000、必中を狙うなら1500まで寄せるべきです!」


 山口多聞少尉の発言に小沢治三郎も苦笑するしかない。


「相変わらずの火の玉精神だな、だが5000まで行けばドイツの砲撃手の腕前なら当ててくるだろう、1500?半分以上は沈められるぞ」


 そう嗜めていたのだが、世の中にはそれに輪をかけた人物がいる。


「1000まで寄せて撃つべきです、半数が沈んでも魚雷の必中があれば十分お釣が来ます!」


 桂と同じ駆逐隊に属する楠に乗組の角田覚治中尉はそう言って先任将校を困らせていた。


 この挺身部隊の総指揮を取るのは竹下勇少将である。彼は臨時旗艦にした第8駆逐隊旗艦 かしに乗っている、彼は第8駆逐隊司令飯田延太郎中佐に問うていた。


「雷撃はどのくらいの距離でやればよいか?」


「3000と言いたい所ですが、ドイツの砲撃の錬度は高いですな5000で行かんと半数はやられるでしょう」


 奇しくも飯田は小沢と同じ答えを出した。


 かつて水雷学校の教官も勤めた飯田の見立てが優れているとしても先任将校の小沢の優秀さは尋常ではない。


「そうか、後続の部隊に伝達『距離5000にて統制魚雷戦を開始ス』と伝えよ」


「はっ!」


>>>>>>>>>>>>>>


譲視点


 駆逐艦主体の挺身部隊がシェアーの戦艦部隊に突撃している、あの部隊には後に太平洋戦争を戦うことになる人物たちが多数乗り組んでいる、山口、小沢、角田だけでなく南雲忠一や田中頼三など

その他にも多数の人材を連れて来ている。今回の経験が彼らにどのような影響を与えるのか?

実に興味深い。


「平賀中佐、水雷戦隊は戦果を上げるでしょうか?」


「魚雷の射程距離内までいければ何とかなるでしょう」


 質問してきた草鹿龍之介少尉に曖昧な返答をする、俺は一介の技術者なんだからその辺は判らないんだがな。


「草鹿、中佐が困っておられるようだ……大丈夫さ、水雷戦隊は戦果を上げるよ」


 そう言って草鹿少尉を嗜めたのは兵学校の同期の木村昌福少尉である確か彼は生粋の駆逐艦乗りで金剛に乗るのは違和感がある。


「失礼しました中佐、だが木村よ戦果を上げる根拠は何なんだ?」


「司令の乗っておられる樫の駆逐隊司令は飯田中佐だ日露戦争で夜間雷撃を成功させて水雷学校の教官を勤めるほどの人だ、おそらく竹下閣下はその進言に従うだろう、ならば問題はないさ」


 確かに飯田中佐に関しては大酒飲みという評判もあるが駆逐艦の司令としての実績もある、適切な人事だといえよう。


 搭載している魚雷だが残念ながら酸素魚雷は実装が間に合わなかった、大神工廠の研究所では試作品はすでに出来てはいるのだが量産化するまでには至っていない。航続距離などは現在の魚雷でも1万メートルは余裕だがやはり命中を確実にするには近づかねばならないのだろう。


「なるほどな、俺はいいが昌福は水雷専攻だから駆逐艦あっちに乗りたかったんじゃないか?」


「そうも思わんでもないが華々しく戦うだけが軍人の仕事じゃないさ」


 ぜんせの知るキスカ撤退作戦の指揮官はこの頃からこういう人物だったようだ。



>>>>>>>>>>>>>


第三者視点


 全速で進む駆逐隊の周囲にはいまや戦艦の副砲や速射砲の上げる水柱が無数に突き立って居る。

駆逐艦側も主砲で応戦しているが元より戦艦相手にダメージを与えられるものではない、精々牽制になるくらいのものであった。


 対するドイツの戦艦群には巡洋戦艦の生き残りをイギリス艦隊に任せた

金剛以下の部隊からの砲撃を受けていたが距離が3万メートルもあるため

届かせるのがやっとで命中は期待できない、此方も駆逐隊に対する

援護射撃の意味合いが強い。


 シェアー提督も金剛たちに反撃の砲撃をしても届かないのは分かっていたからあくまでも駆逐艦に砲撃を集中させていた。


「榊被弾!落伍します」


「桜に火災発生!」


「柏速力低下『我追随できず』!」


 駆逐隊にも被弾する艦が現れ落伍していく。中でも榊は艦首側の主砲に命中した砲弾が弾薬庫を誘爆させて艦長以下59名が死亡する被害を出していた。


「敵艦との距離5000メートル!」


「雷撃始め!」


 水雷長の距離報告に司令が攻撃命令を出して駆逐隊はついに雷撃を開始するのであった。

ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

励みになりますので、評価、ブックマークなど良ければお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ